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オズマ戦記  作者: 葱龍
六章 転生者大戦 激闘篇
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番外編6 テリブル・デッドγ「最後のガラスを突き破ったらハチの巣だった件」

左右に広げたサブマシンガンのマズルフラッシュが闇夜に潜む敵の姿を映し出す。

俺は左右10発ずつ撃ったが当たったのは2、3発程度。

馬上で撃っている為照準が上下にブレているのだ。

日本の流鏑馬(やぶさめ)が如何に凄い技術かを改めて実感させられる。


後ろを振り返ると片手に長剣を持ち、もう片方の手で手綱を掴んだ白薔薇の男が近づいてきていた。

男は既に剣を振りかぶっている。


「伏せろ!!」


俺は身を低くしながらユリーシアの頭を馬の背に抑えつける。

刹那、剣が俺たちの頭上を掠めた。

危ない危ない。ほんの僅かでも反応が遅れてたら2人とも首を撥ねられていた所だ。


俺は身を低くしたまま後ろを振り返ると、俺たちに斬りかかってきた男目掛け銃を一発。

男は腹を抱えたまま落馬。後続の馬に踏みつぶされる音と共に夜の闇夜に消えていった。


後続は5人、いや8人か。

今見えてるのが全部だとは考えにくい。


「キリがねぇな…」


敵の数が不明瞭な以上不必要に撃って弾を浪費するのは愚策か。

そう考えた俺はサブマシンガンを一挺バッグの中にしまい、代わりにある物を取り出した。

俺はそのある物のピンを抜き、後方に投げるとすぐに前へ向き直り、


「耳塞げ!!」


とユリーシアに一度手綱を離し両耳を抑えるよう促し、俺も耳を塞ぐ。

刹那、後方で眩い閃光と爆音。

悶え、パニックを起こし暴れまわる馬たちの鳴き声とそれに跨る男たちの悲鳴が混ぜこぜになって木霊するのが聞こえてきた。


スタングレネード。

爆発時に閃光と爆音を放ち相手の突発的な目眩と耳鳴りを誘発する武器だ。

目標に危害を加える事無く無力化できる都合なのか

俺のいた世界では様々な国の軍や警察に採用されている。


しかしかなり遠くに投げたつもりなのに何てデカい音なんだ。

敵との距離が近かったら俺達もマデューカへ向かうどころじゃなくなってたかも。


「!?見てください!!」


唐突にユリーシアが前方を指さした。

その向こうには闇夜に雄々しくそびえ立つ宮殿の姿が。

夜だと言うのに宮殿だけやたら明るい。


「あれがマデューカか!!?」


宮殿の門が近づくにつれその手前に立つ二人の門番の姿も鮮明になってきた。

門番は×の字を描くように持っている槍を交差させた。

止まれ!と言いたいんだろうけど生憎俺達には見ず知らずの他人の言う事に素直に従う道理はない。


「そこで止まれ!」


「うるせぇ!」


俺たちの乗る馬は警告を無視し行く手を遮る槍ごと門番を弾き飛ばす。

その直後俺はバッグを背負うと馬の背中に立ち、


「庭で待ってろ!ローゼンに挨拶してくる!!」


馬に急制動をかけ、その反動を利用して前方へ跳躍。

身をかがめて正面玄関のガラスを突き破り、玄関を滑走した後ロビーのど真ん中で静止した。

前方、左右、後方から聞こえてくる無数の足音。

こんだけ目立つ《お邪魔します》をしたらまぁこうなるか。

俺は両腿のホルスターから拳銃二挺を抜いて構えると一人呟く。



「さぁて、このシチュエーションで流すBGMは…やっぱヤンマーニで決まりだな」


「ザッケンナオラー!!」


まず前方から押し寄せる無数の怒号目掛け俺は引き金を引く。

最前列のヤクザもどき2人の頭がスイカの様に弾け飛び、さらに後続のヤクザ崩れ一名の頭を貫いた。


更に両腕を横に広げ発砲。

左右に展開していたヤクザもどきが胸から血を吹き出し倒れる。


四方から銃撃。

俺は僅かに身を捻り、最小限の動きで弾丸を回避。

お返しの銃弾をお見舞いしてやった。


「ザッケンナグワーッ!!」「ザッケンナヌワーッ!!」「ザッケンナウボァーッ!!」

「ザッケグワーッ!!」「ザッケウボァーッ!!」「ザッボァーッ!!」


四方八方から響き渡る断末魔。

銃声と怒号が止む頃には階段を除くロビーへ通じる通路には死体の山が出来上がっていた。


「残弾……よし、問題ない。殆ど無我夢中で撃ったけど、まさか俺に撃たれた中にアントニオがいたりしない…よな?」


銃撃戦を終え段々冷静な思考が戻ってくると当初の目的を思い出し、

捜しているユリーシアの婚約者を撃ってしまったのではと言う不安に駆られた。

アントニオの容姿はユリーシアに見せられた写真で解ってはいるが、何分相手の顔をじっくり眺めている余裕は無かった。


「やってくれたね…よくも私の可愛い僕たちを……」


階段の向こうから声がした。

さっきから嫌と言うほど聞かされたドスの利いた声ではない。もっと甲高い女の声だ。

俺は声のした方を向き、問うた。


「白薔薇のローゼンってのはお前か?てっきり男とばかり思っていたが…まさか女だったとは」


そう。女。

小国ツェッペランカを陰で支配する白薔薇の支配者は女だった。

だがその容姿は一重の瞼にフグのような頬と唇、体型も寸胴とおおよそ美人とは言い難い。

と言うか単刀直入に言ってブスだ。それもテレビに出す際は顔にモザイクかけなきゃいけないレベルの。


「如何にも。私はロイス・マルガリータ・ディッコ。

 一組織の統括者が男だと言うのは前時代的な価値観だな。侮辱の極みだ」


「侮辱ねぇ……。人攫って大勢悲しませて、それこそ侮辱じゃないかよ。

 アントニオ以外にも何人も攫ってるんだろ?」


「攫ったんじゃない。新しい仕事環境を与えてやったのだ。

 私の権威の象徴となる、新たな居城を作るためのな!」


「やっぱテメェ嫌いだわ。と言うよりむしろ…すっげぇムカつくぜ!!」


そう蔑んで俺は銃弾を一発ロイスの額目掛けお見舞いしてやった。

これで親玉を失った白薔薇は空中分解、アントニオも無事ユリーシアの下に戻ってハッピーエンドだ!

そう思っていたが、銃弾はロイスの脳漿をブチ撒ける事はなく、ただロイスの額をすり抜け真後ろの壁に穴を開けるばかりだった。


「なにッ!?」


「愚かだな。あらゆる物事を簡単に解決できると思い込んでいる。

 それにこちらが貴様を野ざらしにし続けているとでも思ったか?」


ロイスが顎をしゃくると、グラサンで目元を隠した男が現れた。

おおぅ…。何と言う事だ。その男はユリーシアを連れてやがる!


「ユリーシア!?」


「すみません…こんなつもりじゃ…」


詫びるユリーシアの腹にロイスの肘鉄が打ち付けられ、ユリーシアは嗚咽する。


「ウッ!!」


「おい!何しやがる!!彼女は関係ないだろ!!」


「あるだろう。この女はアントニオとか言う男の行方を探っていた。

 それにな。私は美しい女を見ると虫唾が走るんだよ」


「腐ってるぜ。テメェ…」


「次に私が言いたい事は解っているな。抵抗すればこの女が苦しんで死ぬ事になる」


「彼女を人質にしてる事は解るが、何をすれば良いかハッキリ口にしてくれないんじゃ従いようがねぇな。

 教えてくれ。俺が何をすればいいのかを」


「なぁに、簡単な事だ。すぐにここを立ち去り、今まで見たこと全てを忘れろ」


要するにもう深入りするなって事か。

完全に記憶からぶっこ抜いて思い出せない様にするのは無理にしても

このマデューカから出て以後近寄らないようにすれば良い。簡単な話だ。

だがそれでは俺はともかく、ユリーシアは何ら救われない。

彼女がこいつら白薔薇に対して悪い事をやったか?

いいや、やってない。彼女はただ奪われただけだ。自分の幸せを、それも一方的に。

俺は彼女と約束したんだ。

必ず婚約者を見つけ出してみせると。

だから、俺の答えは自ずと一つに絞られた。


「それで俺は助かっても彼女が、ユリーシアが助からないんじゃ意味はない。

 開放するなら俺じゃなくて彼女の方にしろ」


「…想定した中では最低の返答だな。お前たち」


ロイスの合図で吹き抜けから一斉に男たちが顔を出し、俺の方へとライフルを向けてきた。


「やれ」


俺に向けられたライフルが一斉に火を噴く。

スコールの如き銃声、抉られる肉と噴き出す鮮血は全て俺の物で、

ユリーシアが身を乗り出し何かを叫んでるように見えたが、銃声にかき消され何を言っているのか聞こえない。

銃声が止む頃には床は血で真っ赤に染まり、俺の体はチーズか蜂の巣の様に穴だらけにされていた。

痛い。足どころか全身に力が入らない。視界もぼやけてきている。

霞がかった視界の向こうでユリーシアが泣き崩れている。

全く、赤の他人の為に泣いているんだとしたらホントに良い子だなぁ。

そしてそんな良い子を泣かせる俺は最低だな。


「片づけろ」


ロイスがあざ笑うかのようにそんな事を言ったかと思うと俺は何者かに両腕を掴まれた。

ロイスの腹立たしい笑みが脳裏に焼き付いたまま、俺は意識を失った。


そう言えば、8歳から今まで色んな映画を見てきたが、

その殆どが話の中盤辺りで主人公が完膚なきまでに叩きのめされていたな。

ちくしょう、ホント嫌なジンクスだな。



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「ユリーシアァァ!!」


慌てて飛び起きる俺だったが、目が覚めたのは見渡す限り見覚えのない小部屋だった。

白いカーテンに白い壁紙、家具も奇麗に並べられたそこは明らかにスラム街とは違う。


「目覚めたばかりで悪いが、そのユリーシアって誰だ?」


振り返ると小部屋の入り口に男が立っていた。

若い男だ。20代、いや10代後半か?


「お前が、ここまで運んでくれたのか?」


「あぁ。俺は柴田克也。妹と一緒に父と母を捜している」


「アンタも人捜しか…。あぁ、俺はテリブル・デッド」


「テリブル・デッド…アンタの回復力には俺も驚いたが、何より驚いたのはアンタを発見した時の状態だ。

 全身を黒焦げにされた上無数の刺し傷と弾痕が見受けられた。相当酷いやられ方だったぞ。

 一体アンタの身に何があったんだ?」


「それか。実はな…」


俺はユリーシアと会ってからマデューカで離ればなれになるまでの経緯を事細かに説明した。

魔法が存在する世界だと言うのに一切魔法のまの字が出てこない所には克也も驚きを隠せないようだが。


「お前も色々あったんだなぁ」


「ロイスって奴は美人に対して強い嫌悪感を抱いている。

 最悪ユリーシアもその婚約者のアントニオも殺されちまう。すぐに助けに行かないと」


「いや待て。落ち着け」


「罪もない一般市民が命に危険に晒されているんだ。悠長になんてしてられないだろ」


「そうじゃない。お前見た所かなりの手練れらしいが、そのお前ですらどうしようもなかったんだろ?そのロイスってのは。

 1人で行っても同じ轍を踏むだけだ。俺達も行く。良いだろ?有紀」


小部屋の向こうからまた一人入ってきた。今度は女の子だ。


「…ダメって言っても行くつもりなんでしょ?」


有紀、と呼ばれた女の子はやや呆れた様子で言った。

どうやらこの克也と言う男はかなり無茶をするタイプらしい。


「人の命がかかってるんだ。何もしないでいる理由はない」


「お前たち…ありがとう!為すべき事は一つ!ユリーシアとアントニオを救い出し!」


「白薔薇共をぶっ潰す!!」


俺たちは固い握手を交わした。

共通の目的の為、一時とは言え共に戦う。

仲間と言う物の頼もしさを俺は改めて実感した。

ロイス、すぐに行く。首を洗って待っていろ。

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