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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
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第百十一話「ラストバトル PART3-炸裂!魔導串刺し刑-」

突如迸り空を染めた紫の閃光に残存兵力の無力化にあたっていたカイルとスタン達も

騎士団と交戦していたデストラ兵達も一様に戦うのをやめ空を見上げていた。


コウも似た色合いの閃光を放った事自体はあるが、

今回のはより色味が濃く、そして禍々しい。

まるで憎しみそのものを放出しているかのようだ。


「…あの光が何なのか、出来る限りの範囲で説明できるものはいないか?」


出来る筈が無いと思いつつもカイルは誰かに聞かざるを得なかった。

コウ達リゼル騎士団が何処に行ったのか、一連の戦いの元凶となったアルバス・ロアが何処に身を潜めているのかさえ

解せない今知っている者の助言を求めるほかない。

藁にも縋るどころかナズナにも縋る思いだった。


「はい。反応から察するにあれは強力な闇の魔法ですね」


カイルの指揮のもと残存兵力と戦っていた士官の一人がカイルに説明を始めてくれた。


「闇の魔法?」


「はい。これほど強大な闇の魔法は今まで見た事が無いくらいに。

 見てください」


士官が懐からメモ帳サイズ紙の束を取り出した。

几帳面な事に彼は分析魔法で計測した数値、属性、魔力の発生元を逐一記録していたのだ。


「これは…今記録したものか?」


「はい。ですがあの魔力の計測結果は…」


測定不能。とメモには書いてあった。

使った相手を買いかぶっているのではと一瞬カイルは疑ったが何処の何者かも解らぬ相手を普通持ち上げるのはおかしいと自己解決した。

とにかく、人が分析できない程絶大な魔力の持ち主が先の紫の光を放った張本人である事は間違いない。


「発生源は解るか?」


「位置から推測するに、もう殆ど使われ事の無くなった時計塔がある方角ですね。

 戦略上さほど重要とは言えない地点でこれほどの魔力が発生するとなると…おそらくそこで戦闘をしている者がいるかと」


「…計測不能な程の魔力をぶつけねばならない相手で、且つこの場にいない者となると…」


「リゼル騎士団…」


「………」


コウ達が戦っていると悟りカイルは居ても立ってもいられなり、その場から走りだそうとする。



「何処へ行かれるんですか!?」


「時計塔だ!この場は任せる!!」


「指揮官自ら持ち場を離れるなんて…」


「責任は後でいくらでも取る!!勇者コウが危機に陥ってるかもしれないんだ!!」


「何を根拠にそんな…」


「推測が正しければ、コウは今アルバスと戦っているはずだ。

 アルバスを倒せるのはコウだけかもしれない。だが彼一人では無理だ。一人でも多く加勢しないと」


「なら俺も行くぜ!」


「俺も」


名乗りを上げたのはスタンとミハイルだった。

行くと言った理由をカイルはあえて聞かなかった。

自分と全く同じだからだと解っていたからだ。


「…残った敵の戦力はお前達でも十分対処できるはずだ。」


「しかし!」


「困難な状況から逃げているようではいつまでも優秀な騎士にはなれないぞ」


「…解りました。ご武運を」


数名の士官をその場に残しカイル、スタン、ミハイルの三人は一路時計塔を目指し走り出した。

後々判断ミスにならなければとカイルは考えるが、今は残った者たちを信じるしかあるまい。

コウがアルバスに再び敗れれば、アルバスを止められる者がいなくなってしまうのだ!!



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時計塔の壁を破壊しながら吹き飛ばされたコウは、地面を2バウンドし5マルト程雪原を転げまわってようやく停止した。

苦痛にあえぐ上体を何とか起こし、血反吐と共に口に入り込んだ雪を吐き出す。


「ゴホッ…まさか俺の魔法パクってくるとは……」


予想外。いやむしろ想像力不足か。

自分に出来た事は他の転生者には出来ないなんて思っていた訳じゃないが、

アルバスが今放った闇魔法はコウが使っていた物よりも明らかに威力が上がっていた。

オリジナルよりコピーの方が優れているなど、考えたくもない。


アルバスが時計塔を抜けコウの方へ歩いてくる。

リゼル達はまだ亡霊たちの妨害を受けているのだろう。


「立て。やられたフリなど私には通用せんぞ」


コウは、言われるがままゆっくりと立ち上がった。


「………」


「貴様には今この場で死んでもらう訳にはいかない。

貴様等にはリゼル騎士団などと言う無軌道集団を組織して私の計画をブチ壊してくれた借りがある!

 1人ずつ徹底的に、完膚なきまでに叩きのめさなくてはな」


「…逆恨みも良い所だ。お前のちゃちな自己満足の為に殺されるのは溜まったモンじゃないし、

 人から奪って就いた地位とは言え一国の主がそんな個人的な理由で戦ってたと国民が知れば暴動は免れないだろうな」


「フン。戦う術を身に着けようともしなかった弱者がいくら吠えようと何も変わらん」


「人の上に立つ人間のセリフじゃねぇなそれ」


言いながらコウは歴史の授業などで知った独裁者と呼ばれる人々の事を思い出していた。

それらの人々は手段はどうあれ自国の発展と国民の事を考え行動していた。

だがこの男にはそれが感じられない。他者への敬意が無いが、自分が偉ぶりたいと言う訳でもない。

ただ己の憎しみのまま世界を破壊しようとしているだけ…。

なぜこの世界の神はこんな奴にこれほどの力を与えてしまったのだろう。

コウは哀しかった。怒りも憎しみも感じない。ただ哀しかった。

アルバスがこうなった経緯は、初めて対決した時に自ら語っていた。

確か、最愛の人を殺されたのが原因だとか…。

境遇がどうあれ、アルバスの行いは許される筈がない。

この命に換えても止めなければ。

コウは覚悟を決め身構えたが、その前を真っ赤な翼が遮った。


「傷を負ったばかりの身で戦わせる訳にはいきません。ここは私達に任せて下さい」


そう言うとモアザとザルディンが近づいてくるアルバスの前に立ちはだかった。



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リゼルはその場にうずくまり目を閉じ耳を塞ぎ何も見ず聞かないようにしていた。

僅かにでも目を開ければ、目に映る物への恐怖ですくみ上ってしまう。

いや、既に恐怖に支配されているか。


「今でも覚えてるぜ!俺こいつにぶちのめされた事あるんだよ!!」


聞き覚えのある声がリゼルを煽る。

この声は確か…クドーだ。


「その様な者がなんだこの有様は。まるで幼子ではないか」


古風な言い回し。

この声にリゼルは聞き覚えは無かった。


「俺をぶっ倒した女が今は手も足も出せずただただビビッて震えてる!

 これほど愉快な光景そうは無いぜ────────────────!!!」


「「「「「「「「ギャーハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」」」」」」」」


リゼルの周囲を嗤いながら旋回する亡霊たち。

その様はまるでいじめっ子の小学生だ。


「……ッ!!ッッッ!!!!!!」


歯を食いしばり、亡霊たちの声が聞こえない様にし続けるリゼル。

そんな時だった。とても懐かしい、温かみのある声が頭の中に響いてきたのは。


「リゼル……リゼル………」


穏やかで、威厳のある声。

リゼルはその声に聞き覚えがあった。


「お父様…?何故ここに?」


リゼルの父にして、ルトヴァーニャ国王ジーベン・ダン・ルトヴァーニャ。

アルバスと戦い死んでいった王もまた、亡霊としてだが復活を果たしていた。


「私はアルバス・ロアとの決闘の末命を落とし、そしてアルバスの魔法により亡霊戦士として蘇った…。

 だが奴の言いなりになるつもりはない。安心せい」


「…………」


「リゼル、お前は昔からこういう類の物は苦手だったな。

 夜1人で部屋の外に出る事も出来ずにいた…」


「やめて下さい。そんな昔の話…」


「今でも幽霊は苦手か?」


「…はい。どれだけ年を重ねたとしても、克服できそうにありません」


「今の私も怖いか?リゼル」


「そんな……お父様が怖い筈が…」


「何も隠さなくていい。思った事を正直に話したまえ」


「正直言うと、怖いです。幽霊だからではなく、お父様は死んでしまったと言う事実を受け入れるのが…。

 シドはまだ14。王位を継ぐにはまだ幼いと言うのに……。」


「その事なら心配はいらん。シドは1人で世界を渡り、世界の在り方をその眼で見て知った。

 今すぐとはいかずともきっと皆の期待に応えられる立派な国王になってくれる。

 それより今心配なのは勇者だ。このままではアルバスに殺され世界は闇に染まるだろう。

 そうなってしまってはシドが王位を継ぐ事どころかその命すら危うい」


「しかし、お父様以外の亡霊たちが行く手を遮っていて…」


「それは私が何とかしよう」


そう言うとリゼルの周囲を旋回し続ける亡霊の間に一つのオーブが割って入り、眩い光を放ち始めた。


「私が相手だ!悪霊ども!!」


「ぁんだこのおっさん!?」


「構わんやっちまえ!!」


「お父様…ありがとう!」


死してなお自分の事を案じてくれる父に礼を言うと、リゼルは一心不乱に走り出した。

親愛なる者を、ひいては世界を救う為に。



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モアザの羽ばたきが突風を巻き起こし、更に炎を纏った突風は炎の渦となってアルバスを襲うが、

アルバスは致命傷を負うどころか表情を曇らせる事すらしない。


ザルディンの放った氷柱(つらら)もまた然り。

顔や胸などの急所を直撃したはずなのに傷一つついていない。


「…最強と謳われた魔術師が二人も揃ってこの有様か。

 いや、お前たち以外のデストラの魔術師たちが雑魚だっただけか」


「私達ばかりか、デストラの魔術師までも愚弄するか!!?」


冷ややかな顔を崩さぬアルバスにザルディンが激昂する。


「あなた落ち着いて!挑発に乗っては相手の思う壺です!!」


「祖国の同胞たちを馬鹿にされて悔しくは無いのか!?」


「愚弄されて許せない気持ちは私も同じです!でもだからこそ冷静な判断が必要なのです!!」


モアザに窘められるや、ザルディンは深呼吸し、頭をブルブルと左右に振るうと、


「…すまなかった。だがおかげで目が覚めた…。改めて行くぞモアザ!!」


「はい!!」


ザルディンが駆け出し、モアザが飛び上がる。


「ユニコーンヘッド!!」


ザルディンの額から氷のコブが隆起し、コブは瞬く間に伸びて角と化す。

突進の勢いをつけアルバスをかち上げるとモアザが竜巻を巻き起こしてアルバスの身体を空高く巻き上げる。


「必殺ぅ!!」


モアザが先回りし、右足でアルバスの頭を、左足でアルバスの両脚を掴み上げるとそのままザルディン目掛け降下!


「魔導!!」


ザルディンもモアザが掴むアルバス目掛け飛翔!!


「「串刺し刑────────────────────────!!!!!!!!」」


ザルディンのユニコーンヘッドが無防備となったアルバスの腹に深々と突き刺さる!!!


「ぐはぁっ!!?」


アルバス吐血!!

モアザはアルバスをユニコーンヘッドから引き抜くと再び急降下し、アルバスの身体を地面に叩きつける!!!

モアザはアルバスの拘束を解き、一度アルバスから離れると、


「どうですか?先の発言を撤回すると言うならこれ以上痛めつける真似は致しませんが」


「…なるほど。大道芸紛いの魔法だけかと思いきやなかなかやる。

 だが残念だったな。息の根を止めず痛めつけるだけに留まったばかりに、お前達は少しばかり私を本気にさせてしまうのだから…」


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