表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/58

僕ほどの実力でも、礼は大事です


待ちに待った、剣術の授業である。


はっきり言って、自信があるのだ!


だって、テオとスズ相手に毎日鍛錬していたのだから。


潜行者養成学校に来るような連中が腕自慢であることは百も承知。


さあ、僕の実力をとくと見るが良い!!


なのに、……なぜだ。


なぜ、こうなった。


***



剣術の実技の先生は、カザミ先生という、極めて優しそうな先生だった。


温和な表情で、ニコニコとしている。


まあ、一点、気になるとすれば、古風な黒い羽織と袴は良いとして。


その下に着ているものが、左前に合わせた白帷子しろかたびら……。


どうも、死装束に見える点くらい。


……いや、それは一点で済ませていいものなのか?


先生は言った。


「後衛志望、前衛志望で、まず組分けをしましょう」


そんな志望確認、あっただろうか?


なんか、入学の時にアレやコレや書いた気はする。


色々、書くものが多かったから覚えていない。


前は嫌だから、後ろと書いた気もするし。


なんか、全然関係ない違うことを書いたような気もする。


当然のように分かれる級友たちをよそに、すでに僕だけ置いてけぼりである。


まあ、とりあえず後衛にするか、と後衛組に混ざる。


本物の方のアゲハも後衛だったらしいし。


前衛というぐらいだから、前は接近戦が得意なのだろう。


カナタもシドもスズも前衛に行っているから、武闘派は前衛なのだ、きっと。


だとしたら、剣術では僕が無双してしまうかもしれない。


後衛ってことは、接近戦が苦手な人ばかりだろうし。


僕は結構やれる方なのだ!


僕の相手はリノだった。


いざ始まってみると、すぐに分かる。


あの化け物たちと比べると、まるで小動物を相手にしているかのようだ!


テオが虎で、スズが狼なら。


リノはさながら小さな小リスちゃんである。


全然、圧が違う。


だが、侮ってはいけない。


和尚様も言っていた。


知崇礼卑ちすうれいひである、と。


僕ほどの実力を持ってしても、礼を失してはいけないのだ!



今日は簡単に各々の実力を見たいということで、ちょっとした試合形式の打ち合いである。


先生の「始め!」の声とともに、礼をして、他の生徒たちも打ち合いを始めていた。


横目で見れば、ずいぶんと緩慢な動きだ。


普段、テオとスズを見慣れた僕からすれば、まるでスローモーションだね!


僕はリノと対峙する。


いざ始まってみれば、リノの動きが手に取るように分かる。


僕は必要最低限の動きで、追い詰めるつもりだった。


だって、あまり乱暴にしては可哀想ではないか。


そのはずなのに。


バシリ!


という大きな音とともに、ぶん殴られたのは僕の方だった。


防具越しに衝撃が走る。


?!


なんか、全然、思っていたのと違う方向から木刀が飛んできたんですけど!?


奇襲か!?


僕は愕然とした。



***《シド視点》***


シドは、前衛組の列からその様子を見ていた。


アゲハは妙に落ち着いていた。


昨日は魔法杖の扱いに四苦八苦していたことを思えば、ずいぶんな落ち着きようである。


もっとも、魔法杖については、シドも人のことを言えた義理ではないが。


構えは悪くない。


というか、思ったよりずっと様になっている。


ここ数日付き合って分かったアゲハの性格を思えば、むしろ、ここまで基礎がしっかりしているのは驚くべきことだった。


反復練習とか基礎訓練など、絶対真面目にやらないだろうとシドは思ったからだ。


直前に、なにか自信ありげに「今日の僕は違う」などと言っていたのは、あながち嘘ではなかったのかもしれない。


リノが木刀を振り上げた瞬間、アゲハはすっと動いた。


かなり早い。


見切るにしても早すぎる。


その上。


避けるでもなく。


受けるでもなく。


まるで、そこに入るのが正解だとでも言うように。


ゆっくりと、リノの木刀の軌道へ自分から入っていく。


バシリ、と大きな音が鳴る。


防具越しに、アゲハが派手に打たれた。


「……あいつ、何やってんだ?」


シドは思わず呟いた。


リノも驚いた顔をしている。


打った本人ですら、当たるとは思っていなかったのだろう。


それもそうだ。


放っておいても、リノはテンパって空振っていたはずなのだから。


アゲハは、防具の上から打たれた場所を押さえ、愕然としていた。


自分から打たれに行ったくせに、世界の方が間違えたとでも言いたげな顔だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ