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パイン飴で止まりました。玻璃珠の魔女、授業を始めます

シドがたじろいだのが分かった。


いや、そりゃそうだろ。


本気の殺気だもの。


僕なら下手すりゃチビってるね!


悲しいかな、スズにはあるのだ。


人を殺すという覚悟が。


こんなしょうもないところで、それを使うなと言いたいところだが。


和尚様は言っていた。


スズは狷介不羈けんかいふきなのだ、と。


要するに、首輪を外しちゃった、めっちゃ噛む犬なのだ。


飼い主すら制御不能!!


……けれど、シドは引かない。


ぐっとスズを睨んだまま、一歩も動かない。


僕のようにビビって動けない……というわけではなさそうだ。


「そ、それで脅したつもりか? 潜行者なめんのも大概にしろよ。身内同士で斬り合おうってか? それが、甘いって言ってんだよ!」


おお!


すげー。


あのスズ相手に言い切った。


「これ以上、口を開くな、ゴミが。お前など、指一本で殺せる」


全っ然っ、人の話聞いてないけどね!


でも、シドの言葉は正しい。


いくらスズが強くても、一人では駄目だ。


そして、坑道ダンジョンに潜るなら、仲間割れは一番の悪手。


まものは狡猾だ。


真っ先に狙われる。


でも、シドが言い返してくれたおかげで、少し隙ができた。


今しかない。


「す、スズ」


僕はちょいちょいと、スズを呼ぶ。


「もうしばらくお待ちください、アゲハ様。この不届き者は、スズがすぐに黙らせます」


不届き者はむしろ、僕らだ。


そんなことより――


「えい」


僕は振り返ったスズの口に、飴玉を放り込む。


みんな見ているからワシャワシャはできないが、これで少しは落ち着くはずだ。


「パイン飴です。落ち着くのです、スズ」


僕は願いを込めてそう言った。


これで無理なら、すぐ逃げよう。


しばしの沈黙の後。


逃げるべきか、逃げないべきか。


僕が判断に迷っていると――


「おっはよーん……って、なにさ、この空気」


教室の重い木戸を開け、場違いに明るい声を響かせて入ってきたのは、シトロさんだった。


昨日が今生の別れでなくて良かった。


というか、今生の別れとか思ってごめんなさい!


ナイスタイミング、シトロさん!


「ま、いいや。はいはい、みんな席についてねん。ちゃちゃっとしないと、ぶっ飛ばしちゃうぞっ」


鼻歌交じりにプリントを用意し、皆に配っていく。


生徒たちは微妙な空気を纏いつつも、言われた通りに席についた。


「はい、シドくんもそこ座んな」


そう言って、よりにもよって、さっきまでスズと一触即発だった黒髪の少年を、スズの隣に座らせる。


空気を読まないというより、スズの殺気とかそんなものは、本当にこの人にとって微々たるものなのだろう。


シトロさんの登場によって、教室はなんとか持ち直した。


とはいえ、空気はまだ微妙なままだ。


そんなことは気にも留めず、シトロさんは授業を始めるのだった。


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