Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #06 改
※2026/06/08改稿しました
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #06
このゲームはオートセーブだ…元と同じなら 特定の場所を超えるか、入るとリスタートが更新される 部屋から出て廊下を右へと進み、エレベーターホールの扉の前、左にある薬剤室に入らないと、いつまでもここで目覚めさせられる
起き上がる
攻略がゲームと変わらない 面白みがない 生きたまま喰われるという貴重な体験ではあるが…同じ死ぬシチュエーションでは死に飽きる
それにこれは前にも体験した
最初の部屋をクリアするにはこのふたつのうち、どちらかを選択しなければならない 生き残る方策はいくつもある? そんな文言どこいった? どっかの政府の言い分ぐらい曖昧で真実味がない
壁を伝ってドアの前まで歩く ベッドを戻す ゆっくりと それでも呼び寄せる、高く響く、錆びたレールが奏でる嘲り
入り口の扉 四分の一程度が空くまで押す ベッドの前 しゃがむ 元のベッドが置かれていたと思われる、そこだけキレイな跡 そこまで戻す 隣のベッドのカーテンが開いていないことを確認 開いていたら圧しすぎ 開いていなかったら…即座に元のベッドまで帰る 横でしゃがみ…下へと入り込む 下に紙が光る
骨組みばかりのベッド 視界は良好 上から丸見え そんなことは気にしてはいけない
やがて……
隣のカーテンが引かれ 隣人が現れ出でてくる そんな気配
隣人が向かうのはまず向こう、入り口 こちらには来ない 出入口ドアへと行き、誰もいないとわかると、帰ってくる 内臓を引きずったままよろよろと歩く 垂れ下がった乳房と臓物が、ぷらん、と振り子時計のように歩みを刻む オレが寝ていたベッドの前まで来ると、何かを探すように辺りを窺う…頭が治っている その治りかけの顔を振って、オレを探す ベッドの下 骨組みだけで遮るものは何もない オレからも相手からも、互いが丸見え なのに、相手からはオレは見えないように顔を巡らし 分からないとでもいうように探す 面白い冗談だ ただ、揺れ、呻き、蠢く
すると……
悲鳴に似たドアの開閉音 ベッドも泣く これでドアの鍵が開いて、ベッドの位置が元へと収まった 徐々に近づく呻き声 隣人がなにかに気がついたように振り返ろうとする直前、向かって右 ドアの方からの攻撃によろめいた
「グギャアアアアアアアアッ」
「グワァアアアアアアアアッ」
入院患者がいなくなったことを互いに非難し合い、相手に押し付け合うように、叩きのめしにかかる両者 鈍い筋肉が潰れる音 骨が軋む音 打撃が床を伝わり、飛び散る血飛沫がカーテンを染めていく…死んでいるのに血を飛ばすとはどういうことだ? くんずほぐれつ、キャッキャッウフフの肉弾戦 互いに噛みつこうと殴り合う 脆い方はナース 焼け焦げた腕がもげて、鈍い音を立てて地面に落ちて、不思議なことに溶けて血溜りとなって、床と吸い込まれた
「グシャワアアアアッ」
それなのに…斃れたのは隣人 ご丁寧にこちらに顔を向けながら、目を覆っていた包帯も外れ、黒い眼窟の目 こちらを睨み付ける…斃れる 息絶える…死んでいるものが息絶えるとはどういうことか分からないが…蠢かなくなる
オレを睨みつけ続ける隣人の死体…屍体? 見つめられながら…ベッドの下に伏せ続ける ベッドの真横まで来て、わざわざ、辺りを見回し探し続けるナース その体は少しずつ、崩れていく 視点がナースの頭の上へと移動する…頭の上から、首を振るナース その下、骨組みだけのベッドの中で、姿が丸見えで、怯えるオレをオレは見ている なんでそれで気がつかない? やがて、オレを見つけらずに、一声、恨みにも似た呻き声をあげて、踵を返して、立ち去り、ドアから出て行く
これでここのドアは解放された 行動はすぐに再開しなければならない しかし、すぐに外に出てもいけない
時間フラグ
そんなものさえ使って、このゲームは成り立っている




