いつもの日常、ルオンの叔父さんは不気味です?
昨日はテオと夜更かししてしまった。
僕はくわっと欠伸をする。
テオはシトロさんを探しに行ったはずだけど、夜には庭に戻っていた。
結局、見つからなかったのだろうか?
あの二人の関係はとても不思議だ。
お互い表面上は嫌い合っているのに、妙な一体感があって。
親友というより、悪友?
年中、お互いに怒っているが、一緒に暮らしている。
まあ、シトロさんがテオを怒らせたり、ろくでもないことをして雲隠れするのは、これが初めてではない。
言うて、なんだかんだであの二人は仲良しなのだ。
食堂に降りると、センリツの用意してくれた朝ごはんが並んでいた。
オムレツとグリーンスムージー、ちぎりパンとサラダ。
じゃがいものポタージュ。
漬物と味噌汁の方が良いのだけど、スズはこっちの方が好きだから、合わせるようにしていた。
「おはようございます、アゲハ様。
スズ様もお待ちですよ、早くゆっくり召し上がるデス」
センリツが紅茶を淹れてくれる。
少し濃いめの紅茶で、あとからミルクティーにしてくれるのがお決まりだった。
対抗戦の時も、センリツはお弁当を用意してくれていて、一緒に食べる時間がないと知った時は、なんだかしょんぼりしていてかわいそうだった。
まあ、すぐに気を取り直して、次の日にはシドの部屋ですき焼きを作ってくれていたが。
「アゲハ様! おはようございます!!」
テーブルの脇では、スズが直立して控えていた。
これもお決まりの光景である。
僕が早く起きれば早く起きるほど、スズの起床時間が早くなるだけなので、僕は遅刻しない、けれど朝食をゆっくり食べられるくらいの時間に調整して、下に降りるようにしていた。
昨日は夜更かししたため、今朝は何時もより少し遅めである。
「おはよう、スズ。今日も早いですね」
「アゲハ様はお疲れのご様子ですが、大丈夫ですか?」
「昨日、テオと遊んでて遅くなりました」
「会長と。それは羨ましい」
僕が座るのを待って、スズも座る。
気にせず先に食べてほしいと言っても、スズは一向に聞き入れてくれないのだ。
二人で手を合わせて、朝食を頂く。
いつもの朝であった。
***
放課後。
僕はミルクホールのカウンターで、一人突っ伏していた。
週に一度ほど、僕はみんなと離れて、このミルクホール・ピッチフォークを訪れている。
木製のカウンターがひんやり気持ち良い。
「もうすぐ、校外学習だね」
ルオンが言った。
ルオンは僕たちより二年年上で、潜行者養成学校の救護科に在籍している生徒だった。
真っ白な肌に、プラチナブロンドの綿菓子みたいな髪。
まさにエンジェル!
血なまぐさくて物騒な人造天使とは違う、本物の天使様なのである!
「校外学習って何するんです?」
「一年生は自然区でキャンプのはずだよ」
キャンプかぁ。
やったことがない。
うちの連中は、自然と戯れるとか本当に縁が無さそうだし。
僕も自然は好きだが、虫とか不便なのはあまり好きではない。
「でも、僕らは地下に潜るのに、キャンプなんて役立つんですか?」
親睦を深めるとか、そういう目的なのだろうか?
「アゲハは面白いね。坑道の中には森林みたいになってるところもあるじゃない」
ルオンがころころと笑う。
え?
地下坑道って、ずっと、ずっと坑道が続いてるだけじゃないの?!
そんなの初耳である。
詳しく聞こうとした、その時。
マズイ。
奥の扉が、ぎぃぃぃぃいと開く。
そこから出てきたのは、黒服を着込んだ不気味な男だった。
べったりと撫でつけられたオールバック。
目はくぼみ、頬はこけている。
顔色も心なしか悪く見える。
「あ、叔父さん」
そう。
この酷く陰気な男が、こともあろうかルオンの叔父さんなのである。
最初に見た時、ドラキュラかゾンビの類かと思ったよ。
……いや、なんか、既視感が。
前にも同じようなことを一回やった気がする。
とにかく僕は、早々にピッチフォークから撤退したのだった。




