人ではない人たち
少女達は色めき立っていた。
姫学の特に二年生は、今か今かとその時を待つ。
地球人の男とこんなに近くで生活を共にするなんて、漫画以外ではあり得ないからだ。
今宇宙での流行の漫画、『地球人と恋しちゃってもー大変!』
その最初の部分のようであった。
「聞いた? どうしましょう、いきなりキスとかされたら!」
「あり得ないから! うるせーんだよ馬面のブス!」
「あっ? ぶちのめすぞ、豚星の姫が!」
と、この様に内部は戦乱となっていた。
ここ地球では争いは行えない。
けれど、校内であれば一個人として争える。
そんな姫君のストレス発散にもなっていた。
「ようこそ、我ら姫学に」
「は、はぁ……」
豊は着いた後、すぐに学園長室へ案内されその出迎えに怯えた。
(人の形以外なら予想済みだったが……学長が人間の姿じゃねぇのかよ! 怖いよ、サメの顔してるとか超怖いよ!)
豊の予想通りで、数多の星から来ているこの学園。
その、全てが人型という訳ではない。
「人間の中でも特異な君が、うちで学ぶという事はとても嬉しい」
「炎屋豊です。宜しくお願いします」
「これは、名乗るのが遅くなりました。鮫川鮫太郎です」
鮫川は、そう言うとぺこりと頭を下げた。
「炎屋君は二年一組だ。私が案内しよう」
「はい!(待て、待て待て! 歯に血が付いてるうう! べっとりと血が付いてるんですけどおお!青のりみたいな感覚で血付けてんじゃねーぞ!)」
「ん? 私の顔に……。 これは失礼、血が!」
「いえ……。(てへぺろみたいなポーズとられても、捕食後にしか見えねーよ! 表情が変わらないから逆により怖くなったわ!!)」
鮫島先生は、ゆっくりと校内を案内しながら学校の在り方を話してくれた。
「私は今でこそ、こうして地球の言語を話せるが、ここに来た当初は人間に水揚げされててね。エラにフックかけられて、地面を転がされて、超痛かったなぁ……」
「(駄目だって、何で漁師さん鮫を平然と売り場に出しちゃってるの? ってか活動拠点が星じゃなくて海いいい!!)」
鮫川は窓を眺めながら、懐かしげに思い出を語り続ける。
「それで、買われた人に鮫として飼われて。あっ、我ながら上手くいった!」
「アハハ!(死活問題じゃねーか! 乾いた笑いしか出ないんですけど!!)」
けれど、悪い人ではない。
豊は、鮫川を見ながらそう思った。
人に飼われたその後は、普通に海に帰って日本語を勉強し徐々に足が生えてきた。
本当はちゃんと擬人化出来るが、今の状態が一番楽とは本人談である、
「鮫川先生、こちらが」
「あっ、湾岸先生。そうです、地球人の例の生徒ですよ。湾岸先生、炎屋君の事担任として宜しくお願いしますね」
後ろから声をかけられ、ゆっくりと豊は振り返った。
声はどうやら普通で、ようやく一安心……と思いきや。
「足がタイヤになってるうううう!!」
「あら、いけない! ごめんなさい、私ったら興奮しちゃって!」
「炎屋君、こちら湾岸 真夜中先生です」
「ミッドナイトおおお!!!」
初日から、豊の脳はショート寸前だった。
足がタイヤになっているなど誰が予想出来ようか。
「では、ここからは私が」
「分かりました、湾岸先生。宜しくお願いしますね。では、炎屋君。何かあったらいつでも私の所へ来なさい」
爽やかに歯を見せて、鮫川は去っていった。




