寮母はセンリツ? 何かが引っかかります
「ささ、寮はコチラでございます」
センリツが慣れた様子で案内する。
この辺りのことは詳しいのだろうか?
「センリツはこの辺りもよく知ってるの?
戦争の時に来たとか?」
「いえ、戦争中もここは、ふかふか中立でした」
……不可侵中立だろうか。
「家探しで、ちびっとばかし訪れておりましたので、少々詳しくなったのでございます」
そうか。
センリツは寮ではなく、自分の家に住むことになるから、物件探しに来ていたのか。
そういえば、ここ1年ほど、何度かしばらく家を空けることがあった。
でも、正直、そこまでして僕についてこなくても……と思わなくもない。
ただ、かつての天元襲撃の件もある。
彼女が近くにいてくれる方が、安心は安心だ。
駅から少し歩いたところにある居住エリア。
そこに、それはあった。
レンガ造りの古い洋館のような建物。
庭はかなり広く、小さな噴水から流れた水が、小川みたいになっている。
まあ、なんて素敵な建物なのでしょう!
湿気と虫問題は、どこへ行ってもついて回りそうだから、この際置いておいて。
うん、素晴らしい寮だ。
というか、潜行者養成学校の寮って、こんなに豪華なものなのか?
士官学校や魔法学園とかならともかく。
「寮母さんとか、管理してる人はどこだろう?」
守衛室らしきものはあるが、もぬけの殻だった。
すると、センリツがごそごそと鍵の束を取り出す。
……なんで、センリツが鍵をもっとるのだ?
「センリツが、ここの寮母となるのでございますよ、アゲハ様!」
センリツはクルリと回り、スカートの裾をつまみながら優雅に挨拶した。
……してやられた。
そういうことか。
でも、まあ、致し方ないと言えば致し方ない。
センリツだって、こっちで仕事をしなくちゃいけないだろうし。
本人はサプライズのつもりだったのだろう。
「セン姉さまにお世話していただくのですか!?
それは……なんというか、大変恐縮です」
スズも少し困惑気味だ。
無理もない。
というか、男子寮と女子寮は分かれてないんだろうか?
なんて、ありがたい……違った。
大丈夫なのだろうか?
まあ、建物の中ではきっちり分かれてるんだろうが。
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入ってすぐ、まさに洋館といった様子の、大階段があるエントランスが広がっていた。
「右手が談話室、左手に食堂がございます。
お風呂は右奥の扉から出て、渡り廊下を抜けた先にございますよ」
建物の構造は完全に頭に入っているらしく、センリツがつつがなく説明してくれる。
「ささ、コチラにコチラに」
大階段は途中で二手に分かれていた。
「一応、右が男子、左が女子でございますね」
センリツが“一応”と言うだけあって、結構ざっくり分かれている。
まあ、とは言え、潜行者を目指すような連中だ。
坑道に入れば、女も男もあったものじゃないし、このくらいが丁度良いのかもしれない。
もちろん僕は男子側。
左に二室、右に三室、計五室あって、僕は左手一番奥の部屋だった。
そして、僕の部屋の横には、もう一つ鉄製の扉がある。
「センリツ、ここは?」
尋ねれば、
「そこは、あれでございます。
屋上へ行く階段がございます」
と答えが返ってきた。
屋上もあるのか。
にしても、ずいぶん厳重な扉だなー。
僕は気にせず、自室に入る。
……あらやだ、素敵。
ベッドと机、本棚が置かれているだけの小さな部屋だが、大きな窓があって、家具もとても質が良さそうだった。
本当に、こんな良いところが寮で良いのだろうか?
……出来すぎていないか……。




