言われた通り、ちゃんと生きてます?
いや、見るなって言われたけど、
やり過ぎもやり過ぎだろ。
何なんだよ、この地獄の光景は。
ドン引きだよ。
心の底からドン引いてるよ!
テオはまだやる気らしく、剣を握り直す。
相手はもう戦意なんてありゃしないし、
テオと戦うつもりすらありゃしない。
泣きながら、這いずりながら逃げ出している。
……でも、これ、どうすんだ?
どうすりゃいい?
僕の超絶スキルが、今さら役立つか?
——いや、無理だろ。
いうて、偽物やし。
でも……もう乗りかかった船だ。
仕方ない。
テオを止めないことには、怒りを鎮めないと、このままだと、スズとか、せっかく助かっても味方に殺られかねない。
僕は意を決して、テオに近づいた。
普段なら自分から危険に足を突っ込むようなことはしないんだけど。
なんか、僕も変なスイッチが入ってんだよ、多分。
さっき死にかけたというか、
精神的には一回死んだせいだ。
きっとそのせい。
命がけで、他人を助けようなんて、だって、僕らしくないじゃないか。
僕はテオに近づくと、その振袖を、ぎゅっと引っ張る。
顔芸をやる余裕はない。
「て、テオ……もうやめよ。
僕、大丈夫だよ?
ね? 戦いは終わったんだ。
これ以上、殺しちゃだめだ」
テオの、殺意の籠もった目が僕に向けられる。
……あ、やべ。
ミスった?
違った?
っていうか、今、ちょっと漏らしたかも。
テオは据わった目で、僕を見る。
呼吸が上がっているわけではないのに、
息が苦しい。
……やっぱり、僕、拾った命を
全力で捨てに行ってないか?
さっきの魔法使いが可愛く思えるほど、こえーよ。
テオが、がばっと僕に覆いかぶさる。
失神しなかったことを褒めてほしい。
それほどまでに、恐ろしかった。
でも——
震えているのは、テオも同じだった。
「へいきか?……平気なのか、アゲハ?」
そう言って、縋るように抱きついてきたくせに、
「血の匂い……」
そう呟いて、身を離そうとする。
僕は慌てて、テオを抱きとめた。
ここで逃がしたらヤベェ。
テオは逃げようとして——
けれど、やめた。
「殺してない。だれも。言われた通り」
血溜まりの中で、そう言った。
***
次の日、僕が広場に出たとき——そこには、何も無かった。
まるで何事もなかったかのように、
ビル裏の広場はいつも通り整えられていた。
死者は、最初にあのなり損ないの人造天使に殺された人たちだけ。
僕たちを襲った連中は、
みんな生きて執行隊に捕縛されたらしい。
***
テオはあのあと、また千石楼に行ってしまった。
商会の中にも風呂やシャワー室があるというのに。
まあ、何はともあれ。
今回の件で、僕の鍛錬とかその辺りのことは、
綺麗さっぱり消し飛んだだろうな。
もう、二度とスズにも会えないかもしれないし、
ヘタをすれば、外にも出してもらえないかもしれない。
スズの殺気から解放されるのは、若干安心だけれど、
なんだか物足りない。
……あの氷の視線のせいで、
新たな扉を開いてしまったのだろうか?
当分はまた、
怠惰な四歳児に逆戻りか。
あんなことがなければ、
大手を振って喜べるのだが。
まあ、僕が思い悩んだところで仕方がない。
——前向きに行こう。




