Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #191
※2026/07/24いくつかの表現を更新しました
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #191
待合室にも入れなかった…弾かれる。やはり部屋と廊下の間にある、目に見えない不可視の障壁が侵入を阻む…時間停止でないと通り抜けれないトラップ? さすがにそれは…嫌な想定。中は風が渦巻いている、というようなエフェクトが時折、目の端で生まれ、確かめようと注視しても、ガス灯がただ、青く揺らめく暗い室内が見えるだけ。床の下は暗すぎて穴が開いているようには見えず、だがその元床だったところに二次元に残る魔法陣がなにかの物事が未だ、隠されたまま進行しているという暗示を伴って時折、構成する線に沿って光りが走る。その輝きに反応するように一瞬だけ、滝のはじまりのように急落する滑らかな滑落の端が、天使の輪のように湾曲して見えた…重力特異点はこう見えます、という科学者が説明する時に作成したCGみたいに。穴に向かって引き込まれる風圧と落下を止めないと中庭には出れない…そのための時間停止。そんな余計な考えに至り、無闇に無為なことを考える…任意に起こせない現象、コントロールできない発生、ただしどんな事象にも、前兆と起こすための物事はある…院長を無効化…ここで? あれこれ無駄な思案、時間を潰す、退屈は人を殺す。
第一診察室と第二診察室の奥は移動可能、Hit N` Awayはアクションの基本、奥を回り込み、誘導…奇襲と攻撃を繰り返す、銃を避けて…煩いに似た思考停止、甘くなった先読み、そんな甘っちょろい考えで上手くいくのなら、どんな現実ももっと簡単にこなせている…被害もオレだけで済んだ。どうでもいい考えは切り捨てる…たとえそれが大事かもしれない、と直感が囁いても……。
マイケルでないからか、時間フラグの発生もまだ、起こらない。母親と少女は中庭の向こうへと消えた…だからといって襲ってこないとは限らない。主要キャラがいなくなった、イベントの終了…なのに何も進まない、進めない…考えられる想定はふたつ、いまだなにかのイベントが残っている、何かのトリガーを見逃している…それがなにか? 確かめる術は…探し回ること、犬のように。あとは時間が許してくれる、後悔も、贖罪も……。
東棟の廊下、院長室への通路も人と物品のブロックが横柄に居座り、待合室にある厄介な引き込みに、斜めに引っ張られるエフェクトが加わった菱形の状態で、奥へと向かう移動を邪魔していた…この 状態でも通り抜けれない。ブロックと右、食堂へと向かう壁の間に人が一人、しゃがめば通れるような隙間ができていた…ように見えたのだが、実際にはない、カフェウォール錯視? 近づくとそこにもきちんと壁があり、少し離れると…斜めに隙間が空く。ブロックは近づくと正常の四角い大きな壁になり、離れた位置から見ると斜めの菱形に変形する…視野錯視を目の前で楽しむ。ブロックのこちら側の表面に通行を邪魔する魔法陣は探し出せない…中? 同じ理由で、正面玄関の人の壁も通り抜けれなかった…人の顔目掛けて入って行こうという勇気はない。行けるところが次々に塞がれていく。いつもなら楽しむところだが…なにかの棘がどこかに引っかかり、それが抜けない、抽象的情動性は言語的で明瞭で砕けた表現に置き換えれない。
「ふう…」
意識を保とうと、意識して意識する…気を抜くと頭の中にぼんやりと、睡魔が襲ってくる長距離運転中の車内のような飽和し、どこまでも広く拡散する、あらぬ方向へと引っ張られていく感覚が、ないはずの身体に抱きつく。つい、その安らぎに似た柔らかさに身を委ねそうになる…こっちの方がラクだよと。誰も、その川を渡るな、とは注意してくれない…まあ注意するやつもいねえしな。気を保て、水の流れに身を委ねるな…ここは夏休み中の楽しげな、流れるプールの中じゃねえ。
抜けれそうなところは東棟、階段、男女トイレ、これだけ。西棟は奥が確認できない。残りが…第一と第二の診察室。第二診察室以外の扉はすべて閉まったままで、どこの扉も開けられず、通り抜け出れなかった…触れない、入れない。第一診察室の扉は沈黙したまま口を閉じ、第二診察室には近寄らないようにする…開け放たれた扉の表面、そこにはいつものように、墨を立ち入れたような黒より深い黒、薄暗い視界の中、さらに深い黒が静かな凪の水面のように満ちる。今の状態ではこの黒には近寄らない…どこからか届く直感的な嫌悪感に素直に従う。後頭部をスクロールしていく…壺、喰われた胞子、それに付随するいろいろ不明な事象…探究と解明は他者に委ねる、が…わからないことに対して、人は行動を起こすことに躊躇する。そんな人間らしい情動を取る自分に驚く…どうでもいいことなのに。そんなよくわからない衝動を、反対に楽しむ…それぐらいしか愉しみがないともいう。
暇…本当に退屈は人を殺す、まだ好奇心旺盛に、冒険を行う猫の方が優っている。猫は自分を殺すだけだが、人は他人をも巻き込む。
ふたりの側で、深層へと降りる手段まで考える…本当なら後回しでいい。だが、あのバケモノを排するなんらかの武器はいる…少なくとも地下1階でバールを手に入れる必要がある。銃があれば楽なんだが…弱点はいつもの通り。問題は…どうやってそこへと辿り着くか。頭を殴るだけで弱点を曝してくれるのなら神像と同じ、ラクでいいが…そうも上手くいきそうにない。
あれが育ってあれになった…そんな想像と想定を振り払う。どうも…悲観的になっている、まるでジュディの怨念が背中について、裏飯屋と、昼食を奢ってくれと引っ張るように…同盟国に裏飯屋があるかどうか知らないが。それに似た感覚はあるだろう、あれは世界共通。たいていのひとは後悔を残す、それを生きている人が勝手に…まあいいか、そんな風に持て余すしかできない。
………。
どれくらい経っただろう? 何回か、闇の中を…医師がこちらに気づかずに通り過ぎて行った薄い空気の動く気配と近づく音、姿は見えなかった。どこからか…腐臭、それに伴う…煙草の匂い? だが、メントールではなく、通常の焼かれ染みついたニコチンが漂い…遠退いて行く。何度か、マイケルの身体に入る真似をして体を重ね、ジュディの身体へと同じように試みて…すべて無為に終わる。何も起きない…何も終わらない、はじまりもしない…またか。現実の社会に似た閉塞感に嫌気が差す…行き詰り。もともと、ヒントも何もねえような、想像力と想定力でなんとかこなしていくしかないゲーム…この状況もなにか必要なものか、トリガーが…? どこかでドアが開いた、蝶番が軋んだ音を立てた。誰かが…杖を突いて跛を引くような歩きで…闇の中、そんな悠長で慎重な一歩一歩、確かめるような音が近づく。東棟、トイレの方から…、
「! ふぅう……」
ぬっ、という入り方でスポットライトの中へと姿を見せた長身のトイレが近い、黒人のおっさんが、舞台上、上手側で次の言葉をド忘れした役者のように立ち止まった……。
※やっと出てきたよ 慎重すぎなのも考えものです




