第二七話 水幸楽神 アンノウン
四人の子供達とターゼとの出会い。
ターゼの口からは初代水幸楽神の巫女のが自分であったと告げられた。
巫女は今も健在だとターゼとムーゼは話した。
そんな二人の境遇を聞いたチヨーとヒルメは四人の子供達から離れることを決意したのだった。
だが無常にもそれを子供達が知り何かを成し遂げることはまだ出来ない。
何故なら子供達は今も暗躍している者、ハイトスがこの街セカンエンデに潜伏していると知らないからだ。
そんなセカンエンデについに、ヴェアリアスとカズキが到着するのであった。
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【水幸源の町 セカンエンデ】
クレエス
「予定通り、段取りを開始、指定座標にて本部等の設立、特務を言い渡されている者達は速やかに行動を」
「「「「了解」」」」
クレエスさんの指示の下ゾロゾロと荷馬車から人員が降りて行く。
その中にはこの町に招待された者のユミィーリアの姿もあった。
オノス
「これは、ユミィーリア王女殿下お早い御到着で、まさかジャパニアのルシュカ・コードー姫君様とご同行されていたとは。お初にお目にかかります、わたくしこの町長を務めさせて頂いておりますオノスと申します」
ルシュカ
「こちらこそよろしく頼む、ユミィ・・・リア殿下とは先ほど町の外の道中でお会いしたのでな、折角ならと予定を早め町に到着させてもらった次第だ」
ユミィーリア
「はい、なので少し騒がしくなってしますかもしれませんが、出来るだけ速やかに準備を整えるように致します。我々のもてなし等は不要です」
ルシュカとユミィーリア歩き出しオノスという男の横を通り抜けていった。
町長はそれを静止するかのように二人を止めた。
予定よりも早かった為にこちらの準備もまだ整っていないと町長は慌てふためいている様子だ。
当然ルシュカが言った言葉は嘘だ。
俺達は最初からここへ一緒に来ていた、途中でゾーゼスで合流してからずっとだ。
セカンエンデにももちろん虚偽の到着時間を伝えていた。
楽神祭の前日に到着すると。
俺達はそれよりも前に到着するつもりだったが、事態は変わった。
トゥトゥー
「お待ちしておりましたルシュカ様」
ルシュカ
「あぁ、ご苦労だったトゥトゥー少し休め、すぐに仕事についてもらう為にも」
トゥトゥー
「ありがたきお言葉、ですがこのトゥトゥー、ルシュカ様の執事故、もう休養は取っております。何なりと思うし付け下さい」
先行して潜させたトゥトゥーも合流できた。
ならばこれからは時間の問題。
バラエ
「んじゃーお先に失礼しまーーっす!!」
トゥトゥー
「私も引き続き・・・チッ・・では!」
一瞬俺の方を見て舌打ちした気がしたけど、それだけ元気だってのがわかって一先ずは安心した。
オノス町長がユミィとルシュカに何か意味のないごますりをしているようだが、その内にクレエスさんの指示でサンリーの特殊捜索隊が一斉に町に飛び出した、音も立てずに誰にも気付かれずに。
俺達が出来る準備は全てした。
まずは何かを見つけ出すことからスタートしなくてはならない。
それを見つけるまでが勝負だ。
必ず突き止めて奴らの陰謀を暴く。
サナミ
「これからだね・・・」
カズキ
「うん」
シュリー
「何度も言うようだけど、変に先走るんじゃないわよ」
カズキ
「わかってる」
今まであった眠気が一気に吹っ飛んでいた笑えてしまうほどに。
クレエス
「了解、すぐに増援を・・・・・・何? かしこまりました」
すぐさま通信が飛び交っていたのがわかった。
特殊捜索部隊と、バラエ、そしてトゥトゥーから連絡が一斉に来た。
それもほぼ同時に。
トゥトゥー
「これは流石に異様です、私が探していた時にはなかった物だ次々と出現しております」
バラエ
「しかもあっちこっち!! うえーー気持ち悪いっす!」
つまりは・・・俺達を待ちに待ったと言いたいわけかハイトス!
クレエスさんからフォンに情報が全員に送信される。
その数に驚愕した。
カズキ
「ほぼ、町全体だと・・・!」
町の至るところに隠し通路や隠し扉、さらに人が出入りしないだろう場所まで、びっしりと怪しい場所とされるポイントがある。
ここまで多いか、逆に歓迎されてると思うと笑えてくるな。
だがそれも想定済みだ。
俺は太い線で繋げられたフォンを装着し、懐からエレメタルキーを取り出す。
カズキ
「シュリー使うぞ」
シュリー
「はぁ・・・予備があるからいいけど出来るだけ壊さn」
【マッピング オン】
【コンタクト オープン】
カズキ
「マッピングライドライブラリングアイッ!」
属性鍵、もはや属性でも何でもないがそこを気にするとシュリーに蹴飛ばされるから黙っておく。
俺はミツバを地面へと差し込む。
その瞬間俺の目の前にはグリッド線上の世界が広がる。
シュリー
「情報取得維持、急いで!」
ネシー
「はい!! わ、わかってます!!・・・・・・こ、こんなに・・・!?」
クレエス
「こちらでも情報引き受けます、処理出来ないものはこちらへ回して下さい」
俺の見ている情報、感じている情報が全てフォンを通じてネシーとクレエスさんの大型の端末に流れ込んでくる。
それをデータでは無く真素としての情報を二人は処理していく。
バギッ・・・・・・!
カズキ
「くそっ・・・もうかよ」
深く隅々まで調べるとなると真素を鮮明に、更に濃くしなくては見えない。
だがこれだけでは補助能力のキーがもたない。
シュリー
「やっぱ駄目か・・・耐久と真素濃度、色々ぶち込んだつもりだけど・・・ミツバ様お流石お流石」
嫌みをタラタラと流すシュリー。
本当に悔しいのだろう、自分の全能力を使って開発してもミツバの力がそれを圧倒的に凌駕するのだから。
ふはははは、誇れ誇れ。
と、ミツバの力に俺は鼻高々としているとシュリーが俺の傍まで来てミツバに触れた。
いや正確にはもう壊れそうなエレメタルキーに触れた。
そして懐から何やらコードの付いた物を取り出した。
シュリー
「サナミ、これ」
サナミ
「ん? え・・・っと」
サナミさんに投げた物は二つ、そのコードを辿っていくと途中で一本に交わりシュリーが持っている一つの装置へと伸びていた。
シュリー
「あまり使いたくなかったけど、背に腹は代えられないわ」
シュリーがミツバに刺さっているキーを抜き、そして別の装置を差し込んだ。
その瞬間俺の中に何かが入ってくる衝動に襲われる。
サナミ
「んんんんんんんんんん!!!! シュリー・・・これ・・何・・・よ!?」
シュリー
「ただの予備タンクよあんたは、大丈夫あんたがカズキの真素に触れることはないから安心なさい」
サナミ
「だか・・・っらってぇええ!!!! んんんん!!!!??!」
よく・・・見えた。
さっきよりも格段に鮮明に、全てが見通せた。
ネシー
「嘘っ・・・! 教授! こっちの容量がパンパんです!!」
クレエス
「このままでは先にこちらが処理落ちしてしまう可能性が」
シュリー
「わかってるわよ、想定の範囲内よ」
シュリーは気だるそうにして自分の付けているフォンを起動させた。
すると俺達の目の前にとてつもない量の紋章がずらりと並びだした。
良く見ると複数の同じ紋章だ。
一つ一つの意味はわからない、だが俺は見たことがある。
これはスクロールか!?
シュリー
「紙媒体のスクロールの時代は終わったのよ、ようするに簡易スクロール、その場で瞬時に術技を使える物・・・よっ!」
一気手を払い一斉に術技が発動されていく。
ネシーとクレエスの端末の処理が緩和されていく。
つまり今のは処理、解析、安定などの行う術技か。
サナミ
「流石シュリー・・ぃいいいいい!!!! 早く終わらせてえええええ!!んんんんんんん・・・」
シュリー
「ちっ・・・これで・・・!!」
用意していたシュリーの術技が次々と消滅していく。
消滅しては現れを繰り返しシュリーがその操作に尽力していた。
俺もミツバに力を入れ意識を向ける、この町に巡り廻っている全ての真素一つ一つを通していく。
俺が見逃してもネシーとクレエスさんがそれを解析して物を残してくれる。
そして俺の力を最大限引き出し続ける為にサナミさんも奮闘してくれている。
これが俺達の考えた最初の一手だ・・・!!
ミツバ・・・!!!
グジャァアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!!!
ガキンッ!!!
カズキ
「っ!!!!?」
まるで何かに弾かれるかのようにミツバが地面から抜かれた。
俺は・・・今・・・何を・・見た?
咆哮?
モンスターの・・・声?
わからない・・・俺は町の深層を垣間見た・・・。
間違いなく・・・それを俺は見た・・・。
ネーシ
「はぁはぁ・・・無事、終わりました・・・!!!」
クレエス
「情報収集完了、この町全ての形態地形、全てを情報として収集出来ました、予定通りの結果かと思われます」
シュリー
「そう・・・ならいいわ」
サナミ
「もう・・・無理・・・だよ~~」
みな地べたに座り込んでしまった。
その光景を見て笑みを浮かべミツバに接続されている装置を抜き手に取るが、もはや見る形も無くボロボロとなっていた。
確かにこの町全てを把握することは出来ただろう。
それだけの役目は果たせただろう。
だが、この装置が壊れたのはそれが原因じゃないと俺は思った。
見えなかった・・・この町に潜む何かが。
それが・・・それがきっと・・・。
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【水幸源の町セカンエンデ 孤児院】
ネーネ
「・・・ぅ・・んっ・・・」
身体が凄く重い。
私は・・・寝ていたのかな?
ここは・・・孤児院のベッドだ。
ミニア
「ネーネ!!」
ケイト
「よかった・・・僕マザー呼んでくる!!」
ミニアとケイトの声が聞こえる。
身体を起こす、ミニアが支えてくれ笑みで感謝する。
頭がぼうっとする。
一体・・・。
ネーネ
「あっ・・・!」
思い出した。
私は町長さんの家で・・・。
ドールブ
「ネーネ、私が見えますか? 喋れる?」
ネーネ
「は・・・はいマザー」
マザーが優しく手を握ってくれた。
それに私は心を落ち着かせた。
そしてみんなに心配させたことに謝罪をした。
そんな中ある事に気が付いた。
ネーネ
「チヨーは・・・あの二人は?」
ドールブ
「まずは安静にしなさい、食事を持ってきますからお話しはその後よ」
ネーネ
「・・・・・・わかりました」
きっとあの後も何かあったんだ。
ケイト、ダツ、ミニアはいつも通りにしている。
けれど少しだけ、わかった。
細かい事まではわからないけど、とても大事なこと。
不安な気持ちを抑え私は、マザーが持ってきてくれた野菜のスープを口にしていった。
そこでみんなが部屋に押し寄せてきた。
シスターは買い物ということで外に出ているとのことだった。
そして食事を終えた私にマザーとみんなが説明をしてくれた。
ここにターゼ王女殿下が現れたこと、そして水幸楽神の巫女のことを。
真剣にみんな言葉を一語一句たがわずに聞き入れた。
そうか・・・何かの勘違い・・なんだ。
勘違い・・・・・・。
みんなの顔を目にする。
私を心配する目、けどその奥の気持ちが手に取るようにわかった。
『今は・・・そうしよう、そうゆうことにしよう』
言葉にしなくてもわかった。
納得はしてない、けれど今私達がここで暴れても何もならない。
なら・・・今は。
ネーネ
「うん、みんなありがとう・・・心配かけてごめん」
私の言葉にみんな肩の荷が下りたような表情を浮かべていた。
意識もしっかりしたから私は、ベッドから降りる。
身体も少し鈍ってしまってる感じがあるけど大丈夫だ。
ミニア
「はいはい! 男子は外ー外ー!」
ダツ
「うい~~」
マザー一人を残して3人は部屋から出ていった。
マザーと二人きりなんて昔の私なら震えが止まらないで居ただろうけど。
マザー
「あなたが一番良く成長したようですね、好きな男子でも見つけましたか??」
ネーネ
「ふえぇッ?!? あ、そんな!! も、もうマザー!! からかわないでください!!!」
マザーがそんな話題を出したことに一番驚いた。
冗談でもそんな事を口にしない人だと思っていたのに。
そそそ、そんな・・・好きな人なんて・・・。
マザーが変な事を言うもんだから、私の名前を笑顔で呼ぶあの人の顔が浮かんでしまったじゃないか。
もう・・・!
ドールブ
「そこまで元気なら問題はないでしょう、支度ができたら出てきなさい。昨日の宿と食事分、草むしりと院の掃除をして頂きますからね」
ネーネ
「えー!? ・・・・・・はい」
マザーは・・・いつも通りのマザーだ。
結局私達の成長に合わせて対応も変えているだけ。
つまりはまだまだ私達はマザーには遠く及ばないってことか。
ネーネ
「マザー!! ありがとうございます!!」
ドールブ
「言葉では無く、行動で示す、いつも言っている通りです」
ネーネ
「はいっ!!!」
そうしてマザーも部屋から出ていった。
私も気合を入れ直しすぐにいつもの服へ着替えたのだった・・・。
・
・
・
結局俺達は掃除に戻された。
俺は雑巾で床掃除、ケイトは脚立を使って壁掃除。
ミニアは小物の掃除。
なんだよー俺だけ休憩無しでやらされてたからネーネが起きた時完全に出遅れちまったじゃねーか。
こうなったらめちゃくちゃピカピカにしてピカピカにし過ぎてマザーを驚かしてやる!!!
メレニア
「ただいま戻りましたぁー!!!」
ダツ
「ぐぇええ!!!!?」
メレニア
「あれ??」
突然扉が開いたその瞬間にシスターが飛び出し俺を踏みつけた。
しかも綺麗に俺の背中にの中心から叩きつけるように乗りやがって。
メレニア
「あら、ダツーそんな所で何やってるのよー危ないわよー???」
ダツ
「そう思うならさっさと退けよ馬鹿シスター!!!」
何で帰ってきてからずっと俺はこんな仕打ちばかりなんだ。
横暴にもほどがある、しかも未だに退かずにシスターのローブをヒラヒラと動かして回ってるのかよどんな畜生だよ・・・。
ダツ
「・・・・・・ん?」
俺は・・・シスターのローブの裾についている泥を見つけた。
すぐに地面を蹴ってシスターを上から退かして裾を手に取る・・・。
ダツ
「シスターここ汚れてる・・・じゃん」
手に取って良く見る・・・泥に似た・・何か。
メレニア
「えぇえー!!? うわぁ本当だ泥付いてる最悪ーーちょっと洗ってくるからーー!掃除さぼっちゃ駄目よー!!」
俺から裾を引っ張り自分で確認しすぐに逃げるようにして洗い場へと消えていった。
ケイト達は何だ何だって喋っていた。
いつも通りシスターはおっちょこちょいだなーと笑い話にしていた。
ダツ
「へっ・・・へへ、そ、そうだよなー!」
今は・・・話しを合わせた。
今は、考えないようにした。
今は、ネーネが起きたばかりなんだ、下手な事なんて言う物じゃない。
あれは本当に泥で間違いない。
俺の・・・・・・勘違いなんだ・・・。
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【水幸源の町セカンエンデ 町外設営地】
セカンエンデの全体マッピングを終えた設営地で一息していた。
だが、設営本部の中はまた慌ただしい。
ありとあらゆる情報収集と俺達が会得したマッピングを解析していき次々と部隊を動かしている。
この街を隅々まで探し紙一枚と見逃すことなく調査していく。
サナミ
「ふぇーー・・・」
シュリー
「来たわね、もう始まるわよ」
サナミさんは寝所で横になっていた。
シュリーは椅子に座りコーヒーを嗜んでいた。
もう始まるというのは、ついにユミィとルシュカと先方の王女様とやらのご対面の時間だ。
ただの挨拶ということだが、曲がりなりにも各国の代表としての席。
妙な緊張感が漂う。
というか、ここって確か俺のテントなんだが・・・。
カズキ
「・・・来たか」
場所は豪華な大使館のような著名人用の屋敷。
そこにユミィとルシュカはいる。
俺達はユミィとルシュカが付けているフォンを介して映像を見ている。
もちろん通信結晶類の物を妨害する真素が巻かれているようだが、その程度の物で我らが開発したフォンが阻害できると思うなーー!!!
なんて事は置いておいて二人の前には噂の王女殿下が現れたの・・・。
ターゼ
「あぁああああああ!!! ユミィーー!!! ルッシュ~~~」
一人の女の子が二人目掛けて飛び付いた。
出入り口から窓際にいる二人目掛けて一気に飛び掛かったのか今。
それを二人はスッと横に移動し避けた。
ルシュカ
「ご無沙汰しております、ターゼ王女」
ユミィーリア
「元気そうで何よりですターゼ殿下」
一切目を合わさずに乾いた言葉で挨拶をする二人。
あぁーなるほどねー、化け物ってそうゆう・・・。
ムーゼ
「おまたせして申し訳ありませんでした、ムーゼ・ビズスです。本日は遠いところご足労頂きありがとうございます」
ユミィーリア
「いえこちらこそ、ターゼ殿下の元気な姿を見れて何よりです」
ルシュカ
「そうで・・・すぐぅうう!!?!?」
ん? ルシュカの画面が荒れだした。
ターゼ
「ルッシュ~~~あの時みたいに甘いあま~~い~~~ん~~~~んんんん!!!」
ユミィーリア
「・・・ヨシッ!」
ルシュカ
「な・・・なに言って!!ちょっとやめろぉおお!!!」
小さくユミィがガッツポーズをしていた。
まさかとは思うがターゼ王女の矛先がルシュカに向いたからのガッツポーズかそれは?
ルシュカは押し倒されて好き放題やられたのか・・・画面は完全に天井を向いてしまい何が起きているのかわかったもんじゃない。
それはそうと、とユミィは改めてソファーへと移動しムーゼという女性も何事もなかったかのようにソファーへと座る。
完全にこなれてる感が凄い。
ユミィーリア
「それにしても驚きましたよ、急に呼び出されて来てみたらお祭りをされるとかなんとか、詳細は教えてくださらないのですか?」
ムーゼ
「ふふふ、もうお調べになってると思ってましたが、特別な事はしません。ただ今回、楽神祭がどういったものなのか各国の人々に知って頂こうというのが趣旨です」
至極真っ当な意見だことで。
要するに自分達はこういった善行を積んでますよ、みんなも世界の為にはいお祈りーーってか??
はぁうんざりだな、溜息が出てくる。
確か姉だったけかこっちは。
彼女の表情を見るに嘘は言っているようではない。
となると、何か知ってそうなのは・・・。
ユミィーリア
「ふあぁああ!?!?!??!!?」
ターゼ
「んふふふん、相変わらず耳は弱いんだね。か わ い い ー」
今度はユミィの映像が乱れだした。
そうか・・・ユミィーリアは耳が弱いのk。
カズキ
「ごほぉあ!!! 痛っ!!?」
横腹に蹴り、遠くから何か固い物ぶつけてきて、一体何なんだよもう・・・。
にしても偶然かな・・・今のまるでユミィの耳に直接話掛けたというよりもわざわざフォンを付けているようにも思えたが。
ターゼ
「いいなぁ~~ルッシュにも付いてたけど~~新しいお洒落???」
ユミィーリア
「・・・・・・あはは、そそうなんでよー、ルシュカ姫君から友好のということで頂いた物でして・・」
ターゼ
「へぇ~~・・・へーー!! いいなぁーー!カッコいいなぁー!!」
待って・・・完全に理解してないかこいつ!?
まるで俺達が見ているのがわかるようにこちらを覗きこんでくる。
こっちに見えるようにわけのわからん踊りもしているし。
ターゼ
「あぁ~~流行りなのか~・・・そう言えばみんな付けてたもんね、セカンエンデに来た人たちも似たようなの」
何・・・。
こいつまさか。
見ていたのか・・・いやだとしてもそこまで。
ターゼ
「駄目駄目ユミィーー悪いことでも企んでるの~~???」
ユミィーリア
「そんなはずありませんよ、まったく何を根拠に・・・・・・ってあ!!」
ターゼ
「じゃあこれ少し貸してくれてもいいよね~、んとね~あそうだ! ユミィーリア王女殿下の好きなタイプの男性と告白されたい場所は~~夜のお花畑で~空から王子様が~~」
ユミィーリア
「あああああああああああああああああああああああ!!!!!」
俺は・・・・・・そっとフォンを切った。
横眼でシュリーを見ると完全に蹴ろうとしてた体勢だし、背後からは物凄い殺気を感じる。
これ以上は俺の体がもたない、自己防衛に従った英断だ。
それにしても夜のお花畑で空からか・・・・・・なんか思い当たる節が。
ドスゥウ!!!!バゴォオオ!!!
シュリー
「これじゃあ後はユミィとルシュカに任せるしかないわね」
サナミ
「そうだねー・・・・・・はぁ行けなくてよかった」
・
・
・
なんて恐ろしい事をこの人は口走ろうとしたんですか!!
ターゼ王女からフォンを奪い取り咄嗟にフォンを切ってしまった。
まさか今の聞かれて・・・なななななんて顔向けすれば!!
ターゼ
「あれれれれれ??? お主顔が赤いぞよ~~"殿方に聞かれてる"わけでもないのにね~~???」
ユミィーリア
「くぅうぅ・・・・!!!!!」
ここで下手に反応しては相手の思うつぼ。
ならここはいた仕方ないです。
私達でここを上手く切り抜けていくしかない。
どんな術技か何か知らないですが、このままフォンを使用しての会談は危険。
私はこのままフォンを切ったままこの化け物に対峙・・・ルシュカさん??
ルシュカ
「・・・・・・・・・」
タヌキ寝入りでもしてるのかこの人はぁあああ!?!?!
初手であなたを生贄にした報い、あなたは私にそう言いたいのですか!!?
ユミィーリア
「コホンッ!!! 話しを戻してもよろしいですか?」
一呼吸置き一先ず冷静にならんくては。
改めてムーゼさんと同じようにソファーに腰かける。
ユミィーリア
「先ほどの続きでいたが、ムーゼ様のおっしゃる通り少しは調べたのですが、どうも気になった事がありましたので。すみません無粋な真似をしてしまって」
ムーゼ
「いえ・・・・・・それで、どういったことを?」
ユミィーリア
「それは・・・水幸楽神の巫女、についてです」
一気に本題を進める。
こちらの手札はほとんど限られてる。
だからここは相手の出方を見るのが一番。
ユミィーリア
「どうやら特殊な鍛練を積まれている者が巫女として役割を担う、その為にも極秘とされている事まではわかったのですが・・・」
ターゼ
「僕達も知らないよ~~?」
ターゼ王女が私の膝に頭を乗せてきた。
これくらいならまだ大丈夫・・・。
冷静に返答を考える。
一国の王女がその詳細を知らないということはあるのか?
ユミィーリア
「知らないというのは、どなたが今回を巫女を担うかわからないということですか??」
ターゼ
「そゆこと~~」
極秘だからか、あるいは彼女達に知らせる必要がないから?
だとしたらターゼ王女がここへ呼ばれたのは何かのフェイク?
私達を餌にした・・・とでも。
ターゼ
「それに特殊なことなんてしないよ~、ただ湖で御祈りし続けるだけだよ、僕の時はね~~」
ユミィーリア
「僕の時・・・? それはどうゆう」
ムーゼ
「ターゼは・・・元水幸楽神の巫女、一番最初の巫女として王女の席を頂いたのです」
それはまた新しい情報だ。
つまり彼女、ターゼ王女は王族ではない・・・。
この天真爛漫な態度もある意味納得するにはするけど・・・。
ターゼ
「あんまり驚かないね???」
ユミィーリア
「え!? あぁあー驚いてますよ、ただ・・・お祈りとは、実際にどういったことなのです?? それでしたらわざわざ新しい巫女を選ばずにターゼ殿下がなさればいいのでは?」
ムーゼ
「それは・・・・・・」
ムーゼさんが言葉を詰まらせた。
やはり理由があるということか、必ず新しい巫女を選ばないといけない理由が。
ターゼ
「死にかけたんだよ・・・私」
ターゼ王女がいつもよりも感情を消して言葉を発した。
その言葉と声質に驚いてしまった。
ターゼ
「どうも神様ってのはさー傲慢でね~~、一回受けた祈りはもう一度受けてくれなくてさーーあれは参ったよ~~」
ユミィーリア
「何があったのか・・・聞いてもいいですか?」
ターゼ
「んーーっと意識が飛んで私覚えてないんだよね~~後から聞いた話では一日中寝ちゃってたみたいでね~~ごめんね~」
意識を飛ばした?
それも一日中?
彼女が嘘を言っているようには思えなかった。
もう一度同じように祈りを捧げたら意識が飛んでしまった、まるで何かに持ってかれるように彼女は言った。
つまりそれだけの事がこの祭りでは起きるとでも言うの?
ムーゼ
「それからです、3回目以降の楽神祭は違う者を巫女として選抜し祈りを捧げてきたのです、もう、あのような事故を起こさない為に・・・」
ユミィーリア
「あのようなって・・・何か知ってるんですかムーゼさんは!?」
ムーゼ
「いえ・・・私はただ・・目覚めないターゼが心配だっただけです・・・」
顔を伏せた。
ムーゼさんはずっと嘘を言っていない、けれど何かを隠している。
私の直感がそう呟く。
ターゼ王女殿下は本当に何も覚えていない。
けれど、側近、しかも姉妹のムーゼさんがその2回目の楽神祭見ていないわけがない、傍に居なかったわけがない。
ユミィーリア
「じゃあ・・・っ!!? ルシュカ?」
ルシュカ
「うん・・・そろそろ我々はお暇させて頂こう昼食を共にする約束があるのでな」
ムーゼ
「そうですか・・・お時間ありがとうございました」
私達はほぼ強引に話しを切り上げたのだった。
ルシュカが止めてくれなかったら私は・・・もっと彼女達を傷付けていた可能性があった・・・。
まだまだだな、こういう所が。
ちゃんと人を見て話すように気を付けているのに・・・。
反省をしながら部屋を後にしようとするとターゼが声をかけてきた。
ターゼ
「別に疑ってるつもりはないけど・・・・・・あまり下手な事はしない方がいいよ~~お互いに」
ルシュカ
「・・・・・・忠告感謝する殿下、逆に我々は野営地にいる、何かあれば寄ってくれすぐに駆け付ける・・・姉君様も、同じようにな」
こうして・・・私達の会談は終わった。
ルシュカは十分だと言ってくれたが、本当に予想を上回る事になっていた。
巫女。
祈り。
湖。
二度目。
そしてムーゼさんのあの表情。
何もない訳がない、きっと大きな事が起きたんだ。
その事故があったから・・・詳細が変わったのだ、楽神祭の。
一つ一つ、紐解いて行くしか、今の私達には手段がなかった・・・。
だけど私達には・・・それが許される時間は・・・ない。
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【水幸源の町セカンエンデ 町外設営地】
ユミィーリア
「はぁ・・・凄い疲れました」
カズキ
「お疲れ様様・・・ほいコーヒー」
ユミィーリア
「ありがとうございます・・・あ、あの・・・」
カズキ
「何も聞いてないよ何も」
コーヒーを受け取って早々に俺を見る。
話しに聞いていた以上の化け物だった事に驚きはしたが、ひとまずは無事に終えて何よりだ。
通信を終え、先にルシュカがこっちのテントまで来て色々事情を聞いた。
ユミィはどうやらドレスから着替えてきたようだった。
ルシュカはの話をみなで聞き今後の方針を話し合っていた。
とは言っても、過去の実態を聞いたところでこちらとしては進展の兆しがあるようにも思えない。
少なくてもその2回目の楽神祭で起きたとされる事件の詳細でもわかればいいのだが・・・。
ターゼ
「ふ~~~ん・・・お兄さん、知 り た い の ?」
カズキ
「ん?」
俺の背後に何か生暖かくて柔らかい感触が当たってる。
そして俺の全身を撫でるように手が触れていく。
ついに俺は背中を見られただけで思考が読まれるようになってしまったのか。
カズキ
「・・・・・・あんたは?」
ターゼ
「おや、釣れないね~~、そ れ と も こうゆうこと慣れてるのかな~~???ここにいる誰と~~????」
サナミ シュリー ユミィーリア ルシュカ
「「「「なっ・・・!!?!??」」」」
全員が慌てふためいていた。
何だろう・・・不思議と冷静にいる自分がいる。
なるほど、これがターゼ王女殿下か、どうしてここにいるのかわからんが一先ずは、出会ってないことで通した方が良さそうだ。
カズキ
「困りますよ、ここは関係者以外立ち入り禁止です」
ターゼ
「だってそこにいる爆破ッ子が来ていいって言うから~~、あ、それとも~~あなたに会いにきたのって言った方が燃えるってやつ??」
今度は正面に移動し抱きついてくる。
何だろう不思議と俺は完全に動揺というか、何かのスイッチを切ってる。
あ、わかった・・・これ取引先の厚化年増ババアに擦り寄られてる時と同じ奴だ。
あぁ~なんか思い出してくる、最初の頃は凄く動揺していた。
だがある時に気が付いたんだ、こうゆうババアは反応を楽しんでいるのだと、つまりこちらが変に反応するからつけ上がる。
そっちの人生経験は少ないけど、こういった経験ばかり重ねて・・・・・・はぁ。
カズキ
「ごまかすのも面倒だから単刀直入に聞くが、何か用ですかBB・・・あんたは?」
ターゼ
「BB??」
ヤバいつい最近の口の悪さが出そうになってしまった。
まぁ確かに、ここ最近の人間ではそれなりに素晴らしい物を持っているようにも見える。
恐らくここにいる者の中で一番・・・・・・これ以上はやめておこう。
カズキ
「遊びで来たのなら、お帰り願いたいのだが?」
ターゼ
「えぇ~~・・・なんか反応違うな・・・つまんない」
カズキ
「・・・っ!!」
王女殿下の首根っこを掴む。
ターゼ
「ごめんごめん嘘嘘!! ちょっとキツイな~~もう」
カズキ
「あぁん!!??」
ついガンを飛ばしてしまった。
あー更にイラつくのがこの口調か、会社にいた給料泥棒、仕事しない癖に口ばっか達者で、どれだけ俺が尻拭いしても全く反省学習しないくそ野郎だ。
カズキ
「じゃあ要件をさっさと言わないと・・・」
俺は透視でテントの外を確認した。
やはり居た。
ムーゼ
「もう・・・! ターゼ何処に・・・!!! もう勝手にいつもいつも!!」
そう、お目付け役に引き渡せば恐らく全て丸く収まる。
少なくてもここは一時的に俺達の領土みたいな物だ、筋は一応通るだろうしな。
ターゼ
「わかったってもう・・・!! でもそうゆう扱いが僕の心を揺らしちゃうんだ・・・ゾ!」
カズキ
「ちっ・・・」
ターゼ
「ごめんって!!! 謝るからムーゼを呼ばないでって!!! 本当にごめんなさい!!! 僕はみんなに助けを求めに来たんです!!! 本当です!!!」
はぁ・・・ようやく話しが進みそうだ。
でだ。
カズキ
「助けねぇ・・・具体的に聞いてもいいんですか?? てか話せるんですか?」
ターゼ
「それがだね!! 僕も詳しくはわからないんだけどね~~まぁうん!そう!!まさに闇の組織宇宙人と共闘し世界の滅亡を・・・・・・ちょっと!!待って!!本当なんだって冗談じゃないんだって!! ごめんなさい真面目に話しますから席を立ってテントから出ていかないで~~!!」
本当につまみ出してやろうかコイツ。
ついには俺の怒りも限界を超えるぞ、こいつは俺を怒らせる天才なのかもしれない。
カズキ
「・・・で?」
ターゼ
「あぁ~~ええと~調べて貰いたいことがあるんです~~って」
カズキ
「・・・何を」
ターゼ
「怖いからまず一回座ろうよ~~怒ってる時のムーゼみたいで嫌よ~~」
カズキ
「駄目だ」
何故かターゼ王女が正座して俺が腰に手を当て子供を叱りつけている親のような形になっていた。
なんでこんな事になってるんだ。
横眼で他の奴らを見るが一応は聞く耳を立てているが、出来るだけターゼ王女の視界に入らないように息を潜めていた。
そんなことをしていたら、外から声が聞こえてきた。
ムーゼ
「申し訳ありません、ターゼ王女殿下を見ませんでしたでしょうか、えっと身長はこれくらいで童顔で無駄に胸が大きくて一人称が僕で・・・知らないですよね、失礼しました」
さぁタイムリミットは押し迫っているようだが。
一行に本題が見えてこないんだが・・・。
ターゼ
「ええっとぉ~~助けてもらいたいってのは本当で何から説明していいのか・・・!!!」
カズキ
「はぁ・・・」
こうなったらもう駄目だ。
確かに俺の落ち度かもしれない。
俺はテントの中にあるフォンを一つ手に取り手渡す。
そして・・・首根っこを掴み。
カズキ
「いましたよぉぉおーー!!! かくれんぼするなら他所でやってくださーーーい!!!」
ムーゼ
「あぁ!!! 本当にすみませんすみませんすみません、ほら行きますよ!!」
ターゼ
「う・・・うん」
一先ずは事無きを得た。
はぁ・・・これでよかったのだろうか。
でもまぁ冗談やらはぐらかしはあったにせよ、嘘はついてないようだったが。
カズキ
「ったく・・・迷惑極まり・・・」
俺は・・・忘れていた訳では・・・無かった。
カズキ
「へっ・・・」
最近・・・こんなんばっか・・・・。
ボオォォォオォオオオオォォォオォンッ!!!!!
・
・
・
結局、あれから解放されたのは夜だった。
みんなもあらゆる事で気が滅入ってすぐに寝てしまった。
この町に到着したばかりで疲れが溜まっててもおかしくはない。
なんだかんだで俺は荷馬車に揺られ慣れたのか意外に好きなのか、はたまたよく寝ていたからか体力がまだ余っていた。
まぁ寝ようと思えば寝れるが。
カズキ
「それにしても・・・いつ連絡来るんだ?」
かなり待ってはいたが、ターゼから連絡が一切ない。
忙しいのか、それともフォンを没収でもされたのか・・・。
いや・・・今さら気が付いたが、使い方知らないのか。
はぁ・・・自分の落ち度で溜息が出る。
こんな時間だし・・・いや、今の時間だからこそか。
俺はフォンを装着してターゼに渡した自分のスペアに連絡を取る。
カズキ
「・・・・・・・・・」
コールが鳴り続けるだけで反応がない。
やっぱり寝ているか、そう思い通信を終えようとした時反応があった。
カズキ
「ん? おい」
ターゼ
「は・・・はいぃい!!!?」
なんか変な返事が返ってきたな。
寝ていたわけではないようだが・・・。
ターゼ
「あはは~・・・いやこれ凄いねー! 流石通信結晶を作ったシュリー博士様でごわすなぁーあはは」
カズキ
「お前・・・さては機械音痴・・・・・・文明音痴だな??」
ターゼ
「え~そんな~~・・・はい~・・・」
意外だな、こうゆう場合はしっかり者の妹の方が音痴でというパターンが多いが、まさかこのババア予備軍が機械音痴だとは。
だと言う事は・・・。
カズキ
「お前フォンを・・・その機械をどうやって触っていいかわからなくて一日を潰したろ?」
ターゼ
「ぬぅぅう! 失敬な! ただ不要なトラブルは避けていたと言ってほしいな!! 壊さなかっただけ褒めてほしいのだよ!」
なんだか、こいつの扱いが慣れそうだ。
不思議と笑みがこぼれる。
意外にも・・・という、ギャップか。
カズキ
「今は自室か? 俺は外なんだけど、ここから海の方角を見ると凄いな、まるで二つの世界があるみたいだな」
地面に座って胡坐をかく。
完全にリラックスした状態で会話をする。
ターゼ
「うわぁ~~お主、天然タラシって言われない? そんなロマンチックな事言ってあの超人共を手駒にしたのだろう??? 悪よのぉお~~~」
カズキ
「いや、その逆だって、尻に敷かれてるのは俺の方だよ、さっきまでずっと説教と暴力のオンパレード、もはや敷かれるってレベル超えてる。はけ口だよはけ口」
ターゼ
「はははは・・・なんじゃそれ」
なんか久しぶりだな、こうやって馬鹿みたいな話しを異性とするのは。
改めて考えてみるとうちの女性陣は血気盛んなのが多いとは確かに思う。
何かあればすぐに怒って手を出すし、出さなかったとしてもグチグチ機嫌が悪くなる一方だし。
女友達ってのは以外にもターゼみたいな事を言うのかな?
男も女も境がない関係なんて無いと思っていたが、こうゆうのもあるってことか。
ターゼ
「なぁなぁ、お主は、その見ている景色・・・どんな風に見えるよ?」
カズキ
「んーー・・・どうだろう、ちょっと難しいな」
口調はいつも通りの物、だけど声質が一変していた。
真剣に聞いて欲しい時の声だ。
それなのに俺は、しょうもない返しをしている辺り恥ずかしい気持ちになる。
ターゼ
「何でぇい、話しを聞いてくれるわりに適当だな」
カズキ
「まぁーなぁーん、で? お前はどう見えるんだよ」
ターゼ
「かぁ~先に言わせるのは中々ずるいと思うが、まぁいいか」
ターゼは・・・一拍を置いた。
気持ちを整理しているのだろう、これから言う自分の気持ちを。
ターゼ
「海と空・・・私達が見ている物は隣合わせですぐ近くにお互いがいるように見える・・・けど、お互いが大きい大きい存在でどれだけ大きくなろうと、決して・・・交わることのない存在。そう・・・見えるんだ、僕には」
カズキ
「交わることのない・・・か」
彼女の言うことはもっともだった。
俺達という目線では、まるで仲の良い存在、二つが並んでように見えて勝手に奇麗だと感じている、だが当の本人である海と空は本当の意味で交わっていない、そして交わることはない。
どれだけ自分が大きくなって近付こうとしても、その距離を縮める事が出来ない。
そして考える、無理なのではないかと。
自分が大きくなればなるほど・・・まるで遠ざかっているように感じる。
何故なら人々の目線がそれを歪ませる、それは身勝手なものだから、自然と大きな方へと目線を映してそれを綺麗だと口にする。
そんな事だけならまだいい・・・。
最悪は。
片方は汚い。
そう言う奴も確実に出てくる。
これが彼女の、頑張って言葉選び勇気を振り絞った彼女が言いたいこと・・・だがこれも俺の勝手な解釈。
ターゼ
「難しいと思うよ、本当に」
カズキ
「だな・・・難解な問題だ・・・けど」
俺も一拍を置き言葉を選ぶ。
相手に適した言葉じゃない、ただ俺が思ったこと。
彼女の言葉を聞き入れ、この瞬間に俺が思った偽りのない言葉を。
カズキ
「お互い・・・ずっと見合ってきた証拠、なんだろうな」
ターゼ
「・・・・・・見合って・・・きた?」
カズキ
「だってそうだろ、どちらが上か下かじゃない、お互い見合っているからこそ、相手の大きさを理解している、理解しているからこそ自分も大きくなろうとする・・・きっとお互いそれは感じているんだと思う、そして感じているからこそわかる、大きくなろうとするのは、容易なことじゃないってことが」
ターゼ
「・・・・・・うん」
カズキ
「歯痒いだろうな、きっと海が苦しんでる時に空は手を伸ばすことが出来ない、逆も同じだ・・・手を伸ばしたいのに叶わない、それは本人達にしかわからない遠い遠い距離、わかってるから・・・交わりたくても交われないから・・・本当に歯痒いな」
ターゼ
「・・・そう・・・きっと・・叶わ・・ない」
ターゼの声が震える。
自分がどれだけ苦しんできたか、苦しんだ分、相手も更に苦しんでしまう。
だがそれを表には出しては駄目なんだ・・・。
空と海は・・・綺麗で無くてはならないから。
綺麗にしようとしている人間がいる、その気持ちを無下にしてはいけない・・・から。
自分達は、自分達だけの物では無くなったから。
だから・・・これは決して叶えてはいけないのだと・・・。
うんざりだな。
カズキ
「でも俺は・・・・・・どんな海でもどんな空でも絶対に綺麗って言う自信はあるぞ」
ターゼ
「・・・え?」
カズキ
「だって・・・そんなのも、見てみたいじゃないか。
一度汚くなってしまって、それが長い間続いたとしても・・・。
1ミリ・・・たった1ミリだけかもしれない、いや俺達じゃあ見えないのかもしれないな。
でもさ、本人達だけはきっとわかってる。
『やっと近付けた』
・・・ってさ」
それが・・・彼女達にとっての掛け替えのない物のはずだから。
カズキ
「だから俺だけは・・・・・・"俺達だけ"は、絶対に綺麗だと言ってみせるよ」
ターゼ
「・・・っ!!?」
大量の画面が一気に展開した。
ユミィーリア
「はい、私達はきっと・・・!」
レイドラ
「それは絶対に凄いよ物だよ!! 我が保障するよ!!」
トゥトゥー
「老いぼれには眩し過ぎるかもしれませんがね」
クレエス
「記録として残す価値は大いにあるでしょう」
ネーシ
「私も!!」
「俺達も居るぜぇー!!」
「くぅう!!! 言葉が染みるぜー!!」
「だぁあああ!!! なんて・・・なんて・・・!!!」
「どんだけ・・・泣き・・過ぎだ・・・馬鹿野郎ぉぉおお!!!」
「お前も貰い泣きしてどうするんだよ」
ターゼ
「これは・・・・・・」
カズキ
「さぁーー!! あとはわかってるな?」
勢いよく立ちあがって無駄に気合いを入れた。
そう、後は・・・あとは・・・。
・
・
・
この人達は・・・一体何なの・・・。
僕なんかの頭じゃあ理解出来ない。
頭がおかしくなりそう、いやもうなってるよこれ。
理性が吹き飛びそうになる・・・なんでこんなにも・・・こんなにも。
ターゼ
「僕・・・は・・・」
言葉が出ない・・・どうして・・・。
どうしてこんなにも・・・。
胸が・・・苦しいの!
こんなに・・・こんなに苦しいならいっそ・・・!
言葉がずっと胸を切り刻む。
痛い・・辛い・・苦しい・・・これが。
だから、駄目なんだ・・・汚れてしまっては・・・。
こんなのを見せちゃいけないんだ・・・人に・・"あの子”に。
シュリー
「忘れてるようだけど、自分から踏み込んできたんだからね? この無法投棄された汚い大沼に」
ターゼ
「僕・・・から・・・」
そうだ・・・。
なんで僕は・・・・・・私は・・・。
それはきっと・・・。
あのテントへと入ろうとした時の。
漏れ出ていた声が。
声達が・・・。
『はぁ・・・凄い疲れました』
『お疲れ様様・・・ほいコーヒー』
『ありがとうございます・・・あ、あの・・・』
『何も聞いてないよ何も』
『本当ですか!!?』
足が止まってしまった。
何故か・・・震えた。
なんでかなんてわからない、ただ遊びに・・・いつも通りからかってやろうって。
なのに身体が動かなかった。
『だってこいつ等にボコボコにされてたんだよ!!』
『あぁん!!!? 何か言ったかしら!!!?』
『私達が悪いんだーー!??』
『じゃあタヌキ寝入りしてた奴が悪い!』
『貴様ここで雌雄を決したいようだな!!』
『姫様の無礼、ここで百倍で御返し致しましょう!』
『卑怯過ぎるだろぉお!!』
違う・・・これは自由が効かなかったんだ。
だって・・・あの時の私は、僕じゃなかった。
どうして・・・何も考えられなかったんだろう。
『秘密を勝手に知る方が卑怯だと思います!』
『不可抗力不可抗力、あーあー何も聞こえませんでしたー知りませーん』
『最低だよ』
『馬鹿』
『酷いです』
『愚劣だな』
『阿呆』
『あーあー整理整理あーあーお話し整理整理あーあーあー』
だから違うんだ・・・それすらも許さなかったんだ。
僕の中の何かが・・・何かが訴えていた。
タスケテ・・・。
コノヒトタチナラ・・・。
タスケテ・・・クレル。
ワタシタチヲ・・・。
僕の・・・足は・・そう勝手に・・・動いてしまっていたんだ。
高鳴る鼓動を感じてしまって。
抑えることのできない気持ちを。
張り裂けそうな感情を抑えても、抑えてるつもりでも。
私は、あのテントの中に一人で入ってしまったのだ・・・。
ルシュカ
「かなりの底なし沼だ気を付けろ?・・・更に奥に入るなら覚悟がいる? 一度入ったらそう簡単に出ることは出来ないだろうな」
ターゼ
「覚悟・・・」
今の僕は・・・あの時のように動けないわけじゃない。
身体も動く、理性もある、鼓動もあの時ほどじゃない。
だから・・・引き返すなら今なんだ。
今ならきっと・・・戻れる・・・。
戻る・・・・・・何処へ?
戻って私は・・・何を。
私は・・・僕は、何がしたいの?
僕じゃ・・・何も思い・・・付かない。
真っ白だ。
サナミ
「私達は・・・最後まで必ず見届ける、どんなことをしても・・・それを願うなら、叶えたいと思うなら、絶対に」
ターゼ
「・・・叶えたい、なら?」
僕の願い、私の願い?
そんなの・・・。
そんなの決まってる。
ずっとずっと私は願っていたんだ。
もう・・・・・・やめようって。
ずっとずっと叶えたいってお願いしたくて。
だから・・・ずっとお願いしていた。
叶わなくたってずっと・・・だから。
だから・・・・・・。
カズキ
「沼! そう! 多彩色ヴェアリアスは汚い沼!!
だってどいつもこいつも色濃いんだもん!喧嘩ばかりしてる!お互いの色が邪魔し合ってる!
けど、そんなんだけど・・・それでも良いって俺達は・・・知ってるんだー。
悪いこと多いし、苦しいことだらけだし、辛いことばかりだし、だからこそ!
俺達は沼に入り続ける、だって沼に入らないと見えないんだもんな、こいつ等の顔がさ」
私も・・・見たい。
ほんの少しかもしれない、もしかしたらここから先ずっと泥沼の中かもしれない。
確証なんてない、当たり前だ。
だって入らなくても確証なんてないんだから。
だったら入ったっていいじゃないか。
私は・・・もっと見たいんだから。
あの子の・・・ムーゼの顔を。
もっともっと知らないといけないんだから。
私は・・・・・・静かに・・・。
ターゼ
「助・・けて・・くだ・・・さい!!! おねがい・・します!!!」
泥沼に浸かったのだった。
どいつもこいつもめちゃくちゃな事を言う泥沼に。




