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第八話

イノベーションフェスタは明日から開催されるため今日は特にやることは無い。

ただ、このイノベーションフェスタでアメリカ軍がUSB強奪のため何らかの接触をしてくることが予測出出来るため俺は出来る限りの対策をする。


「で、こんな場所で話ってなんだ?」


「まさか、俺に告白か?さすがの俺でも男はきついんだが・・・」


俺は対策として真田と冬川を呼び出していた。

場所はイノベーションフェスタの会場・・・ではなく、その近くのカフェ。

周囲を注意深く見渡すと一般客に紛れたアメリカ軍の工作員らしき人物が何人かいる。

さすがに会話が届くような距離ではないが、それでもこのカフェに居る客の半数がアメリカ軍の工作員と考えてよさそうだ。


「大事な話だ。後で理由も話すから少し声のボリュームを落としてくれ」


俺の雰囲気で事の重大さを感じ取ったのか二人共表情を強張らせた。


「まず、冬川の研究・・・つまり永久機関の完成が外部に漏れた」


俺の言葉に最初に反応したのは真田だった。


「え、さすがにそれは無いでしょ。永久機関の完成を知るためには俺の作ったUSBの中身を見る必要がある。だけどそのUSBは夢羽ちゃんと暁が肌身離さず持ってるだろ。仮に奪われたとしても何重にも施したセキュリティーを突破するのは国家レベルじゃなきゃ無理だと思う」


「私もそう思う。あのセキュリティーを破るのは私でも無理だったし。いや・・・よく考えてみると最近、大学付近に黒色の高級車が不自然に数台止まっていることが多々あった。それに、今だってこのカフェの駐車場に・・・。」


そこまで気づいた冬川の顔色が段々青ざめていくのが分かる。


「気づいたか。今も俺たちは監視されている」


「マジか・・・全く気付かなかった」


真田の額から玉のような汗が頬に伝わる。


「それで、何で私たちだけを呼んだんだ?この話の内容的に教授や澪、宮坂にも伝えた方が良さそうだが」


「いや、今はまだこのメンバーだけの秘密にしてくれ。そもそもUSBの中身自体は漏洩していないはずだ。あくまで永久機関が完成したという事実だけが外部に漏れた」


「なるほど、俺のセキュリティーが破られたわけではないと」


俺は無言で頷き肯定の意を示す。


「つまり、私たちを監視している人たちの目的は助手が今持っているUSBって事か」


察しの良い冬川に少し感心する。


「恐らくな。冬川が完成させた永久機関本体を盗んでもどうせ何も分からないだろうからな」


「確かに、あの装置は私が編み出した新理論を使って作ったから本体を見ても再現は出来ないだろう」


冬川は自慢げに言った。


「それで、まだ俺と夢羽ちゃんにしかこの話を伝えない理由が分からないんだけど・・・」


「お前は馬鹿か。そのデカい腹に、少し脳を移植してやろうか?」


「夢羽ちゃんに手術してもらえるなら、むしろご褒美——ゴホン!」


真田はキモすぎる発言をしたことを自覚したのか、わざとらしい咳をして誤魔化した。


「真田がキモいのはいつものことだから無視するとして・・・」


冬川は注文したケーキを一口食べ、フォークを置いてから続ける。


「私と真田以外に話してないってことは、矢野研究室の中に、意図的に情報を漏らした奴がいると助手は考えているんだな」


「その通りだ。USBを見ずに永久機関が完成したことを知っているのは矢野研究室の人間以外ありえない」


俺は矢野研究室に裏切り者が居ることを断言した。


「でも、何で俺と夢羽ちゃんには話したんだ?」


「お前たち2人は確実に白だからだ」


「白・・・?」


「敵の狙いはUSB、つまり永久機関の設計図だ。冬川が裏切っていたら、わざわざ俺たちを監視してUSBを狙う必要なんてない。直接流せば済む話だ。真田、お前の場合も同じだ。USBのセキュリティはお前が管理している。内部の情報に触れられる立場にある。だが、現に俺たちは監視されている。これはつまり、USBの中身がまだ漏洩していないという証拠だ」


「なるほど。つまり俺たちが裏切り者ならとっくにアウトって事か」


一通り話し終え俺自身も脳内で状況を整理することが出来た。


「敵は何者?助手なら分かっているんだろ。」


少し長い付き合いのせいか、冬川には俺の考えが筒抜けだった。


「敵は・・・アメリカ軍だ」


一瞬、空気が凍ったように感じた。

真田が手にしていたストローを落とし、冬川もフォークを止めたまま固まっている。


「え、マジで言ってる?アメリカ軍って国レベルの話じゃん」


「永久機関はそれほどの発明という事だ。危険性は・・・言わなくても分かるな」


数秒の沈黙の後、口を開いたのは冬川だった。


「アメリカ軍が直接接触してくるのはおそらくイノベーションフェスタの最中・・・」


顎に手を当てながら小さく呟いた。


「一番人目が多くて、混乱が起きても事件として処理しやすいタイミング。下手すれば事故に見せかけることもできる」


冬川と俺の予想は全く同じだ。


「だからこそ、俺たちは先に動く必要がある」


冬川と真田がコクリと頷く。

それから俺たちは今後の対策と作戦を数時間議論した。


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