Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #003
※2026/06/08改稿しました
※2026/09/07完結後なのに 改定しました
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #03
バイオ、という名の名作が成立してからこの世にはホラーを題材にしたゲームが溢れかえった。
大半はノベル、いくつかはアクション、スニークN`ハイド。とにかく逃げ回るしかできないものもあれば、ほとんどは、ヒロイックに生存をかけての戦い、反撃が可能で神さえ斃す。即死、異界、不条理、狂気、都市伝説、サスペンスホラー、コズミックホラー、単一ダンジョン、脱出、ローグ・ライクにグロテスク、テラーホラー、ダークスリラー、スプラッターホラー。
ありとあらゆるものが墓の中から、屍体が吸血鬼になっていないかを確かめるように掘り返され、ありとあらゆるプレイヤーが、危険と恐怖に満ちた、安全な、仄暗い見えないそこへと次々に足を踏み入れた。明るい場所へと、笑顔と成功体験で還ってこれる場合もあれば、二度と戻ってこれなくなるような、救いのない世界に永遠に閉じ込められる場合もある。その途方もない種類のあるものの中でこの、St・ミカエル・ラザフォード病院からの脱出、というスマホゲームはその異常性と不条理さで誰もが匙を投げ、誰も続けない、触りたがらない、といわれた名作だった。
人はいう…ルールがおかしいと……。
凄惨な事件があったとでもいう、錆びつき、嫌な音がかさつく廊下。進んだ先、重い扉が行く手を塞ぐ。開けようとドアノブに手をかけた瞬間、後ろへと引き倒され、バケモノに襲われ、喰われて死ぬ。もちろん、そんな奴はそこに今までいなかった。
+PredingDead
部屋に入る。乏しい灯りの元、澱んだ空気の演出が撒かれる空虚な空間の向こう、うっすらと棚が見え、横たわったアイテムが光る。光るアイテムはたいてい重要アイテム、という錯覚、誤解、思い込み。意気揚々と、それでも慎重にそれを取る…と、誰もいなかった部屋にバケモノが現れ、襲われて喰われて死ぬ。
+PredingDead
今も似たような状況、外へ出ようと入り口のベッドを無闇に動かす、音に気づいたお隣の病人が出て来て、襲われて食われて死ぬ。
+PredingDead
抵抗は無駄、無意味。最初はとにかく逃げるだけ…喰われるだけ、逃げるにしても足のギブスが重く、不自由、という枷が圧し掛かる。ゲームの醍醐味のひとつ、走れない。追いかけられたが最後、追いつかれて、なぜか、バケモノのほうを向かされて噛み付かれて食われて死ぬ、背中から肩口に噛み付かれて死ぬ、首を後ろに無残に折られて死ぬ、ほかいろいろ。
+PredingDead
狂気系即死ゲーム-その名のとおり素晴らしい不条理ぐあい-
クソゲーではない、ゲームのコンセプト、設定、システム、理念、信念…ありとあらゆる肯定的な文言を並べても、受け取り方ひとつであらゆるものが変わる現在、無駄なものはこの世界にはなにもない。
残念なのは…スマホ、という小さい画面ではその醍醐味を味わいつくせない点、タブレットの使用は推奨されていない。心臓発作でどっかの誰かが死亡した、と噂が立ったことがあったとまことしやかに囁かれた。
なのに、深夜、ひとりで、ヘッドフォンを使用し、周囲を暗くしてのプレイ、が推奨。
常時どこからかAMSRで叫び声、壊れる音、悲鳴、破裂音、破壊音、潰れる音、呻き声、潰される音、叩きつける音、呪詛が聞こえ、囁きが入る。
死ね……、
と……。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
そんなのを耳元で囁かれる、永遠に、永劫に、延々と……。
そんなホラーゲームだ。




