女の子を眺めてるだけ? 違います、鍛錬です
今日も僕は、ジャンク商会のビル裏にある原っぱで、鍛錬するスズの姿を眺めていた。
あれ以来、テオから「スズとの戦いごっこ」は固く禁じられている。
……過保護も過ぎるだろ。
僕の話を聞いたスズは、絶望的な表情で僕を睨みつけていた。
まあ確かに。
鍛えろと言っておいて、あの程度の擦り傷で「鍛錬やめます」と言われれば——
そりゃ、そんな顔にもなるわな。
しかも、スズが僕の鍛錬にやたらと力を入れ始めた直後のことだ。
苛立ちも、相当なものだったろう。
……よく、黙って許してくれたものだ。
これ幸いと、このまま鍛錬をやめてしまおうかとも思った。
だけど——できなかった。
あんなに一生懸命、
スズは教えてくれていたのだ。
ここで一切食い下がらずに辞めたら……。
「あ、コイツ逃げやがった」
そう思われかねない。
僕が自分の意思で逃げたと思われるとマズい。
断然マズい!
だって——
スズが、ぶっ殺しに来る可能性があるだろ?
あのときの、氷のような目。
……本気で怖かった。
女児にビビるのがダサいとか言うなかれ。
本気で木刀を振る鍛錬してる六歳児なんて、
もはやモンスターだ。
「俺なら余裕」とか思ったやつは、一回向き合ってみるといい。
木刀を持ったチンパンジーに勝てるか?
勝てっこない。
そのチンパンジーが、アホみたいに鍛錬してるんだ。
勝てる道理がない。
だから僕は——
スズと「遊ぶ」という名目で会うことだけは、断固として死守した。
テオに言われて、はいそうですかとやめるわけにはいかないのだ。
僕は言ってやったさ。
せめて、見て覚えたいんだ、とね。
……結果。
何を見ればいいのかも分からないまま、
スズを真剣な眼差しで凝視するという、謎の鍛錬が始まったのだった。
***
それにしても……。
スズは、なんであんなに強くなりたいんだ?
僕は、何も考えていなかった。
六歳の女の子が、手を血だらけにしてまで、潜行者だの、執行隊だのを目指す理由を。
「ふっ!……はぁ!!」
最近のスズの型は、明らかに変わっていた。
素人の僕が見ても分かるくらい、洗練されている。
——常在戦場。
そんな言葉が、しっくり来る。
息を呑む。
なにが、彼女をここまでさせるのか。
テオは怒るだろうけど、見ていると僕も木刀を振りたくなる。
……まあ、美少女が剣を振ってる姿は見てるだけでも飽きないんだけど。
思わず顔がにやける。
転生前の僕がニヤけながら幼女を眺めてたら案件ものだ。
でも今はイケメン幼児だ。
——セーフだろ!
……たぶん。




