↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ  作者: 桜葱詩生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

174/212

Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #165


セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #165



「この家とその青い鳥を交換しておくれ。そうすればお前たちはこの家で幸せに暮らしていけるだろう」



ほんの少しの期待を込めて、エレベーターホールまで戻る 落胆する必要もなく 誰も失われない 診察患者どもはやはりそこにいて、正面玄関出入口を塞いでいた 壁のように盛り上がるオーディエンス どうもこの病院は、かわいい子を揃えているからか、それなりに人気があるらしい それ以外で評判にならないといけないとは思うが……



「この金貨とその青い鳥を交換しておくれ。そうすればお前たちは大金持ちになって、幸せに暮らしていけるだろう」



第一診察室も、第二診察室の扉もだらしなく開けっ放しのまま 辺りには誰もいないのに…声だけが聞こえる 診察患者も誰一人としてこちらへは来ない…白い闇は視界を邪魔し、すべてを埋める 追い立てれられる感覚 どちらかの部屋へと入って診察を受けろ そんな選択肢が提示されているような気配と…違和感



「母親とその青い鳥を交換しておくれ。そうすればお前たちは未来永劫、この母親の奴隷となってこき使われて、ボロボロになって、吐き捨てられるだろう」



診察室の反対側 待合室 一番奥の席に双子らしい、人形のように整った子供たちが、仲良く本を読んでいた 声はそこから聞こえている



姉弟(きょうだい)はその青い鳥の首をねじ切りました。するとどうでしょう? ねじ切られた首からは新たな青い鳥が生まれ、残った身体からも首が生えて、青い鳥が二羽になったのです」



一人は…あの金髪の美少女 少女の隣には、少女にすごくよく似た金髪の美少年 待合室にはそのふたりだけで、ほかの椅子もなにもかもが、きれいに片付けられいた



姉弟(きょうだい)はその青い鳥の身体を切り刻みました。羽をもぎ取ると、それぞれの羽から青い鳥が生まれました。足を切り落とすと、その足から青い鳥が生まれました。しっぽをむしり取ると、そのしっぽからも青い鳥が生まれました。姉弟(きょうだい)は生まれた青い鳥の身体から、いくつもいくつも、身体をもぎ取ると、そこから青い鳥を何羽も何羽も生まれさせました」



ふたりは、ふたりの間でハードカバーの一抱えもあるような本を広げ、少女は俯き、少年が歌うようにそこにある言葉を読む 鳥がさえずるような、美しい協和音の声で、少年は文字を追う それに目を瞑り、心地よさそうに、少女は耳を傾ける



「何羽も生まれた青い鳥は、人々に襲い掛かりました。人の目を(つつ)いては目玉を食べ、喉に穴を開けては声を食べて、胸に潜り込んでは心臓を食べ、腹を引き裂いては、内臓を全部、食べていきました。姉弟(きょうだい)を蔑ろにした人々は独り残らず、幸せを運んでくる青い鳥に食べられてしまいました。それだけではありません。食べるものが無くなった青い鳥は、姉弟(きょうだい)に襲い掛かり、これを平らげると、青い鳥同士で共食いをしはじめました。青い鳥が青い鳥を食べ、それを青い鳥がまた食べていきます。青い鳥が、青い鳥を食べていき、青い鳥が、青い鳥を食べては、青い鳥が、青い鳥を平らげていきました」



少女たちは玉座のようなひとつの椅子にふたり仲良く並んで座る 中庭から入る光がその輪郭を白く浮かび上がらせで、神々しいまでの佇まいを見せる 待合室に残っているのはふたりだけ だが…床には、赤い液体で雑にところどころが書かれていない魔法陣(シジル)が引かれ、それが流動的にでき上がっていっていた 複雑な文字と線が組み合わされた魔法陣(シジル)の中心には…明らかに切り落とされたばかりのまだ赤い、発色のいい、人の頭や腕や足、身体のどこか一部分が 少女たちの方を向くように安置されていた 首からは、切り口からは赤い鮮血が流れ出していて…そんな小さな部位にそれほどの体液が残っているわけはないのだが、まだ描き終わっていない、部分的に空白のある魔法陣(シジル)へと吸われて行って、その線と文字を完成へと近づけていく


表面(おもてめん) 少女たちとその魔法陣(シジル)と…壁に釣られたタペストリー以外は間違えようもなく 淡い色合いで暖かな風合いで、安心できる雰囲気を持った、ジュディがいうところの表の世界だ ただし、周囲に漂う気配は、元の凄惨な病院のまま ちぐはぐな印象が、助かる見込みのない末期患者を延命治療するのと同じ、嫌な匂いを振りまく 待合室から東棟へと抜けれる通路には、ここにあった椅子やベンチが、そちら側が地面で重力が作用している底、というように壁に張り付き置かれ、そこから抜け出せないように封鎖していた 部屋にいくつか立つそれぞれの柱にはご丁寧に、Y字に手を広げて俯く、父の子(キリエ)の処刑の時のような屍体が、磔になっていた ここは神聖なる神の家、何人たりとも入ってはならない、と警告するように存在感を放つ


? この床にある切り落とされた部位はこいつらのではないのか? この頭の持ち主たちはどこにいった?


吊り下げられたそいつらの足元からは、細い白糸の滝のような血が、いまも流れ出し、その血が魔法陣(シジル)へと提供されていった 体液は…ほかの所へやるのなんてもったいない、と自らの意思を持っているように、魔法陣(シジル)以外の床からもそこへと一直線に集まって行き、少しずつ必要な形を作って行く…血液に似た液体に砂鉄を混ぜて、磁石で引っ張る演出、のように……



「ところが、食べ残った青い鳥からはまた、青い鳥が生まれていきました。青い鳥は青い鳥を食べ、食べられた青い鳥からはまた青い鳥が生まれます。青い鳥が生まれたばかりの青い鳥を食べて、食べられた青い鳥からはまたまた、青い鳥が生まれていきます。青い鳥は食べ続け、食べられ続け、食べては、食べられて、喰っては、喰われて生きました」



「何をやっているんだい? こんなところで……」


思わず…そんな声をふたりに…少女にかけた こんな風にのんびりと絵本を…聞いたこともないような話しの寓話を、嬉しそうに話している場合ではないだろうに……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。