第17話 虚空蒼竜 レイドラ
【兵器獣ケルベロス 内部心臓部】
あれから何時間経ったかわからない。
感覚が麻痺し始めている。
想定していた通り持久戦がかなり効いている。
今思うとそうだ、この兵器獣内部に設置されていた機械人形兵士達は時間稼ぎを目的とした作りになっていた。
そして目の前のゴーレムが。
もうゴーレムの形を整えていないが、こいつが最高傑作っていうのも納得だ。
カズキ
「ここまで時間を稼がれたら認めるしかないな・・・」
ミツバを構える。
攻撃は確かにほぼワンパターンのような物だ。
だがこちらの攻撃が通らないのなら何の意味もない。
ゴーレム
「っ!!!」
身体が拳の形になりこちらに向けて飛んでくる。
カズキ
「スラッシュセイバーッ!」
ガキンンンッ!!!!」
お互い弾かれ吹き飛ぶ。
敵も攻撃力がないわけではない。
こちらの攻撃をかわすだけでなく、固形体で攻めてくる時がある。
カウンター狙いで固形体を何度も攻めているがダメージは見込めない。
カズキ
「せめて一時的にも固形体を維持できれば・・・」
いや、待て。
冷静になって考えろ。
敵の長所ばかりを見るな。
違う。
敵の短所の可能性を見るんだ。
カズキ
「試してみる価値は・・・あるか」
ピッ!ピピッ・・・!
カズキ
「サナミさんか・・・はい」
サナミ
「部位破壊確認! ごめん!報告が遅れた!」
カズキ
「大丈夫です・・・レイドラ!!」
レイドラ
「はい!マイロード!」
フードからレイドラが眼へと向けて飛び出す。
ゴーレム
「ゴォオ!!!!」
レイドラに向けて腕を伸ばす。
ぶっつけ本番だがやるしかない!
カズキ
「チェンジフェイクライド! チェーンズバインドッ!」
ゴーレム
「っ!!!?」
ゴーレムの腕を縛り上げた。
成功だ。
カズキ
「うぅうおお!!!」
伸ばした腕を斬り落した。
ゴーレム
「ゴオォオオオオオオコオオー・・・」
この土壇場でようやくだ、ようやく。
カズキ
「お前の悲鳴が聞こえたぞ・・・」
後ろにはレイドラ。
だが振り向くことはしない、レイドラは俺を信じているはずだ。
あいつもきっと同じ気持ちだ。
だから今は目の前の事に集中するんだ。
カズキ
「チェンジフェイクライド! チェーンズバインドッ!」
今度は全力で術技を放つ。
効力範囲はあいつの存在全てだ!
ゴーレム
「ごおぉあおおおおおおおおあおお!!」
光りの鎖が全身を拘束し動きを封じている。
やはりそうか、どうしてこんな単純なことに気が付かなかったのか。
こいつの特性は変幻自在の身体、あらゆる攻撃に対応し形を変える力。
それゆえに通常の攻撃や術技は通らない。
元の身体に戻らないところを見ると、こいつには自我がほぼない。
その場その場で臨機応変に形を変えるだけの存在。
だが、俺がぶつけたチェンジフェイクは物体を変える能力。
一種の幻術だ。
今こいつは自分が何の状態、何形態なのかを把握出来ていない。
自分が今どうなっているのかわからないと形を変えられない。
情報の取得を視覚だけで判断していたのであればわかるまい。
今お前は俺の想像した、ストラッカーアウトの的 の姿になってるんだがな。
ゴーレム
「っ!!っ!!っ!!っぐおおおおお!!!」
カズキ
「エグゼキューションブラスター・・・さようならだ、脳無し」
照射砲発射。
ゴーレムは抵抗も出来ず光りの中へと消えて行った。
初代虚空竜の眼。
レイドラは今目の前に自分の親に等しい存在の力を感じていた。
小さい体ながらもその凄まじい力が感じ取れる。
これが虚空竜の力。
いずれ自分が手にするかも知れない力。
だがシュリーの話しによれば自分は欠損している為本来の虚空竜の力を引き出すには途方もない時間を費やす可能性があると言った。
それでは駄目だ・・・遅いんだ。
力は、今必要なんだ。
シュリーを助ける為の・・・力を・・・今。
レイドラ
「先代・・・我に力を!!!」
吸い込まれるように球体の眼へと入っていく。
同時に周囲にある設備が次々と破壊されていく。
そして玉座から離れるように眼は動いた。
シュリーのやった時とは違った現象が起きている。
だがわかることは、今目の前にある光り続ける球体は、兵器獣と確実に切り離されている。
カズキ
「これで後は、あの二人に任せるしか・・・っん?」
球体が黒く歪み出した。
辺り一帯から黒い霧を発生させそれを飲み込んでいる。
この黒い霧はいったい・・・。
辺りを見渡してわかった、この霧の正体は兵器獣の真素。
そして霧に覆われた球体は姿を変え、顔を出した。
カズキ
「初代・・・レイドラ・・・・・・」
「ゴォオォオオオオオオオオオオオオオン!!!」
青と白い姿は微塵もない。
ただ黒く、紫黒い姿。
虚空黒竜、とでも言うのか・・・。
ピッ!ピピッ・・・!
サナミ
「カズキさん! 機械人形達の動きが止まったけれどそっちは!?」
サナミ団長からだ。
そうか、機械人形が動きを止めたということはなんとか機能は停止したってことか。
カズキ
「多分・・・成功・・・だけど少し問題」
サナミ
「っ・・・援護に行こうか?」
察したのかわからないが、サナミ団長の質問はわかっているのに聞いたという感じなのだろう。
そう、これは俺が止める必要のある物だ。
シュリーもレイドラも、恐らく戦ってる。
そして俺も・・・。
カズキ
「こいつは俺が絶対に止めます」
通信を切り、黒竜を睨む。
あちらももうやる気に満ちているということだろう。
「ゴォオォオオオオオオオオオオオオオン!!!」
凄まじい咆哮を共に激しい揺れに襲われた、これはまさか・・・。
カズキ
「お前・・・まさかケルベロス・・・」
兵器獣自体に意志が宿った・・・。
虚空竜の眼を自分の物した。
自分は力を制御できる、そうゆうことか・・・。
カズキ
「だとしても・・・それはお前のじゃない、二人を・・・返してもらうぞ!」
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マイロード・・・?
ここは何処だろう・・・暗い、寒い、怖い。
あれから僕はどうしたんだろう・・・先代の眼に入った。
レイドラ
「そうだ・・・シュリーを探さなきゃ・・・」
でも何処へ・・・?
「気色悪い・・・」
レイドラ
「へ?」
後ろを振り返る。
誰も居ない・・・?
「どうして私が・・・」
レイドラ
「ぇえ!!?」
回りから声が聞こえる。
誰かの声、人々の声だ。
みんな苦しんでる・・・?
「あいつが死ねばいい・・・」
「自分は悪くない、あいつが悪いんだ・・・」
「消えてなくなれ・・・」
「あいつのせいで・・・」
「どうしてこんな目に・・・」
「いやだぁ・・・いやだぁよ・・・」
「痛い・・・苦しい・・・」
レイドラ
「みんな・・・どうしたの・・・ねぇ!」
応えてくれない。
みんなただしゃべっているだけなの?
「嫌だぁ・・・助けて・・・」
「苦しい・・・」
「もう・・・やめて・・・」
「死にたく・・・ない・・・」
永遠と声が響き渡る。
レイドラ
「ど、どうすればいいの!! 教えてよ!!」
「俺が教えてほしい、どうすればいい?」
「自分で考えたくない・・・」
「どうせ駄目だおしまいだ」
「意味なんて・・・ない」
「何もしたくない・・・いらない」
レイドラ
「どうすれば・・・どうすればいいんだよおぉおおおおおおおおお!!!!」
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【虚空竜の記憶 ロスト・エンシェント】
あれからずっと戦っていた。
シュリー
「くっ!」
それが解決策になるのかはわからない。
だがこの兵器獣の亡霊が自分を襲ってくる限りは恐らく自分はまだ取り込まれていないはず。
そう信じて戦っている。
これに勝てばきっと兵器獣は止まる。
シュリー
「グラビティコア!」
亡霊を地面に叩き落とす。
先ほどから一切ダメージがない。
何度同じように叩き落としても這い上がってくる。
シュリー
「これを突破するには・・・力不足かしら・・・」
術技のみで戦うのには限界があった。
ただの旅程度なら問題はないが、こういった戦いになるとやはり戦う者達に遅れを取ってしまう。
これが終わったら色々作ろうかしら。
そんな軽口を考えていたら、目の前の亡霊に動きがあった。
こちらを攻撃してくるものではない。
ただ上空へ吸い込まれる。
違う。
一度球体へと姿を変え、そして上空から黒い霧生み出しをその身に纏い始めた。
シュリー
「一体・・・何が、・・・っ!」
球体は姿を変えた。
兵器獣の見る影も無くなっていた。
姿は一変した。
虚空黒竜
「ゴォオォオオオオオオオオオオオオオン!!!」
漆黒の姿をした・・・竜。
まさかこれは・・・虚空竜の姿?
カズキ達から聞いていた色とは違い過ぎている。
シュリー
「・・・状況の変化、もしかして・・・レイドラ」
あり得る。
私が消え、最後のチャンスでレイドラを眼に向かわせた?
まさかカズキがそれを許したっていうの!?
何の為に私がここで戦ってると思ってるのあの死に目。
帰ったらしこたま血を飲んでやる。
シュリー
「ふっ・・・その為にも、頑張らなくちゃ・・・ね」
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【兵器獣ケルベロス 内部心臓部】
「ゴォオォオオオオオオオオオオオオオン!!!」
口内からのブレス攻撃。
カズキ
「アブソーブセイバーッ・・・チェーンズバインド!」
照射ブレスは弾き斬り、両手を縛り上げ動きを止める。
カズキ
「バンカード・・・セイバァアアア!!!」
顔面に直撃コース、両手は縛っている。
カズキ
「ぐぁっ!」
回転と同時に尻尾で迎撃され吹き飛ぶ。
「っ!!?」
黒竜は土煙りの光りに気付く。
カズキ
「ファミリアンブラスターライドスタンバイ フルブレイクバスター・・・」
「ゴォオォオオオオオオン!!!」
カズキ
「フルブラストオォォオ!!」
黒竜の出現させた光弾と術技の光りがぶつかり、さらに煙が充満する。
カズキ
「っ!!」
飛び上がりミツバを高く振り上げ、黒竜へ飛びこむ。
だが、黒竜は右手に光りの爪を出し迎撃した。
だが飛び込んだ俺は粘土が崩れるかのように、消えた
「っ!!!?」
同じ手が通用するとはな!
カズキ
「スラッシュセイバァアアア!!!」
黒竜の背中を斬り上げる。
障壁もない不意打ちの直撃だ。
俺の攻撃を受けて黒竜は目の前へ吹っ飛んだ。
手応えはあった、これなら・・・。
「・・・めてよ・・・」
カズキ
「っ・・・? 声?」
それは黒竜から聞こえてきた。
「・・・めてよ」
シュリー
「ぇ!? もしかして・・・」
カズキ
「レイドラ・・・か?」
レイドラの声だ、聞き間違えるはずがない。
「やめてよ・・・もうやめてってば!」
カズキ
「おい!レイドラ! 聞こえるか!」
「やだよ、もうやだよ・・・」
駄目だこちらの声は届いてない。
「ゴォオォオオオオオオン!!!」
カズキ
「くっ!!」
シュリー
「レイドラ・・・なの? 私の声聞こえる!?」
「やだよ、もうやだよ・・・」
一体何が・・・。
怯えている? 何かを怖がっているの?
冷静になるんだ。
そもそもあの黒い物体は何なのかが問題だ。
最初は兵器獣の姿、今度は虚空竜の黒い姿。
レイドラの声。
真素・・・。
さっき感じた真素の存在理由からの逆算だが、恐らくあれは真素が視覚化された物。
シュリー
「そして恐らく・・・吸い上げた人達の怨念の籠もった真素」
今目の前にいるのは、それらの真素を浴びるように吸い取ったケルベロス。
眼の力も自分の力にするほどに膨れ上がったというのか。
レイドラを取り込むことでその安定性は向上したと。
シュリー
「気に食わないわね、ただただ与えられるだけの存在が急に自我を持って人様に復讐ってわけ?」
話しが通じないのはわかっているが愚痴りたくもなる。
自分もレイドラも取り込んで、まだ食べ足りないなんて。
「暗いよ・・・マイロード・・・シュリー・・・」
レイドラの声が薄れていく。
このままじゃ本当にレイドラが取り込まれてしまう。
あれが真素の類なら、レイドラを助ける手段は簡単だ。
だけど、今の自分にはその力が・・・。
カズキ
「うおぉおおおおおおおおおおお!!!!」
シュリー
「っ!?」
今の声・・・カズキ・・・。
カズキ
「うおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」
全力で振り下ろしたミツバで、黒竜を押し潰す。
カズキ
「レイドラァアアア!! 待ってろ、必ず助けてやるからな!!」
「暗いよ・・・マイロード・・・シュリー・・・」
カズキ
「くぅぅ・・・うあぁあああああああ!!!」
「ゴォオォオオオオオオン!!!」
黒竜の全身が光り出す。
範囲爆発か。
カズキ
「くそぉ!」
「ゴォオォオオオオオオン!!!」
黒竜が轟音と共に爆発した。
もちろん無傷。
だが俺がやれるのは・・・レイドラに声を届けてやるしかない。
あんなにも自信に満ちたあいつが、助けを求めてるんだ。
俺が助けないで誰が助ける。
-真素感知能力上昇-
ミツバが光り輝く。
カズキ
「そうだ、俺達で絶対に助ける! レイドラもシュリーも! この戦いを終わらせる!!」
ミツバを両手で強く握りしめる。
眼前の敵を視界から離さない。
全身の力は軽くそれでいて速く強く。
呼吸を整える・・・。
カズキ
「ミツバ・・・いくぞっ!!」
アクセルムーヴッ!
「ゴォオォオオオオオオン!!!」
飛んでくる弾よりも早く。
最小限の動きで。
弾道をすべて把握。
敵から目を逸らすな。
身体は常に軽くいろ。
そして一撃は・・・最大の重みを。
カズキ
「穿てぇええええええ!!!!!」
俺の全力全開。
最高速の勢いのままの一撃。
黒竜の胸部に・・・届いた!!
カズキ
「うおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」
カズキの声がした瞬間黒竜が苦しみだした。
シュリー
「これは・・・、っ!あの光り!」
黒竜の胸部が蒼く光りだした。
光りは国竜から離れ自分の方へと近付いてきてた。
シュリー
「ミツバ・・・」
蒼い光りに触れた瞬間、それは形を変えた・・・。
武器。
杖のような長さ。
だが大きく太く、形があまりに歪。
見たことがない形の杖だが、一つだけわかる物がある。
カズキがミツバで射撃する時、引き金だ。
これを引けば・・・。
シュリー
「ありがとう・・・、っ!!!」
黒竜に向けて構えた。
トリガーッ!
一発の弾丸が発射された。
目にも止まらぬ速さで弾丸は黒竜の左指を貫通させた。
カズキ
(ミツバの光りが消えた・・・)
黒竜の胸部から一度引き抜き、一度後退する。
「ゴォオォオオオオオオン!!!」
痛みに悶え苦しんでいる。
胸部の傷からは黒い霧が溢れ出ている。
カズキ
「・・・っ?」
傷ついてるのは胸だけじゃない。
手だ。
もっと言うと左指・・・人指し指が吹き飛んでいる。
カズキ
「シュリー・・・お前もこいつと・・・」
戦ってる。
一緒にレイドラを救おうとしてる。
一緒に・・・戦ってるんだ。
シュリー
「今ならこの術技も意味がわかるわ・・・」
それはカズキと兵器獣の中を進んでいた時に突然脳内に浮かんだ術技。
最初は何のことかわからなかったけど、今ならわかる。
ミツバだ。
ミツバがこれを使えと言っているんだ。
シュリー
「行くわよカズキ!!」
ミツバが光り出した。
今度の光りは黒い光り、だがこれを俺は知っている。
シェリーの術技の光り、重力の光りか。
カズキ
「っ!!」
とりあえずわからないが構えた。
何かの予感がする、これは恐らく術技だ。
近接物・・・遠距離・・・シュリーなら当然・・・。
シュリー
「グラビトン・フリューゲル・・・」
黒い重力弾が精製されていく。
自分でもこれほどの術技を放つのに抵抗がある。
強力すぎる破壊の力。
だが、今術技を発動させた瞬間、カズキを感じた。
大丈夫だ、きっと・・・。
きっとこれで、レイドラを助けられる・・・。
シュリー
「発射・・・!」
引き金を引いた瞬間超重弾は発射された。
カズキ
「きたっ・・・」
シュリーのタイミングがミツバから伝わってきた。
カズキ
「行けぇ!」
トリガーを引いた瞬間黒い禍々しい弾が発射された。
それはすぐさま黒竜へと向かう。
対象に直撃する寸前に放たれた弾の異変は起きていた。
ブラックホール。
小さな小型のブラックホールが黒竜を、いや黒竜に纏う黒い霧を飲み込んでいっている。
黒竜はその場から離れようともがくが一向に離れられず少しずつ飲み込まれていく。
尻尾から徐々に、まるで剥がされていくように消えていく。
そして・・・。
カズキ
「っ!!」
シュリー
「っ!!」
二人の目の前には、再び
虚空竜の眼が姿を現した。
二人はすぐに飛びついた。
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なんてことだ・・・。
どうして我は、屈してしまったのだろう。
シュリーを助けたい・・・、その一心でマイロードの反対を退いてここに来たのに・・・。
どうしてこんなにも弱いのだろうか我は・・・。
先代の虚空竜と戦う、マイロード。
学会で一人戦う、シュリー。
共に兵器獣へと立ち向かう姿。
二人はあんなにカッコよくて、強くて、キラキラしてて。
ずっと輝いてた二人に憧れを感じていた。
二人はずっと我に優しくしてくれた。
マイロードは常に守ってくれて。
シュリーは我の事を我以上に教えてくれた。
なのに我は・・・。
「悔しい・・・」
「憎い・・・」
「自分が嫌だ・・・」
「どうしてこんなに・・・」
「回りが羨ましい・・・」
「ずるい・・・」
「みんなだけ・・・」
「何でない・・・」
そうだ。
我には先代のような偉大な存在でもなければ強大な力もない・・・。
???
「ならば、目指すのをやめるか?」
え・・・?
???
「やめてもいいだろう、元よりお前にはそんなものを誰も期待していないからな・・・」
レイドラ
「そう・・・だよね」
そうだ、その通りだ。
誰も期待なんてしてないんだ、我には。
???
「当然だ、みなはお前がどうなるのかを楽しみにしているから、お前に笑顔を見せるのだ。 偉大な存在、強大な力、そんな物に期待など誰もしていない」
レイドラ
「どう・・・なるのか」
可能性・・・。
???
「お前がどうなろうと、二人は・・・大親友は必ずお前を救うだろう、間違った道を進もうとしたら身体を裂いてでも止めるだろう」
マイロードは絶対にそうする。
シュリーも絶対一緒になって止める。
???
「それも一つの可能性、それを得てみなは強くなる。貴様はどうなのだ?」
レイドラ
「我は・・・」
そうだ・・・。
シュリーをどうしても助けたい。
そう感じた気持ちは嘘じゃない。
それは偉大な存在や強大な力なんて関係なかった。
一人の・・・仲間として! 友達として!
???
「ならば、仲間とは!? 友達とはなんだ」
レイドラ
「我と共に歩んでくれる者!助け合える者! 我が守りたい者だ!!」
そうだ。
我は、こんなところに居られない。
我が早く二人を助けなくては、守らなくては。
虚空竜なんて関係ない!
???
「そうだ」
辺り一面が青い光りに満ちた。
光りの粒子が降り注ぐ。
そしてさっきまで聞こえていた怨霊のような声も聞こえなくなった。
???
「我の力は必ずやお前の助け・・・お前の守りたい者達を守るだろう」
目の前に小さく光り瞬く間に大きな球体へと姿を変えた。
虚空竜の眼だ。
それに臆せずに触れる。
同時に身体の中に浸透していき・・・。
レイドラ
「ぁ・・・大きく・・・なった?」
成長した。
身体が大きくなった、それだけではない力をレイドラは感じている。
やはりそうだ、間違いではなかった。
大好きなマイロード達は、カッコよくて強くてキラキラしている。
だから我もこうなった。
こうなりたくてなるんじゃないんだ・・・。
???
「ほう・・・迎えが来たぞレイドラ」
レイドラ
「待ってください先代!」
そう、ずっと語りかけてくれた。
助けてくれたのは先代、初代虚空竜だ。
虚空竜
「ゆけ、我ももう・・・」
レイドラ
「もし先代に会うことだ出来たら言おうと思ったことがあるったんです!」
たくさん聞いた。
マイロードやシュリーに。
色々な呼び方。
子が親を呼ぶ名を。
レイドラ
「パパ! ありがとう!!」
虚空竜
「・・・・・・ガハハハハハァ!!! いいだろう我が子よ! お前に名をくれてやる!お前は今後、 虚空蒼竜 レイドラ を名乗るがよい!!」
パパは大きく光り輝く大翼を広げ見せた。
自分も大きく蒼く光り輝く翼を広げた。
やはり親には遠く及ばないようだ。
虚空竜
「・・・・・・」
レイドラ
「・・・・・・」
そして二人のレイドラは大きく胸を張り翼を最大まで広げ叫んだ。
虚空竜レイドラ
「我の名は、
レイドラ !!
偉大なる神竜にして虚空を統べる者!!
大親友カズキに付き従う一代目最高最強の虚空竜である!!」
虚空蒼竜レイドラ
「我の名は、
レイドラ !!
偉大なる神竜にして虚空を統べる二代目!!
マイロードカズキに付き従う最高最強になる虚空蒼竜である!!」
息ぴったり。
虚空竜
「ではな、我が子よ。カズキによろしくな」
レイドラ
「はい、パパ!!」
虚空竜は笑顔でいった。
笑顔で見送った。
これが最初で最後の親子のやり取り・・・。
きっとこれが涙・・・。
嬉しくて悲しくて、切なくても、前に進みたいという欲求。
こうやってみんな強くなる。
シュリーも・・・。
シュリー
「レイドラ・・・!」
マイロードも・・・。
カズキ
「レイドラ・・・!」
こうやってきっと・・・強くカッコよくなったんだ。
-ミラージュ・フリューゲルVerW取得-
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【サンリー村】
「クー村長!! もう駄目だ逃げよう!!」
サンリーの村では帝国軍の負傷兵を手当していた。
負傷者が増え過ぎている状態で逃げるにも人手が足りない。
そしてこの村の老婆村長も尽力していた。
クー
「この人達を置いていけるわけないだろぉ!」
癒しの術技を使える物を呼び集めているが、それでも足りない。
サナミ
「すみません!遅れました」
クー
「おぉーっ団長様! どうですか・・・兵器獣の様子は」
サナミ
「はい、あれから動きはおぼつかないのですが止まる気配がなく、あと数分でこの村に・・・」
クー
「そうですか・・・こりゃまいったねぇ・・・」
状況は最悪だ
カズキさんとの連絡が取れなくなってからというもの、サンニング軍は撤退を始めて戦いが終わったかのように思えた。
だが、兵器獣は再度動き出した。
足を引きずりながら、目の前の障害を壊しながらただ進み続けていた。
クリルに偵察を任せてみたものの供給口の再生は無く、彼が作戦を成功させたのだ。
そして今の兵器獣は、残された残量で動いているに過ぎない。
予想では時期に動きを止めるだろうという算段だが・・・。
その前にサンリーの村が、兵器獣の下敷きになる。
負傷兵も多く匿ってもらっていたのも裏目に出た。
そう、帝国軍は、撤退を指示を出したのだ。
撤退。
即ちここにいる兵士達を身捨て、サンリー村を捨てろという。
クリル
「駄目だ、もうそこまで来てる! 逃げよう」
アニレナ
「だがこいつら!どうすんだよ!」
ここで口論していても何もないのはみんな知っている。
ならばやれることは・・・。
サナミ
「気道を変えます・・・兵器獣」
サナミの言葉に周りは凍りついた。
幾らなんでも無謀過ぎる。
それを実行したところで、負傷者達はどうすることもできない。
「お任せ・・・致します・・・」
サナミ
「っ!?」
一人の負傷兵が喋った。
頭から血を出している、さっきまで意識がなかったというのに。
「そうです・・・団長様・・・ここにいる兵士はほぼ民兵、貴族出の者なんていません・・・」
サナミ
「駄目! 喋らないで・・・」
苦しいはずなのに。
本当だったら救援が来てみんなを避難出来るはずなのに・・・。
「行って下さい・・・村の人達を・・・お願いします・・・」
兵士はただ笑うしかなかった。
どうしてそんなに傷だらけで笑えるの・・・。
傷ついてでも・・・。
『はぁはぁ・・・来い・・・よ・・・ビビり』
あの時の彼もそうだった。
辛い時に辛い、痛い時に痛いと言わない。
今目の前にいる彼らもそうだ。
もう死ぬかもしれないのに人に笑いかける。
どうしてこんなにも・・・。
サナミ
「助けます・・・絶対に・・・!」
決意を表明しサナミは出て行った。
クリル
「おい!サナミ様!」
止めない。
きっと彼女は一人でも向かう、あの怪物を止める為に。
アニレナ
「・・・・・・お前ら!!! 絶対に諦めるんじゃねぇーぞ!!!絶対だかんな!!!」
負傷者に喝を入れた。
絶対に守ってやる、だから変な気は起こすな、早とちりだけはするなと。
「かしこまりました・・・」
アニレナは、村長にすぐに村民の避難を言い伝えた。
村長と村民は行動に移った、出来るだけ多くの兵士を抱えて共に逃げるつもりだ。
クー
「団長様に、よろしくお伝えください。無理だけは為さらないようにと」
それだけアニレナに伝え一礼し村を後にした。
クリルは、ただサナミが向かった方向をただ見つめてしまっていた。
もしここで自分も一緒に行ってしまったら、どうなるのか・・・。
アニレナ
「行きてぇーよなぁ、あたしらも」
クリル
「うん・・・でもぉお・・・」
これ以上軍の命令に逆らうわけには行かない。
まだ負傷兵達と逃げていたということであれば免れるかも知れない。
止めるべきだった。
自分の団長を、みんなが大好きな団長を。
アニレナ
「泣くなよクリル・・・あたしらの団長がそう簡単にくたばるわけないだろ?」
クリル
「うん、わがっでうぅ・・・わがっでうよぉ!!」
どうしても止めることが出来ない自分の無力さ。
一緒にいくと言えなかった臆病さ。
軍罰を恐れて縮こまってしまった弱さ。
泣く原因はそれだった。
でも、自分達の愛する団長なら・・・。
きっと大丈夫だと・・・心の深い所で想っている。
【兵器獣ケルベロス 眼前】
サナミ
「並大抵の攻撃じゃ駄目だ・・・」
術技を複数回に分けるのではなく同じ箇所を1回の術技で何度もぶつけて攻撃。
私の全力渾身のを叩きつける。
ドォオオオオオオオオオオオオオン・・・!!
一歩一歩歩く度の地震。
一切法則性もない、だがやるならばそのタイミング。
左足が上がった瞬間に・・・。
今だぁ!!
ジャンプハイクで一気に上空へ飛んだ。
サナミ
「ステイシスチャージ解放! ツイン! ナイトレイスラッシュライド! エンドオブナイトレイ!」
カズキさんの真似だ。
上手く出来るかはわからないぶっつけ本番の1発勝負。
サナミ
「はぁぁあああぁああぁああ!!!」
最大まで真素巨大化した剣を兵器獣の左顔にぶつけた。
まずは一発!!
成果はない・・・ならもう一発!!
サナミ
「止まれぇぇえっぇぇえぇぇええぇえええ!!!!」
再度右から振り払う。
左顔には直撃している・・・そして。
ズズズッズウズウゥゥーーーーー・・・・・。
動いた・・・!
いける!
このまま行けば気道を変えられる。
サナミ
「くぅぅ!!!」
体中が悲鳴を上げた。
武器の力にやはり体が付いていけていない。
お願い私の身体!
この子の力を引き出す・・・力を!!!
もう一発と・・・盛大に振りかぶる。
サナミ
「これで・・・最ご・・・」
兵器獣の顔が・・・こちらを向いた・・・。
大きな口を開きエネルギーを溜めている。
動きを止めこちらを標的にしている。
ここは空中・・・避けれない。
ましてや、体も動かない・・・。
今出来るのは・・・この振り被った剣をぶつけることだけだ・・・。
サナミ
「ぅ・・・・・うぉぉおぉぉぉぉおおおおぉおおお!!!!」
叫びと共に巨大剣を振るう。
だが同時に・・・溜められたエネルギーこちらに・・・発射された。
「ミラージュプロテクション!!!」
上から何かが・・・守った・・・?
カズキ
「間一髪だ・・・」
右手を差し出された。
サナミ
「・・・っ! カズキさん・・・」
手を取り引っ張って貰った。
あまりの事に体思うように動かない。
そのまま彼の胸元まで行ってしまった。
カズキ
「・・・・・・」
サナミ
「・・・・・・」
上を見上げたら彼の顔が物凄く近くにあった。
どうしよう・・・目が合った・・・。
目線が・・・離せない・・・。
シュリー
「もしーもし、感動のイチャ付きは後にしてくんない?」
サナミ
「え!? シュリー!!?? あ、ごめん!!!」
レイドラ
「我は問題ありません、こんな一撃何発来ようと耐えられます」
今ごろになって気が付いた。
私は・・・空に・・・竜に乗っている・・・?
蒼く光る大きな翼。
サナミ
「綺麗な翼・・・」
レイドラ
「え? あ、ありがとう・・・ございます」
照れている?
凄く愛くるしい竜だ。
カズキ
「それよりも・・・これ破壊していいんでしょね?」
そうだった、今は動きを止めているが。
もう、すぐそこに村が・・・みんながいる。
カズキ
「わかった・・・レイドラ、二人を降ろすぞ」
レイドラ
「わかりました・・・」
シュリーとサナミ団長二人を降ろす。
だが、どうしたものか。
シュリーは眼に入ったことから真素がほぼすっからかん。
レイドラと共にこっちの世界に戻ってきた瞬間に体が動かないというし。
そして今助けたサナミ団長も真素の流れを見るとミツバの渡した剣で全力で根こそぎ使い尽くしてへろへろと言った状態か。
この二人をこのまま乗せていると全力が出せない。
騎乗獣
「あぁぅうあぁあ!!!」
どうしようか悩んでいたら、あの時の騎乗獣が駆け寄ってきた。
カズキ
「お前・・・逃げたんじゃ・・・」
まさか返したつもりがこんな所に隠れてたのか?
レイドラ
「ふむふむ・・・マイロード達が心配で、戻ってきたようですね。中々根性がある」
戻ってきた、か。
それは心配かけたな、だが非常に助かった。
カズキ
「ありがとうな・・・早速で悪いけど、この二人を安全な場所に避難ささせてくれ、頼めるか?」
騎乗獣
「あううああ!!」
レイドラ
「お任せあれ・・・と」
よし、これで何とかなりそうだ。
フラフラなところサナミ団長には申し訳ないがシュリーの事を頼んだ。
サナミ
「うんわかった・・・でも」
カズキ
「大丈夫、レイドラが付いてる」
レイドラ
「うん!」
シュリーを運ぶ。
また御姫様抱っこで騎乗獣に乗せサナミ団長をしっかりと掴ませる。
シュリー
「カズキ・・・」
カズキ
「ん?」
シュリーが口を開いた。
まさかだとは思うが。
シュリー
「早う・・・」
仕方ない。
左人差し指のゴミを払いシュリーの前に出した。
シュリー
「ぱくっ・・・んんーーー」
サナミ
「ちょっ!!何やっ・・・!!」
サナミ団長が顔を真っ赤にして慌てふためく。
これはヤバい・・・気がする。
カズキ
「じゃよろしく・・・行くぞレイドラ!」
レイドラ
「分かりました・・・本当にいいのです?」
カズキ
「いいんだよ! ほら早く!」
パンパンパンッレイドラの背を叩き飛行させた。
シュリー
「運転手さーん、早くどうぞー」
サナミ
「あとで事情しっかり聞くからねぇ!!!」
兵器獣 ケルベロス。
初代虚空竜の力を使った虐殺破壊兵器。
その根幹は、強引に人々から奪った悪意の真素。
カズキ
「今・・・ここで終わらせる、レイドラ!」
レイドラ
「はい!一撃で終わらせます・・・」
レイドラの周辺に真素が集まる。
黒く静寂な夜にレイドラの翼が大きく広く、そして強く輝いていく。
カズキ
「いけぇ!」
レイドラ
「ミラージュフリューゲル、スタンドアップ!!!」
術技が発動した瞬間レイドラの蒼くなる。
そしてケルベロスへと突っ込む。
ケルベロスもただではやられないのだろう、迎撃に出た。
多くの口から一斉にレイドラへ向けて放たれる。
レイドラ
「効くかぁあああ!!!!」
レイドラの動きは止まることなくケルベロスの懐へと入る。
そして一気に押し上げる。
ケルベロス
「っ!!?」
レイドラ
「負ぁぁぁああけるかぁあああ!!!」
気合いの雄叫びと共にケルベロスを上空へと持ち上げた。
レイドラ
「マイロードォォォオオ!!!」
カズキ
「っ!!!」
飛んだケルベロスに向かって飛ぶ。
レイドラの帯びた真素が全て俺に流れミツバ集約した。
カズキ
「終わりだぁあああああああああああ!!!」
右手を一気に前へ突き出す。
ケルベロスを貫く。
内部を駆けるように貫く。
そして・・・。
大爆発。
轟音と共に巨体の怪物はこの世界から・・・解放されたのだ。
大爆発と蒼く輝く大翼・・・大空に二つの光りを出現させ、この戦いは、終わったのだ・・・。




