第四話 贈呈親器 パートナー
僕達は遺跡のダンジョンを突破した。
最後にはギフトと呼ばれる所で力を手に入れた。
ダンジョンから地上出た僕達を待ち受けていたのは、あの先輩冒険者達だった。
多くの援軍を呼び僕達に襲いかかるつもりだったが。
カズキさんが全てを撃退した。
それは、容赦のない物だった。。
だれ一人攻撃、ダメージを与えることすらできずにいた。
どれだけ人を集めようと抗うことすら出来なかった。
そんなカズキさんは、僕達にこれが出来る可能性を示唆した。
そしての意味をしっかりと噛み締めるようにと言い放った。
僕達がギフトで手にした武器の力にはそれだけの可能性を秘めているのだからと・・・。
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あれから僕等は町に帰り宿屋へと向かった。
カズキさんとは途中で別れ、明日みんなでスタンバまで来るようにと言われた。
今回の事を報告しなくてはならないみたいだ。
僕達は明日またカズキさんと会う事を約束しいつもの格安宿屋へと帰った。
みんな宿屋に入るとぐったりして自分達の布団に寝転びすぐに寝てしまっていた・・・。
【北西町ウェイス 冒険者ギルド スタンバ館】
ダツ
「ふわぁああーーねみぃ・・・」
僕達四人はカズキさんとの約束の時間前にスタンバの入口に集合していた。
流石に僕も味わったことのないほどの疲労感と睡魔に襲われた。
みんなも同じみたいだ。
宿屋に帰ってすぐに寝たはずなのにまるで寝足りない状態だ。
ネーネは自分も含めて寝過ぎが問題かもと言っていたが。
カズキ
「おはよう、みんな大丈夫・・・そうではないなははは」
カズキさんが来た。
僕達とはうって変って爽やかな笑顔で朝の挨拶をしくれた。
そんなカズキさんにみんな揃ってテンションの低い朝の挨拶で返した。
ミニア
「なんかもう・・・体重いし眠いしで、なんかぐちゃぐちゃです」
カズキ
「あぁー・・・それは寝過ぎだな」
今朝のネーネと同じ事を言われた。
やっぱりそうゆうことなのかな・・・。
それから僕等はカズキさんの後に続き冒険者ギルドのスタンバ館へと入る。
開店から少ししたくらいの時間で他の冒険者さん達はいつもより少ない。
だけど、見たことのない人が一人、奥の部屋からカズキさんへ声をかけた。
「やあ、カズキ君。いつも呼び付けてすまないね」
カズキ
「いや、鬼達から解放してくれるなら喜んで何処へだっていくさ」
鬼達・・・。
深く考えるのだけはやめておいた。
エイジルト
「そうか、君達が報告にあった子供達だね、初めまして、私はエイジルトという者です。基本的にはカズキ君の尻拭いをしてる冒険者ギルドの役員だ。」
カズキ
「ははは・・・」
エイジルトさんが丁寧に自己紹介をしてくれた。
全く表情一つ変えない人だ。
だけどカズキさんとのやり取りを見ていると悪い人ではなさそうだった。
確実にカズキさんが居なかったら避けていた大人の人だと思う。
エイジルト
「まぁーつもる話しもたくさんあると思うから、ひとまず奥に入りなさい。 中で飲み物でも飲みながら話しを聞かせてもらうよ」
ミニア
「奥・・・!?」
みんなが顔を見合わせた。
スタンバの奥・・・。
噂では聞いたことがある、それは地獄の門だと。
奥に入った者は再びこのスタンバへ戻る時には精気を抜き取れ冒険者人生に終止符を打つ者も少なくないと言われている所。
まさか僕達・・・何かしてしまったのか・・・!?
みな息を飲む。
カズキ
「ほら、早く行くぞー」
そうだ!
僕達にはカズキさんがいる!
少なくても死ぬようなことは決してない・・・はずだ。
意を決し、僕達はカズキさんの後に続き、今までほぼ毎日足を運んでいたスタンバの未知の領域へと足を踏み入れたのだった・・・。
【スタンバ館 客間】
僕達が入った部屋は・・・豪華なお部屋だった。
中央にはフカフカのソファ、一度座ったら立ち上がることが出来なくなってしまいそうな物。
そして周囲には高価そうなアンティークや武器や防具だったりと飾られていた。
ネーネ
「はぁ・・・よかった」
ネーネが緊張していた気の荷を降ろした。
それを見たカズキさんが何故か笑っていた。
カズキ
「ははは・・・、変な尋問室にでも連れて来られるとでも思ったかな?」
エイジルト
「お望みならそちらでも構いませんよ、専門職ですから」
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「大丈夫ですっ!!!!」」」」
僕達はそそくさと目の前のソファへと座った。
カズキさんはそれを見た更に笑っていた。
僕達を笑ったというよりもエイジルトさんへ向けて笑っているようだ。
カズキ
「本当に大丈夫だから・・・俺もこの人にこっぴどくやられたことあるけど、悪い事しなきゃ基本的に無害だから」
笑いながらカズキさんが教えてくれた。
口ぶりからして、その尋問室というところに一度お世話になったのか!?
エイジルト
「そうだね・・・君達もそんな所はごめんだろう、私も心苦しいので、気を付けてくれるだけでいいよ」
みな一瞬背筋が凍り付いてしまった。
ただ首を連続で縦に振るって返事をすることしか出来なかった。
またそのやり取りを見てカズキさんは大笑いをしていた。
そんなこんなで早速昨日の出来事のお話しをした。
僕達が経験した全てをエイジルトさんへと伝えた・・・。
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「失礼しました・・・」
飲み物を持ってきてくれた受付のお姉さんがお辞儀をして部屋を出た。
本当に飲み物を飲みながらただおしゃべりをしていた。
鮮明に聞きたいとエイジルトさんは話していたのでみんな思い思いの事をたくさん言葉に出した。
エイジルト
「んーん、そうですか。 災難でしたね、みなさん」
椅子に深く座り、楽な体勢になるエイジルトさん。
どうやら話しは大体わかってくれたのだと思う。
エイジルト
「カズキ君・・・これ」
机の引き出しから何かの袋を取り出しカズキさんへと手渡した。
カズキ
「ん・・・?」
それを受け取ったカズキさんは難しい顔をしていた。
中身を確認しているようだけど、恐らくお金が入っているのだろう。
エイジルト
「今回の事故処理を引いた報酬・・・そして次の依頼の前払い。 もちろん事故処理の分が足りなかった分は前払いから引いてるからね」
カズキ
「うぇ・・・世知辛いなぁ・・・」
気を落としながらもカズキさんはそれを懐へとしまった。
エイジルトさんは続けてお話しをしてくれた。
カズキさんの依頼した内容を僕達に。
ここ最近、ギフトが活発的に世界各所で活発的に出現しているようだ。
それを冒険者達は求めダンジョンへ潜っているようだが、その中には楽をしてギフトを手に入れようと悪事を企む冒険者が多発していたとのこと。
僕達が受けた悪事はその一つだと、エイジルトさんは話した。
冒険者見習いを利用したギフト捜索。
僕達のような弱い冒険者見習いを同行させ先頭に立たせてダンジョンを捜索する。
そして危なくなったら見習いを捨て自分達は逃げるという手口だそうだ。
ギルドへは見習い達が無理をして命を落としてしまったと話し自分達の行いを隠ぺいする、あまりに酷い物だった。
その手口に僕達もまんまと乗せられて危うく命を落とす所だった。
カズキさんはその調査の為、冒険者見習いの身分を利用し多くのパーティーと同行しその実態を調べていた。
そして今回の事件へと繋がった。
そう話してくれた。
エイジルト
「それとこれを・・・」
エイジルトさんは席を立ちあがり僕達の前へカズキさんへ渡した物と同じような袋を机の上に置いた。
中身には銀貨と金貨が大量に入っていた。
ダツ
「うわぁああ!!? タルシナ牛乳何杯飲めるんだこれ!?」
ケイト
「え、どうしてですか・・・?」
エイジルト
「これは、君達が受けた洞窟ダンジョンの探索クエストの報酬だよ。何か問題があるかい?」
報酬?
そうか、本当ならあの先輩冒険者さん達が受け取る物だった。
今は・・・。
ミニア
「でもこれ・・・多すぎでは・・・?」
エイジルト
「いや、そんな事は決してないよ」
表情を変えずに淡々と喋る。
僕でもわかった、これは口止め料込みなんだと。
唾を飲み込んだ。
ダツ以外はその意味をよーく噛み締めていた。
今回の件は他言無用。
広めるような事があれば、恐らく僕達の冒険者としての未来はほぼ無いと。
ケイト
「・・・・・」
そっと、カズキさんを見た。
それ気付いていつもの笑みで返した。
この笑みはきっと・・・僕達を信じてくれている笑み。
そして、それだけのことを僕達はやった。
そう言っているようだった。
またゴクリと息を飲み、目の前に置かれた硬貨袋を手に取った。
ケイト
「あ・・・ありがとうございます! 今後も!頑張ります!」
エイジルト
「うむ、よろしく頼むよ。未来の冒険者に幸あれ」
そうして僕達のお話しは、終わりを告げた。
その後退室を指示されたが、カズキさんだけは部屋へ残っていた。
僕達の向ける視線を感じたのか。
カズキ
「下でごはん朝食食べてて、すぐに行くから」
それを聞いてみんな笑みを浮かべ、失礼しましたと一人一人お辞儀をして部屋を後にした。
外にはいつもの受付のお姉さんが待っていてくれて案内をしてくれた。
一緒に僕達は朝食を注文したいとお願いしたらお姉さんは快く笑顔で承知してくれたのだった。
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どうやらみんな昨日の事をぶり返すような事をしても取り乱すことは無くて安心した。
ただでさえ、仏頂面のおっさんの前で委縮しないか心配だったが、やっぱり変な子供扱いは良くないという訳だな、あの子達には。
エイジルト
「どうやら、凄く慕われているようじゃないか」
カズキ
「たまたまだよ、それで新しい依頼ってなんだ?」
この部屋に残ったのは、それを聞く為だ。
あの子達を先に退出させたということは、聞かれたくないような物ということなのだろうからな。
エイジルト
「あの子達の護衛、そしてとあるクエストの受注だ」
カズキ
「なるほど、もうあの子達の噂は広まっちゃってると」
エイジルト
「察しが早くて助かるよ」
あの子達の護衛ということは、冒険者見習いがギフトで何かを手に入れたというのがもう知れ渡ったということか。
俺が蹂躙した戦闘を見ていた奴がいたのか、それとも町中であの子達に目を付けたのか・・・。
どちらにしろ好都合だ。
狙われる可能性は考えていた、昨日も寝ながらもあの子達に不審者が来ないか見張りもした。
今も安全なギルド会館の中で待機させた。
冒険者同士ならここが一番安全だからな。
カズキ
「で、そのクエストってなんだ」
エイジルト
「あぁ・・・今から説明しよう」
エイジルトの依頼内容が明かされた。
特別大変そうな物じゃないが。
あの子達を守りながら、というのが難しい内容だった。
昨日のギフトが本当に助かったと痛感する。
自分の身は自分で守る。
それだけでもしっかりと出来れば、今回の依頼は簡単そうだ。
どちらかと言うと、あの子達の育成。
負けない為を、教えてあげる方が骨が折れそうだ。
また教授と団長を呼びたい気持ちでいっぱいだった・・・。
【スタンバ館 イートスペース】
僕達は朝食を物凄い勢いでがっついてた。
まさかこんな大金を手にするとは思っても居なかった。
僕達のお金管理係はネーネだ。
いつもは固くお財布の紐を縛っているが、今日だけは頭が動いてないのだろう。
僕達が頼む物を止めること無く注文を通していた。
ネーネ
「あぁー・・・えっと、こんな大量に持ってたら怖すぎるよ・・・!」
確かに僕達なんか見習いが盗賊にでも襲われたらなんて考えると大変だ。
ダツはそれなら先に使っちまおうなんて馬鹿なことを言うが。
本当にこれからは色々と気を付けないといけないと身を引き締める。
カズキ
「お、上手そうだな。同じ奴もう一つ下さーい」
カズキさんが戻ってきてくれた。
そして椅子を手に持って僕達の机のお誕生日席に座る。
するとおどおどしているネーネに一声かけた。
カズキ
「気をつけろよ、今座ってる所、出入り口から一番近いから・・・」
ネーネ
「え!? はっ・・・そう、ですね」
カズキさんが意地悪く笑う。
そうか、そうゆう所からもしっかりと考えなきゃいけないのか。
すぐに僕と席替えをして出口から一番遠い場所にネーネを座らせた。
その時にはカズキさんも朝食が届き一緒に食事を取っていた。
悠々と食べる姿を見て、疑問が出てしまった。
ケイト
「あの・・・大丈夫なんですか?」
カズキ
「ん? あぁー新しい依頼の事?」
すぐに察してくれた。
恐らく新しい依頼の件で部屋に残ったとみんな思ったはず。
今ここで僕達と朝食を取っている余裕があるほどの物なのか・・・。
カズキ
「うん、新しい依頼は・・・君達を少しの間守ることって奴だから」
ネーネ
「ぇ・・・?」
みんな固まってしまった。
まさか、カズキさんとまた・・・一緒にいられる?
僕達は気持ちが高ぶって言葉が出なかった。
カズキ
「もしかして嫌だった・・・? なら俺遠くから・・・」
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「やったぁああああ!!!」」」」
物凄い大きな声を上げてしまって他のお客さんに笑われてしまっていた。
ついついみんな立ち上がってしまったので静かに席に座った。
カズキ
「あははは、改めてよろしくね。 これも何かの縁だと思ってくれると嬉しい」
ネーネ
「そんな! むしろお願い出来ないかってずっと悩んでたくらいです!」
ミニア
「そうそう! ちょっとでもいいから一緒にいられないか考えてた!」
ダツ
「よっしゃぁああ! また色々教えてくれよな、あんちゃん!!!」
みんな考えていたことは同じだったということだった。
どうしても別れを惜しんでいた。
あんなことがあった後で不安な気持ちもいっぱいあった。
それ以上に、カズキさんという人に僕達は・・・少なくても僕は。
憧れを抱いていたから。
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【北西町 ウェイス 中央広場】
僕達四人とカズキさんはあるクエストを受けていた。
僕達冒険者見習いでも出来る、むしろ見習いだからこそのクエスト。
簡単に言うとお使いだ。
依頼主はこの町の領主さん、つまり一番偉い人だ。
早速僕達は、その領主さんの御屋敷へと足を運んでいた。
ミニア
「こっちで合ってたってたっけ?」
ネーネ
「うん、大丈夫・・・あ、見えたよ!」
ネーネが指さす方角には大きな御屋敷があった。
町の隅の広い領地にその御屋敷はあった。
入口は大きな柵で塞がれていた。
近付くと向い側から甲冑を着た人門番さんがこちらを見た。
カズキ
「んーーー・・・ここはみんなに任せた」
そう言うカズキさんは何故か変な汗をかいていた。
どうしてだろうか・・・。
ケイト
「あの、僕達冒険者見習いの者です! クエストを受けこちらまで来るようにご指示を頂いたのですが」
「冒険者見習いねぇ・・・?」
僕達を眺める。
そしてカズキさんへと視線を止めた。
「そいつもか?」
カズキ
「・・・・・・コクリッ」
またカズキさんを見る。
やっぱり緊張でもしているのだろうか、物凄く変な汗をかいてる。
一体どうしたのだろうか。
そんな事を考えていると屋敷から誰かが出てきた。
???
「おぉーこれはこれは冒険者の諸君、わざわざすまないねー」
僕達に声をかけてくれた人は髭を生やしたおじさんだった。
この人が今回の依頼主のブムットさんだ。
ブムット
「おや・・・君達がクエストを受けてくれたのかい?」
僕達の姿を見て言葉を詰まらせていた。
もしかして僕達見習いが来ること伝えてないのかな?
先ほどの門番さんと同じように眺められる。
そして、またカズキさんへと目線を止めた。
ブムット
「ほう、君も同じ見習いなのかね?」
カズキ
「えぇ、この子達のお目付け役。とでも思ってくれれば幸いです」
あれ?
さっきの門番さんとの対応とまるで別人みたいになってる?
僕の勘違いだったのかな。
ブムット
「ふむ・・・そうでしたか、これは失礼を申した」
改めてブムットさんは自己紹介をしてくれた。
それに倣い僕達も名前を名乗った。
すると早速今回のクエストの事をお話ししてくれた。
クエストの内容を聞いて僕達は驚いてしまった。
というのも、想像していた物と全く違う物だった。
ただのお使いなら今まで何度もやったことがあるが、今回はそう言ったものじゃなかった。
荷馬車を使い町へ出向き、荷物を先方に渡し、先方から荷物を受け取る。
という物だった。
これは・・・ただのお使いじゃない!?
ブムット
「ということなんですが、引き受けてくれますか?」
ケイト
「えっ・・・と」
ポンッ・・・。
肩に手が置かれた。
その手の人物を見上げる。
不安な顔をしている僕に笑顔で頷いてくれてた。
そうだ、きっと大丈夫だ!
いつもそうだ、きっといつか経験することなんだ。
それが少し早まっただけ、そう思うのがいい!
逆に経験値を溜めるいい機会だと思おう!
ケイト
「はい! 頑張らせて頂きます!」
元気に返事してブムットさんは満足した優しい表情になった。
そして顔を上げ、僕に手を当てている人に目線を合わせた。
ブムット
「では、宜しく頼みましたよ」
カズキ
「えぇ・・・」
やっぱりカズキさんが居たから受けれたクエスト。
僕達四人には期待されてないのかと、少し落ち込んでしまった。
いや、だとしてもやることは変わらない。
他の四人も身を引き締めているんだ。
僕が弱音でいてはいけない!
それから僕達はすぐに出発の準備に取り掛かった。
幸いにも僕達は、これと言って準備する物もなかった為すぐに出発することにした。
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町を出た。
僕達は揺れる荷車の中でじっとしていた。
恐らくみんな委縮してしまってるのだろうか、どうしていいのかわからないでいた。
カズキさんは馬の手綱を握ってくれていた。
いつもならダツやミニアが会話の中心なのだが、本当に珍しく黙ってしまっていた。
まぁ僕もなんだけど。
こうして揺れる荷車の中にいると出荷される仔牛の気分だ・・・。
そんな中急に荷車が止まった。
カズキ
「みんな見てみろよ!」
カズキさんが僕達を呼んでいる。
言われた通りに荷車から顔を出す。
すると目の前には絶景が広がっていた。
ケイト
「うわぁ・・・」
ミニア
「凄ーい!!」
みんな先ほどの表情じゃ想像の付かない顔で、目を見開き絶景を眺めていた。
綺麗な大きな御花畑がそこにはあった。
動物達も優雅に過ごしていた。
風が気持ちよく吹き鳥達も気持ちよさそうに花達と一緒に空を飛んでいた。
お花畑だけでも綺麗なのに、そこで過ごす動物達の姿を見ているだけで癒されていた。
カズキ
「やっぱいいよな・・・冒険」
僕達と一緒の光景を眺めて優しく言う。
カズキ
「一度見たことがある光景でも、次に見に来た時にはこうやって形の変わった光景になってる。 それを一個一個見ているだけでも楽しいもんだ、そう思わないか?」
カズキさんの言葉にみんな気付かされた。
ついさっきまで一体何をしていたのだろうかと。
きっとその間にも色々な事があったに違いない。
この絶景だって、カズキさんが止めてくれなかったら見ることが出来なかった。
そうだよ、僕達は冒険者なんだ。
冒険者は冒険をする人達なんだ。
こういった自然を感じることも冒険じゃないか!
ケイト
「カズキさん! 馬の手綱の持ち方教えてください!」
ネーネ
「あっ! ずるい!!」
一番にカズキさんの隣に座った。
みんな後ろでぶーぶー言っているが構うもんかと、無視してしまった。
カズキさんを見ると驚いた顔をしながらもまたいつものように微笑んでくれた。
カズキ
「じゃ・・・順番で交代だからな」
こうして本当の意味で僕達のお使いクエストは始まったのだと言えた。
その後は、明るく楽しい時間だった。
みんな荷車から顔出し、あれは何かどうとかとカズキさんに落ちないように注意されながらも話していた。
本当に、カズキさんが一緒でよかったと改めて思った。
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それから日が沈み、月日が昇って夜になった。
このお使いが日を跨ぐことは言われていた。
今までもクエスト同行の際に野宿をたくさんしたが、なんか今日の野宿は特別感があった。
ミニア
「なんかワクワクすんね!」
ダツ
「だよなぁー! まさに冒険者って感じがするよなー」
ネーネ
「二人とも口じゃなくて手を動かしてー」
確かに僕等が一緒に同行させてもらっていた先輩冒険者さん達に気を使って貰いながらだった野営も自分達の手でやらないといけなかった。
物はカズキさんからの借り物だったが、僕達はお願いして自分達だけでやらせてほしいと頼んだ。
二つ返事でオッケーを貰い僕達は野営の準備をしていた。
そしてみんなで焚き火の準備をしていた。
日を付けるのはミニアだ。
カズキさんから預かった物を使う。
【フレイミング オン】
そう属性鍵だ。
杖に差し込み回す。
【コネクト オープン】
準備は出来た。
ミニアはみんなで集めてきた薪に杖を翳す。
すると・・・火が点いた。
ケイト
「凄いなやっぱり、こんな簡単に火がつけれるなんて」
本来なら火点け専用の道具で時間を使い火を起こすのに。
属性鍵を使うと簡単に一発で火が点いてしまったんだから。
カズキ
「おっ・・・良く出来てるじゃないか」
ダツ
「おかえりなさーい! どうだったあんちゃん!?」
カズキ
「うん、上々だ!」
ダツ
「よっしゃぁあ!!」
カズキさんは僕達に野営を任せて食糧調達に出ていた。
お昼は簡単な携帯食糧だったが、今回はしっかりと食べようと提案してくれた。
持ってきてくれたお肉を僕とネーネとカズキさんの三人で調理した。
と言っても僕はお肉をさばくくらいしか出来ないが、ネーネの調理にはカズキさんは関心していてちょっと嫉妬してしまったのは内緒だ。
そして待ちに待った時間だ!
「「「「「いただきまーーっす!!!!」」」」」
お肉とパン、それと簡単なスープをみんなで食べる。
ダツ
「あぁああー!! うめぇえーー!!!あぐぅうっ!!!」
ミニア
「本当だ、ネーネ腕上げた?」
ネーネ
「そんな事無いんだけどなー・・・」
その光景を見てまたカズキさん笑っていた。
僕も何となくだが理由はわかる。
味は変わらない。
けど、今まで違うから。
カズキさんが一杯手伝ってくれたけど、僕達が初めて僕達だけで作った野営での食事。
その想いが無意識に込められて食事をおいしくしているのだろう。
ケイト
「うん・・・美味しい!」
こうして、僕達だけ初めての野営と食事を楽しむのだった・・・。
が。
それは僕達が寝る準備をしようとしていた時だった。
ミニア
「カズキさん・・・これって・・・」
カズキ
「気付いたか・・・そうだね」
二人が何かに気付いて立ち上がっていた。
ミニアには真素を探知することのできる才能がある。
だからすぐにわかったのだ。
カズキ
「みんな、戦闘準備だ」
カズキさんが静かに僕等に言った。
すぐさま各自武器を手に持って気を伺う。
包囲はされていないようだが・・・。
グルルルルウゥウウ・・・。
ケイト
「モンスター・・・」
ウルフタイプのモンスターが数体。
この辺に夜に出没するという夜行性の狼だ。
ウルフ達もこちらと距離を取って様子を伺ってる。
カズキ
「敵はスピードタイプだ、攻撃力もそこそこある。取りつかれても落ち着いて対処をするんだいいな」
小さな声で僕達にアドバイスをしてくれた。
そうだ、今の僕達にはこの新しい力がある。
これ等とカズキさんがいれば負けることなんかないんだ。
落ち着いて、しっかりと教わった事を忠実にやる。
それだけでいいんだ。
カズキ
「来るぞ!」
ウゥゥウウワォオオオオオオオオオオ!!!
一匹の遠吠えと共に一斉に襲いかかってきた。
ネーネ
「行くよフロラ! ライトバインド!」
こちらの先手はネーネの拘束術技だ。
光りの輪が地面へと展開し、そこに入ったウルフ達の動きを止めた。
ミニア
「私がやるよ! やっちゃうよテューケ! エアショット!」
ミニアの空気波術技だ拘束されたウルフと吹き飛ばした。
そのまま飛んだウルフは襲ってこない。
しっかりと倒している。
こちらの先制攻撃は成功だ!
ダツ
「よっしゃソルス! 俺達の力も見せてやろうぜ!」
ガンッと両手左右をぶつけ気合いを入れるダツ。
早速ウルフが飛び込んできた。
動きは速い。
だけどダツもその速度に遅れを取っていなかった。
ダツ
「貰った! アイアンフィスト!」
ウルフの顎を殴り上げた。
一撃だ。
間違いなく一撃でダツはウルフを撃退した。
ケイト
「っ!」
一匹の脅威が襲いかかる。
僕も負けじとウルフの攻撃を目で追い。
ケイト
「ディフェンドプロテクション!」
攻撃を返り討ちにできた。
同時に踏み込む!
ケイト
「フェブルの力! くらえぇええ!!!」
剣で怯んだウルフを切り裂く。
攻撃は直撃し僕も一匹ウルフを撃退できた。
やれる!
凄いよ、みんな!
もちろん僕達だけの力じゃない、この武器達、新しいパートナーの力だ。
みんな一人一人の力が急激に倍増している。
僕達だけでもやれる!!
ケイト
「みんな! この勢いで行こう!」
ネーネ
「うん!」
ダツ
「任せておけ!」
ミニア
「どーんと、来ーい!」
お互いの位置をしっかりと把握し陣形を崩すさずに戦う。
みんなわかっていた。
いくら自分達が強くなっても変えてはいけない物だ。
何故なら教えてもらった物をしっかりと自分達の身体に染み込ませなくてはいけないからだ。
・
・
・
カズキ
「どう?」
教授
「えぇ、よく見えるわ」
団長
「凄いね、みんな。見違えたよ」
念の為に二人を呼び付けた。
正直戦闘になるとやっぱりこいつ等の方が俺よりも多く場数を踏んでるし適格なアドバイスをしてくれると思ったからだ。
教授
「後方の子達はまだまだ術技の精度が甘いわね、攻撃力も命中精度もまだまだ、けど状況判断をしっかりと考えてる。 落ち着いて的確に狙う優先度を決めてるわ」
団長
「前衛の子達だって凄いよー、前まで倒すことと守ることばかり考えてたけど、今は味方の位置を見ながら動いてる。 剣技や体術はまだ粗削りだけど、しっかりと教えて上げれば凄いよ絶対!」
教授
「いや、後方の子達の方が今は凄いわ」
団長
「そんなこと無いよー! 前衛の子達の方が凄いよ!」
なんで言い争いを始めた。
授業参加に来たママ達かよ・・・。
カズキ
「でもまぁ、実際形にはなってるな」
最初見た時なんかより断然に違う。
元々センスがある子達だったのだろう。
しっかりとした教えも貰えなかったからかその才能の芽が出なかったのだろう。
それにあんな修羅場を一緒に乗り越えたという自信はやはり一番大きいと思う。
カズキ
「うん、やっぱ俺のおかげだな」
団長 教授
「「それはない!」」
カズキ
「さいですか・・・」
本当に最近俺への当たりが強いよなこの二人。
そんな事を考えているともう戦いは終わりを迎えそうだった。
ポジションも変えながら臨機応変に戦ってる。
まだたどたどしさはあるが、少なくても結果は出せている。
スピードタイプの敵にもしっかりと戦えている。
ギフトの力は大いにあるかも知れない。
だけどその力をしっかりと扱ってるのは、紛れもなくあの子達だ。
ネーネ
「ケイト無理しないで、ピュアヒーリング!」
ケイト
「助かったよネーネ! はぁああ!!!」
回復する順番を間違えず的確にしていく。
その行動を把握して一度下がって、回復を待ってから再び前へ行く。
一回一回安全に戦う。
ミニア
「左は私がやるから! 中央と右よろしくね!」
ダツ
「おうよ! そっちは任せたぜ!」
役割分担をしっかりとして対処する。
敵の行動に対しての対応力も仲間を信じて行動する。
一回一回確実に戦う。
そして何より、一番大事である物を忘れずにやっていた。
それは声掛けだ。
カズキ
「いいよな、あーゆうの」
教授
「なんか言いたげな反応ね」
団長
「カズキさんに教えるのにも凄く苦労したんだからね」
ふとこの二人から地獄のような特訓をさせられた事を思い出した。
まだあれは村の復興中だったかな。
近隣の森や洞窟でモンスター退治をしてる時にパーティーの動きをみっちりこの二人にご教示頂いた。
みっちりと。
カズキ
「みっちりと」
団長
「どうしたのかなーカズキさん」
カズキ
「別に・・・何でもないです」
そう言えばと、いつぞやの属性鍵の件を教授に聞いた。
ミツバに使ったら壊れたのにこの子達が使った時は壊れなかったと。
教授は溜息をもらしながら呆れた口調で答えた。
そんなオーバースペックの武器に対応させるつもりなんて毛頭無い、と言った。
少し悲しかった。
エレメタルキーはなんか凄く好きなのに。
カズキ
「オーバースペックねー・・・あっ」
ミツバを見ていて思い出した。
なら試してみるか。
懐から属性鍵を四つ取り出す。
教授
「あんたまさか!!」
カズキ
「おーーい、みんなこれ使ってみてくれー!」
今戦ってる子達に術技で四つの属性鍵を渡す。
属性は適当だ。
多分オーバーキルだろうし・・・。
・
・
・
カズキさんの声にみんな反応した。
同時にまた手元に属性鍵が飛んできて受け取った。
ダツ
「待ってたぜ!あんちゃん!!」
【フレイミング オン】
ネーネ
「今度は水属性・・・!」
【タイダリング オン】
ミニア
「この属性一番好きなんだよねー!」
【エレキシング オン】
ケイト
「遠慮なく使わせて貰います!」
【ウィンディング オン】
多分みんなも新しいパートナーとの戦闘で属性鍵も使ってみたいと薄々思っていたのだろう。
今の僕達は好奇心に支配されていた。
新しいパートナーと属性鍵の組み合わせ。
【コネクト オープン】
【コネクト オープン】
【コネクト オープン】
【コネクト オープン】
ケイト
「っ!!!?」
僕の持っているフェブルの盾と剣に風が宿った。
持っているだけで凄い振動だ、それを抑えるだけでも力が必要になった。
グァアアアアアアアアアアアアー!!!!
ケイト
「あっ・・・!?」
ウルフが飛び込んできた。
だけど盾で防ぐことは出来る・・・。
ボォオオオオオンッッ!!!
ケイト
「え・・・?」
盾に攻撃したウルフが明後日の方向に吹き飛んだ。
そして動かなくなった。
まさか、盾で防いだだけで倒したのか?
周りのみんなを見た。
ダツは自分の自分の手が焚き火の炎のように燃えて、熱い熱いと言いながら襲いかかるウルフを倒していった。
ネーネはロッドを振るい水球を撃っているが上手く弾がまっすぐ飛ばずにずぶ濡れになりながらも倒していた。
ミニアに関してはとにかく雷撃が止まらずに慌てふためいていた、だけど一発一発の攻撃が強力で一回の雷撃で複数のウルフを倒していた。
そうゆう僕もこの振動に手が痺れ出してきていた、でも触れた瞬間にウルフは吹っ飛び倒れていく。
カズキ
「あぁ~あ・・・凄いなー」
教授
「何呑気な事言ってるのよぉおお!!! また制御工程の見直しなんて嫌よぉお!!!!」
団長
「呑気な事言ってるのは二人ともでしょ! 早く止めに行かないと!!」
カズキ
「まぁー待ってって、見てればわかる・・・」
せっかく心躍らせて属性鍵を使ったのにこんな結果になってる。
これじゃあ・・・駄目だ。
属性鍵を貸してくれたカズキさんに申し訳ない。
それ以上にコイツに・・・フェブルに申し訳が立たない!!
ケイト
「フェブル!! ごめんよ、もっと・・・もっと頑張る!!」
ダツ
「そうだ!! ソルス! 俺の力はこんなじゃないぜ!!」
ネーネ
「うん! フロラ、私がしっかりとしないと駄目だよね!」
ミニア
「見っとも無い所ばかり見せられない! 見ててテューケ!!」
みんなの想いは同じだ。
浮かれていた自分に喝を入れてパートナーに信じてもらう。
集中して制御する。
出来ない訳がないんだから!!!
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カズキ
「ほらな・・・」
教授
「真素が・・・安定した・・・?」
団長
「乱れが・・・消えてく・・・」
この二人にはまだ話していない、というよりも話すかどうかはまた今度だと思ってる。
何より俺の真似までして武器に名前を付けた。
いや、パートナーという物はこれが出来る物だと俺は知っていた。
きっと答えてくれるし、答えなきゃいけないと。
そしてこの子達は、俺達が思ってるよりも。
カズキ
「凄い子達だからな・・・」
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【タイダリング コネクト スタンバイ】
ネーネ
「ライトバインド!!」
巨大な輪を地面に出現させてウルフの動きを止めながらも水流を発生させ中心に集める。
中にはもう溺死しているものも居た。
【エレキシング コネクト スタンバイ】
ミニア
「ナイスネーネ! エアショットォオオー!!」
集めたウルフ達に向けて術技を放つ。
水で感電させながら空気雷撃波で集まったウルフ達を吹き飛ばし全滅させた。
【フレイミング コネクト スタンバイ】
ダツ
「よっ・・・しゃあぁああああ!!! アイアン・・・」
ウルフの群れへと飛び込む。
ダツ
「フィストォォオオオオオオー!!!!」
一気に近付き一匹のウルフを叩き付けた。
同時に地面ダツの周りに炎が飛び散り周りにいたウルフ達巻き添えを食らう形で燃え尽きていった。
ガォッォオォオオオオオオオ!!!!
残りのウルフ達が一斉に僕の元へと飛び込んできた。
【ウィンディング コネクト スタンバイ】
ケイト
「行くよフェブラ! ディフェンド・・・プロテクション!!」
風を纏った大きな光りの盾が襲いかかるウルフ達の目の前に現れる。
その瞬間ウルフ達は光りの風盾に切り刻まれた。
そして一気に吹き飛び返した。
悲鳴を上げて地面へとぽとりぽとりと落ちていった。
周囲を見る。
増援は・・・いない!
ネーネ
「私達だけで・・・」
ミニア
「うん! 私達だけで!」
ダツ
「勝ったんだよな!?」
ケイト
「そうだよ! 僕達だけで・・・勝てたんだ!!」
みんな夜中な事を忘れ大声で喜び合った。
僕とダツは喜びのあまり近付き肩を組もうとしたが。
ケイト ダツ
「「危ねっ!!!」」
属性鍵を取り忘れていた。
ミニアとネーネはお互い手を取り合っていたが、僕達の光景を笑いながらも自分達も属性鍵を取り忘れていた事に気が付いた。
【コネクト クローズ】
【コネクト クローズ】
【コネクト クローズ】
【コネクト クローズ】
ケイト
「・・・・・・っぷ!ふふふ・・・ははははははっははははは!!!」
ダツ
「なんだよそれ!!! あはははははははっははっははっは!!!」
僕達はただただおかしくて笑ってしまっていた。
ネーネとミニアも僕達に釣られて笑っていた。
本当にこれが宿屋とかだったら怒られていたこと間違いないような音量でみんな笑う。
あまりにも、面白くて笑い続けた。
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教授
「いいわねー若さって」
カズキ
「ツッコミは入れないからな」
団長
「ふふふ、こっちまで笑いそうになるね」
こうしてこの子達のパートナーとの初戦闘は幕を閉じたのだった。
思った以上・・・この子達にはいつもそう思わされる。
そう、思った以上の戦果だった。
ミツバはいつものように出していたが、手助けをするつもりは一切なかった。
この子達がどこまでやれるか見てみたかったのが本音だ。
本当に予想以上だ。
下手ことがなければきっとこの護衛の依頼は楽が出来そうだと確信した。
護衛の依頼・・・だけは・・・。
もう一つの、依頼・・・クエスト。
それまで時間はあまりない。
それまでに、何処までこの子達の成長を支えてあげられるか。
俺はそれだけを、今日一日中考えていたのだった・・・。




