人の話はしっかりと聞きましょう、お供え物は羊羹に限ります
校長先生には怒られなかったけれど、他の先生にはこってり絞られた。
主にスズが騒いだからなのに。
なのに、なぜか僕がメインで怒られた。
なぜ!?
ただ、あの校長は良い人だ。
僕がお菓子を持ち込んでいたことを、他の先生にはチクらなかったのである。
故に怒られているのはスズについてだけだ、僕自身が悪くないという確信があるからこそ!
ガミガミうるさくいわれても先生の言葉を右から左へ聞き流せる。
もし、お菓子の件を持ち出されてはそうはいかない。
我が事として厳粛に受け止め、真剣に必要な部分だけ聞きかじりながら、右から左へ小言を流さねばならないのだ。
あの作業はなかなか骨がおれる。
僕はクソ和尚……違った、オーク様のありがたい説教で学んでいる。
説教の最後には、
『何が悪かったか言うてみい!』
という、恐怖の確認作業があることを。
そして、その時に適当なことを言うと、えらい目に遭うということを。
まあ、和尚さまはこの際どうでも良い。
それよりもだ。
僕を叱る先生はとてつもない美人だった。
副校長先生でセツナ先生と言ったろうか?
怒られてる途中でなければ、ディナーにお誘いしたかも知れない。
まあ、僕は分別ある男だから、叱られるときはしっかり叱られることに余念ないのだがね!
これも和尚様から学んだのだ。
叱られてる途中に後ろの掛け軸とか見て「めっちゃ手いっぱいあるやん」とか呟くと、真面目に聞いていないといってぶん殴られるのである。
「これから気をつけます。
ほら、スズも謝るんだ」
スズはどこか釈然としない顔をしながらも、普段の冷静さを取り戻していて。
「申し訳ありませんでした」
と、僕と同じように頭を下げた。
「スズさんのこと、ちゃんと見てあげてくださいよ、アゲハさん」
先生はため息をひとつ吐き、最後に――なぜか僕へ釘を刺した。
いや、一応、僕の方が年下なのだが。
中身は別として。
***
廊下を歩くスズは、どこかシュンとしていた。
まあ、いうて思春期の女の子やし。
慣れない環境で、ちょっとテンパったのだろう。
和尚様のところではそんなこと……なかったとは言い切れないが、もう少しマシだった。
ごくたまに門下生を脅すくらいで。
「スズ、和尚様も言っていました。
力に振り回されてはいけません、と」
「はい……」
振り回された結果、あの三人みたいになるのなら、なんとしても阻止せねばならない。
こいつ、ちょっとヤツらの影響を受けすぎてるからな。
「スズ、和尚様はこうも言いました。
お供え物は羊羹に限る、と」
「……は、はい?」
僕はポケットから必殺の飴ちゃんを取り出す。
実は、もう一つ持っていたのだ。
「えっと、これは……先ほども頂きましたが」
「甘いものは心を落ち着けます。
心が乱れそうになったら、これをお食べ」
実際、飴ちゃんパワーで、さっきスズもすぐ落ち着いた。
それに――これで僕が持っているお菓子は、全てスズに押し付けたことになる。
万が一、校長先生がチクったとしても、僕はもう何も持っていない。
無実だ!
スズは飴の包みをぎゅっと握りしめた。
「分かりました、アゲハさま!」
うんうん。
分かってくれて何よりである。




