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Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ  作者: 桜葱詩生


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Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #182


セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #182



腹から入った熱は内側に余韻を残し、背中を突き抜けて、何かを奪って抜き出ていった。目の前にいるのが美少女だったら一目惚れしたのだと自認しただろう。だが、オレが喰らったウインクは心を鷲掴みにするものなんかではなく、身体を害するだけの暴力だった。(はらわた)を無慈悲に甚振り、掻き乱す、腹部はそんな病み方に似て、脇腹には、熱せられた棒を無意味に突き刺され続ける屈辱が残る。同じ攻撃形態、脇腹の痛みは深く、腹部の痛みは浅く、どちらも無理矢理、食べごろを作り出すために熱湯をかけられ、熟すのを偽装した果物のような感触が幅を利かす。ショックを受けた身体から自然と力が抜け、力が抜けたことで生理的危機感が波のように押し寄せ、無抵抗ではいたくない、という思いが、身体のどこかから力を呼び、しかしチューブに力を込めたらどうなるか、という子供でも分かる物理の遊びが、末端で簡単に力を込めることができる、指先と歯にだけ集まった。どこでもいい、どこかに意識を込めていないとそのまま魂ごと持っていかれる…そんな焦燥を纏った死神が背後からオレの肩に手をかけた…気安い友達のように。


そんなこちらの状況(心情)を顧みることもなく…さらに一発…二発…銃声が鳴った。オレの身体はその大きな音ごとにビクつき…美少女ではなく、アホな男の身体の上で、力が抜けたようにヘタった。もはやオレの意思は介在しない、何事にも関わりなく、全身から力が抜けた。



Shot() to() Dead()



…院長に銃で殺される時と同じ死に方…レアでもなんでもないノーマル以下の凡死。だがこいつは院長ではない……。



「くそっ、なんて馬鹿力だ…人を軽く投げ飛ばすとは…どけっ、このバケモノっ。なんでこいつがこんなところにいる? くそう…まだ生きてやがるのか……」



そんな…顔の印象と同じ悪態をついて、ピーター・ブラッドバリーがオレの身体を脚で押しのけ、やっとのことで下から這い出した。白衣、シャツとズボンに大量の血痕、その血が粘りつくように服の皺を伸ばしていく。ぶつかった拍子にどこかへと飛んで行った眼鏡を探すのをあきらめたピーターは、「くそっ、このっこのっ」オレの身体を何度も蹴っ飛ばしてから、無言でニヤついて、何度も弾を撃ちこんだ…虫を見つけて無闇に殺虫スプレーを振りまく女性のように。ジャッジメントが出ている、死んではいる…だが、こいつにはオレが死んでいるとは思えないらしい。何発も何発も…気のすむまで銃を撃ったピーターは、やっと安心したように()めていた息を吐いて、軽く浅い呼吸を繰り返した…自身を落ち着かせるために。蹲る動かない母親を見て安心したように待合室へと向き直って…その光景に衝撃を受けたように「は?」小さい声を上げた…忙しない奴だ。持っているのはリボルバー…だが弾を補充していない。院長と同じタイムラグのない無限撃ち、厄介な……。



「装置ができたって言う合図が来たから来てみれば…なんだこれは? どうなっている!? ええ? 装置はどこだ? なんでこんな穴が開いている? 何がどうなっているんだ?」



銃口を待合室に向けて、やや早口でそう捲し立てたピーターは、子供を見失って狼狽える母親のように、開いた手で頭の髪を鷲掴みにして、狼狽しはじめた。目の前の状況が理解できないとでもいうように首を巡らし…気づいたように慌てて母親に銃口を向き直した…完全消滅も一時退却のエフェクトも出ていない母親は子供を抱きかかえて守るように、その場で蹲っていた。目線は待合室に、身体と銃口は母親に、そんな無理な姿勢で、威嚇するように警戒するように、ややビクついた音を滲ませて、ピーターは警告音を発した。



「待て! それ以上近づくな、来たらお前の母親がさらにひどい状態になるぞ? いいな? 分かったらそこで待て…動くな…いいな? 絶対に動くなよ?」



そういいつつ、ピーターは母親の向こう側へと回り込んだ…母親を真ん中に挟んで少女と対峙するような格好。待合室を見回し…記憶にある以前の光景と、いまの現状の間違い探しをしたように……、



「なんでお前が自由になっている? ******はどうした? お前の弟は? 椅子も…本もそこにあるのに…なにがどうなっている? なんで空中に浮いている? 何なんだ! ここは? なにがあった? どうやったらこんな状態になる……」



誰も答えを知らない、答えない問いを口にして自身の不満を発散させた…どうも、医師としての素質に欠けているような姿勢と仕草…違和感。落ち着きなく脚と首を動かしたピーターは、焦ったように……、



「信者たちはどこにいった? どうした? あれほど目を離すなと言っておいたのに…職場放棄? どいつもこいつも…還りたくないのかよっ! 助けてやったんだろうが…あいつも何人も人を殺したって言うからいい役目を与えてやったのに…やっぱり裏切るのか? 俺を? こんなに良くしてやったのに?」



言動をどんどん、歪な方向へと向かわせていく…こいつもそうか。それにしても…いつからだ? プレイヤーだったのは…最初から? なら初めて会った時からこいつはNPCのフリをしていたのか? 元のゲーム、ピーターには会っていなかった。どうやって出るんだか…なにか特定のフラグか条件がいる。見落としを悔やむ…まあ後悔してもどうにもなんねえが。この状態でも普通にOTZができることを知れた…いい経験(勉強)にはなった……。


※ピーターと遭遇するためには きちんとした条件がいります 今回はその条件をクリアしたために 遭遇していただけです 条件の一つは主人公が何度もやったことです

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