Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #06 改
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #06
このゲームはオートセーブだった…元と同じなら 特定の場所を超えないとリスタートが更新されない 部屋から出て廊下を右へと進み、エレベーターホールの扉の前、左にある薬剤室に入らないと、いつまでもここで目覚めることになる
起き上がる
攻略がゲームと変わらない 面白みがない 生きたまま喰われるという貴重な体験ではあるが…同じシチュエーションばかりでは死に飽きる
それにこれは前にも体験した
最初の部屋をクリアするにはこのふたつのうち、どちらかを経験しなければならない 生き残る方策はいくつもある? そんな文言どこいった? どっかの政府の言い分ぐらい曖昧で真実味がない
壁を伝ってドアの前まで歩く ベッドを戻す ゆっくりと それでも呼び寄せる 高い錆びたレールが奏でる嘲り
入り口の扉 四分の一程度が空くまで押す ここはベッドの前で、しゃがむ、をすると、元のベッドが置かれていたと思われる跡を見つけることができる そこまで 押したら、隣のベッドのカーテンが開いていないことを確認 開いていたら圧しすぎて失敗 開いていなかったら…即座に元のベッドまで帰る ベッドの横でしゃがむ、と下に入り込めることがわかる
骨組みばかりのベッド 上から丸見えだが…そんなことは気にしない
やがて
隣のカーテンが引かれ 隣人が現れ出でてくる そんな気配
隣人が向かうのはまず向こう、入り口 こちらには来ない 出入口ドアへと行き、誰もいないとわかると、帰ってくる 内臓を引きずったままよろよろと歩く 腹部からは、ぷらん、と臓物が垂れ下がり、振り子時計のように歩みを刻む ちょうど、ベッドの前まで来ると、何かを探すように辺りを窺う…頭が治っている その治りかけの顔を振って、何かを探す…探しているのはオレ ベッドの下 骨組みだけで遮るものは何もないのに…オレからは対象が丸見えだが、相手からはオレは見えないように顔を巡らす そうとしか思えない動作 分からないようにオレを探す 面白い冗談だ ただ、揺れ、呻き、蠢く
すると
ドアが開くような音 それに続いて、ベッドが動くような音 これでドアの鍵が開いて、ベッドの位置が収まった うめき声が徐々に大きくなり 隣人がなにかに気がついて振り返ろうとした直前、向かって右 ドアの方からの攻撃によろめいた
「グギャアアアアアアアアッ」
「グワァアアアアアアアアッ」
入院患者がいなくなったことを互いに非難し合い、相手に押し付け合うように、相手を叩きのめしにかかる隣人とナース 鈍い筋肉が潰れる音 打撲音 その振動が床を伝わり、飛び散る血飛沫がカーテンを染めていく…死んでいるのに血を飛ばすとはどういうことだ? くんずほぐれつ、キャッキャッウフフの肉弾戦 互いに噛み付き合い、殴り合う 脆い方はナース 腕がもげて、鈍い音を立てて地面に落ちて、不思議なことに溶けて血溜りとなって、床と吸い込まれた
「グシャワアアアアッ」
それなのに…斃れたのは隣人 ご丁寧にこちらに顔を向けながら、目を覆っていた包帯も外れて、黒い眼窟のみの目でこちらを睨み付けながら…斃れ込んだ 息絶える…死んでいるものが息絶えるとはどういうことか分からないが…蠢かなくなる
オレを睨みつけ続ける隣人の死体…屍体? 見つめられながら…ベッドの下に伏せ続ける ベッドの真横まで来て、わざわざ、辺りを見回し探し続けるナース 視点がナースの頭の上へと移動させられる…頭の上から、首を振るナース その下、骨組みだけで姿が丸見えで、怯えるオレをオレは見ている なんでそれで気がつかない? やがて、オレを見つけらずに、一声、恨みにも似た呻き声をあげて、踵を返して、立ち去り、ドアから出て行くナース
これでここのドアは解放された 行動はすぐに再開しなければならない しかし、すぐに外に出てもいけない
時間フラグ
そんなものさえ使って、このゲームは成り立っている




