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憧れの魔法です。全然ファンタジックじゃありません。

話しているうちに、次の授業が始まった。


担任とはいえ、シトロさんがすべての授業を見るわけでは、もちろんない。


彼女の専門は魔法と魔術式。


主には後者で、さらに言えば、僕たち生徒に教えるというより、先生方への技術供与の方がメインになるらしい。


担任はいわばオマケなのだ。


ちゅうか、多分、シトロさんが無理やりねじ込んだだけだ。


聞かなくても分かる。


絶対、一般生徒の担任なんかやる予定なかったはずだ。


最初の授業は、魔法杖まほうじょうについてだった。


黒髪艶やかな美女!


ではなく。


整髪料だろうか。


なんせ、妙にツヤツヤした黒髪の長髪をオールバックにした、陰気な顔のおっさんだった。


爬虫類を思わせるような顔。


セヴァル先生というらしい。


名前的に上層の出身か?


校長先生のように、いかにも歴戦の戦士といった風ではない。


ただ、油断ならない動きというか、常に辺りを気にするような慎重さがある。


かなり経験を積んだ潜行者のように見えた。


おそらく魔法使い、あるいは魔導師あたりかと思ったら、その通りだった。


少なくとも、僕の知っている野良の潜行者で、魔導師というのは大変珍しい。


魔導師なら、もっと安全で良い職業に就けるからだ。


わざわざ地下に潜ったりしない。


となれば、セヴァル先生は何かしら潜行者に思い入れがあるのか、もしくはただの変わり者なのだろう。



授業の内容は、魔法についてだった。


この世界の魔法は、いわゆる火を出したり、雷を落としたり、水を生み出したりするものではない。


というか、そんなことはできない。


あくまでも、小さな奇跡を起こすだけ。


物を少しだけ動かす。


あるいは、空気を少しだけ圧縮して飛ばす。


その程度のものだ。


その力を最大限活かすために必要になるのが、魔法の杖。


魔法杖まほうじょうである。


魔法の杖とは名ばかりに、その形状は様々だ。


短刀のようなもの。


剣の柄だけのようなもの。


一見すると、ライフルのように見えるもの。


そういったものが一般的らしい。


柄だけのものは、光刃こうじんでの戦闘を主目的とした単一魔動機構。


少し大振りになると、魔動機を一つ増やした双発魔動機構となる。


短銃のように、光刃を飛ばすこともできるらしい。


ライフル型は、ほとんどが双発魔動機構である。


ただし、これは光刃を飛ばすためだけのものではない。


魔導師が扱えば、複数の魔動機を同調させ、防膜シールドを展開することもできるのだ。


単発とか双発とか、もはや魔法というより機械ではないか。


いや、魔動機というくらいだから、機械なのだろうけど。


ここで大事なのは、魔動機を二つ使える者が、そのまま魔導師ウィザードと呼ばれるわけではない、ということだった。


複数の魔動機を同時に扱えたとしても、それぞれを単独で運用しているだけなら、それはあくまで魔法使い《ウィッチ》である。


魔導師と呼ばれるのは、二基以上の魔動機を同調させて使用できる者のことだという。


……同調。


そのあたりから、僕の理解は少し怪しくなった。


二つ以上の魔動機を連動させて、一つの複雑な魔法として成立させる。


それができるのが魔導師。


そういうことらしい。


防膜シールド特級身体強化バフのような複雑な魔法も、この同調運用があって初めて使える。


つまり、魔法使いが魔法を撃つ人だとすれば、魔導師は魔法を組み立てて使う人、ということだろうか。


……いや、違うかもしれない。


でも、だいたいそんな感じだと思う。


そして、さらにその上。


三発式魔動機構――つまり、三基の魔動機を同調運用できる者たち。


彼らが、上級魔導師アークウィザードと呼ばれる連中である。


厳密には、魔動機の数そのものより、その運用方法によって階級が分かれているらしい。


だが、なんだかよく分からん。


まあ、つまり。


魔法使いは呪文を唱えて、ちちんぷいぷいやるわけではない。


魔法っぽい兵器を扱う技術者、ということだ。


うん、まったくもって夢がない。


いや、命が懸かっているのだから、夢より安全性なのだろうけど。


透視できたり、透明人間に……は、なれるか。


でも、あれは魔法ではなく、光学迷彩術式とかいうやつで、単発魔動機で運用されており、そんなことはともかく、よく見ると分かるのだ。


バレるのだ。


つまり、お風呂屋さんに潜り込んだりするには不向きなのである。


……いや、むろん、紳士である僕が女湯にこっそり入ろうとか、そんなことを考えるわけもないがね!


ちなみに、シトロさんは四発式魔動機構の杖を扱う。


それだけでも十分に化け物らしいのだが、彼女の場合、それに加えて遠隔操作可能な八基の自立型魔法杖を運用するとか。


その上、それらを同時制御するための巨大演算魔動機まで使うらしいのだから、僕の魔法杖の知識が曖昧なのは仕方ないといえる。


身近な人が全然参考にならないのだ。


ちなみに、その中核に据えられた玻璃珠はりだまこそが、彼女の異名の由来である。


玻璃珠の魔女。


一人で魔導師部隊を展開し、演算し、制御する女。


野放しにして良い存在じゃない。


……うん。


どう考えても、生徒に魔法を教えるような人じゃないね。


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