拝啓 三月二十九日 ライラへ
やっほー。元気してる?お手紙ありがとう。ライラが帰っちゃってもう二か月経ったんだよね。
こっちは相変わらず。太陽は出るし鐘は鳴るし、人は集まるけど、本音だけは今日も不在、って感じ。
そういえばこの前さ、宮廷の晩餐会あったじゃん。例の失踪の件、「無かったこと」扱いになってた。ロメロ家の婿殿も矢面に立ってたよ。ロメロ夫人やばいね。教会もだんまり。だーれも文句言えない空気だった。わたしもなんも言えなかったけど、薄々みんな思ってるんじゃないかな。東棟の伯爵家、覚えてる?当主はまだ元気。でも席、ひとつ後ろになってた。理由? 誰も言わないよ。てか、言わなくても分かるでしょ。ここ、椅子が全部しゃべるから。いつも思うけど、人じゃなくて血筋しか見てないっぽくて、地味にしんどい。
あ、そうそう。ロメロ家の結婚祝い、婿殿の苦手な甘味を送っておいたよ。笑顔だったけど、口角引き攣ってた。あの顔ライラに見せてあげたかったな。
そっちはどう?前に書いてくれた「刷毛で刷いたような雲が流れる朧月夜」って一文、なんか刺さってさ、何回も読んじゃった。そうそう、ライラの写し絵、お兄様が気に入ってさ。ぜひライラに会ってみたいって言ってきかないんだよね。今度連れて行っていい?五月くらいかな。そっち遊びにいくよ。
そいじゃ、また手紙おくるねー。ばーい。
敬具
ミア・フェルネスト




