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あれ? これ詰みました

僕は今日も、スズの鍛錬の様子を眺める。

そして、それを真似して棒を振る。


この連日、これを繰り返しているのだ。


もちろん、見様見真似でもやらないよりマシ——なんて殊勝な理由じゃない。


見て覚えろなんて時代じゃないね!

必要なのはマニュアル、手順、効率だ。


やり方を教えてもらうのが何よりも近道!


オリジナリティなんて、あとから発揮すりゃいいのさ。


僕はじっとスズを見つめながら、下手くそな素振りを繰り返す。


ポイントは、下手くそであること。

そして、気になる程度に不愉快であること。


真剣に打ち込んでいるスズだからこそ、

このクッソ下手くそな素人丸出しの素振りは、気にかかって仕方あるまい。


たまに「うわっ!」とか「はうっ!」とか言えば、

余計に不愉快さも気がかりさもアップする。


所詮は子供。

話しかけてくるのは時間の問題——


「邪魔だ、向こうでやれ」


——ほら来た!


僕は俯く。

少し目に涙もためよう。


でも泣いてはいけない。

ギリギリのラインを攻めるのがポイントだ。


“堪えてる感”がいいのだ。


甘やかされたいがためだけに鍛えた、僕のスキルを舐めるなよ!


さすがのスズも、これには気まずそうに目を伏せる。


「なんで、おまえ、そんなに強くなりたいんだ。

会長にも、シトロ姉さまにも、セン姉さまにも大事にされて、戦う必要なんてないだろう?」


……。


僕は一瞬、言葉に詰まった。


アゲハとして取り繕うことしか考えていなかった。


なんで強くなりたい?


別に強くなりたくないよ。

なんだったら、ケーキ食いながら寝てたいよ。


バレたくないだけで。


……やっべ。


バレたくないことばっかりが先行して、

なんにも考えてなかった。


そもそも、人間復興の戦いがあったのは十年近く前だ。

まだしつこく残党は残っていて、新政府の秩序執行隊ちつじょしっこうたいは戦ってるけど。


それ以外で、剣術を鍛える理由ってあるのか?


旧政府の残党の筆頭といえば天元てんげんが有名だけど、

はっきり言ってサイコパスなテロリスト集団だ。


そんなもん、相手になんかしたくない。


となれば、潜行者せんこうしゃか?


潜行者は、所謂ダンジョン探索を行う冒険者みたいなもので、

ユグドラシルの根に巣食う蛇——魔物を退治することを生業とする人たちのことだ。


……潜行者も潜行者で大分ヤバい。

魔物なんか相手にしたくない。


「ぼ、ぼくは弱いから、強くなりたいんだ。

テオとかの足手まといになりたくないかなあー、みたいな」


よし……よし! よし! よし!


良い返しだったんじゃないか?

これなら秩序執行隊行きも、潜行者行きも回避できるんじゃないだろうか?


「そうか。なら、まず潜行者を目指せ」


「うん! そうす——る?」


……待て。今なんつった?


「私もまずは潜行者を目指している。


セン姉さまからの頼みだ。死ぬほど嫌だが、しばらくは私が面倒を見る」


スズは真顔で言った。


「だけど忘れるな。

必ず秩序執行隊に入って、会長やシトロ姉さま、セン姉さまの力になるんだぞ」


……どういうこと?


潜行者からの秩序執行隊って何それ。

なんの罰ゲーム?


「もし、半端なことをするようなら、その時は私が殺してやる!」


いや、どのルートも死ぬじゃん?


……もしかして。


僕、今、最悪の選択したんじゃね?

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