拝啓 3月12日 憧れのライラ=ロ=ノクタリカ さまへ
【ささやかな案内状】
物語の真相は物語内5月12日、ライラの手紙によって明らかになります。
どうかそれまでお付き合いください。
春の光がキラキラして、お店の宝石みたいに綺麗な季節になりました。ライラ様はお変わりなくお過ごしでしょうか。
兄は「ライラ様はとってもお忙しいんだから、宝石屋の娘がお手紙を書いても読んでくれないよ」と意地悪を言います。でも、わたくしにとってライラ様にお手紙を出すのは世界で一番の大事なことなんです。こうして毎日たくさん書けば、いつか一枚くらい、ライラ様のところに届くかもしれない……そう思ってペンを握っています。
わたくしの名前はアンナ・パーカー。13才です。母は宝石商を営む商人で、兄もわたくしもお手伝いをしております。時々、ライラ様のような素敵な方のご屋敷へお邪魔することもあります。
ある日、兄が街の吟遊詩人から聞いた**「血の聖夜事件」**のお話をしてくれました。その事件を解決したライラ様の活躍は、まるで魔法使いみたいに鮮やかで、わたくしは一瞬で恋に落ちてしまいました!お手紙に隠された秘密を見抜くなんて、本当にかっこよくて……!わたくしも、お客様から届くお手紙をこっそり見つめては「助けてっていう秘密の暗号が隠れていないかな?」なんて、いろいろと想像を膨らませてしまいました。(残念ながら、まだ暗号は見つかっていませんが……)。
今では家族みんながライラ様のファンです。いつもは仕事の話ばかりの母も「お客様の対応や考え方の勉強になる」なんて言いながら、普段はしないのに、手書きで手紙を書いたりしています。
そこで、なんですが……。どうかわたくしに恋文の書き方を教えていただけないでしょうか。実は、ある仮面舞踏会で出会った殿方に思いを寄せておりまして。でも、こういった経験が初めてで、もうどうしていいかわからないのです。母は堅物で依頼書みたいな文章しか書けないですし、兄は論外。想いばかりが強くなっているのに、紙には湖のようなシミが広がるばかり。こうなってしまっては文通マスターでありながら、恋愛マスターでもあるライラ=ロ=ノクタリカ様にしか頼むことが出来ないのです。
ライラ様。いえ、ライラ先生。どうか、この不器用な小娘に恋文のご指導をお願いします。アンナ・パーカーより、心を込めて。
かしこ
アンナ・パーカーより
※1:血の聖夜事件
名門貴族が関与していた王国史上でも類を見ない規模の監禁・殺害事件。ライラ=ロ=ノクタリカの申し立てにより解決の糸口を経た。




