この子は、妹みたいな存在です
とはいえ、僕はこの最悪な状況から考えた。
これは、もしかしたら逆に良いかもしれない、と。
テオやシトロさんが相手ならともかく。
そう、センリツだ。
センリツは、あの二人と比べると格段に話が通じる。
僕の相談にも、むしろ乗ってくれるんじゃないか?
中身がどうこうは置いておいて。
甘えた声で将来の不安を訴えたら、きっと力になってくれる。
――あの二人には内緒で。
僕は淡い期待に胸を煌めかせた。
***
そして、最悪の結果になった。
僕の前には、一人の女の子が立っていた。
シトロさんのような、艶のある黒髪。
それを短く切り揃えたボブ。
整った顔立ちは、どこか小動物のようで、僕より少し年上に見える可愛らしい女の子。
――最高だ。
いや、本当に最高だ。
……これで、その漆黒の目が殺気にまみれてなければね!!
横に立つセンリツは、
「まあまあ、あらあら、きっと仲良くなれますね!」
とか、はしゃいでるけど。
なれるわけないと思うよ?
これは悪意――
いや、違う。
そんな生易しいものじゃない。
殺意だ。
うん、間違いない。
コイツ、僕を殺す気だよ。
隙あらば殺る気だ。
そんな目をしてる。
前世で女の子と縁がなかった僕でも分かる。
この視線は、好意じゃない。
――嫌悪だ。
死なないために剣を習いたいのに、
すでに僕は命の危機に瀕していた。
***
どうしてこうなったか?
僕は英雄たちに愛されている。
守られている。
普通に頼んでも、誰も剣の先生になんてなってくれない。
というか、テオ以外に剣術指南なんて頼もうものなら、
その指南役は即、行方知れずになるだろう。
商会の手練れだって、誰もやりたがらない。
そこでセンリツが提案したのは――
シトロさんが連れてきた、秘蔵の弟子だった。
スズ。
シトロさんに認められ、さらにはテオから名前を貰った存在。
彼女なら、暗殺の憂き目にも遭わない。
謎の失踪も遂げないだろう、というのがセンリツの意見だった。
僕と年も近く、朝晩の鍛錬は欠かさない。勤勉で真面目で口も堅い。
仮にバレたとしても、「友達として遊んでいる」で誤魔化せる。
――パーフェクトな人材。
その子はセンリツのことも慕っていて、妹みたいで可愛いのだと。
……そう言ったのに。
……そう言ったのだ!




