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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
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第百十話「ラストバトル PART2-亡霊戦士と奪われた魔法-」

アルバスとの最終決戦、まだまだ続きます。

負けてない負けてない…ちょっとピンチなだけ

目にも止まらぬ剣戟が繰り広げられていた。

風切り音を伴い煌めく刃の軌跡は観る者を魅了する美しさがあるが

不用意に近づこうものならその身は瞬く間に切り刻まれるであろう凄まじさも持ち合わせている。


だがコウがアルバスに僅かに競り負けているのを観たリゼル達が

2人の対決を指を咥えて見ていられる筈がない。


「いい?私が合図したら、シャインとシャッテはアルバスを拘束。

 私とツバキでアルバスに攻撃を試みるから、シドとエルはコウの援護に回って!」


リゼルの指示に一同は殆ど同時に頷いた。

コウを死なせない、と言う意思が皆の心を一つにしているのだ。


アルバスの剣がコウの剣を弾き、胴ががら空きになる。


「今よ!!」


リゼルの叫びと共に六人が一斉にコウとアルバスのいる方へ駆け出す。


「「やぁっ!!」」


シャインとシャッテが袖口からペンデュラムを撃ち出しアルバスの両腕を絡め捕り、


「「せいっ!!」」


ツバキとリゼルの放った斬撃がアルバスの背中を切り裂き、

そしてシドとエルがコウとアルバスとを引き離す。


「お前達!?どうして…」


「アルバスを倒すのは俺の使命。そう言ったのは貴方じゃないですか」


「そしてコウさん、貴方はいつも一人で戦ってきた訳じゃない。

 貴方にやめろと言われたって、僕たちは、いや僕だけでも貴方に手を貸しますよ」


「みんな…」


するとアルバスは前髪を掻き上げ、


「あぁ~……完ッ全にお前等の事無視していたよ…。

 コウさえ潰せば後は烏合の衆だと思っていたのに、予想外だったわ。

 こんな筈じゃなかった…こんな筈じゃ………」


「アルバスが動転してる!チャンスよコウ!!」


しかしアルバスは唇の端を吊り上げ、嗤った。


「…なんて言うと思ったか?」


「!?」「!!?」「!?!」「!?!?」「!!!?」「?!」「……!!」


「貴様らの戦いを見ていた私が小妻コウ以外がかかって来る事を想定していないとでも思ったか?

 数の上で優位に立ったつもりだろうが、私が使う闇の魔法には物量差を埋められる物など幾らでもあるのだよ」


おそらくは自分の影から分身を幾つも作り出す気だろうとコウは考える。

既にコウ達リゼル騎士団はクドーと言う自らの分身を作り出す事が出来る転生者と戦い、そして勝ってきた。

分身たちは力は強いかもしれないが動きは単純で読みやすいし、こちらの攻撃をまるで避けようともしない。

例えアルバスがどれ程の実力者だろうと今更頭数を増やした所で何も恐れる事は無いのだった。


「どうせ自分の影から分身を生み出すとかそんなんだろう!

 そんな物で倒される俺達リゼル騎士団じゃないぜ───っ!!」


啖呵を切るコウだったが、アルバスの余裕の笑みは崩れない。


「分身だと?なるほどクドーの使ってた手品の事か。

 あれは魔法ではなく異能の応用だし、そもそもそんな子供騙しと一緒にしてもらいたくないな」


「何!?」


「先の戦で無念の内に命を落とした魂よ!!怨み辛み憎しみを晴らせず彷徨い続ける怨念よ!!

 今こそ我が元に集いその恨みを怨敵にぶつける為に顕現せよ!!!

亡者転生(ドーン・オブ・ザ・デッド)!!!!」


信じられない事が起こった。

何処からともなく飛来したオーブの様な球体―いやオーブそのものか―がアルバスを中心にして回り始める。


「ひぃっ!!?」


怯えだすリゼル。

やがて球体は人の姿へ変わり始め、数分と待たずに完全な人型を成した。

しかもその人型の殆どにコウは見覚えがあった。


「こ…これは!!」


クドー、京蔵、豊太郎。

この目で見て、戦って、そして倒した者達が今こうして目の前にいる。

コウは、自分が夢を見ているのではと錯覚したが、

右腕の痺れと魔剣の切っ先が掠めていった頬の痛みがこれは現実だと訴えている。


「まさかアルバス、お前の言う魔法って………」


「そう。死した魂を呼び戻し、戦士として使役する…。

 これぞ私が到達した、死をも超越する究極魔法!『亡者転生(ドーン・オブ・ザ・デッド)』だ!!!!」


「究極魔法だと…!?ふざけるな!

 お前がやっているのは…死者に対する冒涜だ!!

 そんな事は絶対に許さねぇ!!リゼル!みんな!!」


リゼルの方を振り向くコウ。

だがリゼルはその場にうずくまり、目を閉じ耳を塞ぎ動こうとしない。


「リゼル…!?どうしたんだリゼル!!」


「あぁしまった…!!」


リゼルの様子を見て狼狽えるシド。

どういう事かとコウが聞くと、


「忘れてました!姉さん子供の頃から一つだけ苦手なものがあったんです。

 いつもは僕の事守ってくれていた姉さんもそれを前にした途端に立場が逆になってしまって…」


「それって…」


「はい。姉さんは、幽霊が苦手なんです」


「ハッハハハハハハ!!小妻コウの仲間を足止めするのが目的であったがまさか弱点を突く結果になろうとはな!!!

 亡者どもよ!まず王女を血祭りにあげろ!!」


アルバスに命じられるまま亡霊たちがリゼル目掛け殺到する!

心霊ビデオでも滅多に見られないようなおぞましい光景!!

耐性のない者であれば直接手を下されずともショック死するであろう。


瞼を閉じる力をさらに強めるリゼル。


「亡霊どもが姉さんに狙いを絞った!みんな、姉さんを護って!!」


仲間たちにリゼルの援護を要請するシド。

相当切羽詰まった状況故かいつもの敬語が無くなっている。


リゼルを囲むようにシド、ツバキ、エル、シャイン、シャッテは円陣を組み、

向かってくる亡霊どもを追い払おうとするが、


「せいっ!!」


ロッドも、


「やぁっ!!」


刀も、


「来ないでよ!!」


投げナイフもその身体をすり抜けてしまう。


「武器がダメなら!!」


シャインが両手から火球を放つがそれさえも亡霊の身体をすり抜ける。


「武器で攻撃してもダメ!魔法もダメ!こんなのどうすれば倒せるって言うのよ!!」


「簡単な事だ。倒す事は出来なぁい‥‥。何をやっても無駄だと解ったら大人しく嬲り殺されろ…!

 ヒャハハハハハハハハハハ!!!!!!」


狼狽するシャインをクドーの亡霊が嘲笑う。

その様子は死してなお腹立たしい。


「くっ!」


リゼルを助けようとリゼルの方を振り返るコウだがその目の前にアルバスが立ちはだかる。


「お前の相手は私の筈だ」


「どけ!」


「お断りだ」


冷たく言い放ち、コウの首を斬り落とさんとアルバスは魔剣を振るう。

普通ならば体を仰け反らせるか後ろに下がり攻撃をかわす所だが、

コウは逆にアルバスの方へと一歩踏み出した!

1インチと言う超近距離まで距離を詰めると、

アルバスの鎧で覆われていない脇腹目掛けフックを叩きつけた!!


息つく間もなく打ち込まれる鉄拳にさしものアルバスも怯み、身を仰け反らせる。


「リゼッ…!」


再びリゼルの方を向くコウだったが、その瞬間コウの背中に衝撃が走る。

振り返ると、自身の背中に人差し指を突き立てるアルバス!


「ル………!?」


「油断大敵だぞ小妻コウ。私が未だ全力を出してはいない事を忘れてはいるまい」


「そうだった…!貴様はまだ異能を……」


「それにもう一つ。シロウを私が殺した今、シロウの持っていた異能は何処へ行くと思う?」


このアーサレナにおいて転生者には絶対的なルールが2つ存在していた。

一つは転生者は必ず一つ『異能』と呼ばれる魔法とは異なる特殊能力が与えられる事。

能力の強弱に関わらず一つだけ。それもどんな能力を得るかは誰にも解らないし選べない。

そして異能の詳細は実際に発動するまで誰にも解らないし、一部は発動したとしてもアーサレナ人には視認する事が出来ない。


もう一つは転生者が別の転生者と戦い命を落とした場合、命を落とした転生者の持つ異能は命を奪った転生者に譲渡される事。

字面にするとややこしく感じるが、コウが須磨豊太郎を倒した事で豊太郎の持つスマートフォンを介して相手を命令通りに操る異能が

そのままコウが使える様になった事例が既に存在している。


つまりアルバスが言うには、シロウがアルバスに殺された事でシロウの持っていた異能をアルバスが使える様になったのだ。

そして、シロウの異能は………。


「まさか…」


コウを弾き飛ばして一度距離を離すと、アルバスは両掌に魔力を集中させる。

紫色の輝きを放つアルバスの魔力エネルギー体。

それは紛れもなく、コウの魔法だった。


「…ヴォルローア」


突き出されたアルバスの両掌から魔力の波が放たれる。

禍々しく巨大な波は、瞬く間にコウの身体を呑み込んでいき、時計塔の壁の一角を跡形も無く吹き飛ばした。



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