野良潜行者と上級潜行者。 実技最下位は僕かもしれません
しばらくの沈黙。
誰も何も言わない、微妙な沈黙。
耐えかねた僕は口を開いた。
「それにしても、ノラが実技最下位なんですね」
リノより剣術が微妙で、そのうえ、僕より魔法杖の扱いが下手なら、もっと目立ちそうなものであるが。
記憶をたどる限り、そんなヤツは居なかった気がする。
僕の質問に、カナタは深い深い溜め息とともに、苦々しげに答えた。
「そもそも、彼女は授業に出ていないんだ」
……不登校?
いや、そういう感じでもないのだろう。
「どうして、こんな人が、潜行者養成学校の、しかも上級潜行者育成学科にいるのか……」
もはや、カナタは頭を抱えている。
「ウチ、推薦枠やしー」
推薦枠?
カナタと同じ?
聞けばノラは、下3層である程度経験を積んだ野良潜行者であり、潜行者ギルド所属の人間。
そこから推薦されて、この学校に入ったのだという。
野良潜行者とは、別に本当に放し飼いにされているとか、不法に地下へ潜っている人間のことではない。
そもそも、潜行者ギルド所属か、政府公認の潜行者でなければ、地下には降りられないのだ。
特定の商会やクラン、部隊に属さず、日雇いのように地下へ潜る人たち。
それを、野良というのだ。
マチダのおっちゃんとかも、野良潜行者である。
つまり、彼女は実戦経験ありの問題児ということで良いのだろうか?
……そうなると、ガチで最下位って、僕なんじゃねーの?
マジか!?
打ちひしがれる僕の心中など、気にかけることすらなく。
「補助金出してくれて、なんか、上級の資格くれるって言うからさー。ウチ来たのに、嫌味なおっさんに怒られながら、魔法使い目指せとか、マジ意味わからんし」
嫌味なおっさん。
セヴァルのことだろう。
なるほど、まあ、ノラの言い分も分からないではない。
彼女は、より深く潜れる、より金になる潜行者の資格を取るために、この潜行者養成学校に来たのだ。
なのに、やらされるのは魔法使いの真似事。
それで、なんか馬鹿らしくなって、授業をサボるようになったらしい。
「ウチが自主退学したら、補助金返さないとだけど。他の人のせいで退学になるなら、たぶん大丈夫やろし。まあ、結果オーライやね」
と、ノラはケラケラと笑っていた。
笑い事じゃねー。
リノの気持ちも考えろよ、コイツ。
部屋の空気が、一段沈んだような気がした。
それにだ。
「……ノラ、言いにくいんですが」
僕は少し迷いながら、ノラに言う。
「選抜された時点で、ノラの責任にもなるでしょうから、能力不足による退学扱いになると思いますよ」
つまり、選ばれた時点で、『誰かのせい』で『勝手に』退学になったわけじゃなくなっているのだ。
まあ、そもそも、どういう契約になっているのかは知らんが。
自主退学だろうが、他人事由の退学だろうが、借りたものが全額免除になるとは思えないが。
ノラはしばらく考えたあと。
「……嘘やん?!」
悲鳴を上げたのだった。




