伝説級の魔物? そんなことより、べっちゃべっちゃの泥団子の方が大変です
何だか朝から街は色めき立っていた。
なんでも、地下坑道に伝説級の魔物が出たのだとか。
僕は寺で預かっている子供の一人、ヒミコちゃんと遊んでいた。
いや、小さい子供の面倒を見てあげるとか、僕はなかなか大人で優しい男だ。
……何度も言うが、僕に幼女趣味はない。
テレビの調節をするとか言って逃げやがったクソオーク……和尚様の代わりに、ままごとに付き合っているのだ。
「はい、はい、あげはちゃんいい子ですねー。
はい、ご飯ですよー、どーぞ」
僕は受け取った、べっちゃべっちゃ、べっちゃべっちゃの泥団子を全力でむさぼり食うふりをする。
大事なことなので二回言った。
いや、何度でも言おう!
マジでべっちゃべっちゃなのだ!
前回は食べ方が中途半端だったために、口の中にこのべっちゃべっちゃの泥団子を容赦なく突っ込まれた!
このアゲハ、同じ轍は踏まん!!
どうだね? この見事なエア泥団子食い!
完璧!
……完璧であろう!!
我ながら惚れ惚れするほどに……。
「ちゃんと食べましょうね」
そして顔面——特に口元に容赦なく押し付けられる、べっちゃべっちゃの泥団子。
何故だ!?
完璧な食べっぷりだったろう?!
敗戦に打ちひしがれる僕が、ふと横を見れば、いつもよく寺に来ているデブ猫が僕を見てニヤリと笑った。
確か、万城目惣左衛門月影とかいう大層な名前の猫だ。
僕は敬意を込めて、まんじゅう丸と呼んでいる。
この猫、なんか異様に腹立つ顔すんだよなー。
そんなこんなしている間に、テレビの用意が出来たと和尚様が呼びに来る。
「何、泥団子なんか食っとるんじゃ。顔洗ろてこんか」
僕の顔を見て、呆れたように言う。
マジでこのクソ坊主、いつか強くなったらしめてやる!
***
鍛錬場に臨時で設置されたテレビの前には、もう皆が集まっていた。
ダイヤル式の古めかしいテレビ。
この寺にもあったんだ、テレビ。
伝説級の魔物の出現。
その討伐を生放送するらしい。
門下生や周辺の子供たちに頼まれて、和尚様が納屋から出してきたのだ。
「アゲハさま!
こちらです、こちらに席を空けております」
と、スズが呼ぶ。
明らかに広すぎる空間に、座布団が山積みされている。
スズのやつ、周りの子供らを脅しやがったな。
テオたちの脅迫? 洗脳?で好意的になったのは良いのだけど、なんか変な方向に走ってる気がする。
僕は座布団を、ぽいぽいぽいと他の人たちに放り投げた。
こんなことをしたら、他の子に迷惑だろ。
そう言おうとした、その時。
ちょうど遅れて入ってきて、それを見た和尚様が、容赦なく僕の頭に拳骨を落とす。
スズのことは殴らないクセに。
クソ〜と思いながら頭を押さえて顔を上げると、ちょうど放送が始まったところだった。
ユグドラシルの、文字通り根幹に関わるような魔物の出現。
さらには同時発生した、スタンピード。
そんなものを何故生放送するのかというと、新政府の安全アピールだそうだ。
三英雄を引っ張り出し、大々的に新政府の戦力が健在であることを内外に見せたい。
ミコトさんは反対したらしいが、結局、上層部は押し通した。
何より、三英雄たちが珍しくやる気だったのだ。
仕方ないだろう。




