表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ  作者: 桜葱詩生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/212

Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #179

※2026/07/05いくつかを改訂しました 後から足したものがすべて余計にならなければ良いのですが……


セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #179



「?」


床に残された少年の身体…力なく横たわるその首元から新たな…ビクついたような動きでやや淡い金色の胞子が出てきた。どんくさく…もたもたしたそいつは未練があるように首のところでぐずぐず、し、首の隙間から、背後の悲惨さに紛れて見えずらい、黒い細い糸でなにかを引っ張り出そうとあたふたし…喰われた、簡単に。胞子の存在に気づいた個体が瞬時に首を伸ばし飲み込んだ…笛が鳴るような高い悲鳴、固い軽い柿の種をかみ砕くような音。咀嚼はない…ただ確かに嚥下した。蛇が卵を丸呑みしたように、大きな瘤が身体へと向かっていき…断ち切られた。少女がまた、不快なものを断罪するように、首を切り落とした。重いものが水辺に落ちたような音と飛沫(しぶき)、巨大ウナギが横たわり…液化した。個体のどこかにある発声器官がまた悲鳴を上げ、そんなものはもう気にもならない、というように新たな顔を作り、また産声を上げた。引き起こされるエフェクト(ハロー)、音が瞬間的に聞こえなくなり、そこに存在するオレを含めたすべての存在にブレが発生したような、一瞬の動作の遅れ…少女にも。ディレイ攻撃? 嫌な気配が背中を伝う…傷口はもうなんともない、出血とは異なる異物感。明らかに変わった再生スピードと攻撃…深化(進化)が早い。それがこういったバケモノの特徴だが…弱点はそこではない、と明確には成った。ありとあらゆるところに情報(ヒント)は詰まっている。



銀河の果て(椅子の裏)まで行こうとしていた胞子(惑星)の動きが、(とどこお)る、止まる。吸引力が(重力崩壊で)無くなったブラックホール(サイクロン)のように天体(全体)の運動が止まり、前にも後ろにも行かずに、行先を見失った旅人のように戸惑う。唐突に失われた慣性、胞子がその場で、どうするんだよ? おい…というような会話をしていそうな困惑を見せる。真下で待ち構えていた人の塔が、頭となったドーム(レーダー)でそれを見上げた。



静寂と緊迫を伴った、互いのにらみ合い…一瞬の、こういったときは先に動いた方が負け、どこかで聞いたセリフ(デフォ)、の直後……、



唐突に、胞子の色が失われた。



頭の上、少しだけ残った胞子が、明るい白から黄土色…枯れ葉に似た褐色にくすんだ。潤いを失い乾燥した落ち葉が枝につく効力を失い、紅葉のように降る…小さい身体が細切れに崩壊し、塵になって…何があった? 何のトリガーでそんなことになった? 慌てたように人の塔のドーム()が、胞子に向かって(ホース)を伸ばした…触手? 一部に根強いファンがいる所業が、胞子を吸い込もうと、蠢きはじめた。掃除機のような動きで触手が胞子を取り込んでいく…残った数、それほど多くはない、虱潰しにすり潰すように。だが…残骸は吸い込む力のベクトルを受けただけで、脆くも崩壊していった。ほとんど吸えない…慌てたように、怒ったように、人の塔はホース()を振り回した…自身のアンテナや足にぶつけ、傷を作りながら。傷ついた(ホース)から黄色い膿が弾け飛ぶ。一部のホース()の先端を自身の行為で切り落とし…さらにその痛みに憤るように、人の塔は(ホース)を乱暴に扱った…細いアンテナや足先の方が頑丈で、方や、固く、柔軟性がありそうな触手()の方が脆い…歪なバランス。長い鞭を華麗に操る、そんなことはすぐにはできない。特にアニメやゲームで行っているような、変幻自在に自由に従える、には通常は相当な訓練と熟練がいる…あんな簡単にはできない、という良い見本がここで繰り広げられた。このゲームに鞭なんて、高尚なものはねえが……。


眼前への逃避、後頭部をスクロールして行く思考…はっきりと認識する、もうオレが如何(どう)こうできる状況にはない、対処はムリ、こんなの…どれかと対戦しろ、といわれてもどれともムリとしか言い逃れるしかない。胞子ぐらいならなんとかなりそうだが…その胞子もすでに失われた。椅子の後ろ、インジケーターも沈黙したまま、光りもしない。


もはやこの待合室にオレより下の存在は居ない…もともとオレより低い奴はいないが……。


椅子の後ろ、そこだけいまだ明るいテクスチャー、中庭の光に紛れるように置かれているはず(・・)の、壺の動きがない…動作不良? 感覚的には…満杯になった。いくつかの符号と状況がある答えにまで行きつく…床に引かれた魔法陣(シジル)、移動できないようにされた境界、集められた胞子…だがそんなことをしてどうする? ということがわからない…真実は表層にはなく、深層にある。ただ…これで死に戻りをしても大丈夫、という予感と実感と直感が、それぞれの解答欄を同じ答えで埋めた。念には念を…そんな風に回りくどく、テストで余裕がある時に行うようなことを大事に行った、大抵のこの、念、というものを押そうとした行為というものには…遅すぎる結末が含まれる。そんな良い例が目前に迫る。碌なことじゃねえな…巻き込まれたこっちの身にもなってくれ……。


やはり、笑うしかない。恐怖に立ち会った時、人のとる行動はいくつかに分かれる。オレのそれは……、



唐突に、床がへこんだ……。



前兆も予兆もなにもない…もはやそれがフツウというように。そうとしか言い様がなく…深層(・・)がそこに生まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ