大司教猊下 御前
畏れ多くも筆を執りますこと、どうかお許しください。
我らは名もなき民でございます。
ただ神の御名のもと、真実のみを申し上げるため、この書を捧げます。
この地を治めし領主ロメロ卿につき、我らはもはや沈黙を守ること叶わず、主の御前にてのみ、この罪を告白いたします。
近頃、村々より人が消えております。
若き者、孤児、身寄りなき女。夜陰に紛れて、あるいは徴発の名のもと、連れ去られてまいります。
問い質せば「ロメロ夫人の御用である」「神と国のためである」とのみ告げられ、その行方は誰にも知らされませぬ。
戻る者はおりませぬ。遺体も、裁きも、祈りの場も与えられませぬ。
ある者は地下牢へ連れ込まれたと嘆き、ある者は異端の儀式が行われていると震えております。しかし我らは、噂を真実とは申せませぬ。
ただ一つ確かなことは、人が、神の御許しも、正しき裁きの場へも送られず、消えているという事実でございます。
もしこれが、神の御意思に反する行いであるならば、どうか、どうかお調べください。
我らは刃を持たず、力も持たず、祈ることしかできませぬ。
この書が見つかれば、我らの命はないでしょう。
それでもなお、沈黙こそが最大の罪であると、主の御言葉を信じ、この告発をお捧げ致します。
どうか、神の慈悲と正義をもって、この地をお調べください。
主の御名において。
名なき信徒一同




