赤い悪魔は怒りに狂う、なんか、ヤバいの召喚した気がします
「アゲハと分かれば、迷彩術式など意味はない!」
男は、まるで僕を警戒するように距離を取る。
……いや、というか。
誰に向かって言ってんだ?
男の言葉とともに、次々とフードを脱ぎ、姿を現す魔法使いたち。
いち、にー、さん、しー……
……数えるのも面倒なくらいいっぱいいる。
死んだな。
これは死んだ。
ここまで絶望的だと、逆に冷静になるもんだな。
……これが人間の防衛本能ってやつ?
普通なら叫んだり、命乞いしたりするんだろうけど、声も出ない。
勝ち筋も、逃げ道も無さすぎて、完全にフリーズ状態だ。
まあ、思えば短いとはいえ、いい人生だった。
死んで、また生まれ変わって。
綺麗なお姉さんたちにチヤホヤされて。
……こんなことなら、いっそシトロさんに身を委ねればよかった。
僕は目を閉じることすらできなかった。
身動ぎ一つできない。
ビビりすぎて。
なんかスズが叫んでる気がするけど、何言ってるか全く分かんねー。
ぜんぜん頭に入ってこない。
スズのことだけは悪かったと思う。
それは本当だ。
せめて彼女だけでも逃がしたかった。
いや、無論、僕のことも逃がしてあげたかった。
でも、あっちに僕が加勢したところで結果は同じだ。
グッバイ、スズ。
もし、もう一度生まれ変われるなら——
また会おう。
僕はすべてを諦め、心の中でこの世に別れを告げようとして。
……いや、待て。
まだ一つ、手がある。
諦めるには早い。
思い当たる。
僕は恥も外聞も捨て、ビビりまくる心をなんとか落ち着けて口を開く。
「テオ!」
助けて!!
そう叫ぼうとした——その瞬間だった。
何もかもが、粉微塵になる。
遅かったか……。
死の瞬間はスローモーションになるっていうけど、まさにそれだ。
手が、足が。
なにか色んなパーツが舞い上がる。
……僕のにしては、ずいぶんデカいなー。
他人事みたいに見上げる。
いや、コレ、他人のだ。
それが証拠に、いつまで経っても——僕の死は訪れない。
気がつけば、僕は誰かに抱えられていた。
赤い、大きなキャスケット帽子。
振袖のついた赤いジャケット。
「楽に死ねると思うなよ……ゴミムシ共が」
静かな、静かな声。
そこにいたのは——
怒りに狂う、テオ・ドールその人だった。




