Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #139
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #139
もちろん そんな簡単に諦めはしない 何度か、飛び移れないか試して…どうにも届かない 一度、階段へと飛び移り、そこから勢いをつけて、奥の壁へと向かう…ということを試して それがやや有効だと気づくも 気づいただけ 無理だった 何度も喰らう
SucididFromGround
風圧がないのはこのためか? 空気抵抗は意外と移動に関係する 右手の壁に体を擦りつけて、それを手掛かりに奥の壁まで…ということを試みてはみたが…体が壁に弾かれるだけ どうにもならなかった
ムリだな ここは後で来よう そこで気づく…『ロープ』を使う? そこの階段の端に U字に残る鉄筋 そこに結び垂らして、反動を使用して…ホースはもう使っちまった後だ
………
何かある時 ここではそれが何かのヒントになっている そんな可能性…くそっ ほかに使うタイミングがあるとは…不覚だった どこかほかで ロープらしきものを探すしかない
気を取り直して……
階段に取り付いて、そこを這いあがる 本当にギブスが邪魔 あと握力とでもいう隠れ数値でもあるのか…タイミングが合わないと落ちる 落ちたら死 そのプレッシャーがあらゆる行動の成功を邪魔する 死んでももう何ともねえが…1回こっきりの生命だったら、それだけで体は動かない
空中に飛び出ている、というのに意外と頑丈な階段 もちろん 取り付くと同時に、捕まりやすそうな箇所が崩れて、瓦礫と一緒に落下したが…それさえなんてことはない なんとか…這い上がる ここですぐに立ち上がって、階段を踏みしめて踊り場まで歩く…なんてこともしない 一段、一段 確かめて 踊り場まで 這い蹲って 蜥蜴のように さすがに神経が参ってきている
「おっと……」
階段の足場が抜けて落ちていく…ことはなかった 躓く瓦礫 間違えてはいけない 辿りついた先の足場が崩れ落ちて行かないようなホラーゲームはダメゲーだ クソゲーではない あくまでダメゲー 製作者の想像力が足りなさすぎる
人の恐怖は意外性と理解性と常識性の上に成り立っている 対処する前が最も怖く、安堵した瞬間に快感を得る それが及ばない時、人は理不尽を感じ、その理不尽さに慄く だが、理不尽さえ恐怖ではない
苦手なものが嫌いなもの
それは=ではない ただし、人はそこさえ理解していない 安寧の上に聳え立つ砂の楼閣と同じ だから…この踊り場の足元は抜け落ちない
足場 どこもひびが入り、いかにも危なさそうな箇所があるが…崩れない ここのどこかが落ちてくれれば…この下にある光の扉に近づけるのだが そう物事は単純ではない 踊り場の半分先は元の階段 瓦礫も何もなくなるが…代り映えのない、凄惨な風景に戻る
踊り場から上を窺う 階段にバケモノはいないが、入っては来る かなり暗いが何もいない 手すりも壁も階段も 以前のものと同じなのに安心する 久しぶりに感じる 錆びついた鉄の匂い 血痕の跡 黒い汚水が滴り、滑りそうで何ともない足元
階段はこの上で行き止まる ここが終点 5階かどうか…もとの病院は3階建て、ではここに何が潜んでいる? 扉へと近づいて、ドアノブを探る スムーズに回り、鍵もない 壊れてはいない 音を立てないように 押して…そっと向こうを窺う もちろん、そんなことはできない 蝶番と木が擦れて、小鳥が啼くような高い、嫌な音を立てる それにそいつが振り返った
通常 こういった階段でのトリック、トラップなら、この先は本当に5階か、気を利かせて1階か、地下の階に繋がっているか、そのどれかだろう 空間が捻じ曲がっているんですよ、ほら、すごいでしょう? 驚いたでしょう? だ
いや ある意味、驚いた そして 意味が分からない
3階 東棟3階に出た 扉のすぐ向こう 目の前に…男性入院患者が 身体全体を小刻みに動かしながら、立っていた ドアが開いた気配と音に気がついたそいつは、口を開け、叫び声を上げ、歓喜の体表現を示しながら、こちらへと振り返って…ヘッドバンキング 愚かな喰い者の到来に 狂喜する
その向こうにももう一体の入院患者 そいつもその声に気づいてこちらを向く この配置は東棟3階でしかありえない
男性入院患者は東棟3階でしか出現しない




