↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/111

ぶらり一人旅。 けれどなんだか不穏です

授業にはだいぶ慣れてきた。


潜行者のことも、魔法のことも、かなり理解できるようになったのではないだろうか。


魔法杖も、なんとなく使い方が分かってきた。


要は、力みすぎだったのだ。


ゆるーく。


ゆるーく力を込めれば、なんとか安定して光刃を出せる。


かなり調節は難しいけれど。


それより問題なのは、剣術の授業である。


相変わらず、リノには勝てない。


カナタとかシド相手なら、そこそこ打ち合える日もあるけど、それでも調子が上がらない。


スズ相手だとわりと僕が勝ててしまうのだが、あいつの場合は僕の顔を立てようと、わざと負けている可能性も捨てきれない。


というか。


それしか考えられない。


「流石です! アゲハ様! 私では手も足も出ません!!」


やめろ。


大きな声で僕を褒めるな。


めっちゃスズに言わせてるみたいじゃないか。


リノには連敗続き。


他も似たようなもので。


学年最強を誇るスズにだけ、僕が勝てる。


周りからも、完全にヤラセだと思われていた。


僕は当然、そんなこと頼んでいない。


……ああ、皆の視線が痛い。


狂犬スズが僕の周りをちょろちょろし。


それだけでも目立つのに、テオが人目も憚らず僕にちょっかいを掛ける。


僕はクラスの中で、完全に腫れ物扱いである。


完全に関わってはいけない人になっている。


あの良い人代表のリノにすら、


「アゲハくんは近寄り辛いから……ね?」


みたいな、フォローなのか何なのか分からないフォローをされる始末だ。


僕の桃色の学園生活は、今や完全に灰色であった。


女の子と仲良くお話したり。


放課後デートしたり。


そういう普通の青春は、たぶんもうきっと無理だと思う。


……いや、諦めるなかれ!


「アゲハ様、今日も下宿に寄りますか? カナタがボードゲームを実家から送ってもらったので、シドの部屋に置いておくと言っておりました」


なんか、そんな話をしていたな。


ただの遊びのゲームじゃなくて、潜行者としての洞察力とか推理力を高めるなんちゃらかんちゃら。


カナタはほんとに良いとこのボンボンで、潜行者になると言った時には、母親なんかは泣きながら止めたそうなのだが。


そういうわりに、実家からの援助が手厚い。


寮だって、学校指定の中では一番設備が充実した寮だし。


娯楽用品から備品、食料に至るまで、頻繁に送ってもらっている様子だった。


本人は自立したいし、親の過保護にうんざりしているようだが。


まあ、気持ちは分からなくはない。


慎ましくても、自由を謳歌してこその一人暮らしなのに。


過保護な英雄とか、過保護な英雄とか、過保護な英雄とかが次々やってきては、心が落ち着く暇もないのだ。


まあ、それはそうと。


「今日は遠慮しておきます。スズは行っておいで。ボードゲームの遊び方、僕にまた教えてね」


「……何かご用事ですか? それならば、スズめもお供いたしますが?」


いや、スズがついてきたら本末転倒というか。


そのしゅんとした犬みたいな表情、やめてくれ。


テオもそうだけど、こいつらの悲しそうな顔は、普段がめちゃくちゃなだけに、僕のピュアハートにはこたえるのだ。


「ちょっと、お使いというか、知り合いに会いに行くというか。また今度紹介するので、ね? 突然、スズが行ったら、向こうも緊張してしまうと思うから」


変に誤魔化すより、正直に話した方が良いはずだ。


スズは納得したのか、していないのか。


「……分かりました」


と、俯いたのだった。


***


一人で行動するのは久しぶりだった。


背後にスズがいない。


横からテオが腕を絡めてくることもない。


センリツが完璧な距離で控えていることもない。


それだけで、妙に体が軽い。


レンガ造りの町並みは、そこかしこに緑が生えている。


最初に心配したほど、虫も湿気も気にならなかった。


鳥や虫を捕食する生き物が多いせいだろう。


それにしても。


僕は気づかれないように、後ろに意識を向ける。


三人か。


こそこそとつけ回している気配がある。


素人ではないが、ジャンク商会の人とか、金将会の組員に比べれば拙い。


テオとかセンリツが僕を心配して、遠出をするときなどはよく尾行がつけられていたから分かるのだ。


彼らはもっとうまく隠していた。


はてさて、どうしよう。


僕に勘づかれるくらいだから、大した連中じゃないだろうけど……。


こちらから声をかけるべきか。


人通りの多い道を選ぶべきか。


それとも、気づいていないふりをして目的地まで行くべきか。


少し迷って、僕はそのまま歩くことにした。


せっかくの一人行動なのだ。


尾行三人くらいで予定を変えるのも、なんだか負けた気がする。


***


目的地に着く頃には、気配はなくなっていた。


何だったんだろう?


まさか、僕の知らないところで誰かが追い払ったとか。


……いや、考えすぎか。


まあ、良いか。


僕は気にせず、目的の店を訪れていた。


ミルクホール・ピッチフォーク・中層学園都市支店である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。