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【連載版】「もう会うこともあるまい」と手紙で私を捨てた元婚約者様へ。あなたが食べたそのお菓子、毒よりおそろしい「真実」が入っていました  作者: 佐倉美羽
或る婚約破棄の顛末〈血の聖夜事件〉

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拝啓 四月二日 母へ

 春爛漫のみぎり、ご清栄のこととお慶び申し上げます。

 アンジールです。お変わりありませんか。こちらは帝都を離れ、ロメロ領に移り住んで二月になりますが、万事つつがなくやっております。


 先般、話題になった噂の件については、ご心配に及びません。確たる証左もない世迷言。教会もそのように判断しました。おおよそ民に疫病対策や徴税、徴発の誤解があったのでしょう。しかし、これを期に神殿への寄進の増額が決定したというのは、いささか思うところはあります。だが義母であるロメロ夫人のご判断は、過去二十年にわたり領地を繁栄させているのも事実。※※※(かき消した跡)婿養子という身分故、肩身が狭く感じる次第であります。


 ロザリアーナとはうまくやっております。あの退屈でつまらないノクタリカの娘とは違い、明るく可憐。歌をこよなく愛しているようで、よくメイドたちに聞かせています。輪になってロザリアーナに拍手を送り、僕も輪の中心に押し出されて、手を取り合って踊る毎日です。


 義父、ザラド将軍ともお会いしました。眉間に皺が刻まれた重い城塞のような顔つきで、思わず背筋が伸びるようなお人です。話してみれば豪胆な御仁であり、娘を頼むと肩を叩いていただきました。ロザリアーナは将軍のことを深く敬愛しているようで、戦場でのご活躍を聞くのが好きなようです。とりわけ、戦地での見せしめや拷問についてばかり聞いているようで、僕には良さがさっぱりわかりかねます。使用人たちも眉を顰めておりました。ロメロ家は返血で語ると言いますが、語られぬ英雄譚を盗み聞いている気分になります。


 それでは、今回はこのあたりで失礼します。どうかお元気で。


 敬具

 アンジール=フォン=ロメロより

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