血の聖夜事件
――ロメロ領大量失踪事件、全容判明へ
ロメロ領において長らく噂されていた連続失踪事件は、帝国四大貴族の一角を占めるロメロ家の関与が明らかとなり、帝国史に残る大事件へと発展した。本事件は後に「血の聖夜事件」と呼ばれることとなる。
発端は、ロメロ領内において民間人の失踪が相次いだことにある。これに対しロメロ家は一貫して関与を否定し、証拠不十分を理由に捜査は停滞していた。法王庁もまた、名門貴族への介入を躊躇し、公式な声明を控えていた。
しかし、時を同じくして、ロメロ領下に属する貴族家の令嬢が失踪する事態が発生する。これについてもロメロ夫人は関与を否認。依然として決定的証拠はなく、捜査は難航を極めた。
事態が動いたのは、フェルネスト家当主夫人・ライラの指摘によるものであった。
彼女は、ロメロ家婿養子アンジール=フォン=ロメロから届いた返信書簡に強い違和感を覚える。甘味を忌避するはずの彼が菓子を喫した点、筆跡および文体が本人のものと著しく異なる点――これらを不審としたライラ夫人は、法王庁に正式な申し立てを行った。
この申し立てを受け、法王庁はロメロ家への強制捜査に踏み切る。
結果、ロメロ邸地下施設より多数の遺体および衰弱した生存者が発見された。その数は六百名に及ぶとされ、帝国史上でも類を見ない規模の監禁・殺害事件であることが判明した。
ロメロ夫人およびその娘ロザリアーナは、当初すべての容疑を否認していたが、使用人およびメイドらの証言により関与が確定。有罪が言い渡され、両名は生涯にわたりロメロ邸への幽閉処分となった。
なお、別邸にて監禁されていたアンジール=フォン=ロメロは衰弱状態ながらも無事に保護され、現在はヴァルツ家の庇護下に置かれているという。
本事件は、名門貴族による長年の隠蔽と、法と信仰の沈黙が招いた悲劇として、帝国内外に大きな衝撃を与えている。
(完)
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佐倉美羽




