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転生前は、バケモノでした

この世界はユグドラシルと呼ばれている。

世界樹を中心に作られた世界だ。


木と言っても、いわゆる植物の木ではない。

巨大な一本の柱が、八つの大地を貫くように支えているらしい。

それを木に見立てているのだ。



僕は今、ジャンク商会が所有するビル三階の書庫にこもっている。


この世界に関する書物を読み漁るためだ。


幸いなことに、漢字やカタカナ、英語やローマ字に似た表記が多く、なんとか読み解ける。



転生前の記憶を思い出して以来、僕はこうして書庫にこもるようになった。


まだ小さいから、図書館なんかには連れて行ってもらえない。

というか、過保護すぎて外に出してもらえない。


無闇に話しかけると幹部たちの機嫌が悪くなるらしく、社員の人たちもほとんど話しかけてこない。

話せるのはあの三人くらいだ。


だから僕の得られる情報は極めて少ない。


それでも、一刻も早く、この世界のことを——

そして英雄アゲハの知識や立ち居振る舞いを身につけないとマズい。


何がマズいかって?


万が一にも、前世の記憶があることに気づかれたら——


何も知らない僕では、すぐにボロが出る。


四歳の今なら、無知でも知識がなくてもおかしくはない。

けれど。


僕の体には、救国の英雄アゲハの魂が入っている——そう思われている。


それ相応に成長しなければ、疑われる。

そして、バレる。


——その先にあるのは、ろくでもない結末だ。


いや。


苦痛なく死ねるなら、まだマシなほうで。


あらゆる拷問の末に、生きたまま解剖。


……そんなことだって、十分にあり得る。


だから僕は必死になって、読みにくい資料を読み解く。



***


書庫にこもって三日。


僕は絶望していた。


読めば読むほど、このアゲハという人物は化け物だ。



剣術、魔術、戦術。


そのどれをとっても、天才としか言いようがない。


常にテオの後方に控え、類まれなる魔術操作と戦術眼によって戦局を支配した。


当時、単騎突撃というアホな戦い方をしていたテオの部隊。

当然ながら戦死率は異常に高かった。


——はずなのに。


アゲハが副隊長として入ってからは、その損壊率をほぼゼロに抑えたと言われている。

というか、戦術書の資料として残っている。


こいつ、戦乱の最中さなかに戦術書まで書いてるのかよ。


さらに。


後方支援が主だったため、長距離魔術の使い手と思われがちだが、調べればそうでもないことも分かる。


魔術はもちろん、剣術の腕も飛び抜けていたのだ。


模擬戦では三回に一回、あのテオ相手に接近戦で勝利した、なんて話まである。


——おかしいだろ。


どう考えても人間やめてるぞ、こいつ。

捏造じゃねーのか?


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