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第74話 責任感と立場。 僕たちが悪いです。

翌日、カナタは第三鍛錬場をきっちりと押さえていた。


他の鍛錬場より小さいが貸し切りで、室内であるため、他人の目を気にする必要もない。


僕らの一週間の授業免除も申請済みで、試合当日までみっちりと訓練できるように手配までしてくれていた。


ちなみに昨日、リノはカナタの寮に泊めてもらったらしい。


女子寮の空き部屋を押さえたらしく、しばらくはそこで寝泊まりできるのだと。


ほんとに、こういうところは流石である。


「で、僕の渡した鍛錬はちゃんとやったんだろうか?」


鍛錬場につくなり、カナタが僕たち二人に確認してくる。


僕はノラと顔を見合わせた。


え?


マジか!?


あの量の鍛錬を、あの時間からやらすつもりだったの!?


僕はてっきり、今日から始めるものだと思っていた。


それはノラも同じだったようで。


僕らの表情からそれを読み取ったのか、カナタは深い深い溜息をつく。


「アゲハ君、ノラさん。君たちは自覚してるのか? 現状、リノやシド君より焦らなければならないのは君たちだ」


カナタは苛立った様子だが、それを無理矢理に隠すように、


「とにかく、もっと責任感と焦りを感じてくれ。一年生の人生が君たちにかかっているということを、もっと真摯に受け止めてほしい」


そう言った。


カナタはそれだけ言うと、僕たちに背を向け、リノとシドの方に向き直る。


シドが肩をすくめる。


リノはなんだか、一日ですでに疲れ果てた様子で、申し訳なさそうに俯いていた。


スズは鋭い目でカナタを睨んでいたが。


あまり皆と揉めないようにと、僕が何度も言い聞かせた甲斐あってか、ぐっと我慢するように黙っていた。


***


鍛錬場の隅でストレッチしながら、離れたところで打ち合いを始めたリノとカナタを遠目に見る。


カナタがかなり飛ばしてやっているように見える。


ストレッチも予備運動もないということは、リノとはすでに朝から鍛錬を始めていたのだろう。


「アイツ、マジ重いし。『一年生の人生が君たちにかかっているということを、もっと真摯に受け止めてほしい』何様ー?って感じ」


言いながら、ノラがさっきのカナタの真似をする。


それが妙に似てい僕は少し感心する。



「ノラ、めっちゃモノマネうまいやん」


僕が思わず言うと、


「せやろ? せやろ! 結構、自信あんねん!」


と、ノラは胸を張った。


「あと、なんかできます?」


「『左様、吾輩は上級魔導師である、ゆめゆめ忘れるな』」


と、今度はセヴァルの真似をする。


性格の悪そうさがなかなか良い感じに出ているのと、ノラがちょっとシャクレながらセヴァルの顔真似もしているのがツボる。


ノラの隠れた才能が開花しているではないか!


そうなんだよ。


ちょい、シャクレてんだよ!


笑い転げる僕たちは、氷のように冷たい視線を感じて、思わず黙った。


めっちゃ、カナタに睨まれとる。


いや、でも、今のは僕たちが悪い。


完全に僕らが悪い。


僕はペコペコとカナタに頭を下げて、真面目に鍛錬に取り組んだのだった。


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