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好き を 求めた 異世界 物語   作者: 三ツ三
ニ章   adventure children
67/70

第三二話 可楽神祭 ハジマリ


町外れの廃棄施設の戦い。


ケイト、ダツ、ネーネ、ミニア、ヘスティア。

そしてターゼ。


6人はそれぞれの思いを糧に戦いを挑んだ。

だが結果は芳しくないの物だった。


ターゼはヴェアリアスに保護され子供達は人知れず生き延びていた。



そしてそんなことはお構いなしに水幸源の町セカンエンデの楽神祭は始まりを告げようとしていた。





【水幸源の町 セカンエンデ】



町は祭りの活気に溢れていた。

誰もが待ち望んでいた行事、町の至るところでは出店も構えながら他の町や村の来客も多くセカンエンデに訪れていた。


みなこの一大行事に各国の代表達も集まるということも聞き付けて一目見ようと祭りを楽しいんでいた。



「ほう、ターゼ王女殿下はご不在なのですか」


オノス

「はい、申し訳ございません。長旅で体調を崩してしまい本日の行事には参加が出来そうにないと御達しがありました」




大使館の著名来賓の者達の相手をする町長のオノス。


ターゼの不在に肩を落とす者も多くいた。




オノス

「必ずや本日の宴は盛大に盛り上がること間違いないでしょう、皆様も是非ともお楽しみくださいませ」




楽神祭はもう始まっている。


来賓者はみな笑顔を浮かべながら食事を取っていた。

町長であるオノスを信頼しているからか、他国からの来賓者もみな祭りを楽しむムードに身を委ねていた。



だがそれは、ごく一部を除いた面々での話だ。






ユミィーリア

「・・・・・・」


サナミ

「殿下、顔が強張っています」


ユミィーリア

「わかってます、生まれつきです」




セカンエンデの大使館にはもちろんユミィーリアとその近衛騎士団も居た。


全員が参加しており、いつでも何があっても大丈夫なように準備も怠っていなかった。


それは、ルシュカ達火の国のジャパニアも同じだった。

トゥトゥーを始めとする精鋭身辺警護兵が目を光らせていた。



カルー

「ごはん! 美味しいね!」



そんな中で一人楽しく料理を楽しんでいたのはルシュカの連れであるカルーだった。


奴隷市場で飼われていた時とは比べ物にならない程のお召物を来て参加していた。


ルシュカの精鋭兵とも傍から見ても仲睦まじいのがわかる。

彼女がある意味でルシュカの心を癒す存在なのだとみなわかっているのだろう。



オノス

「これはこれは、ユミィーリア王女殿下。改めて本日は御来賓頂きありがとうございます」


ユミィーリア

「いえ、ナイクネスの代表として当然までの事、ご招待頂き感謝を致します」



表情だけで見れば笑みを浮かべている。

だが言葉と表情が合っていない。


普通なら見抜くことはないかもしれないが、近衛騎士団の者達はみなわかっていた。


もちろんまだ楽神祭の詳細というのは教えてもらえていないが、先日の夕暮れ明けにカズキがある情報を持って帰還した。



それをユミィーリアもサナミも、近衛騎士団も知っていた。




オノス

「日頃の活躍でお疲れでしょう、本日は存分にお楽しみください」


ユミィーリア

「・・・ありがとうございます、そうさせて貰います」




定型文のような言葉にユミィーリアは吐き気を模様す。

オノスが情報をこちらが知っているかなんてわからないが、もし知っていてそんな事を言っているのであればただの挑発だ。


存分に楽しめ、存分に足掻いてみろ。


ナイクネスから来た者達にはそう捉えることしか出来なかった。




ユミィーリア

「準備の方は」


サナミ

「今シュリー達が急造、調整してるところ恐らく昼には終わると思う」




私達が情報を入手してから約12時間、その一点に絞って行動を起こしていた。


そしてそれは今も町外野営地で行われいた。




------------------------------------------------------------------------



【水幸源の町セカンエンデ 町外設営地】




ゴドフ

「ペース落ちてるぞ!!! もっと気合いいれろぉおー!!!」


「「「「はいっ!!!!」」」」




ゴドフが簡易急造された鍛冶場で鉄を打ち続けていた。

昨日俺があの男から受け取った情報からわざわざサンリーが呼び出したのだ。


もちろん、ゴドフだけではない・・・。




ナザ

「すげぇな、もう祭りは始まってるってのに」


カズキ

「メインのイベントは夕方前だ、それまでに"こいつ"を完璧に完成させなくちゃならない」




俺達は今、完全に後手に回っている。

だが、もう今になって巫女の奪還、ハイトスの妨害は効果が薄いと判断した。


ならば奴らがやろうとしていることを根本的にぶち壊す方向へ変えた。




ナザ

「それにしても・・・"超巨大ギフト"しかも生きてるってこれ本当か?」




それがあの男からの情報だった。


奴らは、ギフトを生成しようとしている、それも前代未聞の超巨大の物を。

更にそれがモンスターのような生き物。


子供達が卵から孵したヘスティアに比べての数千倍の物を生み出そうとしている。


更に俺達が一番に驚いたこと。

それはギフトは本来ならダンジョン等の最深部にある物だと思われていたが、その常識を覆す物だった。



水幸源の町セカンエンデ、これがギフトその物だったのだ。



正確に言うとギフトを生成する際の部屋のような物と同じ力を秘めているという。

そして常に人々の目にもギフトはあったのだ。




ナザ

「これがギフトねー・・・どう見たってただの"水"じゃねーか」




ナザが今飲んだ水これこそがギフト生成前の姿だ。


滅多な物じゃない限りは鉱石や岩に力を宿すことが多い。

だがこの町で宿したのは、水。



その水が、長年この楽神祭という真素を送り続ける儀式を通して生成しようとしていた。



それがハイトスの計画の一部だった。



前町長をわざわざ殺しハイトスの人間であるオノスを据えて計画に望んだ。


大した道化だ。

今まで町の者達に怪しまれずこの祭りをやってからモンスターや盗賊などに襲われなくなったなんてとんだ嘘っぱちだった。


争いの無い綺麗な町。

その裏では争い事の種であるハイトスがこの町を守っていたんだからな。


誰にも悟られぬように水面下で計画を進めていた。



負けている、規模があまりにも予想を超えてしまっていた。



本命は隠れてヒソヒソと計画を進め、国境を越えた各地では大胆かつ惨忍な実験を行い続けていた。




カズキ

「そして・・・最終目的」


ターゼ

「世界を混沌に包み神を召される」


シュリー

「何処まで冗談なのか、教えてもらいたいものね」



ターゼとシュリーが戻ってきた。

二人は共に行動し完成を協力していた。



カズキ

「お前達はそろそろ休んでおけよ、その前に倒れられたら元も子もない」


ターゼ

「あぁ~~カズく~~ん、心配して、く れ る の???」



俺の背中に絡みついて気持ち悪い動きをするターゼ。

それを見てナザはまたしても変な顔をしていた。


「うわぁお前また・・・」なんて小声で聞こえたが反応しないでいた。

普通ならここでシュリーが殴ってきてもおかしくないが、状況が状況であることと流石にターゼの扱いもわかってきたようだ。




ナザ

「っていいのか、水の国の王女様がここにいて」


カズキ

「あぁ、恐らくこいつ死んだ扱いされたと思う。もしかしたら明日には新王女様が君臨するかもな」


ナザ

「なんだそれ?」



事細かな事はこの際省く。

ただ今このままターゼを単身帰らせるのは危ないという事になった。


側近、しかも妹であるムーゼがハイトスについてしまった。

この事からわかることは単純明快。




ターゼを消した王女の席には、ムーゼが座る。




そんな所だろう。

この楽神祭が行われた後の話だがな。



ターゼ

「・・・・・・・・・」


カズキ

「心配するな、まだそうと決めるには早すぎる。そうだろう?」



俺の背中で丸くなるターゼを励ましてやる。


自分が王女じゃなくなることなんてどうでもいい。

だがそれよりも、妹が道を踏み外そうとしている事に不安を感じる。


当然だ、ターゼが今も俺達に協力するのは全ては・・・。




ターゼ

「大丈夫・・私は大丈夫、だって・・・・・僕には僕には真のア!!!」

カズキ

「進捗状況はどうだシュリー」




ターゼの頭を押さえつけてコーヒーを飲んでいるシュリーに質問した。




シュリー

「時間には間に合う、けど・・・」


カズキ

「あまりにも未知数か・・・」


シュリー

「そうゆうことよ、ロストエンシェントの力なんて私達現代人が逆立ちしても届く物じゃないんだもの、いくら技術の最先端をぶち込んでもそれが敵うかどうか・・・」



そしてもっと時間があれば可能性はあげられるが、それを許してはくれない。


推測規定数は到達出来るがそもそもその基盤が通じなかったら何の意味を為さない。

ただの無駄骨に終わるケースか。




ナザ

「はぁ・・、ここへ来る途中に急に世界が滅びるかもなんて言われた時は現実味なかったが。いざ現場に来ると来るもんがあるなぁ・・・」


カズキ

「怖気づいたか?」


ナザ

「まさか」


カズキ

「だよな」




干し肉を口に咥えフォンで時間を確認する。

そろそろか。




クレエス

「カズキさん時間です」


カズキ

「あぁ・・・」



わざわざ歩いて俺を呼びに来るなんて久しぶりの感じで少し笑ってしまった。

フォンやインカムがなかった時はこうしていつもクレエスさんは俺を呼び出して色々努めてくれていたっけな。


ベルデラからここまでなんだかんだで長い付き合いだ。

顔に出辛い彼女でも思っている事は少しは理解できる。




クレエス

「・・・・・・」


カズキ

「思い詰めなくてもいいですよ、遅かれ早かれ必ずこういったことは起きてましたから」


クレエス

「ですが・・・」


カズキ

「あの子達のおかげでここまで動けたんだ、それを無下にしないようにしましょう? ね?」


クレエス

「・・・はい」




それだけを伝え俺はクレエスさんの肩を叩いた。



パシッと叩かれた。



セクハラ扱いされたということかこれは・・・。




シュリー

「カズキ」




シュリーが何かを投げてきた。

俺はそれを受け取った。


渡された物は、普通よりも一回り大きいエレメタルキーだった。


形も歪でシュリーがいつも言う芸術性には欠けていた。




シュリー

「本当にどうしようもない時だけ、それを使って」


カズキ

「・・・・・・」


シュリー

「お願い」



シュリーの目が俺の目を見続けた。


すぐに察した、きっとこれはシュリーが俺の為に悩み続けた物の結晶。

形にこだわる暇もなく作り上げられた物。




カズキ

「あぁ、約束する」




シュリーとの約束。


もしかしたらシュリーは多くの事を悟っていたのかもしれない。


俺なんかよりももっと先の事を案じて・・・。




俺は目を閉じ肝に銘じた。




これを使わない事が・・・一番だと思いながら・・・。







【セカンエンデ 町外廃棄屋敷】



「侵入者だ!!!」


「敵は一人だ!! 何をやっている!!!」




俺は一人、あの男から受け取った情報の中のセカンエンデのハイトス本部へと足を運んでいた。


ここが知っている中で一番大きい場所だと情報にはあった。


今さら襲撃をしたところで恐らくもぬけの殻の可能性は高い。



それでも俺は・・・俺が志願した、誰も止めることはなかった。




カズキ

「お前ら・・・覚悟しろよ」




何かあればいい、何か見つけることができれば御の字。

それが楽神祭を止める方法に繋がればいい。


必ず儀式が始まれば戦いが起きる。


ここにいる人員を足止めさえ出来れば、その分楽神祭での戦いの楽になるはずだ。




「我の祈りに応えよ!! オーク召喚!!」


「ゴーレム召喚!!」


「出でよ! デーーーーモン!!!!」



三体の大型モンスター。


これで俺を足止めするつもりか、奴らもう捨石にされてることにも気付かないのか。




カズキ

「ファミリアンブラスター」



ボソりと術技を口にし幻銃をモンスターと同じ数を俺の頭上に出現させる。


敵はその姿に腰を抜かしているようだった。

当然か。



「な・・・なんだこの大きさ!!?」


「モンスターよりも・・・!」


「で、デカ過ぎる!!」



ミツバを前へ向けた。


同時に幻銃から一斉に巨大な弾丸でモンスターを粉々にした。

目の前から消滅する光りもなく召喚された物は消滅した。


召喚術技師はその場で腰を抜かし動けないでいた。

だが一人だけ自力で立ち上がりその場から逃げようと試みるが。



グチャァ・・・。



頭が消し飛び体が床に倒れた。


頭部の無い死体が一つ出来上がった。



「ひぃぃいい!!!?」


「ぅぁ・・・ぁぁ・・!!」




元仲間の姿を見て言葉にならない様子だった。

足は動けず、その場から手だけで移動しようともがいていた。


俺から逃げるように。



「た・・・たすk!!!」



ミツバを躊躇無く突き刺した。

前までならこんな奴らの血をミツバに付けるなんて虫唾が走った。


だが今はなんの感情も湧かなかった。



「こ、ここにはもう何もない!!! 本当だ!! だから意味なんて!!!」


カズキ

「意味・・・意味か」



目の前のハイトスの人間が本当の事を恐らく言っているのだろう。

間違い無く奴らはこの場から居なくなってるだろう。


なのにここを俺が襲う意味・・・意味なんて・・・。



「こんなの・・・!ただの虐殺・・・・・・だぁ・・」



弾丸が脳天を貫いた。


ただの虐殺。


それはつまり、むごい方法で人を殺すことを言うのだろう。



「侵入者補足!!! 教祖シェインより預かりし力を今ここに!!!」


「我らハイトス! 神の名と共に!!」



次々と部屋の屋敷内の奥から黒装束の人間が複数現れる。


武器を手に持ち、そして何やら気持の悪い呪文を唱えていた。

術技を発動するのに意味なんてないはずなのだが・・・。




「神の裁きを受けよ!!!!」



【ドレインズ オン】



カズキ

「・・・は?」



こいつ等、まさか今・・・。


気を取られた瞬間俺の足元には大きな光りの円が複数出現していた。


これは拘束術技か。



カズキ

「・・・っ」



これは・・・。


俺の真素が流れだしている。

この拘束術技で見動きが取れなくなってからという物、真素が過剰に俺達の中から地面に吸い込まれているようだ。



「さぁ! 許しを乞いなさい!! 今ならまだ神は、教えは、あなたに救いの手を!!!」



ブゥンッ!!!



ミツバを振るう。

強風と共に地面の拘束術技は消え去る。


思った通りか。



「な・・・何故・・・神の力が効かない!!? これは人間の真素を吸収する力があるはず!!!」



くだらないことで喚いていた。

何処で手に入れたか、恐らく元老院からだろうとは思うが。


それは欠陥品だ。

神の力と豪語しているようだが、それを作った神は、おふざけ半分俺をいじめる半分で作った物だ。


そして俺をいじめるには一切出力が足らないってことで元老院への嫌がらせで送り付けた物だ。


あの時の物よりも完全に出力も効果もめちゃくちゃだったが。



奴らがエレメタルキーを使うのは・・・。



カズキ

「不快だ」


「っ!!! ぜ、全員で攻撃だ!!!」



遠距離術技で攻撃をしてくる。


ゆっくりと歩きながら死に物狂いで術技を放っている。

全て俺に直撃している。


だが怯むこと無く俺は歩き続けながらミツバを構えトリガーを引いていく。



一人。


二人。


三人。



一発一発で体の大半を粉々に吹き飛ばしていく。


凄い物だ。

仲間が次々と肉片に変わっているのに、一切攻撃の手を緩めない。


見上げた忠誠心。

それとも、俺を打倒せば幹部になれるとか考えてるのか。


素晴らしい出世欲だ。



「なんで!! なんでなんで!!」



何度も何度も、泣きながら俺に術技をぶつけてきてる。


8人。


同じ様に体を肉片へと変えた。

下半身を全部破壊したからか、一瞬だけ息をするような音がしたが、それはすぐに途絶えた。



カズキ

「・・・・・・」


「ぁ・・・か、神よ・・・我に力を与えたま」




ズシャッ・・。




最後の一人の首を刎ねた。


神。


そんな物がいたら、俺はきっとこの世界に来ていないだろう。

俺がこの世界に来たのは恐らくあの日の会社帰り。


全てに絶望して生きる気力も無く、ただ息をしているだけのここに転がっている死体以下の存在。


神がいればきっと俺はこの世界なんかに来てなかった。


楽しい日々を送って、何気ない日常を笑い、友と笑い怒り悲しみ、家族と優雅に笑い合う。


そんな世界を送らせてくれてもよかっただろう。


そんな日々を送らせてくれなかったからこの世界に転移した?


ふざけるな。


だったらこんな思いもしたくはない。

最初からあの目覚めた洞窟であの蜘蛛に食われていた方がよっぽどマシだ。



なのに神様は・・・それを許さなかった。




そんな俺の人生に神がいてたまるか。


信じられるのは、目の前の事だけだ。



一緒に笑ってくれる奴ら、もうそれだけで十分だ。




そして・・・このミツバが居てくれれば。



カズキ

「その為にも・・・」




屋敷の奥へと進む。


待ち構えていたかのように黒装束の人間がウジャウジャと居た。

ゴキブリも真っ青な程に。



俺は・・・一人・・・いや、ミツバと共に・・・。




カズキ

「全員・・・生きて帰れると思うな」




誘導という名の、八当たりを続けたのだった・・・。




--------------------------------------------------------------------




【水幸源の町セカンエンデ】




クレエス

「はい、カズキさんは予定通りハイトスのアジトへとお一人で向かわれ、現在戦闘中です」


サナミ

「わかりました、引き続きサポート・・・お願いします」


クレエス

「何も・・・やることはありませんがね・・・」




クレエスさんの気持ちは痛いほどわかる。

あの時のカズキさんは本当に誰にも止めれなかった。


儀式が始まる前に敵アジトへと襲撃をかける。

何かしらの成果が出せるかもしれない。

どうせそれまでやることはないからと。


もちろん儀式が始まる前には終わらせると言った。




触れることが出来なかった。

初めて会った時のように慰めることができれば、そう思っていた。


けれど、今はまだその時じゃない。


彼はまた一人でミツバさんと一緒に戦おうとする。



そして一人で泣いてしまう。

誰にも悟られないように、私達に不安な気持ちを与えないように。


今の私には見守ることしか出来ない。



ユミィのように何かを動かせる力もない。


シュリーのように知恵と技術で支えることも出来ない。


ターゼのように和ませてあげることも。



子供達のように・・・。







オノス

「それでは本日の主役である、水幸楽神の巫女をご紹介いたしましょう!!!」



立て付けられた櫓の上から両手を広げオノスが人々に語り出した。



オノス

「我々の未来、世界の未来、祈った先の未来を神へと捧げる巫女・・・それがこの二人です!!!」



オノスの紹介と共に拍手喝采が起きる。


櫓へと二人の女性が上がっていく。


一人は・・・ターゼの妹のムーゼ。



ムーゼ

「ふふふ・・・」



そしてもう一人・・・それが。



メレニア

「・・・・・・」




人々に手を振るうムーゼとは対照的に一切動きを見せない。

人形のように両手をお腹の前で揃えたまま微動だにしない。




ユミィーリア

「あれが・・・シスターメレニア」


サナミ

「あの四人を育ててきた・・・シスター」




子供達の顔が浮かぶ。


カズキさんは少なくてもハイトスに捕まっていないから心配はいらないと言った。

それでも私達は心配でしょうがない。


もしかしたら今みんなは苦しんでるのかもしれない。


今からでも全てを投げ出してあの子達を助けに行きたい。



だけどターゼが言った言葉が全てだ。



あの子達を信じる。

あの子達が信じてる私達を潰してはいけない。


きっと生きている、そして・・・シスターメレニアを助けようと必ず動くはずだ。



今は姿を見せない。

部隊員からの報告もない。



だから今は・・・目の前の事に集中しなくてはいけない。




ユミィーリア

「妙ね・・・チヨーとヒルメという子達が居ない」




ユミィの言う通りだった。

辺りを見渡してもそれらしい二人はいない。


護衛に付いていると思ったが姿がない。


カズキさんと何度も戦ったという二人組。

そして子供達の友達・・・の二人。



あの二人も私達は助けなくてはならない。



シスターメレニア。


チヨー。


ヒルメ。



ハイトスの陰謀の阻止。



それが私達が決めた作戦目標。


どれか一つでも欠けてはいけない。



全てを為さねば、意味はないんだから。




サナミ

「ん・・・雨?」



空を見上げた。


そこには黒い煙が空を覆いだしていた。


町の人達も気付き、催し物から目線を空へと上げた。



水の国での雨、これはどういった意味なのか。


これから大きな事が起きる暗示なのか。



それとも・・・もう事は・・・起きているのか・・・。




オノス

「皆さん! どうやら神は我々に恵みを与え下さっているようです!! 今この瞬間を神は見ておられる! この雨はその証拠となり得るでしょう!!!」



オノスの言葉にみなその場で伏せ始めた。

膝を付き祈りを始めた。


上を見て・・・まるでオノスに対して祈りを捧げているように。



神が見えているかのように。



オノス

「さぁ! みなさん祈りを捧げましょう、水に感謝を、この雨に感謝を、自然に、生きるモノ全てに、世界に・・・感謝を・・・」



あまりにもわざとらしい演技に目を伏せてしまった。

カズキさんの癖が移ってしまったのではということにしておこう。


見ていて気持ちの悪い物だった。


ハイトスが続けた数々の悪行。


そして今もまた大きな事を企てている。



何も知らない人達を・・・。




オノス

「おぉ・・・祈りが・・・素晴らしい・・・」



雨が強くなり始めていた。


だが人々は祈りを止めなかった、止める所か更に強く。

雨が降れば降る程に祈りを捧げようとその場に押し留まっていた。




そして・・・私達は焦りを覚えた。




まさか、このまま。




オノスが他の役員に声をかけていた。

それはきっと・・・紛れもなく・・・。




オノス

「皆様のお気持ちに感銘を受けました、予定を早め・・・これより巫女による・・・祈りを始めたいと思います!!!!」




サナミ

「・・・っ」





ついに・・・始まってしまう。




私達の抗いが。




----------------------------------------------------------------------




【セカンエンデ 町外廃棄屋敷】




カズキ

「・・・っ!?」



フォンの音声が切れた。

まさか何かあったのか。


通信妨害?

いや違う・・・これは真素の流れが激変してしまってるんだ。


ここまで流れが乱れてしまうと流石のフォンでも連絡が出来なくなる。



その要因。



まさか・・・祈りがもう!




ヌーター

「おやぁ?? もうお帰りですかスリーエッジ??」




パァアアアアアアアアンッ!!!!




声が聞こえた瞬間背後へ向け弾丸をぶち込んだ。


弾丸は声の主に当たり何かを飛び散らせた。

まるでスライムのような物だった。



カズキ

「貴様・・・ヌーターか」


ヌーター

「二日ぶりですねスリーエッジ、あぁーあの時はあなたは倒れていましたね?」




グチャァア!!!!




床に飛び散るヌーターの顔を粉々にする。

だが、声は留まることはなかった。


こいつ、俺の足止めの為に?


だとしたら急がなくては。



ヌーター

「よいのですか?? ここには祈りに関する・・・いや、光輪計画の一部の情報がまだありますよ?」


カズキ

「何、それをわざわざ伝える為にここにいたのか?」


ヌーター

「えぇー、あなたは薄々気が付いているんではないですか?? 教祖シェイン・・・いえ、大司祭様の思惑に」



大司祭・・・ハイトスのトップか。

素情も幹部の一部にしかわからないとされてる人物。


そいつらの思惑。


普通なら考えただけで虫唾が走る。



だが・・・。



カズキ

「何が目的だ、その大司祭は、何を知っている・・・コイツを・・ミツバの事を」



俺が思い当たることは全てそれだ。


ミツバ。


正確にはあのベルデラでの騒動が始まりだ。

それからという物、俺の周りには気掛かりな事ばかりが頻発して起きている。



ベルデラ。


兵器獣。


正唱和。


パラサイトジェム。


ギフト横奪。


ブレレント博物館。



そして今回の水幸楽神。



それ以外にも多くある。



だが全て、まるで狙ったかのように俺の回り、ミツバの回りを嗅ぎ付けてるような錯覚を味わっていた。


それがもしハイトスのトップが仕組んでいた意図的に仕組んでいたとなれば・・・。



ヌーター

「私も詳しくは教えて貰えませんよ、ただ・・・カズキ・スリーエッジ。大司祭様はあなたを大層お気に召しているようでしたのでね」


カズキ

「気持の悪い・・・お前達に気に入られても迷惑以外の何ものでもないがな」



やはりミツバの力が注目されていたというわけか。


当然と言えば当然だ。


俺でさえこいつの事を全てわかっていない。

ただ・・・ずっと俺の味方であってくれる存在。


どんな時でも俺を助けてくる掛け替えのない存在だ。




ヌーター

「それにしても解せませんね、あなたのそれがそんなにも大事には思えないのですがね? ただのギフトのようにしか見えないのですがね」




ギフトか。

ミツバがギフトであるなんてもちろん考えたし話題にも上がった。


答えはNOだ。


コイツの力はギフト以上の物なのは間違いない。


出自も不明。

詳細な能力も不明。


何もかもがわかってない存在だ。




ヌーター

「ギフト以上だと仮定すると・・・・・・じゃああなたは何者なんですか?」


カズキ

「あぁん? お前と世間話をする為に立ち止ってるわけじゃねーぞ、さっさと情報の在りかを教えろ」





俺が何者か・・・か。


確かに的を得てるとは言える。


この世界、リアタズマの人間じゃない。


ただのしがいない転移者だ。


ただの死に損ないだ。




ヌーター

「この世界の人間じゃない? とか?」


カズキ

「だとしたらどうなんだ、それとも・・・そんな人間がいるのか?」










ヌーター

「はい」






ヌーターの発言に俺は一瞬驚きを隠せなかった。


まさか・・・。



考えたこともなかった。



リアタズマに俺以外の人間が転移してきていることを。



まさか・・・本当に・・・いるのか?



転移者が。




ヌーター

「これもまぁ仮説ではあるんですがね?? 素晴らしいですねーーかかかっもし他の世界が存在しかかかか、その世界かかかからの転移者が何人にもいてかっ・・・この世界に居座ってたりしたかかかっ???」




こいつ・・・。


一体何を見たんだ。

いや知ってるんだ。


転移者。


まさかここにきてそんなワードでここまで心が乱れるとは思いもしなかった。

隠していたわけではない、ただ口にしたくないだけだった。



もしかしたら何かまずいことになりかねないから。



実際に今目の前にそう言った輩が言動をおかしくしている。


別世界が存在する。

その世界の日本という国から転移者が一人いる。


それが俺だと。



その転移方法が、死であること。



こんな事を知っても意味はないと無意識の内に俺は考えていたんだ。




ヌーター

「かかかかかかかかかっかっかっかっかっかっか・・・」


カズキ

「何を笑っている」


ヌーター

「かかっか、いえかかかっか・・・いえいえかかっか」



完全に俺が転移者であるとこいつは思ったのだろう。


こいつの言う仮説。

恐らくは転移者の存在を何処かしらで捉えたのだろう。


そしてこの質問。


俺は自分の顔で出やすいということをこれほどまでに呪いたいと思ったのは初めてだ。


本当に最悪だ。

一番知ってはいけない奴がそれを知ってしまったのだから。




ヌーター

「かかかっ・・・ご安心ください、あなたが今欲している情報はこちらに」




無造作に置かれている機械が起動した。

そこには映像結晶で投影された物が浮かび上がっていた。


これに光輪計画の情報が・・・。



ヌーター

「最も・・・今あなたが一番に知りたい情報はないとは思いますがね」


カズキ

「ちっ」



舌打ちをして俺はジェル状のヌーターを完全に粉砕させた。


それも細かく飛び散っただけだ。

だが恐らくもう奴の意識はここから消えていたのはわかった。



俺を惑わす為だけに・・・。



いや、違う。


確実にいるんだ。


ヌーターは恐らく半信半疑、ただの好奇心での詮索。

それが見事に的中しただけの話ではある。

俺に。



カズキ

「くそっ・・・!!」



今はそんな事を考えてる場合じゃない。


とにかく奴が言う物、光輪計画の情報が何かを確認する。


これを俺に見せることで一体ハイトスにどんなメリットがあるのか想像も付かない。


仮に何をしてきたとしても俺は今までそれを打ち破ってきた。

被害が出ることも人を大勢死なせたこともあった。


それでもギリギリの所で奴らの陰謀を食い止めてきたはずだ。


だから今回も・・・同じように・・・。




情報を精査していく。

内容は確かに眼鏡からもらった物とほぼ同じ物。


今行われようとしている物の詳細なデータだ。






【セカンエンデの超巨大ギフト再臨の儀】


水幸楽神の巫女 シスターメレニア。


追記 ムーゼ・ビズス。






ここまでは通常の人間でも閲覧できる物。


セカンエンデに古くからあったギフト。

巨大さ故に誰もが気付くことはなかった。

ハイトスがそれを見つけ町を掌握。

ギフト生成に努める。

一番最初の再臨の儀 水幸楽神の巫女ターゼ・ビズス。

彼女の呼びかけ祈りによりギフトの呼び出しに成功。

が、二度目の祈りには応じること無く巫女が負傷。

その場に居た巫女の妹を代理として転用するも結果は思わしくない。


次なる手として巫女の作成を検討・・・・・・。



長年の記録が事細かく記載されていた。

巫女の作成。


それが多くの者を殺戮することで生じる自身の真素の底上げが再臨の鍵となるとも記されていた。

実験は順調に進んでいると記載されていた。



そこでページは終わっていた。


だが次のページが存在する上の者のみが見ることできるもの。


俺はすぐにその詳細を開いた。



同じような記録データだ。



【ギフト再臨後 形物生成 使用生材】



実験を進めていく上での発見有り。

ギフトの物理的形物生成に難有り。

現段階で生成できる物質が存在しないと断定。

生成生成の可能性があるモノ『人間』。

人知を超えた大量の真素の貯蔵が必要。

推測数二名。

適正者二名を発見。





名称不明 後日記載 チヨー



名称不明 後日記載 ヒルメ




なんだこれ。

あいつ等が本当に計画の一部。


いや一部どころじゃない根幹を担っていると言っても過言じゃない。

ギフト生成時に必要とされる物。


それはただ真素だけではない?


あまりに規格外だからこその条件か。

それに二人が選ばれた。


名称不明・・・。


この言葉に表情が揺らぐ。

黒髪・・・チヨーの言葉が頭に浮かび上がる。



『あなたを・・・殺す!! それがぁあ!!!』



聞かない振りをしていた。

救いたいなんて思うわけにはいかなかったから。


敵だから、全てを救うなんて事は、俺には出来ないから。


行き場のない人生。

振り回せれ抗うことすらも出来ずに生きていった。


記載を見ても吐き気と怒りが込み上げてくる。


重度の拷問による互いの共存意識の拡張。

共同体としての意識の植え付け。


外敵全てを近寄らせない思考。


そして全てを憎み恨み、自分達のみの世界の作成に・・・成功。



計画の為に・・・ここまで。




何処までやれば気が済むんだ。


どうにかなってしまいそうだ。


想像も出来ない事をあの小さい体で受け止めていたんだ。

最後には隣にいる子だけが救いだと。


隣にいる人間こそが全てであり、他は全ていらない。


それだけが救い・・・助けなんていらないと。



カズキ

「・・・っ」



こんな物を奴らは俺に見えて何になるっていうんだ。


こんな物を・・・!!




ミツバを持つ力が強くなった。


怒りに任せこの装置を破壊しよう。



そう思った時だった。




まだ次のページがある事に気が付いた。




爆発しそうな怒りを抑え、俺はゆっくりとそのページを開いた。






カズキ

「・・・っ!!!」





俺の怒りは全て吹き飛んだ。


すぐにその場から賭け出した。


廃棄屋敷から飛び出し急いで町へと戻った。



木を蹴り上げて飛ぶ。




カズキ

「・・・くっ!!?!」




踏んだ枝が雨の影響で滑り地面へ向けて転倒した。


何をしているんだ。


こんな所で・・・!!!



早く・・・戻らないと・・・!!!

























最後のページ。




【ギフト再臨後 形物生成 使用生材 『追記』】




適正者二名の挙動に不具合がある場合を想定。

適正者を複数発見。

既存能力で適合可能性大。

追加適正者四名。

追加適正者四名から五名へ変更。


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