第三十話 終着交差 アッチェレランド
ハイトスはカズキ達を罠にはめた。
チヨーとヒルメを戦わせる為に誘導させた。
不調の中カズキはチヨーの激昂した力を取り払い何とか勝利を収めることが出来た。
だがその代償はあまりにもデカかった。
チヨーの攻撃には相手の身体を蝕む力が備わっていた。
普通の人間では観測できないほどの高度な毒、それに気が付いたのはスプラクアの王女であるターゼだった。
悪戦苦闘する中ターゼはミツバの力を借りることでカズキを救ったのだった。
そしてターゼはある事を決し、自分の最愛の妹の前に立ったのだった。
【水幸源の町セカンエンデ】
帰りの道中に僕は、ムーゼと出会った。
ムーゼは僕が勝手に外出したことを怒りいつものように説教をしてくれていた。
何故かその事が微笑ましく嬉しくもあった。
笑みを浮かべると更に怒らてしまった。
ムーゼ
「ちゃんと聞いてるの!?」
ターゼ
「うん・・・ありがとうムーゼ」
僕はムーゼに感謝をして微笑んだ。
それを最後に、目を瞑り、睨むようにしてムーゼを見た。
ターゼ
「ムーゼ・・・もうやめよう、こんな事は」
ムーゼ
「・・・・・・何を言ってるの」
ターゼ
「わかってる、わかってて今まで見ない振りをしてた。だけどもうそれはおしまい・・・もう私は逃げないから」
「私・・・」僕の言葉にムーゼは口ずさんだ。
僕が今まで一人称を変えていた、それが今ムーゼの耳に届いた。
その意味がわかると、僕は思った。
きっとわかるはずだと。
ムーゼ
「・・・そっち、あの人達でしょ? 何を吹き込まれたの!?」
ターゼ
「私が決めたことだよ、彼等はその手助けをしてくれただけ」
ムーゼ
「手助け!? 違う!! どうせまたあの時みたいに!! お姉ちゃんの力を利用しようとしてるんだ!!」
あの時。
それはきっと二回目の楽神祭の事を言っているのだろう。
やっぱり、あの時からムーゼは・・・囚われているんだ。
その原因も私だから・・・だから。
ターゼ
「ムーゼ・・・お願い、もうやめて。ムーゼがやろうとしているのは、お姉ちゃん嫌だよ」
ムーゼ
「何を言ってるの・・・!! これは、お姉ちゃんの為なの・・・お姉ちゃんを守る為でもあるの!! 私がお姉ちゃんにしてもらってたように、私は!」
ターゼ
「ムーゼ・・・」
パシッ・・・・・。
私がムーゼに触れようとした手を払われた。
ターゼ
「・・・っ」
ムーゼ
「・・・や・・やめてよ・・・お願いだから・・・これ以上憐れまないで・・・!!」
ムーゼが走り去ってしまった。
払われた私の手が虚しく、宙を彷徨う。
凄い・・・嫌な気持ちだ。
拒絶、それも今までのようなお遊びとは違う。
本当の・・・涙。
こんなにも、辛いんだ。
こんなにも、難しいんだ。
わかってた、簡単に行く物じゃないと。
なのに、なのに私は・・・僕は一体何を突っ立ってる!
ターゼ
「ムーゼ!!!!」
すぐに追いかけた。
もう姿がないムーゼを。
ターゼ
「ムーゼ・・・!」
見渡しても居ない。
もう何処かへ行ってしまったのか。
追いかけなきゃいけない。
絶対に見つけなきゃいけない。
だって、その為に決意したんだから。
汚れてもでも、必ず向き合う。
ターゼ
「ムーゼ・・・! ムーゼ!!!」
町中を走り続ける。
行き交う人々の視線を感じる。
自分が王女だからか・・・そんな王女が醜く子供のように走りまわってる。
明日以降何を言われるかわからない。
でももうそんなの気にしないと誓った。
そんな物よりも大事な物があると気が付いたから。
ターゼ
「・・・っ!!」
見つからない、いくら走っても・・・。
大事な人一人僕は・・・。
ターゼ
「・・・・・・っ!?」
リングが・・・光った。
左指に付けているリング、ミツバさんから貰ったリングが何かを示すように光った。
まるでコンパスのように。
示し続けてくれた。
ターゼ
「・・・・・・ありがとう」
導かれるまま、僕は走った。
必ずそこにいるのだと確信を持って、胸を張る気持ちで。
僕は走り続けた。
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【水幸源の町セカンエンデ 孤児院】
ガチャッ・・・。
日が落ち、夕食を済ませて後は大人しく寝るだけ。
そんな時、孤児院の玄関が閉まった音に僕とダツは気が付いた。
ケイト
「シスターかな?」
ダツ
「・・・・・・」
ん?とダツを見た。
ダツは険しい表情でその扉を見ていた。
それを見た僕は、何か嫌な気配を感じた。
すぐに部屋を見渡した。
わかった事が一つあった、今出ていったのは・・・シスターだ。
シスターの部屋の扉が開けっ放しになっていた。
シスターの癖、何か考え事をしている時、何か思い悩んでいる時にしてしまう癖。
ダツ
「ケイト・・・悪い、俺行くわ」
ケイト
「うん、僕も行く」
すぐに自分達の部屋へ駆け戻る。
バタバタとうるさく準備をする、もしかしたらマザーを起こしてしまうかもしれないが今そんな事を気にする程の余裕はなかった。
ミニア
「ん? 何?」
ネーネ
「どうしたの?」
僕達の部屋にミニアとネーネが顔を出した。
けれど僕達は手を緩める事無く支度を進める。
ネーネ
「・・・・・・私も行く」
ミニア
「私も・・・道中説明してよね!」
ネーネとミニアもすぐに準備の為に自分達部屋へ戻った。
僕達と同じようにバタバタと支度する音が聞こえる。
一つ一つしっかりと必要な物を確認していく。
最初の頃に比べたらこの速度も速くなったものだ。
もっとも最初の頃なんて何を持っていけばわからなかったんだから当然だった。
だけど、今は違う、あらゆる事を自分の頭の中で想定する。
それが出来ればあとは手元の持ち物を最適にしていくだけ。
あの人とずっと一緒にいたからこその物だ。
ヘスティア
「クアァンッ!!」
ケイト
「うん、ヘスティアも行こう」
ヘスティアをポケットへと移動させる。
最近ではこういった場所が気に入っているようだった。
恐らくではあるがレイドラさんがあの人のフードの中にいるのを真似しているんだと思う。
ネーネ
「準備できたよ」
ミニア
「遅いわよ」
二人はいつもの格好になって僕達の部屋の前で待機していた。
もちろん僕達も準備を終えた所だ。
そしてすぐに孤児院を飛び出した。
シスターが院を出てからかなり時間が掛かってしまったが最小限に留めたはずだ。
外は暗く、もう人も少ない。
ケイト
「とにかく行こう、すぐに見つけられるはずだよ」
ダツ
「あぁ・・・」
僕達5人は・・・暗がりの町へと下っていった。
シスターメレニアを追う為に・・・。
ドールブ
「・・・・・・」
マザードールブはまるで祈るよう目を閉じ子供達を密かに見送っていた。
・
・
・
ケイト
「どう!?」
ダツ
「駄目だ、何処にもいねぇ!」
こんな夜遅くに一体シスターは何を。
ずっと嫌な予感が付き纏う。
俺の頭の中にはずっと、あの事がずっと浮かんでいる。
ミニア
「本当に・・・シスターに付いてた奴って」
ダツ
「じゃないって俺だって信じてぇよ!」
俺は先日の何がない所で見ちまった。
やっぱりあれは明らかに "血" だ。
人間の血で間違いない。
それからという物シスターに何もないかずっと見ていた。
確かに不審な点は普通に接していたら無い。
だけど、それ以上に、あまりに露骨に俺達を見る目が違った。
まるで、苦しんでるように。
俺達の存在が、自分を苦しめているような。
そんな言葉しか俺には出なかった。
だから確かめないと。
どうしてそんな顔をするのか。
俺達が何かやってしまったのか。
それを聞く為に。
ヘスティア
「アンッ!」
ダツ
「っ!!?」
ヘスティアが吠えた方を見る。
そこには俺達の探していた人間の姿が。
メレニア
「・・・・・・・・・」
ダツ
「シスターー!!!!」
シスターは俺達の声が聞こえないのか、遠くで消えるように路地裏に入っていった。
すぐに俺達は追い掛けた。
なりふり構わず走り続けた。
ミニア
「っ!? いない!!?」
ネーネ
「そんな・・・他に通路なんて」
すぐに辺りを見渡すが、一切抜け道なんてない。
完全に俺達の視界からシスターが消えた。
俺達が見たのは間違いなくシスターメレニアだった。
ここへ入ってきたはずだ。
警戒しながら奥へと進んでいく。
だがあるのは俺達の行く手を阻むようになってる壁だけだ。
ヘスティア
「クァアンッ!!クァアンッ!!クァアンッ!!」
ヘスティアがケイトのポケットから出てきて吠え続けた。
吠えてる先はただの壁、建物の裏側。
ヘスティアには何かが見えているのか?
ダツ
「・・・ケイト」
ケイト
「うん・・・」
ケイトと一緒に壁を触れた。
その瞬間、壁が揺れた。
まるでカーテンが靡いたように、壁が動いた。
ミニア
「まさか・・・ここに?」
ネーネ
「・・・・・・」
俺達は息を呑んだ。
もう嫌な予感は確信へと変わった。
こんな如何にもな場所に買い物に行くとかのレベルじゃない。
もう何かあるしか考えられない。
俺達は躊躇していた。
一度引き返して体勢を立て直すか。
けど今さら戻ってここがまだあるとは限らないなら。
「こらぁ!! そこで何をやっている!!」
まずい! 町の人に見つかった。
このままじゃ・・・。
ネーネ
「行こう、行った後考えよう」
ミニア
「賛成」
ケイト
「異論なし、それじゃあ」
ダツ
「おう・・・行くぞ!!!!」
ヘスティア
「クァアアアアンッ!!!」
俺達全員一斉に壁の中へと入っていた。
空間が歪み、眩しさに襲われた・・・。
・
・
・
トゥトゥー
「中組へ、不審な子供達を確認。ハイトスの幻術技の中へと入って行きました」
トゥトゥーさんから連絡。
丁度起き当番になった瞬間の連絡だった。
クレエス
「不審な子供達・・・?」
トゥトゥー
「はい、男子二人女子二人、そして珍しいモンスターを従えていました、ウルフに羽根が生えておりました」
え・・・?
そんな情報、当てはまる子達なんて決まっていた。
まさか・・・セカンエンデにいる!?
クレエス
「・・・っ!!? すぐにその壁の調査を」
トゥトゥー
「はい、もう確認を取らせているのですが・・・幻術技は消えてただの壁へと変わっております、恐らく転送系の術技かと」
クレエス
「すぐに解析を急いでください、私も現場へ向います」
まずい。
こんな事あの人達が知ったら、血眼になって探すに決まってる。
そんな想定外な事・・・!
クレエス
「トゥトゥーさん、これはまで内密にしていてください」
トゥトゥー
「・・・・・・詳しくお聞かせ願えますか?」
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【水幸源の町セカンエンデ 町外森林】
ターゼ
「んーーー、何処ですかここ・・・」
リングに導かれるままこんなところまで来てしまった。
まさか、町を出ることになるなんて思いもしなかった。
一度戻ろうか考えてしまったが、ここへ来てようやく自分が想像以上に考えなしだったことに溜息が出る。
でも、そんな事を言っても仕方ない。
ターゼ
「もう夜だし・・・何処まで歩かせるんですかね?」
話し相手がいないからか、リング君にずっと話しかけている。
それでもリングは同じ方角を光り示していた。
僕はただそれに従って移動していたらこんな木々ばかりの森へと来てしまっていた。
町の外ということもあって慎重にモンスターに見つからないように移動していたらもうこんな時間になってしまっていた。
私はあまり戦闘とか得意じゃない。
術技だって攻撃用なんて二つくらいしか使えないし、威力はお世辞にも高いとも言えない。
そんな中でモンスターの大軍なんかに襲われた日にはフォンですぐに助けを呼ぶ事になる。
できればみんなの手を煩わせたくない。
今も多分明後日の楽神祭の事で多忙なのは間違いないんだから。
ターゼ
「やべ・・・!」
何か光りが見えた。
咄嗟に隠れた。
光り・・・どちらかと言うとあれは灯りだ。
人がいる?
こんな所に?
物影からその灯りを見る。
間違いない人間だ。
まるで巡回でもしているかのような動き、今から町に帰るような動きではない。
ここ等で何かあるか聞く?
いやそれはあまりにも愚直過ぎる。
改めてリングを見る。
示す方角は丁度灯りを持つ者の方角。
頭を抱えた。
まさかだとは思うが、今僕はとんでない事に足を突っ込もうとしている。
そんな怖気の走る思いだった。
どうする・・・一度やっぱりユミィ達に連絡を・・・。
ターゼ
「いや・・・信じてないわけじゃないけど、最悪逆探知でもされたら厄介か」
フォンへと伸ばした手を止めた。
手柄を立てたいなんて思わない。
僕は今自分がやるべきことだけに集中すればいいんだ。
そうだ、目的を見失うな。
今はただ・・・ムーゼを探すことだけを考えればいいんだ。
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【?????????】
ケイト
「いてててて・・・」
僕達は何故か尻もちをついていた。
まるで高い所から落とされたように。
みんなを確認すると同じように痛がっていた。
つまりはみんな無事だということだ。
すぐに立ち上がり状況を確認する。
ダツ
「何処だよここ・・・」
薄気味悪い場所だ。
施設のような機械が多く並ぶ場所。
明かりも乏しく、唯一光っているのは何かの機械?
機械はガラス越しに中が見える、水が大量に入っている物。
それが並んで二つあった。
子供が入る事が出来そうなサイズだ。
ミニア
「みんな、見てこれ」
ネーネ
「・・・何かぶつけた痕?」
壁が壊され地面には破片が散らばっていた。
凄い勢いで何かをぶつけたような痕だ。
しかも真新しい。
一体僕達は何処に迷いこんだんだ。
ケイト
「そういえば、先生の本で見たことある。転送式術技、触れると術技が発動して全く違う場所へと放り込まれるって」
ミニア
「何それ・・・・・・って私達も経験あるか、それで一度助けてもらってるわけだし」
技術としては存在するのは確定した。
今度は僕達がそれに巻き込まれたということか。
だとしたら。
ここにシスターがいるってことで間違いない。
ケイト
「みんな・・・戦闘準備で行こう、慎重に進もう、ヘスティア場所はわかるかい?」
ヘスティア
「クゥンッ!」
頷いてくれた。
こんな所まで来てしまったがそれもヘスティアのおかげだ。
恐らくこの子にはシスターの場所がわかるのだろう。
理屈はわからないけど、今はそれが頼りだ。
僕達は部屋を出てゆっくりと足を踏み入れていく。
ダツ
「なぁ、これ使えないか?」
ダツが取り出したのは、大きなマントだった。
これは確かあの人から貰った物。
モンスターから狙われた時に逃げるように渡されたものだ。
風景に溶け込み姿を眩ます事が出来る物。
自分達が危なくなって助けることが出来ない場合の非常用として渡されていた物だ。
結局僕達はその用途で使うことはなかったが、ここで役に立つなんて思いもしなかった。
全員ダツから人数分受け取りそれを頭から羽織った。
完全に僕達は姿を隠す事が出来ている。
確か渡されたインカム型の端末を付けているとお互いの姿も見えるようになって事故防止になると言う。
恐らく開発者はシュリー教授で間違いないだろう。
今はこの力をありがたく使わせてもらおう。
ケイト
「ストップ・・・、誰か来た」
曲がり角で一度静止した。
やっぱりここには人がいる。
何か灯りを持って移動しているのか。
施設の明かりは付けないなんて本当にそれらしい雰囲気になってきてる。
「・・・・・・」
黒ローブの人が歩いていた。
けど、あのローブ・・・何処かで・・・。
「おい!」
ケイト
「・・・っ!!?」
まさか、もう見つかった!!?
僕達は声を上げずにマントを完全に羽織って息を殺した。
「なんだよ、なんかあったのか?」
「あぁ、どうも侵入者がいるらしい、だが今は修練中で騒ぎにはするなだとよ」
「騒ぎにするなって・・・まためちゃくちゃな」
僕達の目の前で会話が行われている。
侵入者。
まさか僕達がバレたのか!?
まだ何もしていないし、今見つかったのも初めてだ。
それに今目の前にいられてもバレテないのに。
「おい! こっちで侵入者を見つけたらしい! 行くぞ!!」
3人目が現れ、目の前の人達を連れてってくれた。
足音が消えるまで僕達はその場から一歩も動かずに息を殺し続けた。
ダツ
「ぷはぁ・・・バレるとこだった」
ミニア
「それにしても侵入者って・・・私達じゃないよね?」
ネーネ
「多分・・・でも注意はしていかないと」
改めて集中しようとみんなで決めもう一度曲がり角を確認する。
人の気配はない、それにヘスティアが示した方角はさっきの人達とは別の方角だった。
それにしても今の会話の言葉が引っ掛かった。
修練中。
たった今、何かが行われている。
それに侵入者、そして僕達。
何かが行われようとしているのは間違いない。
さっきの部屋で見つけた痕を思い出す。
あんな物を見た後で穏やかな物が行われてるとは思えない。
最悪、シスターがそれに巻き込まれている可能性はある。
だとしたら急がなくてはいけない。
シスターに何か起きてからでは遅い。
シスターを助けてここを脱出。
ここにいる人達全員を相手にする必要はないんだ。
一先ずシスターを探すことから始めないと。
ガタンッ!!!
順調に足を進めていると突然天井から物音がした。
咄嗟に僕達は固まって身を屈めた。
そして天井に目を向けた時、すると剣を持った一人の女性が降りてきた。
ムーゼ
「っ! 誰だ、いるのはわかってるぞ!」
ケイト
「ムーゼさん!?」
ムーゼ
「っ!? 君達は・・・!?」
驚きのあまり僕達はマントから顔を出した。
すると遠くから声が聞こえだした。
「こっちで声がしたぞ!!」
まずい。
すかさずムーゼさんの手を取りマントで一緒に覆いかぶさった。
全員でマントを広げきれば何とか一緒に入ることが出来た。
ムーゼ
「君達は何を・・・」
ネーネ
「しーーー・・聞こえちゃいます」
僕達はまた先ほどと同じように息を殺し動かないようにしていた。
そして駆け付けた人達が次々と僕達を無視して走り去っていく。
何人者人が走る。
中には武器を手にしている人も何人もいた。
やっぱりあまり喜ばしい場所ではないことだけははっきりした。
・・・・・・・・・・・・・・。
ようやく人の気配が無くなった。
僕達立ち上がり、簡潔にムーゼさんに事情を説明した。
シスターがここの施設に入ってしまったこと、僕達はそれを追いかけてきたのだと。
ムーゼ
「そうか・・・シスターメレニアが・・・」
口に手を当て何かを考えていた。
もしかしたらムーゼさんは何かを知っているのか、この場所を、ここがなんなのか。
ケイト
「あの・・・僕達、シスターとここから脱出したいと思ってるんです、よかったらお力を貸してくれませんか?」
ムーゼさんは剣を持ってここに入った。
目的は聞かないでいたが、今は少しでも情報が欲しい、そう思い同行をお願いした。
ムーゼ
「・・・・・・場所はわかるの?」
ネーネ
「は、はい・・・この子が多分」
ネーネがヘスティアを持ち上げた。
ここへ来るのもヘスティアのおかげだったことも伝える。
するとムーゼさんは急ぐようにして了承した。
すぐにその場から動き、どちらに行くのか聞いてきた。
ケイト
「・・・・・・」
なんだろう。
凄く僕は引っ掛かっていた。
場所がわかるのかと聞いた時。
その時のムーゼさんの表情があまりにも考えられないほどの殺気を一瞬感じた。
あの時の、最初に会った時では考えられない物。
何かあった、いやここに何かあるのか。
それを目的にそんな怖い顔をしているの?
僕は・・・聞くことができずに・・・施設内の奥へと進んだのだった。
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【?????????】
ターゼ
「なーーーんか、本当に気味悪い」
急に巡回していた者達が消えた。
それを気に一気に進み僕はある場所へと到着していた。
見たことのない廃棄された不気味な施設。
こんな所にこんな場所があった事に驚くし、ここにムーゼが向かったと思うと本当に不安な気持ちで張り裂けそうになる。
さっきの巡廻をしていた連中を考えると・・・。
ここが・・・まさかハイトスの根城?
可能性は高い、僕は最悪なケースを考えていた。
ムーゼは、恐らくここを元々突き止めていた。
そして私の言葉がきっかけに歯止めが効かなくなった。
まさかここに・・・水幸楽神の巫女がいる。
それを知ってムーゼは・・・。
ターゼ
「止めないと・・・」
足を進める。
こんなところでそんな無謀な事させるわけにはいかない。
いくらあの子は強いとはいえ限度がある。
今のあの子にはそんなことすら判断付かない状態でもおかしくない。
僕が、そうさせてしまったのだから。
もう少しやり方はあったのかも知れない、上手くやれていたはずなのに。
悔やんでいてもしょうがない。
もしここが・・・ハイトスの隠れ家なら。
もう四の五の言っている場合じゃない。
ユミィ達に連絡を・・・。
ガサッ・・・!
ターゼ
「・・・!!?」
グゥウウウアァアアアアアアア!!!!
ここに来て、モンスター!?
まずい、早く・・・連絡を・・・!!!
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【????????? 最深部】
ヘスティア
「クァン! クァンッ」
ヘスティアが小さく声上げ止まった。
あれから僕達はなんとか誰にも見つかることなく、ここまでたどり着けた。
そしてヘスティアの様子からして恐らくここにシスターがいるんだと告げている。
ムーゼ
「用心して、開けるよ」
僕達は息を呑んだ。
扉がゆっくりと開いて行く。
するとそこには大きな中庭のような景色が広がっていた。
地面は草花が広がりここが室内だということを忘れてしまうほどの物だった。
そして中央には大きな水溜り?
いや湖のような物が大きく主張していた。
ケイト
「・・・・・・」
ダツ
「なぁ・・ここ」
ミニア
「う、うん・・・」
ネーネ
「見たこと・・・ある?」
その光景に目を奪われていた時だった。
うあぁああああああぁあああああああああああぁあ!!!!!
何かの悲鳴が部屋の中に響いた。
部屋の端で何かが起きた。
すぐにそれを見に僕達は草原へと足を踏み入れた。
そこには・・・僕達が見知った姿の人が・・・。
メレニア
「・・・・・・・・・」
怖気が走った。
ケイト
「シス・・ター・・・?」
ネーネ
「なん・・・で・・・」
シスターが・・・剣を持ち・・・人を殺した・・・。
黒いシスター用のローブが何かの液体まみれになっていた。
あれは間違い無く・・・血だ。
「た・・・助けt」
メレニア
「・・・・・・・・・」
ミニア
「やめてぇ!!!」
ダツ
「シスター!!!」
ズサッ!!!
僕達の声は虚しく響くだけだった。
まるで声が聞こえていないかのように、シスターは人の首を刎ねた。
表情一つ変えずに。
目を見開いたまま、血飛沫を浴びていた。
全身が血まみれになっていた。
なんで・・・何が・・・。
ムーゼ
「お前が・・・!!!!」
ケイト
「・・・っ!?」
ムーゼさんがシスターへと飛び込んだ。
一気にシスターへと距離を詰め。
ガキィイイインッ!!!
メレニア
「・・・・・・・」
ムーゼ
「このぉお!!!」
ケイト
「やめて!! ムーゼさん!!!」
僕はすかさず間に入ってムーゼさんの攻撃を盾で受け止めた。
何となく、いや無意識の内にムーゼさんが何かをすると踏んでいたからすぐに動けた。
ムーゼ
「邪魔をするなぁああ!!!」
ケイト
「っ!!!」
連撃を全て打ち払う。
けれど攻撃があまりにも激しい。
間違いなくこの人は強い。
一撃一撃が早すぎる。
手に持っているのはレイピアと呼ばれる物、攻撃力は無くても攻撃速度で敵を翻弄する武器。
僕が両手にしている盾と剣で防ぎきるので精一杯だ。
だけど、後ろにはダツ達もいる。
この状況ならすぐに・・・・・・。
ネーネ
「ケイトォ!!!!」
ケイト
「え・・・?」
メレニア
「・・・・・・」
え・・・。
どう・・・して・・・。
僕は・・・。
ダツ
「くっ・・・うおぉぉお!!!」
ダツの声が響いた。
ダツが向かったのは・・・シスター?
僕は・・・シスターに背中を斬られたのか・・・?
ネーネ
「今直すから!! 待ってて!!!」
ミニア
「くっ・・・どうすればいいのよこれ!!」
状況はめちゃくちゃだった。
ムーゼさんはシスターを殺そうとしている。
ダツはその間に入って二人の攻撃を防いでいた。
隙あらばムーゼさんもシスターもお互いに剣を向けていた。
何なんだ・・・この状況は。
シスターに・・・一体何があったっていうんだ。
こんなの・・・おかしいだろ!!
パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!
拍手が・・・部屋に・・鳴った・・・?
・
・
・
みんなが動きを止めて手を叩いた人間を見た。
その瞬間私には恐怖感が一番最初に現れた。
あの時と同じ顔、同じ様に笑みを浮かべる・・・。
オノス
「これはこれは王女殿下の側近のムーゼ様、一体このような場に何かようですかな?」
オノス・・・町長。
この人が・・・どうして。
まさか・・・まさか・・・。
私の頭の中でもう何かが決まり掛けていた。
シスターがどうしてこんな事をしているのか、どうして町長がこんな所にいるのか・・・。
タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ
ネーネ
「・・・っ!」
頭痛。
目を伏せたくなった。
だけど今はケイトに回復術技をかけることに集中しなくては。
でも・・・。
メレニア
「・・・・・・」
ムーゼ
「決まってる、そこにいる・・・水幸楽神の巫女を殺しにきた!」
ムーゼさんがシスターへ向けて剣を構えた。
それが全ての答えだった。
シスターメレニアが、今回の楽神祭の巫女、水幸楽神の巫女なんだ。
もうそれは疑う余地もない。
きっとここが言われていた修練、修練所。
回りを見回すと頭がおかしくなるほどの死体が転がっていた。
モンスターや動物・・・そして人間。
考えたくもない、考えたくないけど・・・これを全部シスターがやったのか。
オノス
「ほう・・・何故そのような事をされるのです? 私には到底理解し難いのですが」
ムーゼ
「理解されたいなんて思わない! ただ・・・ただ私が"巫女になる"為には、この女が邪魔なんだ!」
ミニア
「巫女になるって・・・どうゆうことですか!!」
ミニアは率直な疑問をぶつけた。
けどわかっていたんだ、その意味を。
簡単な事だ。
ムーゼさんは奪おうとしている。
巫女の座を。
シスターメレニアを殺して自分が・・・。
オノス
「ならば・・・あなたも"一緒に"なればいい」
ダツ
「・・・っ!?」
ムーゼ
「なん・・だと?」
私達は言葉の意味を理解出来ないでいた。
軽々しく言った言葉に耳を疑った。
ムーゼさんも巫女になる?
そんな簡単になれるものなのか。
シスターにはこんなことをさせておいて。
ただここへシスターを殺しにきたムーゼさんが巫女に?
オノス
「あなたならわかりますよね? ミスムーゼ、その意味が、あなたならわかりますよね? 私が本当の事を言っていることが」
ムーゼ
「・・・・・・・・・」
町長の言葉にムーゼさんが固まってしまっている。
駄目だ。
それ以上聞いちゃ駄目だ。
それ以上聞き入れちゃ駄目だ。
ケイト
「っ! 駄目です!! 騙されちゃ!!」
ケイト!?
ケイトが立ち上がりながら叫んでいた。
ケイト
「嘘に・・・決まってる!! シスターに何をさせたんだ、答えろ!!!」
オノス
「何を? 簡単な事ですよ、ムーゼさんならわかりますよね?」
ムーゼさんならわかる?
一体何を知っているというんだ。
この惨状を説明できるのか。
ムーゼ
「・・・レベル上げだ」
ムーゼさんはポツリと口にした。
何を・・・言っているんですか。
そんな事の為にまさか・・・。
オノス
「そうゆうことですよ! 君達もたくさんしてきたでしょう!? ここはそうゆう場所です修練所・・・すなわち巫女に足り得る為レベルを上げる為にこの場所を設けているのですよ!!」
大手を広げ高らかと説明をし始めた。
オノス
「一番の効率を考えた結果がこれですよ! レベル上げに必要な物とはなんだと思いますか!?
それは・・・経験値!
動物にモンスター、そして人間、強い冒険者、そして・・・ギフト所持者! あらゆるモノ達をここで弱らせ彼女に殺させるそれが一番の効率の良い方法なのですよ」
ケイト
「な・・・何を言って・・」
血の気が引いて行くのがわかる。
この人は今・・・めちゃくちゃな事を言っている。
こんな事許されるはずがない。
それにそんな事シスターが・・・。
オノス
「望んだ・・・ただそれだけですよ、彼女が望んだのですよ! レベルを上げたい、成長したい、変わりたい・・・強くなりたいと」
ダツ
「嘘を・・・言うなぁああああああ!!!!」
ガキィインッ!!!!
ダツ
「くぅう!!」
メレニア
「・・・・・・・・・」
ダツを容赦なく斬り付けた。
シスターが、何の躊躇もなく。
本気で・・・。
本当にシスターは今もそれを望んでいるの?
オノス
「そして・・・巫女には一番大事な仕事があるのですよ、そう・・・この湖・・・いや、"水"に祈りを捧げる、自らの力、真素を捧げる必要がね」
水・・・?
この浮かぶ水に?
これが一体なんだと言うんだ。
水に真素を捧げる、その為に自分のレベルを上げるとは一体・・・。
オノス
「君達ならわかりますよね、その獣、いや聖獣と呼ばれていましたね」
ヘスティア
「グルルルルル・・・!」
聖獣ってまさかヘスティアの事?
それが何の関係があるの。
水に・・・真素を・・・。
ミニア
「まさか、ギフト・・・この水が・・・!?」
ネーネ
「嘘・・・これが」
ミニアの言葉で全てが噛み合った。
ギフト、ヘスティアもギフトの一種だ。
私達の四人の真素で岩の塊から卵を生み出し、そしてギフトの力を使って卵から孵した。
それは並大抵のものじゃなかった。
同じ様な事をここでもやっている、しかも長年・・・。
オノス
「少々、お喋りが過ぎましたか・・・それで、ミスムーゼ、ご返答は?」
ムーゼ
「・・・・・・いいでしょう」
ネーネ
「ムーゼさん!!?」
こちらに振り向き変える。
そして剣を私達に向けた。
ムーゼ
「これも・・・お姉ちゃんの為」
メレニア
「・・・・・・」
二人がこちらに近づいてくる。
そんな・・・。
どうして、こんな事に・・・。
オノス
「さぁ! 修練の続きです!! これを乗り越えることで、お二人は巫女へとなり変わり、神に認められる存在へと生まれ変わるのです!!!」
ネーネ
「そん・・・な・・・」
ムーゼさんとシスターが私達に近づいてくる。
みんなの戦意が喪失してしまっている。
こんなの変だよ、おかしいと。
どうして私達が戦わないといけないの。
どうしてシスターは・・・こんな・・・。
オノス
「さぁ! 経験値を奪い取りなさい!!」
ムーゼ
「悪く思わないでね」
メレニア
「・・・・・・・・」
二人が一気に駆けだした。
私達は・・・。
私達は・・・とんでもない事に首を突っ込んでしまったんだ・・・・・・。
ターゼ
「ムーーゼェエエエエエエエエエエ!!!!!!」
大きな声と共に私達の間に・・・ターゼ王女殿下が現れた・・・。
・
・
・
ムーゼ
「っ!!!?」
子供達の前で立ちはだかった。
ムーゼは動きを鈍らせた。
その瞬間に私は・・・自分の力を使う。
ネーネ
「・・・羽衣?」
リングから薄い幕を生み出し自在に操る。
ムーゼの腕に巻き付けた。
ムーゼ
「っ!! 何よ・・・これ!!!」
ムーゼが僕の羽衣を一度斬り距離を取った。
ダツ
「うおおぉおぉぉ!!!!」
メレニア
「・・・っ!!」
もう一人の方を見ると男の子、確かダツ君だったか。
ダツ君が体当たりして吹き飛ばしていた。
吹き飛ばした相手は、確か孤児院のシスター!?
一体何がどうなってるんだか。
ケイト
「ターゼ・・・王女・・?」
ターゼ
「動かないですぐに直すから」
【ヒーリング オン】
ミニア
「エレメタルキー!!? どうして!!?」
この子達がなんでこれの事を知ってるの?
でも今はとりあえず負傷している子を助けるのが先決。
【コネクト オープン】
あの時みたいにリングに当てる、そしてその手でケイト君の傷口に当てた。
ケイト
「・・・っ! 凄い、もう痛みがない」
ターゼ
「んじゃあ一緒に戦える? お姉さんこの羽衣さっき使ったばかりなんだよねーー」
僕はこの施設に入る前にモンスターに襲われた。
最初の一撃でフォンを壊されてもう打つ手なしと思った瞬間にリングが輝いて羽衣が生まれ私を守った。
しかもこれが思った以上の物だった。
防御だけじゃない、攻撃にも利用出来た。
羽衣の形をイメージすると鋭い剣のようにも槍のようにもなった。
これを使って僕はここへ来た。
ケイト
「わ、わかりました!」
ミニア
「あっちのシスターは私達がやります、ムーゼさんは・・・」
ターゼ
「大丈夫、そのつもりで来たんだから!!」
僕達は構えた。
もう心臓バクバク、でも本当によかったこの子達から凄い力を感じる。
きっと私なんかよりも百倍は強い。
一回り近く歳が離れてるのにこんなに頼もしいなんて情けない限りだ。
だけど今はそれを頼りにさせてもらうしかない。
ムーゼ
「タァァァァァァゼエエエエエエ!!!!
ターゼ
「っ!!」
ムーゼが突撃してきたのに合わせて僕も地面を掛けた。
羽衣を生み出しムーゼの剣を防ぐ。
鍔ぜり合い、鍔なんて僕の方には全くないけど。
ムーゼ
「何よその力!!! またそうやって、私を!!!」
ターゼ
「違う!!! これは・・・ムーゼを助ける為の物!!!」
ムーゼ
「ふざけるなぁあああああ!!!!」
光弾術技!!?
羽衣を全身に纏う。
ムーゼ
「あなたが負けてぇええええ!!!!」
光弾が僕の全身に直撃する。
一発一発確実に、全ての弾が襲った。
ムーゼ
「なんで・・・なんで!!!」
ターゼ
「・・・・・・」
ムーゼ
「・・ぐぅう!! その目!!! 昔みたいに私に向ける・・!! 哀れむなぁぁぁぁぁ!!!!」
剣が光った。
強化型の術技、ムーゼの得意技。
目の前まで高速で移動してきた。
でも・・・!
ターゼ
「二羽!」
ムーゼ
「はぁあああああぁぁ!!!!」
僕が目で追えている限り全ての攻撃を防ぎ切れるはず。
連撃を目で追い続ける。
ムーゼの攻撃は確かに早い、けど僕は何度も何度も同じ見てきたんだ。
ムーゼの動きは熟知・・・。
ターゼ
「・・・ぐぅっ!!」
まさか・・・蹴り・・・!?
剣先ばかりに目を取られていた。
僕のお腹に直撃・・・。
ムーゼ
「うーーーあぁあああああああ!!!!」
ボゴォオォォォォオォオオォォオンッ!!!!!
・
・
・
激突音。
ターゼ王女がやられた・・・!?
いや、大丈夫だきっと、あの人を信じないと。
そうだ、僕達は僕達の方を何とかしないと!!
ダツ
「だぁあおらぁああ!!!」
メレニア
「・・・・・・」
ダツの連撃を全て弾き払った。
そして一閃、ダツを吹き飛ばした。
ダツ
「くそっ・・・! おせぇぞ!!」
ケイト
「ごめん、あっちはターゼ王女に任せて大丈夫」
ダツ
「王女? よくわかんねーけど、マジでやべーからな、気引き締めねーとマジで持ってかれるぞ」
改めてシスターを見る。
血が全身に付着して不気味な姿。
けど、紛れもなくシスターの顔。
表情も全く変化もない、感情を殺したような、人形のような顔のシスター。
ネーネ
「シスター!! 目を覚まして!!!」
ミニア
「どうして私達が戦わないといけないの!! シスター!!」
メレニア
「・・・・・・」
一切聞く耳をもたずに再び襲いかかってくる。
武器は剣一本なら。
ケイト
「っ・・・ダツ!」
ダツ
「わかってる、もう何発か入れてる!!」
よし、それなら一気に・・・あの武器を破壊する!
シスターを正面に置き盾を構え突撃する。
待ち構えたようにシスターは剣を振り上げた。
ケイト
「えぇえい!!!」
一気に地面を蹴り上げ、シスターの攻撃を盾へと衝突させる。
金属音が鳴り響いた。
そして同時に僕の後ろに控えていたダツだ飛び出す。
メレニア
「・・・・・・・」
ダツ
「もらったぁあ!!!」
すぐさま防御態勢に入るのは想定していた。
バキィィイィィィ!!!!
ダツは全力で拳を振るって防御に構えた剣を一撃で破壊した。
これで無力化。
あとは何とかして・・・。
パチンッ!!!
ケイト
「何!!?」
シスターが指を鳴らした。
その瞬間武器が何処からともなく出現させた。
まるであの人の剣のように。
だが、シスターが出現させたのは新しい剣ではなく、鉄で出来た槍だった。
ケイト
「っ!!」
すぐさま防御に入る。
槍のリーチを生かした連続攻撃。
駄目だ、こっちの攻撃が・・・僕のフェブルじゃ届かない。
ダツ
「くそっ! くぅ!!」
ダツも同じ様に攻撃が通せない。
僕とダツに隙を見せずに同時に攻撃し続けている。
なら・・・!
タイミングを見計らい、ダツと共に一気に離脱する。
ネーネ
「タイダルンバインド!」
ネーネの捕縛術技。
シスターの動きを完全に封じた。
ミニア
「ごめんねシスター・・・エレキスショット!!」
動きの止まったシスターへ向けてミニアの雷弾術技が放たれた。
このまま行けばダメージは通せる。
パチンッ!!!
また指を鳴らした。
槍が消え、次にはバックラーを出現させた。
しかもあれは対遠距離術技用の盾!?
メレニア
「・・・・・・」
ミニアの術技がシスターに直撃したが、雷弾はバックラーに当たり全て防がれてしまった。
そして捕縛術技も破壊されてしまった。
メレニア
「・・・・・・」
パチンッ!!!
今度は杖・・・!
まさか・・・!?
ケイト
「みんな集まって!! ウィンディプロテクション!!!!」
ヘスティア
「クァァアアアァアアアー!!!!」
巨大の風の盾。
それに加えてヘスティアの真素緩和の咆哮。
これで迎え撃つ。
巨大な光弾がシスターから発射された。
・
・
・
ムーゼ
(あちらも終わったか)
ムーゼがケイト達の方を向いていた。
その瞬間。
ムーゼ
「なにっ!!!」
ターゼ
「何処見てんだよぉおぉぉ!!!!」
僕は羽衣をムーゼの足に巻き付けた。
上空へ持ち上げ一気に地面へと叩き付けた。
ムーゼ
「ぐはぁっ!!」
ターゼ
「初めての・・本気の姉妹喧嘩、はぁ・・はぁ・・こんなので終わらせると思わないでよね」
さっきの一撃は相当効いた、けどこっちの回復力を舐めないでほしい。
このリングと僕の治癒能力さえあればそう簡単にくたばってたまるか。
ムーゼ
「姉妹喧嘩・・・どうしてそうやっていつもいつもいつも!!! 平気な顔して!余裕を見せて! 人の気も知らないで!!」
ターゼ
「知らないわよそんなの! 言われてもないような事、知るわけないでしょうが!馬鹿!!」
ムーゼが立ち上がっている最中に一気に近距離に持ち込む。
ターゼ
「四羽!」
ムーゼ
「くっ!!」
四枚の羽衣を展開する。
ムーゼの迎撃に合わせながら連撃を続ける。
羽衣の限界射程でやり合う。
ムーゼの攻撃はこちらには届かない。
隙を見せれば・・・。
ムーゼ
「っ・・しまっ!」
ターゼ
「もらったぁあああ!!!」
服部に羽衣を巻きつけることが出来た。
すぐにムーゼは斬ろうとするがさせない。
力いっぱい振り上げる。
ターゼ
「こんのぉおぉお!!!」
さっきの僕と同じように壁へと激突させた。
瓦礫を生みムーゼもただでは済まない。
けどこれいい。
殺したいわけじゃない、でもこうしないとダメなんだ。
蹴り飛ばされてよくわかった。
甘かった。
本気の本気でぶつからないといけないんだって。
これが今の僕の答えだ。
何度だって。
何度だってムーゼとぶつかってやる。
ムーゼが泣くまで何度だって・・・。
・
・
・
メレニア
「・・・・・・」
宙で浮くメレニア。
地上では放った光弾が直撃した煙が充満していた。
メレニア
「・・・っ」
ケイト ネーネ
「「はぁあああああ!!!!」」
ここしかない。
ここで私はケイトと共に上空へ飛んだ。
ネーネ
「タイダルン・・・ロック!!!」
シスターの全身を水の球体で覆う。
そこにケイトが一気に接近する。
ケイト
「ウィンディチェーン!!!」
風の鎖で球体事巻きつける。
そして二人で力いっぱい引っ張り降ろす。
メレニア
「・・・っ」
地面に叩き降ろす。
場所は・・・決まってる、ミニアとダツが居る場所だ!
ミニア
「エレキスキューブ!!」
ミニアが盛大に杖を振るう。
立方体の大きな雷光が姿を現す。
そして最後。
ダツがその雷光の後ろで見計らう。
ダツ
「フレイミー・・・ボンバァァァァアー!!!!」
拳が炎に包みこまれミニアの出した術技を炎と共に殴り飛ばす。
それは勢いよく、私とケイトが振り下ろしたシスターのもとへと直撃させた。
ボゴォォオォォォォォオオォッォォオォオオンッッ!!!!!
水、風、雷、炎。
私達が考えた私達だけの合体術技。
あの人達のような一発で出せる物じゃない。
けど、団長さんと教授さんのお墨付き。
これで立っていられる人はいない。
私達はそれをしないと、そこまでしないと駄目だとみんな感じた。
今のシスターを目を覚まさせるにはこれくらいの攻撃をぶつけないと。
ネーネ
「・・・シスター」
・
・
・
ムーゼ
「ぐぐぐぅう!!!」
ターゼ
「あんたにも見えたでしょ! あんな小さい子達でも必死に抗ってるのに、私達恥ずかしいと思わないの!! ずっとずっと、ずーーーっと人顔色ばかり窺って!! 目の前の事ばかり必死になって!!」
ムーゼ
「黙れっ!!!」
羽衣が弾かれる。
だけど、ムーゼに何度も呼びかける。
自分の言葉で自分の声で。
ターゼ
「あんたも目を覚ませって言ってるのよ!! もう私の後を追う必要なんてないんだよ!!!!!」
ムーゼ
「あぁああああ!!!!」
ガキイィイィィインッ!!!!
ムーゼ
「お姉ちゃんが!あんたがそれを言うの!!!? それを言っちゃ!!!もう、私の居場所が!!もう!!!」
ターゼ
「・・・ムーゼ!」
惨めでも苦しくても。
ずっとそんな顔をして欲しくない。
だから私は・・・僕になった。
道化を演じて。
少しでも妹の気持ちを楽にして上げようって。
僕が僕でいる限り、ムーゼはムーゼでいられたような気がした。
私では・・・あの時のように、二回目の楽神祭の時のような事になるから。
『必要なのは姉の方だろ?』
『妹は耐えれなかった話しだが』
回りの矛先が全てムーゼに向いてしまったから。
そこから私達の関係はおかしくなった。
ムーゼ
「お姉ちゃんが・・・! お姉ちゃんがいたから・・・いたから私は・・頑張れたのに! 頑張れたのに! 一緒にいる為なのよ!! 一緒にいる事が! 私が・・・私で無くなる前に・・・!!」
ターゼ
「いられる決まってる!!」
ムーゼ
「出来ないってわかってるでしょう!!!」
ターゼ
「出来る!!! そんなの関係ないから!!! 出来るから!!」
もうたたの口喧嘩になっていた。
でも痛いほど伝わる。
ムーゼがどんな思いでここまで来たのか、どんな気持ちを抱いてここまで一緒にいられたのか。
これが・・・痛み。
ムーゼの言葉が全部刺さって苦しいよ。
だけど、ここで私が・・・僕が負けちゃ・・・。
ムーゼ
「私は巫女になる、誰がなんと言おうと巫女になるんだ。そして必ずあなたと同じ場所に必ず行く!!!」
ターゼ
「・・・っ!」
ムーゼ
「それを邪魔するのがあんただとしても!!! 私は前に進むのよ!!! 進むしか私達には何も無いんだから!!!」
ターゼ
「そんな・・・こと・・!!!」
もう・・・。
もう・・・自分でもどうしていいのかわからないよ。
何で届かないの。
違う・・・。
こんなにも遠かったんだ。
ターゼ
「もう・・・・・・一緒にはいられないの?」
ムーゼ
「いいえ、縛り付けてでもお姉ちゃんを隣に置くの、それが私達の為・・・もう誰にも文句を言わせない!!」
遠いよ・・・凄く。
ムーゼが・・・遠い存在に感じてしまう。
私が未熟だから、弱いから・・・ムーゼに・・・これ以上手を伸ばせない・・・。
また・・・私は・・・逃げる・・・のか。
違う!!!
ターゼ
「ムゥゥゥウウゼエエエエエエエエ!!!!」
ムーゼ
「何よ、そんな本気の目になって!!」
本気の目。
私は今生まれて初めてムーゼに抱いた感情を顔に出したのか。
憎いって。
それが・・・本気の目?
ムーゼ
「それがあんたの本性ってわけでしょ!!!・・・やっぱり、私は所詮・・・あんたのお飾りでしかなかったんだから!!!!」
バキギィィィイィイイ!!!!
ムーゼの剣撃が羽衣ごと、私を吹き飛ばした。
ムーゼの剣が砕けるほどの重い一撃が僕の全身に衝撃を与えた。
そしてそのまま・・・地面へ落され私は・・・僕は、倒れた。
ターゼ
「・・・違う、違・・う・・・違うもん!!!!」
この感情は・・・ムーゼに向けたものじゃない。
自分の・・・自分の無力さを嘆いた。
確かに憎しみだ。
こんなにも・・・どうすることも出来ないと思った時の僕は・・・身勝手だったのか。
もう自分の中の自分がぐちゃぐちゃだ。
何も出来ない。
自分の中の整理も・・・もう・・・。
ムーゼ
「そこで一生泣いてなさい・・・ターゼ」
・
・
・
私達は見守っていた。
シスターが落ちた場所を・・・。
メレニア
「・・・げほっ! うぅぅ・・・」
ケイト
「シスター!!」
ミニア
「シスターわかる!!? 私達の事!!」
シスターが立ちあがった。
立ちあがってやっと言葉を発した。
やっと・・・やっと・・・・・・。
メレニア
「あなた・・・達・・・」
ネーネ
「シスター!!!」
メレニア
「なんで・・・来たの・・・」
ダツ
「・・・っ!」
まさか・・・。
意識は・・・。
ネーネ
「シスター・・・まさか」
メレニア
「何で来たのかって聞いてるでしょぉぉぉおお!!! どうして・・・こんな姿まであなた達に見せなきゃいけないの・・・」
シスターの目から、涙が・・・。
どうして。
ダツ
「どうしてだよ!! なんでこんなこと!」
メレニア
「選ばれたからに決まってるでしょ!! 拒否権なんて・・・ないんだから!!!」
拒否権。
それは、巫女の事を言っているの?
それともこのふざけたレベル上げなんて言う物の・・・。
メレニア
「頭おかしくなりそうだったよ・・・あなた達の顔を見てあなた達の笑顔を見て・・・あなた達の戦うところを見て」
それはきっと私達がこの町に来て最初の事を言っているんだ。
私達は一番に・・・シスターを出会った。
今思えば、シスターは何も持っていなかった。
あんな朝早くに・・・買い物という訳ではなかった。
メレニア
「いつもみたくここで・・・何人何十人と殺して・・・もう嫌だって思った・・もう死にたいって思った、誰か助けてって、もう私を殺してって・・・最後に・・最後の最後に、どうしてかあなた達の事思っちゃった・・・! それで・・・それで・・・!!」
それで・・・私達は出会ってしまった。
私達が帰ってきてしまった。
幸か不幸かわからないタイミングで。
メレニア
「もうどうすればわからなかった・・・だから・・・
だから殺したはずなのに・・・感情を・・ここの事は忘れるって!! 忘れるようにしたのに・・・!
どうしてあなた達はここにいるの!!!!」
あれは・・・何かに操られていたわけではなかった・・・。
シスターがただ深く深くに心を閉ざした姿。
自分の心を殺していた姿だった。
本当だよ・・・どうしてだよ・・・どうしてこんなことに・・・。
でもまだ間に合う。
まだ・・・!
ネーネ
「シスター・・・帰ろう」
ダツ
「そう・・だよ! もういいって!!」
ミニア
「頑張ったじゃん!! もう十分頑張ったじゃんよ!!!」
ケイト
「うん! 後は・・・後のことは僕達に任せて! 本当になんとかするから!どんな手を使ってでも!! あの人達ならきっと助けてくれるから!!!」
そうだ、きっと手を差し伸べてくれる。
あの人達なら。
その為にも今、私達がシスターに手を差し伸ばさなくちゃいけない。
だからどうか・・・。
ネーネ
「お願い・・・もう! もうやめようよ・・シスター!!!」
メレニア
「ぅう・・・みん・・な・・・!!」
シスターが・・・私達の方へ歩む・・・。
きっとこれから大変だと思うけど。
けどそれは昔の私達と同じ。
シスターがずっと私達を支えてくれていたように。
今度は私達がシスターを支えなくちゃいけないんだ。
それがきっと・・・。
オノス
「そこまでですよ・・・みなさん」
ガァアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!
私達とシスターの前に巨大な音と共に衝撃波が地面を切り裂きそして穿った。
軽い地震。
何かがそこにいる。
人影・・・。
それも二つ・・・私達と同じような身長の。
女の子が二人。
ミニア
「嘘・・・でしょ・・・」
ダツ
「なんで・・・だよ」
私達は更に絶望していた。
なんでこんな事に、こんな事が続くんだ。
ケイト
「どうして・・・あの二人が・・・!」
私達がよく知る。
自分達以外での同い年の友達。
大切な友達・・・また会おうって約束したのに・・・。
チヨー
「・・・・・・」
ヒルメ
「・・・・・・」
チヨーとヒルメが・・・私達に武器を構え、そこに立っていた。
多分この話長くなります。




