表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/19

オークキング? いいえ、和尚様です

首から下げられた、デカくて長い数珠。

使い込まれ擦り切れた法衣の下には、ゴリラすら青ざめそうな隆々とした筋肉。


厳つい顔に、眉は無く。


右の顔面には、目を失ったときについたのだろう大きな刀傷と、

そして、鳥と蛇と……豚?の入れ墨が彫られていた。


なんだ、この化物は。

そして、なんで豚?


破戒僧を絵に描いたような人物の登場に、僕も、そしてスズすらも戦慄していた。


「無我様!」


ただ一人、センリツだけは飛び上がって喜んでいる。


「何じゃ、センか?」


オークキング……ちがった、無我はセンリツを見て目を細め、そして僕たちに視線を移す。


「美味そうなぁ」


……僕らを食う気か、コイツ!?

いくらなんでも人外が過ぎるだろ!?


慄く僕らに、無我は腰から何かを取り出す。


マジで殺る気か!?


無我が取り出したそれは、丸々とした大根だった。


「大根もろてな。お前らも食うてくか?」


……ややこしいところで言葉を切るなや!

自分の容姿、考えろよ!


***


寺の中に通されて、センリツが無我のことを説明してくれる。


もともとはテオやセンリツと同じように、人間復興の戦いを共にした戦士で。


戦いが終わったあと、

世話になった寺が住職を失い荒れていくのを不憫に思い、仏門に入り、今は寺を守っているということだった。


周辺の子どもたちに読み書きや、武芸の真似事を教えているのだとか。


めちゃくちゃ良い人じゃねーか。

見た目オークキングなのに。


「ミコトから、話は聞いておる。

まあ、基礎の基礎くらいは教えてやろう」


僕らの椀に、大根たっぷりの豚汁をよそいながら言う。


食って良いのか、豚肉!?


顔面の入墨といい、ツッコミ待ちなのか?!


僕の思考を読んだのか。


「わしはまことの坊主じゃありゃせんからな。

生臭よ。

もろたもんは何でも食うし、無駄にはせん」


普通に真面目な話だった、良かった変なツッコミ入れないで……。



手習いのお礼で子どもたちの親が色々くれるらしい。


坊主に豚肉渡すやつもどうかとは思うが、

この世界の宗教観をちゃんと知ってるわけじゃないから、なんとも言えない。


まあ、美味しいし、良いや。


ジャンク商会は基本的にパンだから、

元日本人の僕からしたら、米と味噌汁は癒される。


そして、なによりキュウリの漬物がうまい。


無我が漬けているそうで、

見た目によらずマメなオッサンのようだった。


「慌てるな、しっかり噛め」


と僕を叱ってくるあたり、

ジャンク商会の面々より、遥かにまともな大人なんじゃないだろうか!


ちゅーか、見た目はともかく、

久しぶりの“普通の人”だ!



***


それから僕は無我の……いや、無我和尚さまのお世話になることとなった。


寺の横に建てられた道場で、他の子供たちに混じって木刀を振るう。


テレビとかでよく見る、あの横並びになって「エイヤ! エイヤ!」とするヤツだ。


腹から声を出し、無心で木刀を振るう。


「よーし。

よし!

ええ声じゃ!ええ声じゃ!」


和尚様は怒ると怖いが、褒めるところは褒めて、遊ぶところは遊んでくれる。

あの容姿でおままごとにまで付き合ってやるのだから凄い。


まあ、ただ、主に赤ちゃん役をやらされていて、その様子は狂気じみているが。




滴る心地よい汗。


まるで、心が浄化されるような……。


いや、まあ、僕の心はもともと酷く清らかだけどさ。


というか。


普通すぎる。


普通すぎないか!?


テオの無茶苦茶な鍛錬からの、シトロさんの薬。

そして、センリツの全てを破壊する攻撃。


それらを目の当たりにしたせいで、なんか変だ。


物足りなく感じている僕がいる!


走り込みに素振り。

道場や寺の掃除。


鍛錬としては、そこそこキツいはずなのに!!


なんだか、とても……とても。


味気ない、だと!!?


……どうやら僕も、だいぶ手遅れらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ