Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #08 改
※2026/06/02改稿しました
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #08
204を出てすぐ隣 203の扉は開かない ここを開けようとするか、通り過ぎると、隣人が起き上がり、わざわざ、叫び声で知らせて 波打ち際で恋人たちが行うようなごっこがはじまる
首が治り、包帯が外れかかり、黄色い肌と骨だけの異常に細い女性 身体の筋肉はほとんどなく、垂れ下がって萎んだ乳房が固まって強張った振り子のように動く 落ち込んだ眼窩 痩せて骨の形が露わになった頬 わざと見せる歯は丈夫そうに揃う 腹部には黒い空洞 その内部からは血色の良い内臓が垂れ下がり、歩くごとに体液が漏れ落ちて、赤い糸を作る 臓物を引きずる彼女の歩みは遅い…最初のうちだけは
それでも追いつかれる 観ていないうちにいつの間にか距離を縮められて…後ろ向きに彼女を見続けて下がる…ということをすると…意外な落とし穴に落ちる
最初の部屋から出て、出口であろう到達地点までの間にあるドアは3 内、2つのドアは開かない 開けようとするだけ無駄 だが、やらないという選択肢はない
楽しみは捨ててはいけない 焦るという快感を…味わ合わなければ……
歩みは遅い 隣人も、オレ自身も 開かないドアノブ 無意味に何度も開けようと試みて 開かないと知るや次のドアノブにも手をかけて 殺人犯に追いかけられる犠牲者を装って、ドアを無理矢理、引く そこを叩いて…助けて! と叫ぶ…ことまではしない どれも開かない…絶望感に浸る 知ってはいるのだがそれが楽しい 焦りだけを募らせる その合間にも隣人はまるで、途中をすっ飛ばして短距離ワープをしてくるゴーストのように迫りくる…たしか3回、目線を外し、4回目に見ると追いつかれた +DEADEND しなければいい? こういったゲーム 追いかけっこも醍醐味のひとつ それにしても…なぜ手を前にして追いつこうとする? そのゾンビ歩きはデフォなのか? 笑ってしまう
等間隔に並んだ廊下の、そのもっとも奥の扉に手をかける ここの扉だけはすんなりと開き、導かれるように内へと入った…入ると同時にドアは閉まり、やけに高い、分からせるような響きで、鍵がかかる その音がした
痛い 痛い やめて やめて 殺して 殺して ごめんなさい ごめんなさい 殺してやる 痛い やめて ごめんなさい 殺してやる 殺して 痛い ごめんなさい 殺してやる 痛い やめてやめて 殺してやる殺してやる やめてやめてやめて 痛いやめて 殺してやめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて やめて……
部屋の中には、火のついた蝋燭が一本 部屋のほぼ中央に、背の高い燭台の上に備え付けられていた ベッドも何もない殺風景な部屋 窓はほかと同じに斜めの格子で閉じられ、床はほかと違い金網 生暖かい風が吹きあがってくる この下は1階 それなのに遥かに暗く、下まで、地の底まで延々と空洞が続いているように、果てがない そこにあるのは…墨を満たしたような黒 表面に時折、雫が落ちて波紋が広がる…本当にここは2階か? 吹きあがる生暖かい風に乗って、鉄が溶けたような匂いに酔う
壁一面に黒一色で 部屋にはそんな言葉が綴られていた 天井もどこも そんな言葉だけが…英語で書かれている 残念だがこのゲームに字幕はない
ドアノブが回る 燭台を避けて奥へと進む 丁寧にドアが開いて、隣人が姿を見せた…勝手に開いた扉 扉は入院患者が部屋へと入ると同時に勝手に閉まった そういう演出
閉じ込められた
クリアにはこの燭台と蝋燭が必要 それぞれ4つ ここにひとつ 所長室にひとつ 霊安室にひとつ どこにもない屋上にひとつ
それをそれぞれ、決められた位置に安置し直して、蝋燭を灯す 順序は決まっていなかったが…それがこのゲームをクリアする条件
燭台と蝋燭もアイテムとして数えないといけなかった 燭台は杖代わりに使える 松葉杖より威力は弱く、すぐ壊れるが、新しい燭台を見つけると以前のものも直って…どこかにキープして置けた 燭台の上にある限り、蝋燭は決して消えず これでバケモノを永遠に斃すことができた 使うと消えてしまうが…
バケモノは蝋燭を…火を怖がり、その先へと無理に入り込もうとはしない オイル スプレー缶 紙くず 古新聞紙 そこかしこにそんなものが、隠されているようにあった よく探せ どこにでもあるものが命綱になる バケモノはこの蝋燭の火でしか倒せない 火があると一瞬だけ、たじろぎ 怯え 停止した
その間に…なんとかしろ そうしろとでもいうように……
隣人も入り口付近で立ち往生 進もうかどうしようか…迷っているように逡巡する それ以上、奥へと来ない
火を怖がる それはバケモノも動物も変わらない……
オヤスミなさい




