拝啓 四月十六日 アンジールへ
桜の便りが次々と届く頃となりましたが、あなたは本当に大丈夫ですか。こうして手紙を読んでいるだけで、母は胸がざわついて落ち着きません。
家の務めが重いこと、四大貴族に婿入りした立場で気を張らねばならないこと、それくらいは母にも分かっています。
けれどね、アンジール。
どれほど立派な家名も、あなたの身体の代わりにはなりません。
夜に幻聴が聞こえるなどと、そんなことを平然と書いてくるほど、あなたはもう無理を重ねすぎています。それは気合の問題ではありません。心も身体も、きちんと休めと訴えているのです。
お願いです。しばらく政務から離れなさい。倒れてからでは遅いのですよ。事情をきちんと話せば、ロメロ夫人も理解してくださるはずです。
理解されないのなら、それはあなた一人で抱えるべきことではありません。
アンジール。
母はここにいます。
あなたが帰る家は、今も、これからも、ちゃんとあります。どんな立場になろうと、どれほど疲れ果てていようと、あなたは誇り高いヴァルツ家の息子なのですから。
どうか、これ以上ひとりで耐えようとしないでください。返事はいりません。まずは休みなさい。
敬具
エカテリーナ・ヴァルツ
追伸
ライラさんのことを悪く言うのはおよしなさい。あの子は、あなたを案じてくれている数少ない人でしょう。母は、あなたがその優しさを踏みにじる子に育てた覚えはありません。
※検閲済み、破棄




