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【連載版】「もう会うこともあるまい」と手紙で私を捨てた元婚約者様へ。あなたが食べたそのお菓子、毒よりおそろしい「真実」が入っていました  作者: 佐倉美羽
或る兄妹の秘密〈灰色の狼事件〉

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拝啓 3月23日 アンナ・パーカー 様へ

こんにちは。アンナさん。ライラ=ロ=ノクタリカです。お手紙ありがとう。筆を執りながら荒れ狂う思いの丈と紙上で一戦交えたのだろうな、なんて想像しながら、すべて大切に読ませていただきました。


 さて、まずは自己紹介をしましょう。ええ。とても大切なことです。私の名前はライラ=ロ=ノクタリカ。18歳の女性です。今は結婚してライラ・フェルネストですが、どちらでもかまいません。貴族という立場ではありますが、別に私自身がエラいわけではないですので、そこまで敬う必要もありません。私はただのライラです。どうぞよろしくお願いします。


 アンナさんのお手紙で書かれていた件、驚きました。仮面舞踏会で出会った殿方に恋文を書きたいだなんて、情熱的で素敵です。二人とも顔を見ていないのに、それほど想いがあふれるだなんて、恋とはとかくパワフルなものなんですね。そしてその上、例の事件でたまたまラッキーパンチが当たったに過ぎない私に恋愛相談だなんて、さらに驚きました。


 ここからが最も大切なことなのですが、おそらく吟遊詩人の語りはいささかならぬ脚色が施されているのではないかと思う次第です。とくに“恋愛マスター”については据わりが悪い。話に尾ひれ背ひれがついて、何なら足までついてしまっています……。正直、今の夫と出会ったのも、運がよかったから。としか言いようがなく、その実、私は緑がおいしげる実家でヌクヌクと絵を描いてみたり、散歩に出かけて石をひっくり返しては顔をしかめてみたり、お友達と他愛のない文通をしていたにすぎないのです。巷で話題のようなクール令嬢ではなくグータラ令嬢。それが真実の私。つまり大変申し上げにくいのですが、相談する相手を完全に間違えています。もし万が一どうにかなる恋だったとしても、私に相談した時点でどうにもならなくなるのではないかと心配です。


 ですが、あえて言うならば――まずは情報収集が最優先です。前提となる情報が揃っていなければ、どんな仕事もうまくいきません。これは手紙でも、商売でも、恋でも同じです。


 私はアンナさんことをもっとよく知りたいと思います。たとえば、家族のこととか、宝石商でのお手伝いのこととか。仮面舞踏会での出会いのことも。もし、こんな私に師事するのでも構わないとおっしゃるのであれば、ですが。


 なぜそんなことが必要なのか。少し踏み込んだことを申し上げれば、手紙とは自分はどう思うかではなく、相手を想う気持ちを言葉にすること。これがとても大切なのです。これは文通でも恋文でもそれほど違わないのではないでしょうか。なんて、かっこつけてみました。


 それでは、返信の有無にかかわらず、アンナさんの恋路の成就を陰ながら祈っております。


 敬具

 文通マスターは否定しないライラより

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