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【連載版】「もう会うこともあるまい」と手紙で私を捨てた元婚約者様へ。あなたが食べたそのお菓子、毒よりおそろしい「真実」が入っていました  作者: 佐倉美羽
CASE3:或る奇術の真実〈バーナム通り殺人事件〉

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拝啓 11月16日 エーリカ・R・ワトスン 様へ

 ごきげんよう。エーリカさん。あの世へ手紙はどう書けばいいのかと悩みましたが、私が死んだときに一緒に燃やしてもらえば、最後の審判の時に大天使様が渡してくれるだろう、なんて思いこうやって手紙を認めてみました。(残念ながら私はエーリカさんと同じ場所に行くことはないですよ!)


 もっともエーリカさんことですので、あの世でも要領よく過ごしておられるのだろうなと、ほとんど確信めいた直観が脳裏によぎっていますが、一応お聞きしておきましょう。お元気ですか?


 実はですね、最近とても大きな失敗をしてしまいました。何とか助けて貰って命拾いしましたが、一歩間違えていれば取り返しのつかない傷跡をつけてしまっていた大失敗です。あなたのせいですよ。まぁ、すべてがエーリカさんのせいだというのも嫌らしいですので、私1:エーリカさん9くらいの配分で受け止めています。


 毒を体現したあなたは最期の瞬間まで周囲の人たちを侵し尽くして、笑っていました。そのまっすぐな生き方にある種の美しさすら感じます。でも、エーリカさんの最期の手紙を読んで、なんで、“わたしを見つけてくれてありがとう”なんて書いたのか、今まで理解できませんでした。そして、これが失敗の原因です。


 死の間際にエーリカさんは私にも毒を盛ったわけです。凄まじい執念ですよ。あなたが亡くなってからというものの、ここ最近の私は、あの言葉の意味を探して鬼気迫る様子だったようです。私自身も“魔女”の影をのたうち回りながら追い駆けていたように思います。この数日間は特に、息もできないほど苦しかった。たくさんの人たちに心配をさせてしまいました。ですが、今日ようやく克服できたようです。おかげさまで目が醒めましたよ。


 あの言葉は、エーリカさんなりのエールだったんですね。あなたを救えると思い上がっていた私の、その胸に突き立ててしまった刃を、まるで“良い切れ味だったわ。次はもっと上手くやりなさい”とでも言い放つような激励。あまりに血気盛んで情熱的な応援。予防接種というには少々毒がきつすぎます。死ぬかと思いました。


 ええ。認めましょう。今回の私は自分の能力に酔いしれて傲慢になっていました。相談であるにも関わらず、相手の心を無視して、解決を急いでしまっていました。目先の謎を解き明かして満足してしまい、本当の意味での解決に必要な努力を怠っていました。すべてが事実です。そして、なによりも私は忘れてしまっていました。最後に“ありがとう”と言われるような、相手のことを想う気持ちを言葉にする、それが文通で最も大切なことだということを。こんなことでは、アンナさんに顔向けできませんね。

 エーリカさん。やっと、あなたに返信が書けそうです。


 ――こちらこそ、私に思い出させてくれてありがとう。


 そろそろオフィリア領に出立しないといけないので筆をおきます。とても気が重いですが、私に歌劇のモデルになってくれ、舞台挨拶をしてくれ、なんて頼まれています。信じられません。普段なら絶対に断るところですが、ほとんど弱みを握られている状態なので、私に選択肢はなさそうです。幸い、義妹のミアと夫のラファエルが一緒に来てくれるそうなので、そこは安心です。


 何年先にこの手紙が届くのかわかりませんが、あの世でしばし待たれよ。ワトスン君。それでは、これにて失礼。


 敬具

 ライラ より


(完)

ライラの旅路はまだまだ続いて行きますが、この物語は一旦ここで幕を閉じます。

ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。

よければ感想、ご評価(★★★★★)をいただけましたらとても嬉しいです。

佐倉美羽

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― 新着の感想 ―
完結おめでとうございます! どの事件も楽しく拝読いたしました。 最後のお手紙がエーリカさん宛てだったのがとても印象的です。 ライラさんのこれからの益々の御活躍をひそかにお祈りしております。
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