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いつもと違う教室。 僕はボッチじゃありません

教室の中で、リノはいつもと変わらない様子で級友たちと談笑していた。


気にかけて見ているせいか、なんだか無理をしているような、そんな気がした。


いや、もしかすると、僕がそう見ているだけなのかもしれない。


スズはいない。


昼前に何かの呼び出しを受けて、教室を出ていた。


すごく申し訳なさそうにしていたが、先生からの呼び出しならば仕方がない。


ただ、どこか妙に背筋が伸びていたというか、緊張しているようにも見えた。


……というか、また何かしでかしたんじゃないだろうな!?


テオは昼過ぎにはいなくなっていた。


まあ、あの人はそういう人なので、今さら気にするほどのことでもないが。


シドは昼休みはいつも食堂だ。


僕にはセンリツの作ってくれたお弁当がある。


そういえば、カナタも何か用事があるとかで教室を出ていた。


改めて考えると。


スズがいないと……僕はあれだな……。


僕はお弁当を食べ終えると、特にやることもなく机に突っ伏していた。


ボッチじゃねーぞ。


昼寝してるだけだ。


リノのことは気になる。


何か対策を考えなければいけない。


シトロさんは戦えと言った。


何と?


誰と?


上級生相手に喧嘩をふっかけまくれということではないだろう。


リノと共に立ち向かえ、ということだ。


リノは相変わらず、普通にしているように見える。


気にはなるけれど、ずっと見ているわけにもいかない。


そもそも、僕が見ていると、それはそれでリノも気にしてしまうだろう。


考えることは山ほどある。


でも、まずは放課後、シドの下宿でちゃんとリノの話を聞こう。


全てはそれからだ。


そう思いながら机に頬をつけていると、うとうとしてきた。


センリツのお弁当は美味しい。


そして、お腹がいっぱいになると眠くなる。


つまり、これは仕方のないことなのだ。


ボッチがごまかしで寝た振りしてるわけじゃないのだ。


***


本当に少し眠っていたらしい。


ふと気がつくと、なんだか教室が騒がしかった。


顔を上げる。


教室の入口に、上級生らしき男子生徒が二人立っていた。


見覚えがあるような、ないような。


少なくとも、僕らのクラスの生徒ではない。


教室の空気が、妙に強張っている。


級友たちは、誰も声を上げない。


ただ、ちらちらと入口の方を見ていた。


上級生の一人が、教室の中を見回す。


その視線が、僕の方を通り過ぎた。


一瞬だけ目が合った気がしたけれど、すぐに外される。


なんだ?


僕に用があるわけではないらしい。


上級生は、にやりと笑った。


「リノ。いるよな?」


その声に、リノの肩が小さく跳ねた。


僕は、完全に目が覚めた。


リノは一瞬だけ固まって。


それから、いつものように笑った。


「……はい」


小さく返事をする。


上級生は満足そうに頷いた。


「ちょっと来いよ。先輩が見てやるって言ってるんだ。ありがたく思え」


教室の中が、さらに静かになった。


リノは、笑っていた。


けれど、その手が、スカートの裾をぎゅっと掴んでいるのが見えた。


僕は立ち上がりかける。


そのとき。


廊下側から、ちょうどカナタが戻ってきた。


「……何をしているんですか?」


カナタの声は、いつもより少し硬かった。


「リノに何か?」


カナタが静かに尋ねる。


上級生の一人が、軽く肩をすくめた。


「特別クラスの後輩が伸び悩んでるって聞いたからな。親切な先輩が、わざわざ稽古をつけてやろうって話だよ」


言い方は軽い。


けれど、教室の空気は重かった。


カナタは上級生を見て、それからリノを見る。


「そうなのかい、リノ?」


リノは、一瞬だけ息を止めたように見えた。


それから、笑う。


「うん」


その声は、いつもより少しだけ高かった。


「私も、ちゃんと頑張らないとだから」


カナタは、ほんのわずかに眉を寄せた。


けれど、すぐに頷く。


「そうか。大丈夫なんだね?」


リノは、


「大丈夫」


と、小さくそう答えた。


カナタの視線は、リノの顔に向いていた。


だからなのか、その手元までは見ていない。


リノは、まだ笑っていた。


でも、その手はスカートの裾を掴んだままだった。


ぎゅっと。


指先が白くなるくらいに。


僕は思わずカナタを見る。


カナタは真面目な顔をしていた。


「リノが自分でそう言うなら、僕が止めることではない。先輩方の指導には多少厳しいところもあるが、得るものは多い、しっかりやりなさい」


上級生が、にやりと笑う。


僕は、立ち上がった。


「待ってください」


教室の視線が、一斉に僕へ向いた。


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