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好き を 求めた 異世界 物語   作者: 三ツ三
ニ章   adventure children
64/70

第二九話 冷静狂乱 イーター


状況はターゼの言葉によって急展開を迎えた。


ハイトスがやろうとして事はギフトの生み出し、それもカズキ達が想像を超える者。


水幸楽神の巫女達はそのギフトを生み出す為の生贄の可能性が出てきた。


そんな中でカズキ、シュリー、ルシュカはサンリーの部隊を救援に向かったのだがそれは敵の誘導、カズキの前にはチヨーとヒルメが向かってきた。


カズキを殺す、その一点のみを果たそうと殺気立つチヨー。



そして今チヨーが自らの力を・・・発揮していた。





【水幸源の町セカンエンデ 幻術技地下空洞】




チヨー

「うあぁああっ!!!!」




黒髪から出る靄が俺達を襲う。


あの黒い靄を自由に扱って攻撃してくるわけか。



ルシュカ

「はぁあ!!」



ルシュカが回り込み本体を狙うも攻撃が弾かれ金属音がぶつかる音だけが響いていた。


つまりあれは完全に別物、靄は攻撃も弾くということか。




シュリー

「カズキっ!!」


カズキ

「あぁ! グラビトン!」


シュリー

「フリューゲル!!」




俺とシュリー背中合わせに合体術技を撃ち込む。

俺達の10倍近くの巨大な重力弾、照射した光りで強引に重力弾を押しこむ。


放たれた俺達の術技は地面を抉りながら黒髪へと襲う。




チヨー

「なめるなぁああああ!!! あぁあああああああ!!!」





両手を前に構え黒い靄で何層も防壁を作っていた。


防壁を破壊していくが徐々に術技が小さくなっていく。


それでも攻撃は届く。



最後の防壁を貫通した瞬間に小規模ブラックホールが発生し爆発した。

同時に黒髪が姿を消した。






カズキ

「・・・まだか」


シュリー

「最悪・・・合体術技ぱなすんじゃなかった」




黒髪はその場に再び姿を現した


爆発の煙の中ユラユラとした足取りでそこに立っていた。




チヨー

「痛くない・・・そんなのぉおおおお!!!!」


カズキ

「・・・っ!? なんだ!?」




空気中の真素が集約されていく。


まさかこいつ、俺達の術技を再現するつもりか!?



カズキ

「くそっそれも食ったのか!!」


ルシュカ

「左右同時に行くぞ!!」



俺は左から、ルシュカは右から一気に距離を詰める。

あの術技を撃たせるわけにはいかない。




ルシュカ

「奥義・・・永爆術技!!」


カズキ

「バンカードセイバー!!!」



ルシュカの爆破術技、そして俺の突貫術技が同時に襲う。


防御に回ってくれたおかげで俺達の真似事術技は中断され、さっきと同じように黒い靄を突き抜けて本体へと届くが。


勢いを全て殺され届く時には攻撃力をほぼ食われていた。



チヨー

「こんのぉおぉぉおお!!!」



ミツバと太刀を両手で握り振り回す。

そして俺達を壁へ地面へと激突させた。


何度も何度も叩きつけていく。



カズキ

「・・・っ!」


チヨー

「さっさとぉ・・・!!! いなくなれぇええええええ!!!!」



黒髪は掴んでいた物を離した。


とてつもない速度で俺達は壁へと放り投げられ激突する。



ルシュカ

「ぐあぁあ!!!!」


カズキ

「くぅう・・・!!!」



ミツバを再び構え同じように俺は飛び込む。


再度攻撃を掻い潜り重い一撃をぶつける。



カズキ

「まだ・・・消えるわけにはいかないんだよ・・・!」


チヨー

「なら・・・私がぁぁああああ!!! 消してやるうううううう!!!」



集中しろ。

目を見開け、瞬きをするな・・・!



カズキ

「ぅおぉおぉ!!!」



まるで複数の腕のように一気に俺へと襲いかかる。


全て攻撃一発一発が重い術技級。

それを全て防ぎ切りながらこちらも攻撃を当てに行く。


だが敵も全てまるで自動で防いでるかのように全て処理される。



チヨー

「勝てる・・・これでお前を!!!」


カズキ

「生意気・・・言うなぁ!!」



黒い靄がドリルのような螺旋状の槍へと変化した。


これで俺を貫くつもりか。


避けることは出来ない・・・なら!




カズキ

「アブソーブセイバーライド・・・!」


チヨー

「これで死んでぇえええええええ!!!」


カズキ

「ディメンショナル・・・!! セイバァァアアアー!!!」




俺のありったけを術技へと込める。


お互いの攻撃がぶつかる。


強烈な音と共に黒髪の攻撃を受け止める。


俺の全身が悲鳴を上げているのがよくわかる、奴の攻撃がどれだけ強いかが物語ってる。

そこまでして俺を殺したい理由。


黒髪の顔が目に映る。



チヨー

「ぐうぅううぅ!!!」



必死にもがいて苦しむ顔。

俺を殺すために自分を苦しめている。


どんなことをしても俺を殺したいという想いが込められてる顔だ。


どれだけやれば殺せるのか・・・涙を流しながら。







カズキ

「・・・っ」





ドォオォォオォォオォオオオオオォオォンッ!!!!!





俺は奴の攻撃に押され吹き飛ばされた。


受け身を取る暇さえ無く地面へ叩きつけられた。

身体を起こそうにも少し頑張ってくれと思うしかない。



チヨー

「ふふふ・・・くくくくくく・・・あはははははっははは!!! やった・・・! ついにお前を!!!! ・・・っ!!!?」


カズキ

「・・・ま・・だ、終わって・・・ねぇぞ・・・!!」



全身から血が溢れてる。


最初とは違う意味で視界が安定しない。


だがこれでいい、これで奴を止められるなら・・・!



カズキ

「シュリー、ルシュカ・・・あとは任せろ」



負傷しているルシュカ、それを救助するシュリー。



シュリー

「そんな身体で良く言うわね」


ルシュカ

「とはいえ、不覚を取った私は何も言えんようだ」



なんて涙ぐましいんだ。

俺を信用していくれている証拠か、こうゆう時は素直に聞いてくれるこいつ等に感謝しかない。


再び俺は、黒髪へと視線を向ける。


俺達の行動に嫌悪感を抱いてる黒髪に。



チヨー

「なん・・・なんなの、私を何処まで馬鹿にすれば気が済むの!!」


カズキ

「知るかそんなお前の都合、だがこれだけは言える」



ミツバを強く握り、構える。

全ての意識を奴へ。


これで終わらせる為に。



カズキ

「本気で来いよ、手加減はしないぞ・・・!」


チヨー

「ムカつく・・・なんでお前はそんなに!!! 私をムカつかせるのおぉおおおお!!!!」



また同じ攻撃がくる。


だが今回は2本に増えている。

勢いもさっきの倍に増している。


だからと言って俺のやることは変わらない。



カズキ

「リリース、ディスチャージ・・・エグゼキューションブラスター・・・」



トリガーを引く。


ミツバから巨大な照射術技が黒髪の攻撃を全て打ち消し破壊する。

光りと強烈な照射音が輝き響く。


二つの螺旋攻撃に俺の攻撃がぶつかる。



ドゴォオンッ!!!ドゴォオンッ!!!ドゴォオンッ!!!ドゴォオンッ・・・。


攻撃がぶつかった瞬間に破裂音が響いた。


その音共に、敵の攻撃は縮小していった。



チヨー

「・・・何・・・が」




驚くのも当然だろう。


お前が食らったの攻撃の一部が爆発しただけだからな。


そうルシュカの術技だ。

その場で爆発せずに奴の内部に残ったままの状態。



俺はそれを起爆させただけなんだから。


そして何も無かったかのように・・・全てを消し去った。




チヨー

「・・・そん・・な」


カズキ

「残念だったな・・・消化不良、そして俺のミツバも・・食えるんだよ、お前の力をな」




一回目の攻撃を迎撃した時に仕込んでおいた。



アブソーブセイバー。



主に敵の遠距離術技を自分の力へと変換して取り込む術技。

シュリーは確かに他の真素を取り込むのは危険だと言っていたが、俺のミツバは特別だ。


理由なんて知らない、ただこいつがそれだけすげぇってだけだ、何の問題もない。


そしてその溜め込んだ力は・・・まだある。




チヨー

「くぅう!! はぁああああああああ!!!!」




奴の周囲が再び真素を集約しようとしていた。


証拠にも無く俺とシュリーの合体術技か。



俺のさっきの攻撃は食えなかったか、それよりもそっちの方が強かったってことか。



チヨー

「今度こそ・・・!!! 終わりだぁああああああああ!!!!」



大型の重力弾が現れた。


だがやはり吸収したのは俺達が放った物よりも二回り小さい物。

当然か、あいつが食らったのは緩和に緩和を重ねた重力弾。


再現できるのは食らった物のみ。



黒い靄が弾を持ち俺へと投げ込んできた。



攻撃を俺は避けることはしなかった。

防御術技を発動することも無く、直撃だ。



チヨー

「・・・っ!? 避けない・・・?」



効果は同じようだ。


だが小さいブラックホールを奴は制御しきれていない、ただその場の空間を歪ませ爆発しただけだ。

真素をその場で散ばしただけ・・・だが。



カズキ

「・・・ぅ・・・はぁ・・・」



思った以上にきついな。

真似事が俺達の術技を再現できるとは思わなかったが、それでもここまで威力があるのは正直きついな。


あと2発は耐えられるか。


だがそれは、あいつ次第だ。



カズキ

「よーーし、次は俺の・・・番だ」


チヨー

「何・・・それ・・・!」



ミツバを再び構える。


そして黒髪相手に振るう。



カズキ

「ラストリリース、ディスチャージ・・・スレイヴスラッシュ!!!」



今日一の大きさの斬撃波を繰り出す。


地面を抉りながら黒髪へと襲いかかる。

奴も避けることは出来る・・・が。



チヨー

「・・・っ!!」



奴は避けない、俺の攻撃を避けてしまったら・・・今気絶している奴にも直撃するんだからな。


悪いが、手加減はしないと言った。


そこ言葉に偽りはないぞ。








チヨー

「やってやる・・・受けて立つ!!!!!」



あの巨大な斬撃波を全て受け止める。

ジリジリと黒い靄は弾け消えていく。


全力で守りに入る。

衝撃が部屋全体を覆い軽い地震のような挙動を出していた。



チヨー

(これを・・・これを・・止めれば・・・!! 次は私の番・・・あいつもこれが最後のはずだから!!)


私は歯を食いしばった。

意識を襲いかかる斬撃波に集中しながら小太刀を両手に持つ。


タイミングは一瞬。


早すぎては、緩和しきれない、私が食らった力と重なって逆に食われてしまう。

遅過ぎては、攻撃が直撃してしまう。


見定める・・・タイミングを。



チヨー

「・・・っ!!!」



ここしかなかった。


全ての力が抜けきった瞬間。

あの大型モンスターや空気中の真素を使い果たしたこの瞬間。



チヨー

「うああぁあああああああああ!!!!!」



叫びと共に小太刀を振り被った。


あいつの放った時の斬撃波に比べたら小さいかも知れない、だけど私の持てる最大をぶつける。


今のあいつの攻撃は全て緩和し食った。

あいつがやったように私も緩和すると同時に溜め込んでいたんだ。


同じ力なら、負けない、ここを凌げば必ず勝てる!!





私の斬撃波とあいつの斬撃波がぶつかる。




凄まじい衝撃と風圧が辺りを震わせる。





私は・・・。




勝っ・・・た・・・?




チヨー

「やった・・・防ぎ・・・きっ・・・。・・っ!!!?」


カズキ

「残念だったな・・・これで終わりだ」





バギィィイィィィイイイイ!!!!




咄嗟に二本の小太刀で防御姿勢を取った。


まるであいつはそれを見てから振るったかのように小太刀を二本共破壊した・・・。



もう・・・これじゃあ・・・。



意識が・・・もう・・・。




チヨー

「・・・また・・負けた・・・の」




私はそのまま・・・仰向けになって倒れてしまったのだった・・・。










黒髪の子はその場で倒れた。


多分戦意喪失したのだろうか。


カズキが自分の番だとハッタリを言って意識を全部防御へと向けさせて、自分があるなんて勝手に勘違いした。


それがあの子の敗因だ。


カズキは最初から順番に攻撃をし合うつもりなんて毛頭なかった。



シュリー

「で、この様じゃあ世話ないわね」


カズキ

「・・・zZZZZ」



寝てるし気持ちよく、ボロボロになって馬鹿みたい。


カズキを術技で浮かせる。


そして黒髪の少女へとライフルの銃口を向ける。



ごめんなさい、私にはこれしか・・・。



シュリー

「・・・っ!?」


ヒルメ

「やめ・・・て」



さっきまで意識を飛ばしていた金髪の子が動いた。


少しずつ黒髪の子に近付き覆いかぶさるようにして庇う。


私の目的はあなた二人だと言うのに。



シュリー

「大丈夫よ、二人まとめて逝かせてあげる」


ヒルメ

「・・・・・・」



目をゆっくりと閉じてもう観念したのか。

それとも一緒に死ねるならいいとでも思ったのか。


私は・・・一度息を吸い、引き金に手を掛けた・・・。



だが、その瞬間、何かの気配を感じた。

すぐに撃つのをやめて私は距離を取った。


そして私達が居た場所が爆発した。



何かの術技・・・。


その正体が声を上げた。



ヌーター

「困りますよ、シュベンザー博士。いや今は教授と言った方がいいですかね???」


シュリー

「ヌーター・ハーテライシュ・・・やっぱりあんただったのね、こんな趣味の悪い発明をしたのは」



上空に浮いた男を睨みつける。

やはりこいつが、この少女二人に何かしたのか。



ヌーター

「久しぶりの再会、盛大に祝いたいところですがね・・・」


シュリー

「こっちはあんたの顔なんて二度と見たくないと思ってたわよ」



浮遊したヌーターが少女達の前へと立つ。

そして振り返る。



ヒルメ

「・・・ぐぅ!!!」



金髪の子を蹴り退け、今も気絶をしている黒髪の少女の頭に足を掛けた。



ヌーター

「だから嫌だったんだ、こんなガキがぁあ私の発明を使うのわぁああ!!!」


ヒルメ

「やめ・・・て・・・!!!」


ヌーター

「私に触れるな!!!」




無残に蹴られた吹き飛ばされていた。


力が出ないのだろう、それでも踏みつけられるのを黙って見ることは出来ないとばかりにしがみ付く。



ヌーター

「はぁーあ、計画に必要なければ今すぐ廃棄処分したいのですがねぇ」


シュリー

「やっぱり、その二人を使って・・・従わせるつもりなのかしら?」


ヌーター

「従わせる・・・? あぁーなるほど、そう思ってらっしゃるんですね教授博士は・・・ふふふふ」




とてつもなくムカつく笑み。


昔からこいつとは本当に話を交わすだけで反吐が出る。

倫理感が合わないとか問題じゃない。


まさに生理的に無理。



ヌーター

「このガキ共はいわば"器"ですよ、まぁそれが出来るかどうか私の管轄外ですがね」


シュリー

「器ねー・・・つまりは、その子達にあれを食わせて利用しようってわけね」


ヌーター

「思わせぶりな言葉はやめた方がいいですよ?? かかかかっ、馬鹿みたいに見え、くくくくますよ??」




かまかけても無駄か。


前みたいに勝手に激情して言いふらしてくれる思ったが簡単にはいかないか。



ヌーター

「でも教えれることは教えてあげますよ、もう私の出番は終わり。後は見守るだけですんで・・んふふふふふふふ」



一々鼻に付く。


本当なら一発デカイのかましてやりたいが、今ぐっすりと寝てる馬鹿もいるし私の真素もほぼ空っぽの状態。


コイツじゃなきゃ最高のタイミングだと褒めてやりたいわ。



ヌーター

「では私はこれで・・・あーそうだ、あなた達では当日までたどり着けないでしょうけど頑張ってください・・それともそこの妖爆姫君と共に、今やり合いますか?」


ルシュカ

「く・・・」



こいつが何を用意しているか不明でなおかつ私は真素が枯渇、ルシュカは負傷。

肝心な馬鹿は居眠り中。



正直勝機はほぼ無い。



悔しいけど、こいつの台本にまんまとハマった。




ヌーター

「では・・・よい祭りを・・・楽し・・んでくっかかあかっかかかかっかかかか!!! ああぁああああはははははははっははははははは!!!」




最後の最後に、奴の笑い声と共に辺りの幻術技が解けだした。


私とカズキ、ルシュカ三人は、最初に入った扉の前に戻ってきたのだった。







【水幸源の町セカンエンデ 町外設営地】




町外設営地では人知れずに騒々しさがあった。


私とルシュカ、そしてカズキが戻って更に騒ぎは大きくなった。



「負傷員は特設テントに! 状況報告は中組に!」


「部隊長、特設テントにもモンスターが襲撃ありと報告が!」


「こんな時に・・・そちらは私が指揮を取る動ける者は共に来い!」



小規模であるが、まさかここが襲撃に合うとは。

予想はしていたが、ここまで早くに来るとは思わなかった。


来るなら楽神祭当日、もしくは前日に襲撃が来ると予想を付けていたが。



シュリー

「凄く、慌ただしいわね」


ユミィーリア

「シュリー! っ!!? カズキ・・・様まで」



引っ張って連れてきたカズキをベッドに寝かせすぐに傷の治療に入る。

止血はしてるし命に別状はないはずだ。


それとは別にこいつ・・・ずっと動きが悪かった。


まさかとは思うけど・・・。



シュリー

「っ・・・」



私はカズキの左腕に付けていたリングを見た。

そこにはひび割れが起きていた。


まさか、これが原因?


いやこれは恐らくカズキの力を抑えきれてない可能性がある。

何かしらの状況、いや状態か、それがここにきて起き始めてる。


反応を示した可能性が高い。



駄目だ、まともな思考で頭が働かない、疑問ばかり浮かぶ。




サナミ

「今は休んでシュリー、迎撃は私が何とかするから」


シュリー

「・・・・・・悪いわね、そうさせてもらうわ。援護ならルシュカの所に行ってあげて、あの子も相当キツイはずなのに飛び出していっちゃったから」


サナミ

「わかった・・・」




サナミがテントを出ていった。


あぁーあ、凄い剣幕。


私達の事を耳にして本当は居ても立ってもいられなかったんでしょうね。


私も同じ立場だったらそうもなるか・・・。



ユミィーリア

「こちら、どうぞ」


シュリー

「ありがとう・・・んっ」



ユミィから水を貰う。


カズキを改めて見る、ユミィがポーションを付けた布で丁寧に傷を癒していく、服を脱がせ深い傷を見る。


血が全身にこびり付いていた、つい目を逸らしてしまうほどだ。

それでもユミィは大量の布で丁寧に拭いて行くが治療にはやはり時間がかかるか。


専門の医師達は他のテントで負傷者達を全員見ている。

医療部隊として動いているからここでカズキ一人の為だけに動かすわけにも・・。



ターゼ

「退いて、僕がやる」


シュリー

「ターゼ・・・!?」



テントに入ってきたのはターゼだった。


そしてその後ろにはレイドラが申し訳なさそうな顔で一緒に入ってきた。



ターゼ

「・・・お願い、僕にやらせて」


ユミィーリア

「うん・・・わかった、お願い」



ユミィがその場を退きターゼに場所を変わる。


私はその動きに驚いていた、ユミィよりも速い速度で体を拭きあげていき傷口には触れず丁寧に消毒していく。




ターゼ

「解毒草とこの町の水あるは!?」


シュリー

「え・・・あるけど」


ターゼ

「早く頂戴! 毒が進行しない内に」




毒?


そんなの物カズキの身体からは・・・。

けど今はターゼに従ってすぐに言われた物を取り出し渡す。


それを受け取ったターゼは解毒草を千切り水へ付け傷口に当てその上から水を垂らし続けていた。



カズキ

「・・・っ・・ぅ」


ターゼ

「駄目・・・これだけじゃ足りない! もっと持ってきて! あとアルコールと固定する包帯、それにB級ポーション、水は大量にお願い」


シュリー

「・・・・・・わかった、必要な物が出来たらすぐにフォンで言って」


ユミィーリア

「アルコールと包帯は私が揃えます」


レイドラ

「お水は我に任せて」




すぐさまみな、行動を開始した。


まさか・・・そんなに酷い物だったのか、どうせカズキの事だから大丈夫なんて思ってしまった。


またしても考えが甘かった。



あんな訳の分からない黒い靄を何度も食らって無事なはずがない。

むしろ毒何かのレベルに抑えられてる方が奇跡に近い。



シュリー

「もうっ・・・私の馬鹿!」



あの黒髪と金髪、そしてヌーターの言葉。


何処まで私は腑抜けていたんだ。



馬鹿だ・・・私は・・・。








ターゼ

「毒素が全然抜けない、なんで・・・!」



治療法に間違いはない。


これは毒に間違いない、完全に自然回復の妨げになってるのは間違いない。

回復しても本来の速度を出し切れてない。


治療法に間違いが無くて・・・この人にはそれが間違いなのか?



もっと効率の良い方法がある・・・?



ターゼ

「・・・・・・っ」



僕はテント内を見る。

だけど全くそれらしい物は見当たらない。


この人が持ってそうな物なんて特別な物なんて三枚刃の剣だけ。



ターゼ

「お願い・・・消えて、この毒素さえ取り除ければ」



傷は他にもある。


全て同じ様に処置をするも効果があまりにも薄い。


このまま置いておいても確かに彼は回復するだろう、だがそれは3日後4日後くらいの話だろう。

それじゃあきっともう手遅れになる。


ここで僕がなんとかしないと。




レイドラ

「お水いっぱい持ってきたよ!」


ユミィーリア

「言われた物、分けてもらえました! これで足りますか」


シュリー

「必要な物があるなら言って、私達をこき使ってくれていいから」



首を縦に振るった。


僕がお願いした物をすぐに持ってきてくれて手渡してくれた。


包帯でを使って解毒草を固定してする、その為にもアルコールで慎重に傷口を消毒する。


多くある傷口を一つ一つ丁寧に・・・。




カズキ

「ぐぅ・・・!!」


ターゼ

「ごめんよ、すぐに終わらせるから!!」




意識があるのかわからないけどさっきから痛みを堪える声が聞こえる。


気絶しているのか寝ているのかわからない、でも暴れないでくれるだけありがたい。

普通なら暴れ出してもおかしくない傷なのに、この人はどれだけ・・・。



ターゼ

「はぁ・・・ふぅ・・・」



落ち着きながら一つ一つを丁寧にこなす。


解毒草を細かく潰しアルコールとセカンエンデ産の水、そして真素で形作る。


手元には傷口に塗るようの物が出来上がる。

上手くできた。これで少しは・・・。




彼の身体に触れ傷口に慎重に塗っていく。


一寸のズレがないように・・・。



カズキ

「ぅ・・・ぐぅ・・・!!」



ガタンッ!!



ターゼ

「・・・っ! お願い少しだけ動かないで・・・」



解毒薬がズレてしまった所に再び塗るう、今度は上手くいった・・・。



ターゼ

「ふぅ・・・これなら・・・、・・あれ?」



なんで、さっき塗った場所が・・・消えている?

傷口の上に上手く塗ったはずなのに、作った解毒薬が消えていく。


そんな・・・なんで!




ユミィーリア

「どうかしたんですか?」


ターゼ

「毒が・・・解毒薬を食ってる」


シュリー

「・・・っ」


レイドラ

「え!? それじゃあ・・・」




私の見立てが甘かった? いや毒で間違いない、けどこれは特異変種とでもいうの?

こっちが送る薬全てが食われ続けてる。


その場にある物を上手く調合し同じ様に塗り薬へと変化させる。


けれど薬が全て毒に食われていく。



ターゼ

「・・・っ!?」



まさか・・・この毒、成長してる。


嘘でしょ・・・まさか、余計な事をしたの?



薬を食って毒の進行が上がってる・・・!


本当に微小だが、さっきまで自然回復の方が勝っていたのに。


僕が・・・余計な事をしたばっかりに・・・。



ターゼ

「あぁ・・・ごめん・・僕・・・」



こんな毒見たことも聞いたこともない。


どうして?


まるで毒が食事をして大きくなっているように、次々と私が与えた水と薬を食べていった。






シュリー

「・・・そうゆうこと、これが目的」


ユミィーリア

「報告にあったヌーターの?」


シュリー

「カズキか、それに連なる人間の動きを封じる為よ、大型モンスターで誘導して計画の一部と言ったあの少女二人をぶつける、そしてあの黒い靄・・・なんでも食らう靄を体内に忍ばせる・・・それが」


ターゼ

「体内に・・・、じゃあこのままじゃ」



彼は一生このまま・・・まさか何をしたところで、目覚めないとでも言うの?


僕が・・・余計な事をしたばっかりに。



シュリー

「こんな事はヌーターごときが思い付くとは思えない・・・考えられるのは・・」


サナミ

「シェイン・トルテン。当然いても不思議じゃないよ・・・こんな陰湿な事を考えるのは奴くらいだよ」





サナミが戻ってきた。


軽傷だが、ボロボロだ。

つい先ほどまで戦っていたのだろう。


すぐにこちらに戻ってきたのか。




ターゼ

「シェイン・・・ハイトスの教祖の一人・・・」



そんな奴と戦ってる。


ここにいる人間はみんなあんなイカれた連中を倒そうとしているのか。


ただでさえ実態の掴めない人間達の集団。

この町を影から操っている連中、そんなのを敵にしている。



僕は本当に・・・そんな連中を相手に・・・戦えるの?



手が震えてしまっていた。



私なんかじゃ・・・・・・。




サナミ

「大丈夫だよ・・・」


ターゼ

「え・・・?」



僕の手を握ってくれた。

それでもまだ震えている手を優しく握った。



サナミ

「私達はみんなで何度も打ち破ってきたんだから・・・きっと」


ターゼ

「・・・・・・え?」



サナミは片手で私の手を握り・・・そして片方にはこの人の剣、ミツバと呼ばれていた剣を持っていた。




シュリー

「まさか・・・サナミ」


サナミ

「うん、多分これが一番なんだと思う、今のカズキさんを助けれてるのは・・・ターゼだけだと思うから」


ターゼ

「僕・・・だけ?」



任されてしまうのか。


僕なんかが・・・この人を、カズキを助けれると信じているの?



ターゼ

「でも僕には力なんて・・・」


サナミ

「うん・・・みんなそうなんだ、だからきっと・・・ミツバさんが力をくれる」



え・・・?


この剣が・・・?


力を?


僕はサナミの言っている事がわからなかった。


わからないけど・・・もう今の僕にはそれにすがるしか。




サナミ

「だから信じて・・・私達を、きっとそれが、道を作ってくれる」


ターゼ

「道が・・・」


サナミ

「そこから進むのはターゼ・・・あなた次第だよ」




サナミの顔が、真剣な眼差しが僕を揺れ動かす。


道は作ってくれる・・・後は私がそれを歩めるかどうか。



進むだけ・・・。



ターゼ

「僕が・・・僕が・・・彼を救うだ」



手の震えが収まった、いや抑えた。

それが最初の一歩。


そしてもう一歩。




キィイイイィィイイインッ!!!




ターゼ

「・・・っ!」



剣を握った瞬間に光りが溢れ出す。


テント内全て、いやテントから溢れ出す程の蒼い光。


眩しい、けど温かい・・・優しい光がまるで僕を照らしてくれているようだった。



そして粒子が徐々に僕の左手・・・左指に集約されていった。



ターゼ

「・・・・・・指輪?」



それは大きなリングだった。


第二関節から第三関節にまで覆った大きなリングだった。




「・・・・・・・・・」



ターゼ

「え?」



何か今一瞬・・・声が聞こえた?


何かが僕の脳内に語り掛けた、そんな気がした。


僕は呆けてしまっていた、ぼーっとしていた時にはもう光りは消え、輝きを失っていた。



シュリー

「はぁ・・・相変わらずの大盤振る舞いねミツバ大先生は」


サナミ

「やったね、ターゼ。後は・・・お願い出来るよね?」



僕は指輪を見る。


始めて見るリング・・・けど何故か使い方がわかった。


まるで自分が思い描いたような物が今ここに具現化されたかのような代物。



ターゼ

「・・・っ!」



再び、彼が寝ているベッドへと向き変える。

依然として変わらず毒の浸食が進んでいた。


私は先と同じように左手に薬を取る。



その瞬間リングが淡い水色に光り輝いた。



理屈はわからない、がやっぱり思った通りの物だ。


そして再び傷口に薬を触れさせた。



ターゼ

「うっ!!」



リングを通して何かが僕に襲いかかってきた。


これは間違いなく・・・毒の正体だ。


僕の手ごと食らおうでもしてるの!?


だけどこれはそれだけ抵抗したいということでもあるんだ。



ならこれが正解で間違いない。




ターゼ

「んっ・・・くぅ」


ユミィーリア

「ターゼ・・・!」



ユミィが僕の手を支えてくれた。


その小さい手、綺麗な手。



支えてくれた。


それだけでやる気が一気に上がった。




シュリー

「これを使って」


ターゼ

「・・・え!?」



シュリーが急に物をこちらに投げてきた。


なんとかキャッチできた。

これは・・・確かみんなが懐に忍ばせていた機械。



シュリー

「ボタンを押したら飛び出てくるからその部分を・・・リングに触れさせれば多分いけると思うから」




多分って。


本当に大丈夫なのかな、でもあのシュリーがそんな曖昧な事を言うくらいだ。

僕を信じてくれてる証拠なのかも知れない、僕が彼を助けられると。


受け取った右手で言われた通りにボタンを押した。



【ヒーリング オン】



音がした同時にシュリーの言う通り別の物が飛び出してきた。

これを後は・・・。




カズキ

「ぐぅう!! あぁああ!!」


ターゼ

「・・・あっ!!」


レイドラ

「大丈夫! マイロードは抑えてる」




そして改めて僕は・・・リングに近付ける。


ユミィは僕の左手を傷口から離れないように抑えてくれている。


レイドラが彼がこれ以上動かないようにしている。


シュリーが貸してくれたこの機械。


サナミが・・・信じてくれたおかげで。



僕は・・・ただ・・右手を動かすだけ。




それをするだけでいい・・・それだけできっと・・・いいんだ。




みんなが力を・・・貸してくれるんだから。




【コネクト オープン】





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【?????????】




シェイン

「だめでしょーーーヌーター博士ー、あまりお粗末に扱っては」


ヌーター

「ふんっ、問題ないでしょうあの程度」



施設のような機械が多く並ぶ場所。


ヌーターは座りシェインは一人達液体の入ったカプセルの中を除く。


その中には二人の少女が目を閉じ眠っていた。



チヨー

「・・・・・・・・」


ヒルメ

「・・・・・・・・」





シェイン

「器はほぼ完成したと言ってますが、性格に難ありでは?」


ヌーター

「性格?? そのような物注文にはありませんでしたよ? それにあなたが用意したお目付け役に問題があるのでは??」




ヌーターは背後に立っている二人を指した。




コートス

「・・・・・・」


373

「・・・・・・」




二人はただ無言で下を向いたままその場で立っていた。


シェインとヌーターの言葉をただじっと聞いているだけだった。



シェイン

「んんんんーーーまぁでも問題ナッシィイイイイーー!!! ですよね?ミスターコートス、373号」


コートス

「はい・・・日頃よりこの日を待ち望んでいたような言動が多く、計画には支障ないかと」


373

「・・・・・・」



淡々としゃべるコートス。

それに合わせることも無く373は口を動かすそぶりを見せなかった。



シェイン

「おやぁ~~ん?どうしましたか373号」


373

「・・・進言、チヨーに問題発生、計画の妨げになる可能性が」




頭を上げ言葉を発した。


シェインはその言葉の意味を理解したのか373のもとまで近寄った。


373のフードを取り払い顔を間近まで近付け、眼球が取れるほどに目を見開いた。




シェイン

「何故ですー? どうしてそう・・・思うのですかーー?」


373

「用途・・・不明、彼女の意識が・・・別の物へと向けられてる可能性が」




バァアァアンッ!!!!




373はシェインに吹き飛ばされた。

地面に這いつくばる形になるもすぐに立ち上がる。


だが、何度も何度も同じ様に吹き飛ばされ、壁へと激突してしまった。




シェイン

「それを取り除くのがあなたの仕事ですよね?? 一体何をしていたのですか??」


373

「・・・・・・不明要素多、進言に難有り」


シェイン

「私はねー・・・言い訳が大嫌いなんです・・・よぉお!!!!」




バァアァアンッ!!!!




再び壁へ373を押し付けた。


そして373はその場から立ち上がることができずに壁に寄っかかったまま動かなくなる。


死んだわけではない、ただ抵抗もしない、人形のようにただやられるだけの物と化していた。



シェイン

「はぁ・・・興が冷めました、ヌーター博士後はお願いしますね。私は巫女の様子でも見てきます」



この場をヌーターへ任せシェインは暗闇の中へと姿を消した。


それを見たヌーターは、違和感に気が付いていた。

いつもと違うシェインの感情に。


ふざけたような言葉も使わず、はぐらかすこともしない言動。



ヌーター

「彼も人間・・・緊張する時はすると言った所ですか、ふっ・・・しょうもないですね」



そしてヌーターは立ち上がりへ言葉を掛けた。


373が言っていたのはどうゆう事なのか、知っているかと。



コートス

「私には・・・依頼からここへ来るまでに何かあったのかと」


ヌーター

「何か・・・ねぇ」



計画の妨げになる可能性があると373は言った。


所詮はやはり子供、この二人なら計画を最後までやり通すはずだとシェインが言った言葉をヌーターは思い出していた。

だが何を根拠にと呟く。



決して自分の発明に不備があるとは思えないが、使う人間がこの二人となると話しは別だ。

子供二人、一体どのような心境の変化があっても不思議ではない。


ヌーター近くのモニターから報告書を閲覧する。


この二人が街に来てからの物を見る。



ヌーター

(町長家襲撃事件・・・・・・ふむ)



報告書、オノス町長が襲われた日の記述を見ている。


そこにはチヨーとヒルメが子供冒険者4人と共に戦ったとされていた。


ヌーターはそれを詰まらないような目で見ていた。



ヌーター

「ミスターコートス、この子供達・・・見覚えは?」


コートス

「えっと・・・友好関係がある子供は、見に覚えがありませんね」



「そうか」と返してヌーターはまた報告書へと目線を映した。


何か自分が知らない何かがあるのか。


シェインから聞かされている物以外の何かがあるのか。


それを考えるだけで苛立ちが増していた。

ただでさえ秘密主義の男達だ、一体何処まで何を企んでいるのか。


ハイトスに入った時は自分の発明が自由にできることを条件に入った。



だが、下手な事をされて自分の開発発明の妨げにならないとは言い切れない。



ヌーター

「まぁいい・・・ミスター、私も少し出てきます、留守番頼みましたよ」


コートス

「わかり・・・ました」




コートスは頭を下げヌーターを見送った。


しっかりと居なくなったことを確認するまで目を離さなかった。




コートス

「・・・・・・」



カプセルに入る二人を見る。


仕方ない・・・そう自分に言い聞かせながら。

彼女達も望んだことだと。

これでいいんだと・・・。



373の言葉が頭に過ろうと・・・。




コートス

「・・・・・・っ」




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【水幸源の町セカンエンデ 町外設営地】






カズキの治療は上手くいった。


これも全員が僕を助けてくれたおかげだ。




その後他の負傷者の所へも向かった。




ある意味敵国の人間の手なんか借りたくないそうそう思われるかと思った。




けれどここにいるみんなは何も聞かずにすぐに手助けを求めた。






ターゼ


「ふぅ・・・これで一安心」




「あ、ありがとう・・・ございます」






見ず知らずの者から感謝を受けた。




それは一体いつぶりだろうか、何だか照れくさくもあって僕はお辞儀だけしてテントを後にした。




後はここの医師達だけで何とかなる。






サナミ


「お疲れ様」




ターゼ


「おぉわわわ、熱いなもう・・」






コップをほっぺに当てられてビックリした。




サナミからの差し入れというところか。


コップを受け取ってすぐに飲み物を口にした。






ターゼ


「おぉー美味いねこれ」




サナミ


「あれ、苦いって思わなかったの?」






コップの中身を見るととてつもない黒い液体だ。


だけど不思議と美味しいと感じた、風味があって苦さが身体に染みる感じがとてもよかった。








ターゼ


「まさか、仕返しのつもりだったの??」




サナミ


「ままままさか、そんなわけないよー・・・ないよー」








サナミは僕と目線を合わせずに余所を向いて自分の飲み物を口にする。


恐らく私と同じ物だろう。






サナミ


「これね、コーヒーって言うみたい、カズキさんが作ってるお気に入りなんだよ」






ふーん、と返し改めてコーヒーとやらを口にする。




やっぱり美味い、ずっと飲んでいられる物だ。


出来れば明日も飲みたいものだ、もっと言うと・・・。






ターゼ


「・・・・・・夕暮れか」




サナミ


「うん・・・綺麗だよね」






どうしてだろうか、いつも見てきた夕暮れとは違うように見えた。




そういえばここは・・・以前カズキと話した場所?


海と空が綺麗に重なって見える。




だけど今は大きな太陽が沈もうとして海と空を別の色に変えていた。








サナミ


「ありがとうね・・・助けてくれて」




ターゼ


「何を言うかと思えば、僕のケツを引っ叩いたのは君だろうに」




サナミ


「人聞きの悪いことを・・・ふふふ」




ターゼ


「なんで笑うのさ・・・ははは」






まさか、あの煌煌ノ騎士とこんな形で笑い合う日が来るとは思ってもみなかった。




僕達は夕陽を見ていた。


同じように。




見ている物は同じだった。






サナミ


「奇麗だね」




ターゼ


「・・・・・・夕陽のおかげさ」






そう、これは一時的なものだ。




夜になれば、朝になればこの姿は変わる。




今は綺麗でも・・・。






サナミ


「でも・・・これを安心して見れるように・・・綺麗だと感じさせてくれたのはターゼだよね」




ターゼ


「・・・・・・そう・・かな?」






ヤバい、本当にさっきから照れてしょうがない。




というか、改めてこの騎士さんは無差別にこういうこと言うから僕は苦手だったんだ。


あまりにも自分には眩しいから。






そう・・・眩しいことだらけだから。






ターゼ


「でも・・・その眩しさのおかげで、綺麗に見えるのも悪くないのか」




サナミ


「・・・?」






もしかしたら今僕達が見ているこの景色を汚いと言う者はいるのかもしれない。




でも、少なくても僕は、サナミは、これを綺麗だと言えた。




そこに偽りはない。






ターゼ


「・・・ごくんっ!」






きっとそうだ。


サナミが言ってくれた通りだ。




今こうして二人でこの景色を見れたのは僕のおかげ。


きっと今までみたいに逃げてきた僕じゃない、一歩踏み出した僕なんだ。




だから・・・見ることが出来たわかることが出来た。






ターゼ


「ぷはぁ~~~・・・美味い!!」




サナミ


「ふふふ、何それ」






本当に・・・この人達は、見届けてくれた、僕なんかに手を刺し伸ばしてくれた。




多分これからも僕が勇気を振り絞る度に、きっと同じようにしてくれるに間違いない。






だったら・・・僕のやることは、決まってる。






最初から決まってたんだ。






ターゼ


「ありがとう」






ミツバという不思議な剣からもらったリングに触れる。




これが、僕の力・・・ううん、踏み入れた際の入口、踏み込んだ証だ。






自分がこれを誇らなくてどうする。








ターゼ


「じゃあ・・・帰るわ」




サナミ


「うんわかった、今レイドラさん呼んでくるね」




ターゼ


「ううん、大丈夫」






サナミが動きを止めてゆっくりとこちらを振り向いた。


まるで僕の気持ちを理解したかのように。




真剣な顔で僕を見つめる。




それに応えるように僕は笑みを浮かべた。






ターゼ


「本当にヤバいと思ったらすぐに連絡するし、大丈夫! ちょっとケツ引っ叩いてくるだけだから」




サナミ


「ターゼ・・・王女」




ターゼ


「んじゃあ、みんなにもそう言っておいて! あ、彼が起きたら伝えておいて"お返し考えておいて"って! そんじゃね~~」






手を大きく振るって私は町外設営地からセカンエンデへと帰る。




凄く上機嫌にステップをしながら帰る、凄く清々しい思いだ、こんな気持ち本当に始めてだ。




夕陽。




やっぱり今日の夕陽は凄く綺麗だ。


今まで生きてきた以上の。




こんなにも海と空を綺麗に別の物へと変えてくれるのか。


本当に考えても見なかった。




太陽を中心に色を与えてくれている。


離れれば離れるほどに無数の色を出してこの光景を飾ってくれている。




そう、無数の色が・・・こんなにも・・・。






そしてその中心の太陽はきっと・・・。




















ムーゼ


「・・・っ! お姉ちゃん・・・」




ターゼ


「・・・・・・ムーゼ」








太陽はきっと・・・僕達をずっと見守ってくれている・・・。



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