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Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ  作者: 桜葱詩生


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Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #174


セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #174




少年が隣に並ぶ少女へと、いつもそうしている、とでもいうように話しかけた 少女が応えるように相対した 少年がいつもそうしているように少女に笑いかけ、安心させたように、安心したように、少女を無視してオレへと向き直った そこにいるのが本当は少女などではなく、悪魔でもなく、ただの元凶であるということを忘れたように……



「なにすんだ! このアマー、あれほどくだらねー本を読んでやったじゃねーかぁ? ああ? それなのに…ぐああっ!」



知らねえのなら仕方がねぇか……


予備動作も 戸惑うことも 避ける猶予さえも与えず 少女が少年を刺した その胸に届いたのが甘い照れるようなはにかむ笑顔だったら…瞬間的に恋に落ちたかもしれない しかし少年の胸を貫いたのは鋭く黒く鈍く光るナイフだった 少年の黒い服に大きな水玉が広がっていく 明らかに驚いた顔をした少年が、一瞬呆けたあと、悪態をつく前に、同じような形で色が異なるナイフで少女へと切り返した 互いに、少し勇気を出して手を伸ばせば指先を絡めることができる距離 少女はそれを気にもせずナイフを引き抜く ナイフを辿った鮮血が、床へと連なった涙のように垂れ落ちていって まったく同じ動作で少女は少年へと手を差し伸べた それを避けもせずに、少年は反対に少女へとまた、無駄なのに…鋭い刃を向かわせた 斬り合い、突き刺しあう…少女のナイフは…少年の服を簡単に貫通し彼女の真意(心意)を確実に彼へと届かせ、少年のナイフは、少女の服の襟元のフリルに引っかかり、揺らし、ちょっとだけ躊躇したように戸惑ったが、そのまま表層を、興味のない店の前を素通りしていく少女たちのように、通り抜けていった…届かない


イモータル属性



「なんだっこれっ! なんでっ! 切れねえんだよっ!? テメエ…痛ええええっ! くそっ、このっ、くそおぉおおおっ! ぐあっ、ぐあああああっ! なんなんだよっお前はっ! なんで…いってえええええっ、ぐああああああっ……」



少年がなんどもナイフで少女を切り裂き、突き刺すが、そのどれもが少女の服を通らず、その白い肌に傷さえも創らず、痕もなにも残さずに素通りした…壊れない なのに、少女がなんどもナイフで少年を切り裂き、突き刺すと、そのどれもが少年の服を切り裂き、その白い肌を切り刻んで弄ぶように傷を創り、血だらけにしていった…壊れている



「ふふふ」



はじめて…そうでもねえか 少女がその行動に微笑んで 自分によく似た少年を殺していった 何度も彼を突き刺し、切り裂いて…やがて少年の二の腕を通り抜けたナイフが、奥の皮一枚を残し切断すると、やっと事態を飲み込めたのか、少年の攻撃が止んだ 左腕が回転するように絡まって、外側に手のひらを見せて、肩の延長上で垂れ下がった…右手で攻撃はできないらしい 崩れるように力尽きる 血だらけでその場に膝をついた少年が顔を上げて、少女へと哀願と愛情と、愛憎を混ぜ合わせたような瞳で、訴えかけた



「があっ…いてええぇ…痛てえ痛い痛い痛い…このくそアマー、なんでなんともねえんだよ! なんで切れねえ…殺せねえんだよ! くそう…ぐあっ、がああっ…いてええ、痛い痛い痛い…、ああああ、くそー、このひゃろう…ぐああああああ…やめろっ、止めろってんだよっ、ああああああ…痛い痛いやめっやめろっていってんだろうがっ、このアマがっ!」



その、言葉。は届かない 元来、人の言葉は 神にも悪魔にも元凶にも届かない



足元にある石ころに気持ちを通わせることができるか?



靴に入った石ころなら それを取り出すために掴み取るかもしれない しかし 地面一面に転がる何の変哲もない小さな石に心を配るものはいない…だから 着飾り、金で装飾し、ピカピカに光って、自分はここです あなた様が助けるべき真なる僕はここにいます と誰もが叫ぶ


少年のように……



「なんなんだっがっ! なん…なんでだよ? なんでっ…お姉ちゃん! なんでこんな酷いことするの? 僕だよ…******だよ? 僕がわからないの? 痛いよ…お姉ちゃん…痛いよ…痛い痛い痛い痛い痛い痛い…痛ぇーってつってんだろうがっ、このクソアマっ!」



少女の前 聖別が行われる祝福を受けるように少年が膝をついて待つ…ちょうど刃先が顔へと届きやすい位置で 少女の手に握られたナイフは 少年の肩や頭に置かれ、聖句を与えるのではなく そのまま少年のきれいな顔へと 抵抗も反撃もなく 幾度となく入り込んで行った…それでも少年は死なない 眼球を貫かれ、額に第三の目のように縦に溝を創られ、ほほや鼻が熟れすぎて割れた果物のように崩れていっても…意外にタフなのはゲーム的 意識が飛ぶ祝福はこいつにもない



「……いいか…ぜってーお前らを殺してやる、殺してやるからな…覚えてろよ? ……お姉ちゃん、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…今度は上手くやる(殺す)から……。……殺してやる…痛いよ…やめてよ…ごめんなさい……殺してやる…殺して…痛い…ごめんなさい……殺してやる…痛い……やめてやめて止めて…殺してやる殺してやる殺してやる…やめてやめてやめて……痛いやめて……殺してやめて殺して殺してやめてやめて…やめて……」



「ふふ」



意思を込めて少女が笑う できるのならやってみなさい、とでもいうように……直後



「! があっ」



ナイフが走った


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