Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #177
※2026/07/05いくつかを改訂しました…が 未だなんかぐだぐだ しています
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #177
天上で銀河が生まれ行くように渦を巻く。徐々に速度を上げていった淡い色の惑星は、中心に確固たる軸があるように、統一された方向へと転がり続けた。やがてその回転が一定速度を超えると、銀河の縁近くに位置した胞子が、均衡を崩したように弾き出され、永劫の彼方へと零れ落ちていった。放浪の旅へと向かった惑星は、もうひとつのブラックホールがあるかのように奥へと、椅子の方へと流れていく。その隆盛は天体観測で見る光輝くミルキーウェイによく似ていた。
椅子の後ろ、そこに何が置かれている?
狂信者がその胞子、目指して歩み出した…ホームランボールを取ろうと躍起になってグローブを伸ばす休日の父親みたいに…転ぶぞ? お前ら? そんな風に進んだ愚かな個体が少女に近づきすぎて案の定、ドジを踏む。それにもめげずに、良いところを見せようとする狂信者は、ボールが落ちてきそうな人が集まるのフェンス際にまで出向いて、劇的な一発が落ちてくるのを待ち焦がれた…グローブの代わりに歯のない口を大きく開けて。少しでも遠くから、俯瞰で、客観的に見れたのなら…その姿がトーテムのように揃っていることに気がついたかもしれない……。
胞子を手に入れることに成功した個体が、甘美な毒を食べたかのように胸を掻き毟りはじめた。声にならない痛みを訴え、恋焦がれる……。
椅子の上まで流れるように進んでいった胞子は、そこで急に力尽きたように放物落下して…重力の底へと、椅子の裏へと消えていった。小さな電子音がその度に鳴る…カウントのように。しゃがんで椅子を確認しても、裏にはなにもない…不可視状態? 赤く淡く床に反射するインジケーターの光だけが、その存在を主張し、そこにあるはずの壺は、中庭の明るいテクスチャーに紛れこむように、同化するように、人間の単純な視野では確認できないようにされているのか、まったく見えなかった。同調する胞子と電子音、その関係に相対するようにインジケーターの明滅が、傷んだ心臓のように早くなっていった。
少女によって頭部を分割させられた個体が、さらに切り殺された。斃れこみ、粘性を持った水がばら撒かれたような音と共に液体へと転化して床へと飲み込まれていった……。
「ぎゅぐゅわああああああっゅ……」
個体が呻いた。苦しみに似たものが内で蠢いていると胸を掻き毟る。我慢できないその悲しみに、耐えられない痛みに、胸の内からそれら一切を取り除こうと、幸運に恵まれた個体が自身の胸に指を入れこみ、躊躇なく左右に椀ぎ開いた…Tシャツを引き裂くみたいに簡単に。淡い黄土色の肋骨が軽い固い音を立て軋み鳴き、両開きの扉が開き切るように胸が広がった…Wの象に。解放された感動。解き放った感情。その両方でもって、大きな狂気を含んだ声を上げて、個体が歓喜した…愚鈍なカエルと蔑む鳥を混ぜ合わせた、聞きたくもない雑音で。喚き散らす声に怯えた胞子が混乱したように震え、取り残されたほかの個体が、変異していく個体に追いつこうと集まり揃ってなにかに懇願する祈りを捧げだす。歪で耳に残るハウリング、遠くから木霊し戻ってくるカノンのような叫び、それはなにかが成功しつつあることを示唆していたのかもしれない。
濃い褐色の肌の腰に残る布のみが、彼が狂信者だったことの証のようにひらめいた……、
開かれた肋骨、腰骨の横の皮膚まで、一気にすべてを痛々しく押し広げた個体は、胸中に埋もれていた小さく黒く萎んだ肺を、下腹部の膜の中に隠されていた青黒く平たい臓物を、未だ活動していると証明するように脈動させた。弱った獲物を見つけた蟻の軍隊のように臓物を、背骨を伝わせるように、ぽっかりと空いた胸に登らせる。創跡に残る心臓が、膜が切れ剥がれた腸に纏わりつかれ…人の大脳の形、そっくりに固まった。露骨の合間に、エビか何かの卵黄のように備わった。強張った大腸の表面を持つ人の脳…開かれた位置にある弱点になってくれそうな脳の前を、巻き込まれずに残った黒い肺が羽のように、蓋のように塞いだ。
…ミニのスカートがチラと捲れるように…嬉しくも何ともねえな……。
新しい脳を心臓に直結させた個体は、古代の水棲生物のように自身の首を伸ばした。もういらないと、黙した顔を持つ頭を何度も不規則に振り回すと、先端から4つに、花開く蕾のように分裂させた…小さく鋭い歯がびっしりと、規則的に奥まで並ぶ新しい口。その口が新しい自身の誕生を祝うように産声を上げた…新しい口の前にある、生前の顔もが口を開けて。前後左右、どの方向へも自由に折り曲げ、噛みつこうと動く首はどこかにいたナース・ヘッドのものによく似ていた。
重くなった上半身を支えきれなくなった個体は、折れ曲がるように前屈姿勢をとった。前から胸の合間が見て取れる、女性が行う挑発的なポーズのように……。
横に広がった薄い身体、個体の腕は自然と背中へと…うつ伏せになったいまは上へと回り込んだ。どこかのモビルスーツのブースターの形に似た腕が、肩だった関節の動きに縛られずに斜め上方向にY字に伸び、生木が折れる音を立てて、指先からふたつに分かれ広がっていった…孵化した直後の蝶が羽を広げるように。きれいに二分割した腕の骨の間には薄い赤い色をした粘膜、蝙蝠に似た、これまたどこかのディスティニーのような羽を広げた個体は、羽ばたけるかどうかを確かめるように、マンタのヒレの泳ぎに似たうねりに似た動きで膜を泳がせ、風を生み出した…周囲の蒸気が渦を巻き、混ざり合っていく。
…狂信者の足…踵の上が三角に切り落とされていた…歩けなくさせるために囚人に行う処罰のように。……? 普通にさっき歩いていたよな? 血液はここから流れ出ていたようで、踵や足首から瘡になった黒いこびりつきが粉になって落ちていった。
胸と共について行った肋骨が、筋肉から剥がれ元に戻ろうと下側に湾曲していった。ネコの爪のように三日月に伸びた肋骨が、身体を支える新しい足へとなり…新しい脳がそれに守られるように間で俯いた。昆虫の足のようにそれぞれの肋骨だったものが上下に前後に独立して蠢くと 前の何本かがカマキリの前脚みたいに持ち上がって…床を叩いた、なにかを確かめるように。いままで身体を支えていた人の足が背中の上へと立ち上り、サソリの毒針のように前へと垂れ下がった…伸びる足の爪。メスのように伸びた爪は、通常なら動かない自由度で鋭い棘のように蠢いた。
開きになった魚? 古代に生存していたアノマロカリス? 足を後ろへと伸ばせば、新しい姿はそれに近い……。
さっきまで陽気にケチャっていたやつが、見たこともない悪魔の姿をしたバケモノに変化した…変身? 変体? 変態?…どれでもいい。これがこいつらにふさわしい、といわれたら納得するしかない姿。さすがにこの容姿はオレでも気持ちが悪い。救われるとしてもこの姿だけにはなりたくねえな……。
※後半の部分を 熱がある状態で書いたために なんかよく分からない描写になっていますが 気にしないでください




