空蝉寺、本日も平常運転です、僕は真面目に修行しています
「アゲハさまー
アゲハさまー、おやつですよー
おいしい、おいしいショートケーキですよー」
僕のことを探すセンリツの声が聞こえる。
片手にショートケーキ、片手に大きな虫網を持っている、僕のことなんだと思ってるんだ。
和尚様のもとに通うようになって、三年の月日が流れていた。
相変わらず三人の過保護は続いていて、僕が最近率先して寺に通うものだから、時折こうして捕まえにくるのだ。
最初のころこそ、お菓子やらジュースにつられて捕まっていたが、今はそんな醜態は三回に一回くらいしか晒していない。
なんか、たまにスペシャルすぎるお菓子の日があるんだよ。
これは致し方ない。
裏の広場の秘密の抜け穴から抜け出して、繁華街を抜け、空蝉寺に向かう。
昔はよくここにテオやセンリツ、シトロさんが待ち伏せしていて、途中で捕獲されたりしたこともあったが。
和尚様とミコトさん、両方にこっぴどく叱られたらしく、今は商会から出て寺に入れば安全圏だ。ヤツらは追ってこられない。
僕はこうして毎日のように空蝉寺に通い、それはもう、心を入れ替えたように真剣に鍛錬に勤しんでいるのだ!!
***
「これ、アゲハ。ニヤついちょらんで、真剣にやらんか」
クソ和尚が僕の頭を容赦なくぶん殴る。
この野郎何すんだ!
と怒鳴りたいところだが、鍛錬の時の和尚様は恐ろしいから、今はとりあえず見逃しておこう。
にしても、いつまでこんな素振りばっかりやらせるつもりなんだ。
無心で振れっていうから、頭空っぽにして振ってたら振ってたで、それはそれで真剣にやれって怒られるし。
修業のモチベーションを上げようと、帰りのことを色々想像しながら頑張ってたら、それはそれで怒るし。
まったくどうしろというのか。
だいたい僕は、棒切れなんか振ってる場合じゃないんだよ!
僕の横ではスズが相変わらず熱心に素振りをしている。
よく腐らないよな。
鍛錬の内容としては、スズが一人でやっていた時のほうが充実していたように見える。
こんな基礎の基礎ばかりではなかった。
変にオリジナリティを織り交ぜようとすると、あのクソオーク——じゃないや、和尚様はすぐ怒るし。
スズはこの数年でぐっと愛らしく成長した。
艷やかな黒髪はそのままに、少し大人びて見える整った顔立ち。
切れ長で涼やかで、たまに氷のように尖った視線を向ける目元。
手足はすらりと長く、少女特有の健康的な美しさがそこにはある。
もちろん、変な意味じゃなくて。いや、マジで。
ぶっちゃけ、スズ目当てで道場に通ってる連中はかなり多いんじゃないだろうか?
汗に濡れる美少女の横で鍛錬できるなら、それだけでもこの道場の価値は十分にあると思う。
……いや、マジで僕に幼女趣味は無いからな。そこだけは勘違いするな。
「だーから、真面目にやらんか!」
そしてまた、クソ和尚にぶん殴られる。
コイツ、マジで豚汁にしてやろうか?
ここから新章になります。
ご愛読ありがとう御座います。
これ以降、毎週金曜更新を基本として、追加更新等は不定期になります。
ブックマークつけて頂けると嬉しいです。




