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Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ  作者: 桜葱詩生


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Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #005

※2026/06/08改稿しました

※2026/09/14改定しました


セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #05



「ブレーィイン」


と叫ぶ、全身黒い液体(コールタール)で濡れ細った骸骨が閉じられなくなった目を見開き、意外にも健康そうな白い歯を剥き出しにして、目の前の獲物に噛みつこうと大きく口を開ける。いままさに噛み砕かれようとしたその時、視線は開かれた黒い口腔中へと、紫色した舌の上をなんなく通り抜けて入っていき、身体ごと相手に丸呑みされた、とでもいうように、黒よりさらに濃い黒で埋め尽くされる。喉か胃か、密閉された極所では、満足に息などできないということ気づいた体が、慌てたように勝手に口を開き酸素を求めて足掻いたところで、目が覚めた。見ず知らずの他人の呼吸音のように聞こえる自分が吐いた息が、盟約に従って顔に降りかかり、それさえもが、オレの顔へと誰かが噛みつこうと口を開けて、いまここにいた、という証明のような暖かさを残す。喰われるのなら男より女性…美女の方がいいと思うのは全人類共通の夢…そんな風に思うと同時に、なぜか吸い込んだ新鮮な空気にさえ咳き込む。確認するまでもない…今までの、先ほどまで、前に、寝ていたのと同じベッドの上。同じくすんだ黒い天井が眼前に広がり備わったまま、どれくらい時間が経ったのか、感覚を鈍らせる。


鋭い、足首に突き刺さる棘のようなスプリングがここが現実だということを明かすように痛みを知らせて、いつまでもここにいるな、という焦りを誘う。なのに今まであった身体の、それ以外の所の痛みがまったくないことにも気づく…折れたのか、何かして固定されたギブスの中にさえ、痛痒さえない。一瞬だけ、ここがどこかわからなくて混乱し、その直後に、何か自分以外の思考が、その考えに割り込むように、ここがゲームの中だということに納得する。ゲームでは、動かすキャラの痛みなんて迷惑なものは、プレイヤーにはまったく感じられないから、この措置は当然だとも思う。


凄惨というものが残るベッドの上、ここでどんな悲惨な出来事が起こったのか…そんなことは知らないが、ただひとつだけいえること。


このゲームは死に戻らなければならない。それで活路を開く、そうしないと先に進めない、殺されないで(やられないで)クリアすることはできない。



+知恵を使え 観察せよ 生き残る方法()はいくつもある



そんなキャッチフレーズが嘘のように、生き残れない…いや、死に戻り、生き返ることで、先に進むことはできる。ただ、死なない、という選択肢を取ることができないだけ。


目の前のあらゆる物事を信用してはいけない。それはまるで、死ぬ前の向こう側(現実)と同じ……。



手を伸ばし、右足に引っかかっている、折れ曲がり突き出た針のようなスプリングの端を外す。このせいで、無理に降りようとすると右足がベッドに残り、身体のバランスを崩して転落する。これを外したとしても…両足のパジャマの先はギザギザに千切れていて、服の色合いから入院服というより、どこぞの囚人服のように見える。そんな風になったオレは、足にでっかい丸い重しがあったのなら、大企業のCEOをナイフで刺し殺し収監されたコーディに似ていなくもない。


ゆっくりと、音を響かせないように床へと降り立つ。ここでゲームなら、しゃがむ、という行為がどれほど重要か、ということを分からせるための仕掛けが施されているのが目に映る…ベッドの下、光るアイテム。光る箇所は重要なところだ、取れるアイテムだ、という錯覚…だが、まだここでは、そんなに警戒することはない。それは以前のゲームで何度も確認した…半身だけをベッドの下へと入れ込んで手を伸ばし、拾う。ゲームでは、完全にベッドの下へと入り込まないと取れなかった。


斜め読む…以前と変わらない、()の文言。胸ポケットへと…この紙はアイテムとして数えられないから拾う事に悩む必要はない。


真横で蠢くカーテンが、内部の咀嚼音と同調するように、可憐に揺れる。まるで囚われの美姫が助けを恋焦がれている、とでもいうように…これもトラップ()。カーテンを開けないで進んだらどうなるか? 以前と同じなら、より違う絶望を味わえる。


ベッドを伝って端から、吐き気を催すように咽る室内へ抜け出る。ベッドの対面、向こうの壁際には小さな棚が3つ、等間隔に室内にあるベッドと対になるように置かれ、その引き戸はどれも開く、が、なにもはいっていない…この中になにかアイテムがあって、それを探そうと、ぐずぐずしていると、喰われて死ぬ。棚の上の壁には赤黒く、前の文言(・・・・)が浮かび、天井の隙間から滴る血液が、その文字をわざと避けるように濡れ落ちる。壁も床も滑る、気を抜くと転ぶ、転ぶ歩数はランダム、左右の足で確率は同じ…ギブスのある左足の方を庇って歩くと右足を持っていかれ、ギブスに力を籠め過ぎると、左足が床から反発を食らって転ぶ。嫌味な仕掛けを慎重に掻い潜って入り口へと向かう。


扉を塞ぐように、半分だけ、その元の位置から連れ出されたベッド。ほかのものとは違って、この入り口のベッドには布団もマットもある…あまり状態は善さそうではないが。切り裂かれたカーテンが頭の方を…奥に纏わりつき、輸血用パックとカテーテルの残骸が、その上に無造作を装った風に置かれている。布団もマットも、カーテンですら血に塗れ、どす黒く変色し…嗅いだことのない腐臭に思わず顔を背ける。確かに臭いがある…しかもきつい、いわゆる鼻が曲がるという表現が間違わない、というように。自身の迂闊さを呪う…だが死ななかった、ならばいい。臭いで死ぬことはゲームではなかったが、硫酸などの劇薬がこのゲームには登場する。


これを押す。


ベッドを入り口からどかそうと無理に押す、滑る足元、力を込めて…やがて、錆びたネジを無理に回す音に似た奇声を上げて、ベッドは静かに動き出す。入り口、入ってすぐ横の、元このベッドがあったと思われる、奥の空いたスペースに、高く軋むレールの音を響かせて、ベッドが入り込んでいく…予防接種の針みたいに。なにかをおびき寄せることに気を配ることはしない。ただ闇雲に、これが正解だと信じて()す。「カキッ」奥になにかつっかえるようなものがあって、それに当たる音を立ててベッドは停まる、ドアへと至ることができるぐらい、横にできるスペース()。もうベッドは一ミリたりとも動かない。


左横、できた空間の先の、曇った明かり取り用の小窓がある木製のなんの変哲もない扉のドアノブに手をかける、回す、当たり前のように空回りする取っ手…この病院のドアはいくつかを除いて引き戸でできいない。押しても引いてもびくともしない扉。がたつき歪むのを拒むように、死にゆく猫の最期の声に似た悲鳴でドアは本性を曝すのを拒む。


当然のようにかかっている、鍵。しかし諦めることはできない、何とか開けようとさらに挑む…次の瞬間。


!っ(ぐあっ)


髪の毛を掴まれ、無理に後ろへと引き倒された。抵抗できない強い力で仰向けに寝転がされる。顔の上には隣人の腹にできた空洞とそこから伸びる細い線、へっこんであばらが浮き出る胸。呻き声を上げ、異臭を放つ涎と血液と膿が、顔を覆う。いつのまにか背後に立っていた隣の入院患者が、オレの襟に手をかけて、髪の毛を掴み、噛みつこうと引き倒した。無慈悲に不愛想に広がる乱食いの白すぎる歯が、無防備になったオレの顔へと降りてくる。人間の頭部にはそんなに肉はない…が、隣人の歯が額に当たり、簡単に、落ちてきた巨石が自動車を押し潰すような複雑な音を立てて、頭蓋骨がかみ砕かれた。おでこの骨は固く厚い…それなのに、骨は脆い粉菓子のように砕かれて、持ってかれる。頭蓋骨が無くなり、露出した脳自体が、冷たい、という。巻き込まれた髪の毛がチーズのような糸を引いて、無くなった頭蓋骨よりも痛みを訴え、噛み切った肉と骨を咀嚼もせずに飲み込んだ隣人が…消化に悪くないか? さらに違う肉と脳がありそうな額へと、冷たい息を吹きかける…息がある? 生暖かい血が耳横から襟首へ滴り落ち、首筋を虫のように伝う。


「ぐぅわああああああぁぁぁ」


その状態だと喰いずらいのか、なぜか身体を持ち上げられた…起き上げさせられる。正面で隣の病人と向き合う…脱力したオレの首横へと噛み付き、頸動脈を喰いちぎり、肉を持っていかれる。噴水のように吹き出す鮮血がオレと入院患者を染め上げていく。それは天井から滴る赤い雫とは異なって、すぐには消えていかず、水中で揺蕩う重油のように、流れゆかずに身体に纏わりつく。沸騰するような贖罪の薫り、そんな優雅なものなんかでは決してない赤い色が、周囲を、オレを、隣人を染め上げていく。


なすすべなく、オレは喰われ続けた…抵抗しなかったわけではない、力が入らない、抗えない。隣人はオレを再度倒すと、今度は柔らかな腹部に噛み付いて、まるで自分の腹部の腹いせのように、そこを引きちぎった。裂けた腹の内部から横隔膜に覆われ収まっていた内臓が、(はらわた)自身の圧力でもって顔を覗かせる。それを掴み無理に引きずり出すと、途中で引き裂いて、隣人は夢中で喰う。身体の内部から無理矢理、内臓を引きずり出され、生きたまま喰われていく…無我の境地へと至った、半生の焼き肉を旨そうに喰う中年のように。そんな状態なのに…オレにはまだ息があった、気を失わない。これぐらいで人はまだ死なないが…普通なら気絶する、そんな神に愛された救済さえもない状態で、オレは生きたまま食われていった。意識が飛ばないまま…オレはオレが喰われていくところを()せられ続けた。


いつの間にかオレが見ている映像は、オレの上からの、隣人が上に乗り、腹をまさぐるように喰う映像(もの)へと変わっていた。喰い方が所業輝に似ている…とはいえないか。ここからではこの隣人の性別は分からないが…ゲームと同じなら女性のはずだった。



Preding(喰われて)Dead(死んだ)


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― 新着の感想 ―
知ってる天井wwwwwwwwwwww どこのパイロットだよwwwwwwwwwwww そしてまた喰われるwwwwwwwwwwwwwww 主人公残機何体あんの!?!? マリオなの!???マンマミーヤ!? …
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