第11話 虚空竜
【??????】
虚空竜。
そうこいつは名乗った。
完全なファンタジー。
場所も雲の上、そして目の前には青と白を基調とした竜、ドラゴンがいる。
虚空竜
「よくきたな、冒険者よ歓迎する」
カズキ
「歓迎しているような雰囲気を感じられないのは何故だろうな、それと残念だが俺は冒険者見習いな」
虚空竜
「ほう、なかなかと威勢の言い人間よ、その威勢がどこまで続くか楽しみだぞ」
やはり、そうなるか。
ここまでだだっ広いフィールドにご招待して、挨拶だけしてはいさよならはないとは思ってたさ。
カズキ
「何故呼ばれた?」
虚空竜
「ふん、いいだろう、忘れるとは思うが教えてやる。
忘れるねぇ・・・。
ということは殺されはしないってことか。
虚空竜
「貴様は真素を知っているか?」
カズキ
「マソ? 空気か何かか?」
初めて聞く名前だ。
だが、何となく察した。
虚空竜
「たしかに、近い、だが違う、真素はこの世界、リアタズマに神々が授けた力だ」
カズキ
「人間が使う術技とかを使うと減る、人間の中にもある物とかか?」
虚空竜
「ほう、飲み込みが早い奴だ」
真素。
それは少なからず考えていた。
普通にこの世界は俺が元いた世界とはかけ離れている。
無条件に術技だったりモンスターだったりが存在する訳がない。
何かしらの力、目に見えないしかしすぐ近くにある存在。
この竜が言うことを信じるならそれが真素、ということになる。
虚空竜
「近頃その真素が悪意ある人間に根こそぎ取られ始めておる」
カズキ
「それが虚空竜、あんたにも影響していると?」
虚空竜
「いかにも・・・我の力が弱くなると同時にモンスター共の力は増す」
なるほど。
真素の枯渇はモンスターの活性化にも繋がり世界がヤバいことになる可能性がある、それは大変だ。
カズキ
「で、俺にその悪意ある人間を成敗しろと?」
虚空竜
「ほう、貴公に出来ると?」
カズキ
「出来る、邪魔が入らなければな」
濁した応えだ。
完全に矛盾しているからな。
虚空竜
「フハハハハハハハハハッ!!」
お気に召したようで何よりだ。
さっさとその真素を独り占めしてるやつの情報を知りたいところだ。
虚空竜
「素晴らしい自信だ!ならば・・・」
カズキ
(あ、そっちのパターンね)
竜は体勢を変えた。
身構えまさに今から戦おうとしている。
虚空竜
「我に真素を渡すだけで済ませておければよかったもを・・・」
カズキ
「俺が気付いてたことに気付いてたってか? なら今どうぞ~」
虚空竜
「フハハハッ今さら遅いわ・・・我と戦う者などあの大空の神以来だ」
カズキ
「ご託はいい、さっさと来い!」
ミツバを構える。
そして動く。
虚空竜
「まずは手始めに、防ぎきれるかっ?」
竜の背後から無数の光る球体。
こいつをまずは防ぎきれと。
-アブソーブ・セイバーVer2-
カズキ
「なるほど、全部吸収しろってことか。よーし来い!!」
虚空竜
「ゆくぞっ!!」
竜の掛声と共に無数の球が襲いかかる。
一発一発のサイズは俺の半分。
一撃でも食らったらひとたまりもない。
食らうわけにはいかない。
カズキ
「せぇあ!!!!」
ガキンッ!!
金属がぶつかる音。
だが俺の手に振動はない、球を吸収した。
これならいける。
カズキ
「っ! うぉおおおお!!!」」
一発一発剣で弾くようにミツバへと吸収していく。
一直線に飛んでくる弾だけを見れば対処できないわけではない。
虚空竜
「ほう、やりおる。ならば」
更に光る球体をさっきよりも多い量を用意する。
大きさも人間一人のサイズへ更に大きくした。
ガキンッ!!
最後の1つ防ぎきった。
カズキ
「出血大サービスってとこか?」
虚空竜
「サービス? フハハハ面白い男よ! くらえぇえ!!」
さっきと・・・同じじゃない。
球体が不規則に動く。
カズキ
「アクセルムーヴ!」
弾がでかいのがある意味助かる。
ミツバで弾けば吸収される。
そう、油断していた。
カズキ
「っ!!? くっ!!」
間一髪で最初の球より小さい球が顔面掠めた。
なんて意地の悪い竜だ、これは痛い目を見せないとだめだな。
だがまずはこの球体ども消さないと。
デカイ球は誘導してこっちに来る、油断すると高速の球がこちらを狙っている。
気を抜いたらおしまいだ。
虚空竜
「どうした、最初の威勢が消えたようだが?」
カズキ
「いいんや、っ!!! お前をっ!! 痛い目を見せるにはどうした方がいいかなっ!!て考えてたところだ」
虚空竜
「まだ減らず口を叩くか・・・ふんっいいだろう・・・」
カズキ
「・・・?」
襲ってくる球体が全て消えた。
だが同時に虚空竜の姿が光り輝く。
まるで蛹から蝶が出てくるように今までの外観が崩れていく。
そして殻から出てきた竜が目の前に来る。
これまでの虚空竜と変わりサイズは小さくなったが
それでも俺よりも大きい。
虚空竜
「この姿・・・久しぶりだ・・・どれ遊んでやろう」
サイズが小さくなった。
だがわかる、こいつ強くなった。
カズキ
「そっちの方が似合ってるぞ・・・っ!!!」
虚空竜
「それは・・・」
虚空竜の姿が消えた。
後ろか!?
虚空竜
「ありがとう!!」
裏拳か。
避けれない。
カズキ
「ぐぅう!!!」
宙に吹き飛ばされた。
まさかこんなに吹き飛ばされるとは。
鼻血を吹きとり、口の中の血を吐き出す。
こいつマンガで読んだことあるぞこれ、小さくなって強くなるやつ。
だけど、勝てないわけじゃない。
カズキ
「なぁ! お前気に入ったわ」
虚空竜
「ん? どうしたもう降参か?」
カズキ
「いや、お前俺に負けたら従者しろ」
ふと思いついたことをそのまま口に出す。
こいつを旅の仲間にしたい、そう思っただけだ。
俺の言葉に竜は豆鉄砲を食らったかのような顔で俺を見る。
お前は鳩か。
虚空竜
「アハハハハハハハハハハハッ!! 面白い男だとは思ったがそこまでとはな!」
どうやら俺はこいつを笑わすことにかけては誰にも負けないのかも知れない。
だが、それも面白いのかもしれない。
こいつを仲間にしたら、これから先いろいろ面白いぞきっと。
虚空竜
「いいだろ! ならば我も存分に行くとしよう!!名を名乗れ!!」
カズキ
「カズキだ!こいつはミツバ!! そしてもう一つ付け加える!仲間になる時にお前に俺が名前を付けてやる!いいな!」
虚空竜
「ハハハハハッそれは楽しみだ!!!」
無数の球体が更に現れる。
数が先ほどとは桁違いだ。
-スレイヴ・スラッシュVer2-
おっけい、それで対抗しろってことね。
スレイヴスラッシュ!
まるで虚空竜の真似をするように背後大量の球体を展開させた。
先ほどの吸収した分も使う。
虚空竜
「行くぞ!!」
カズキ
「あぁ!」
お互いの球体がぶつかり合う。
俺はとにかく走る。
竜もこちら目掛けて飛んでくる。
ガギンッッ!!!!!
お互いの初弾は弾いた。
カズキ
「スラッシュセイバー!!!」
空かさず術技をぶつける。
ミツバを振り上げる。
虚空竜
「っ・・・なっ!!!」
余裕を見せたな。
だが俺は手加減なんてしない。
カズキ
「トリガー!!」
防御に徹している虚空竜に対し弾丸を入れまくる。
見かねて奴は距離を取る。
想定通りだ。
カズキ
「レインブラスター・・・いけ!!」
虚空竜の上空へ銃口を向け放つ。
放たれた弾丸は複数の雨となり襲い続ける。
虚空竜
「甘いぞ!!」
弾丸の雨を食らいながらも俺に向けて爪刃撃を放ってきた。
カズキ
「アブソーブセイバー!!」
ガキンッ!!!ガキンッ!!!ガキンッ!!!ガキンッ!!!
虚空竜
「我はこのまま撃ち合うのも悪くないぞ!!」
カズキ
「そうだな、それもいいが・・・」
虚空竜と話している俺がまるで粘土が崩れるかのように、消えた。
虚空竜
「何!?何所へ行った!?!」
チェンジ・フェイクVer2。
俺の偽物を複製する術技。
一瞬でも俺に目を離してくれれば十分だった。
レインブラスターの効力が切れた瞬間。
シュタッ・・・。
カズキ
「フリューゲル・・・」
ジャンパー・ストップVer2
前もって止まれる場所を設定、足場を形成する。
虚空竜
「我よりも空にいただと・・・」
今俺は虚空竜の顔面。
顔を向き合わせるのは大事だよな?
カズキ
「フィンガァアアー!!!」
俺の手から蒼い光りが溢れでて大型の手を形成していく。
VerXの力か。
俺とミツバが強くなればなるほど強くなる。
カズキ
「ぜあぁあああ!!!!」
虚空竜の頭部を掴み取る。
虚空竜
(この光り・・・!?)
懐かしい、あの・・・だが!!
虚空竜
「まだだあぁああ!!」
両手に光りの爪を展開させ掴む手を引き剥がそうと対抗する。
カズキ
「っぅうう!!!!」
形成された手は痛覚も共有しているのか。
だとしても、ここ離すわけには!
カズキ
「うあぁあああ!!!!!!!」
手加減はしない。
握り潰す、こいつの頭部を破壊する。
虚空竜
「このままでは・・・いた仕方ない!!」
大型の球体を背後に出現させた。
自爆覚悟!?
虚空竜
「私の方が持つか、君が持つか?試そうじゃないか!!!」
カズキ
「へっ・・・」
そして・・・。
轟音と共に球体は爆発した。
虚空竜もろ共吹っ飛んだ。
虚空竜
「ぐぅう・・・さすがに応えたか」
この我がまさか人間如きにここまで押されるとは。
だがこれで雌雄は・・・。
なんだ、使われ切った真素の残骸が・・・。
虚空竜
「っ!!!?!?」
-リサイク・チャージVer2取得-
カズキ
「さ、ここからが面白いはずだ、そうは思わないか虚空竜ぅうぅう!!!」
ボロボロで頭から血を流しながらも奴は笑い狂っている。
掲げられた剣に真素が集まっていく。
まさか・・・この空間全ての使用済みの真素を・・・。
あんな物をまともに食らっては・・・っ!!!
虚空竜
「我は虚空竜!! 逃げも隠れもしない!受けて立つ!!」
口を開き真素を溜め込む。
奴はまだ準備に時間がかかっているのか、いや・・・これは・・・。
虚空竜
「・・・ならば!!散りとなれ!!!!」
我の渾身の一撃を受けよぉ!!!
カズキ
(そうだ!虚空竜! 俺とお前の戦いはそんな簡単に終わらせていいわけないんだ!!)
俺はこの攻撃を受けきる、絶対にだ。
禍々しい真素の波が巨大なビームのように全身を襲う。
カズキ
「くぅう!!!!んんんん!!!!あぁあああああああ!!!」
全身が悲鳴を上げている。
立ってるのは嫌だと、俺に命令する、倒れろと。
黙れ。
あいつが俺を認めたからこそ撃ってきた攻撃。
こいつを食らわないなんてのはなしだ。
照射された攻撃はまだ終わりを知らない。
カズキ
「ううぅうぅぅううううううううう!!!!!」
俺はこれを耐える、叫びながら耐える。
耐えに耐え抜いて必ず勝つ!!!
カズキ
「負けるかぁああああああ!!!うあぁあああああああああああ!!!!!!」
カズキ
「・・・っ!!」
急に光りが・・・違う明けた・・・暗いトンネルを出たような感覚。
そうか俺は・・・。
カズキ
「耐えた・・・耐えたぞ虚空竜!!!!!」
もう足もふらふら、上げ続けた腕ももう限界。
口の中も血の味でいっぱいで鼻血も止まらない。
それもこれも・・・。
全部・・・この一撃の為に!!!
カズキ
「エグゼキューション・・・!!!!」
虚空竜は・・・。
虚空竜
「来い!!カズキ!!!」
食らう気満々!!!
カズキ
「ブラスタァアアアアアアアアアアアアーーーー!!!」
ミツバを振り下ろした。
そして轟音と共に先ほど貰った照射の3倍の大きさを虚空竜に解き放った。
虚空竜
「我の負けだ・・・」
--------------------------------------------------------------------------
【??????】
カズキ
「んっ!ぁあ!! ん!!はぁ!はぁはぁ・・・はぁ」
ミツバを杖代わりにして虚空竜の下へ向う。
カズキ
「へへへっ、見っともねぇ」
虚空竜
「貴公がやったのだろうが・・・」
お互いボロボロ。
だけど俺は立ってる、そしてこいつは寝てる。
カズキ
「約束・・・忘れてないよな・・・?」
虚空竜
「そうだな・・・きっとカズキ・・・お前との旅は楽しいだろうな」
カズキ
「はぁ? 何言って・・・っ!!?」
虚空竜の右目から紫黒い靄が吹き溢れる。
靄は徐々に虚空竜の身体を蝕んでいく・・・。
カズキ
「なんだよ・・・これ・・・」
虚空竜
「騙して悪いな・・・大昔に付けられた呪いだ、我が弱っている原因だ・・」
弱ってる原因?
こんなのがずっと体にあったとでもいうのか。
カズキ
「嘘・・・だろ」
靄を退かす。
退かしながら竜の頭部まで向かう。
足がふらふらして上手く歩けない。
虚空竜
「こいつが・・・この呪いがずっと我を蝕んでいた・・・だがお前との戦いは我の全力だ、偽りはない」
全力・・・?
違うだろう、今はそれよりも!!
カズキ
「そんなのもういい!どうすればいい!? なぁ!!」
虚空竜
「無理を言うな・・・この呪いと何百年共にしてきたと思ってる」
何百年だと。
何でそんなにこんなものを。
どうにか出来なかったのか、何で冒険者達に助けを求めなかった。
なんでそこで冒険者の真素を吸い記憶を消して終わりにしていたんだ。
カズキ
「そんな・・・っ!! くそぉ!!くそくそ!!!」
靄を払うが全く消えない。
溢れ出る右目、ここに呪いが・・・。
虚空竜
「今回で最後にするつもりだったのだ、冒険者の真素を貰うのを、それがまさかとんでもない奴を引いてしまったとは」
最後・・・。
つまりは何か、もう死ぬ気だったと。
自分はもう長く生きたから、もういいって?
ふざけるな・・・。
カズキ
「なんだよ、うれしくなかったのか?」
虚空竜
「あぁ・・・最高の気分だ」
最高の気分?
ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!
それなら死んでいいっていうのかふざけるな。
カズキ
「ならもう少し頑張れよ!! 呪いなんかに負けんなよ!」
虚空竜
「本当に・・・すま・・・ない、ありが・・・と」
カズキ
「おい!!! お前は虚空の竜なんだろ!! 誰よりも強い!誰よりも凄い!! 誰よりもカッコいい竜なんだろ!!」
俺はこいつの本当の姿を見たとき、カッコいいと思った。
拳を食らった時に感じた強さ、すぐに一目ぼれした。
カズキ
「そうだよ!! カッコいいと思ったから!お前と一緒に旅ができたらって!! お前と一緒に戦えたらって!! だからこんなところで駄目なんだよ!!!」
カズキ
「だから!!!!お前は!!!」
-サモン・ゲートVer2取得-
カズキ
「っ!!!?」
ミツバが光り出した。
蒼く輝く光りは虚空竜の呪いを晴らしていく。
だがこれなら・・・。
カズキ
「っ・・・ミツバ・・・」
ミツバを手にし竜の右目へと向かう。
これから何が起こるかなんてのはわからない。
だがきっと大丈夫だ。
こいつは・・・こんな終わり方を絶対に望んでない。
カズキ
「俺が思うんだ・・・なら・・・絶対そうなんだ!!!!」
右目に光り輝くミツバを突き刺す。
すると光りと靄が混じり合い出した。
カズキ
「っ!!ミツバ・・・!」
光りと靄が暴れる。
全てを飲み込んでいくようだった。
空間、俺、虚空竜。
それでも俺はミツバをずっと・・・離さないでいた。
--------------------------------------------------------------------------
不思議な感覚、空間。
俺とミツバの境界・・・とは違う。
ミツバは俺の右手にある。
これは・・・?
虚空竜
「一体・・・どうしたんだが・・・」
背後から声が聞こえた。
振り向くとそこには虚空竜がいた。
カズキ
「お前・・・ならここは・・・俺と虚空竜の境界線・・・」
俺とこいつが交わり合った。
いや恐らく呪いだ。
呪いとミツバを介して、ミツバの俺、呪いの竜、そして交わった。
虚空竜
「はぁ・・・気持ちよくいかせてくれりゃいいものを」
カズキ
「お前は俺が今からこき使いまくるんだから、いかせるわけないだろう」
虚空竜
「・・・・・・いや、やっぱ無理みたいだな」
カズキ
「っ・・・なんで・・・」
虚空竜
「いや、これは違う、これが正しいんだ」
正しい?
虚空竜の表情からは恐怖を感じない。
逆に戦っていた時のような力強さを感じる。
カズキ
「・・・教えてもらっていいか?」
虚空竜
「あぁもちろんだ、その為にもカズキ、お前には見てほしいのだ、我の記憶を・・・」
空間が光り出す。
そして風景が変わった、これはリアタズマ?
カズキ
「ドラゴン・・・?」
過ぎ去ったのは間違いなくドラゴンだ。
1匹だけじゃない、何匹も飛んでいる。
みな元気に大空を羽ばたき続けている。
ドラゴンにも種類が多く豊富にいる。
色もそれぞれ違う。
みんなが共通していることは手足が2本ずつあり翼が生えているということだ。
だがそんな中で一匹の竜は地面で座って、飛び回るドラゴン達を見上げていた。
その竜は足が無く、手が2本で翼もみなよりも大きくない。
虚空竜
「これはまだ子供の頃の我だ・・・神より産み落とされたその時より異形で周りとの違いに違和感と恐怖を感じていた」
自分が周りと違う。
それは気が付いた時から世界が変わってしまう。
良い意味でも悪い意味でも必ず世界は変わってしまうんだ。
虚空竜は恐怖だと、言った。
当然だ、他と比べて自分は姿が劣っている。
ならば恐怖を感じる、自分は他よりも弱いのだから。
虚空竜
「それでもそれへの憧れは捨てきれないでいた、人間を乗せ。誰かと一緒に飛んでみたい。そんな憧れを抱いていたそんなある日」
風景が変わった。
一人の人間?
???
「何を見ている?」
子竜
「え・・・わからない」
???
「そうか・・・」
性別はわからない。
だが光り輝く者は子竜の横へ座り一緒に青空を見上げた。
???
「君は・・・空が好きかい?」
子竜
「空は怖い・・・」
子竜は答えると縮こまる。
???
「難しいな・・・でも君は空をずっと見てる、空って一つじゃないのかな?」
子竜
「え・・・?」
子竜が反応した。
空は一つじゃない・・・。
言葉の意味がわからなかったのだろう。
子竜はその者の声に耳を傾けた。
???
「君の言う怖い空って、多分私やみんなが見ている空、じゃないかな?」
今目の前に広がる空を指差す。
確かにその者の言うことは間違っていなかった。
みんなが見る空、みんなが飛んでいる空。
みんなとは違う自分が触れられるものじゃない。
絶対に触れることが出来ない。
???
「それで、君がずっと見ている空、それはきっと・・・虚空」
子竜
「虚・・・空・・・?」
???
「そう、虚空、君はさ、その虚空がきっと大好きなんだよ。虚しい空っていうけど、虚しさってのは別に悪いことじゃないと思うんだ」
虚しさ。
何も無い、意味が無い。
無だ。
何もない空が好き、自分一人、誰かを乗せて自由に飛び回る。
誰にも邪魔されず、誰にも怖がること無く。
???
「これから君は虚空竜だ、虚空は君だけの空だ」
子竜
「虚空・・・、っ!」
子竜の顔が変わった。
喜びに満ちた瞬間、小さいと思っていた翼が光り伸び輝き巨大になる。
光る翼。
その姿は確かに異質、他のドラゴンではありえない姿をしている。
だがいい、何故なら自分はみなの青空を飛ぶ竜ではない。
誰も居無い、虚しいと蔑まれる空、虚空が好きなのだから。
???
「おぉ!カッコいいじゃないか、それに凄く綺麗だ」
子竜
「あ、ありがとうございます、えっとあなたは?」
???
「んーー、強いて言うなら、神様、かな?」
こうして子竜は虚空竜となり、多くの人々、そして多くの竜にも名を轟かすようになったのだという。
青空を怖がることもなくなった。
それでも虚空はたった1匹、自分のものだと大切にしながら。
虚空竜
「これが・・・我の誕生、ということだ」
虚空を愛し続けた先に自分だけの空を見つけた竜の物語。
きっと誰もが羨ましがったことだろう、たった一つの虚空を独り占めにしたこいつを。
だがそれは常に虚空を見続けた、虚空を求め、虚空に夢見た儚い子竜がもらった大切な空。
大切な名前であり宝物。
それはもう、授かってから誰も奪えない物となった。
それを誇りに今までずっと生きてきたのか。
虚空竜
「それからは楽しかった、多くの人々と関わり、多くの竜達とも交流を深めていった。 だがそれは突然に起こった」
また風景が変わった。
6人の何者かがたった1人をロープで縛り付け、崖へと突き落とした。
虚空子竜
「やめろぉぉおぉおおおお!!!!」
子竜の叫びは聞き入れて貰えなかった。
今すぐに飛んで助けにいきたい、だがそうすれば今度は自分がどうなるかわからない。
子竜の仲間達が必死に抑える。
暴れた、暴れるしかできないでいた。
どれだけやろう何をしようと、あの6人には絶対に勝てない。
だがそんなのは関係ないとばかりに暴れる。
自分の大切な人、名付け親でもあり。
自分をこの世界の一つにしてくれた存在。
それを殺された、目の前で・・・。
それからは、ただ後悔の日々だった・・・。
何をするにも上の空、まさに虚空を見続けてしまう竜。
また逆戻り、そんなことを考えていた時だ。
「人間が襲ってきたぞー!!」
「逃げろー!」
人々が決起したようだ。
理由はわからないが、竜の力を欲し人々は次々と竜達を殺し始めた。
虚空竜も抵抗し続けた、だが人々は殺さないで無力化するので精一杯だった。
逃げて、仲間を守り、退き、逃げ続ける日々が続いた。
竜達の逃亡生活が続いている中、人々が襲ってきた理由がわかった。
それは、 竜の転生 の力だった。
竜は息絶えると、次の新しい姿へとその場で生き返る。
時には記憶を引き継ぐ事が出来、永遠と生き延びることも出来ると言われていた。
実際に虚空竜もその転生は知っていた。
仲間達の転生を見届けたことも多くあった。
だが、それを人間が得るなんて話は聞いたことがない。
その情報には尾ひれが付き過ぎていた。
竜の血を啜れば不老不死の力、翼を食えば空高く飛ぶ力、鱗を食らうは強靭な肉体を。
ただの虚偽、嘘偽りが。
そんなことで人々が進化するはずなどないのに、急にどうしたというのだ。
噂に聞けば竜だけじゃないと聞く。
人、人間は多くの他の生物達も同じように襲い、食らいつくしていると仲間の竜は怯えながら話していた。
何かが起きている。
この異常事態、竜や他の生き物は逃げることで精一杯。
考えた。
考えれば考えるほど、あの方、名付け親の顔が浮かぶ。
そして虚空竜は、自分の名付け親を殺した6人の1人に会いに行った。
こんな事態で、頼れるのは彼ら6人だけだ。
今は親の仇である者達に頭を下げる、仲間の為、世界の為に。
『世界・・・? 君は何か・・・勘違いをしているようだ』
真素の力で取り押さえられた。
身動きが取れない。
まさか・・・こんな事態になったのは・・・。
『これが・・・世界の摂理・・・だよ』
絶望した。
自分はなんて愚かだったのだろうか。
当然だ、人々が狂気に満ちた時。目の前にいる人含めて誰も動かなかった、竜達を助けようとしなかった。
この人達が企んだことだった・・・。
『君があの・・・へぇー、虚空・・・って景色なんだい?』
手が虚空竜の右目へと伸びる。
見動きは取れない、目を閉じることさえも・・・。
虚空竜
「うああああああああああああーー!!!」
それからの記憶はほとんどがおぼろけだった。
命かながら逃げ果せ、右目の痛みに耐えながら逃げた。
もう自分一人で逃げるので精一杯だった。
そしてあの湖に飛び込んだ。
カズキ
「これが・・・お前の・・・」
言葉が出てこない。
あまりに信じがたい、狂気じみた話だ。
人々がドラゴンを襲い、殺し、食らい、自分たちもその力を得ようとしていた。
狂ってる以外の何物でもない。
虚空竜
「我の右目は、本来なら再生するはずがこの呪いの力で転生することもできずに永遠と切り離されている」
呪い。
永遠と蝕む力、右目を奪われたと同時に付けられたそれは虚空竜を永遠と苦しませた。
死ぬことも許されず、生き続け、目を維持するか、全てを投げ出し、あの紫黒い靄に蝕まれながら、目を維持するか。
今なお何所かで、待っているのかもしれない。
何に使われ、利用しているのかなんて想像も出来ない。
その右目を利用し続ける為だけに生かされ、苦しみ続ける。
この呪いはその為の物だった。
カズキ
「今何処にあるのか、わかるのか?」
虚空竜
「さぁ・・・ただわかるのは、まだ存在し続けている、とだけだ」
まだ何処かにある、リアタズマに。
なら、俺がやることは一つ。
カズキ
「俺が絶対に取り返す、こんな話あって言いわけない」
グッと力強く手を握る。
当面の目標が出来た、見て見ぬふりは出来ない。
少なくてもしっかりと詳細を知らねばいけない。
必ず見つけ出す、絶対に何かしらの手掛かりはある。
虚空竜
「そうか・・・心強いな」
虚空竜は嬉しそうだった。
だが残された瞳からは悲しさと切なさで溢れていた。
虚空竜
「どうやら時間のようだ・・・」
空間が歪みだす。
虚空竜
「呪いは、お前のおかげで解かれた。だが我はもう長くない」
カズキ
「転生・・・するのか?」
転生すればまた一から一緒にいられる。
虚空竜
「あぁ・・・だが、それは我ではない」
もう目の前にいる虚空竜は生まれない。
新しい命、新しい虚空竜がこの世界に誕生する。
虚空竜
「そうだ・・・カズキ、名前の約束だが。新しく生まれた奴に付けてくれないか?」
名前。
確かにそんなこと言ったな。
虚空竜とだけじゃあ旅には不便だと思ったから言った約束。
けど、それは・・・お前に付けたいって決めてた名前なのに・・・。
カズキ
「駄目だ・・・」
新しく生まれる奴も大事だが。
今のお前も大事なんだ、今じゃなきゃ意味なんてない。
カズキ
「お前は、虚空竜 レイドラ 。誰も手にすることのできないただ一人だけの空を持つ、虚空を愛し続けた初代虚空竜 レイドラだ!」
そうだ。
お前が愛し続けた物は受け継がれる二代目のレイドラに。
お前がずっと手にした空は、守られる。
そして永遠に語り継がれる、初代虚空竜は孤高で慈愛に満ちていたと。
レイドラ
「・・・・・・」
左目からの涙。
だが、左目だけではない、失われた右目からも一滴が。
そしてレイドラは大きく胸を張り翼を最大まで広げ叫んだ。
虚空竜レイドラ
「我の名は、
レイドラ !!
偉大なる神竜にして虚空を統べる者!!
大親友カズキに付き従う一代目最高最強の虚空竜である!!」
大きく、広く響く咆哮。
やっぱり、あまりにカッコいいと感じた。
広げる翼から零れおちていく羽根状の粒子が本当に奇麗だ。
臆することなく、ただ真っ直ぐと。
前ではない、上でもない、ただ自分が愛した虚空を見つめる。
これから消えるというのに、こんなにも堂々といる姿。
俺には真似できそうない。
バキッバキギッ!!!
空間に亀裂が入り始めた。
レイドラの意識がもう終わりを告げようとしていた。
目の前ではこんなにも神々しいのに、本当にすごい奴だ。
レイドラ
「カズキ・・・二代目レイドラをよろしく頼むぞ」
カズキ
「あぁ・・・大親友の願い、しかと受け取った」
最後に覚えているのはレイドラの凛々しい顔と笑顔だった・・・。
レイドラ
「カズキを・・・お守りください・・・・・・」
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【フタヤ森林 湖】
俺は祠の前で仰向けで倒れていた。
そして、胸には小さな生き物がくっ付いて眠っていた。
カズキ
「こいつが・・・」
二代目レイドラ。
両手で掬えるほどのサイズこんなにも小さい。
これが親友、初代虚空竜が継がせた子竜。
今後の虚空を愛す、神竜。
まだ力はない、だから俺が守ってやらなくちゃいけない。
そして約束を守るためにも、俺は戦う、この子と一緒に。
だから、今は寝ていていいぞ、レイドラ。
-ファミリアン・ブラスターVer2取得-




